スーパーセンテナリアンの孫娘

ぽむ

大好きなひぃばぁばと私の話(脚本)

スーパーセンテナリアンの孫娘

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〇病室のベッド
あかり「ひぃばぁば、寝てる?」
ひぃばぁば「・・・おきてる」
あかり「着替えと、ひぃばぁばの好きな歌を入れた再生機を持ってきた。 この大きいボタン押すだけ。簡単だよ。 あとは・・・」
あかり「みんなのビデオレター持ってきたよ。 お茶を交換してくるから、 ちょっと待っててね」
  私は、あかり。
  中学一年生。
  
  仕事で忙しい母の代わりに、
  ひぃばぁばに会いに来てる。

〇ナースセンター
  お茶を取りに行くと、ナースに呼び止められた。
看護婦さんA「301号室の藤嶺さんよね? 大変よ!」
あかり「何かあったんですか?」
看護婦さんA「いま、お役所から連絡があって、 藤嶺さんが 「日本最長寿」になったらしいの!」
看護婦さんA「さっきから病院に連絡が沢山来て、 受付が対応に追われて・・・ 記者さん達が 写真撮りたいから中に入れろとか 言うのよ」
看護婦さんA「貴女の所にも連絡が行くかも しれないわ。 どうしましょう?」
看護婦さんA「「他の患者さんもいます、休んでますので、調子が良くなり次第対応します」 でいいわよね?」
あかり「わかりました! とりあえず部屋に戻ります。 写真が必要なら、私が撮って送りますから」

〇病室のベッド
あかり「ひぃばぁば! よくわかんないけど なんか、最長寿とか言ってた!」
あかり「外が騒がしいね。 めっちゃ大変なことになってるみたい。 ちょっと、テレビつけるね!」
  ピッ
あかり「わっ、病院前が映ってるし。 うちの写真とか商店街とか映ってるし。 どうなってるの・・・」
あかり「とりあえず、私撮ってきたから、 ビデオメッセージ見よっか。 お手紙もあるよ」
  ひぃばぁばは、
  商店街の洋裁屋の主人だった。
  
  学校用品や手芸用品、文具や小物も扱う、界隈では少し有名な老舗店。
  今は母がその後を継いでいる。
  私もいずれ、そうなるのかも。
あかり「私ね、いまこれ作ってるけど、上手くいかなくて。 教えて欲しいんだけど」
ひぃばぁば「これは、こう。 うまく回すのがコツだよ」
あかり「ひぃばぁばだけに、秘密だけど、 これリョウに渡すつもりなの」
あかり「覚えてる?同じクラスで、お茶屋の息子さん、幼稚園から一緒の幼馴染のリョウくんだよ。 よく遊びに来てたでしょ」
ひぃばぁば「退院したら、一緒にリョウちゃん家のお茶屋行こうな」
あかり「うん。 早く仕上げなきゃね」
  ひぃばぁばとの楽しい時間が、過ぎていく。

〇病室のベッド
  窓から外の様子を伺うと、玄関にいた沢山の人も、いなかった。
あかり「わぁ、もうこんな時間。 もう帰らなきゃ!」
あかり「じゃあ、また来るね!」
  パタン

〇ナースセンター
あかり「すみません、遅くなりました! もう帰ります」
看護婦さんA「そう、気をつけてね」
看護婦さんA「あ・・・」
看護婦さんA(伝えるの忘れたわ・・・)
  ブーブーブー
看護婦さんA(ナースコール鳴ってる、行かなきゃ)
  パタパタパタパタ

〇街中の道路
  家まで歩いて帰れる距離に、病院があって良かった。
  
  帰ったら完成させなきゃ。
あかり「きゃっ」
  何かと衝突した。
リョウ「あかり、なにしてんの?」
あかり「なにって 帰るところだよ」
  びっくりした。
  いきなりリョウ。
  彼はふざけてるから、
  すぐ、そういうことする。
あかり「リョウこそ、なんで此処にいるの? 一緒に行こうっていったら、 今日は用事があるって言ってたじゃん」
リョウ「今日はサッカーの交流試合だったから! 負けたけど!」
リョウ「それよりさ、あかりの「ひぃばぁちゃん」が「長寿日本一」になったから、寂れた商店街に取材が沢山来ちゃってさ!」
リョウ「商店街の人たちが、盛り上がっちゃって。 皆で集まって宴会してんの。 こういうの久しぶりだしさ」
  商店街の人たちは、仲がいい。
  同じ地域で学校とかも一緒で。
  商店街の人達で、よく宴会してたけど、
  このご時世、集まりがなく。
リョウ「みんな集会所にいるけど、今ならまだ飯余ってるし、食えるよ。行く?」
あかり「そうねぇ お腹すいてるし」
リョウ「じゃ行くか」
あかり「帰るところじゃ、なかったの?」
リョウ「あかり来たし。今日の主役じゃん?」
あかり「なにそれ。 主役は、ひぃばぁば。 皆に渡したいのもあるし、行くよ!」
  一緒で、ちょっと嬉しいけど。
にゃー「にゃーん」

〇カウンター席
  中は人で賑わっていた。
  お酒が進んでる感じの人も多くいた。
リョウ「あかりの母さんは?」
あかり「母は来ないわ、ひぃばぁばと違って、そういうの苦手な人だし」
リョウ「バリバリな感じ、あかりの母さん」
  女の人たちは厨房で忙しくしてた。
  男の人達はお酒飲んでるだけ。
  女だけ厨房で働いてる、みたいなの、母は許せない。
  でも、母も思いやりに欠けるし。
  私のことも無関心だし
あかり(私、古いんだろうな ひぃばぁばの影響もあるけど。 平成生まれだけど、友達あんまり交流がうまくなくて)
あかり(リョウとなら、普通に話せるのに。 でも中学に入ってから、部活あるし、同じクラスでも、話せなくなった)
リョウ「どした?」
あかり「なんでもない」

〇美容院
麻子(母)「ハクション」
美容師A「大丈夫?」
麻子(母)「誰かが私の噂してるのよ。 今日は大変だったの」
美容師A「テレビとか雑誌うちも取材が来ましたね」
麻子(母)「忙しいのに、本当に嫌になるわ」
美容師A「おめでたい話で」
麻子(母)「そうは言うけど、大変なのよ。 いつもワガママで。 しぶといから生きてるのよ、まったく」
美容師A「こらこら、そんな風に言っちゃダメですよ。誰か聞いてるかも」
麻子(母)「いいわよ、別に。 私に仕事も結婚も選択肢を失くしたのは、あの人。 恨んでる、と言ってもいいかも」
麻子(母)「あの家に生まれた時から、 決められてて。 強いのあの人。誰も逆らえないの、」
美容師A「そうなんですか。 お力になれるなら、言ってくださいね」
麻子(母)「ありがと。優しいわね、アナタ。 結婚相手が貴方みたいな人なら、よかったのにね」
美容師A「えっ」
麻子(母)「冗談に決まってるじゃない」

〇カウンター席
おばちゃん「ほら、余ってるから、もっと食べな〜」
あかり「ありがとうございます! お腹いっぱい!」
リョウ「そんなに食べると、おばちゃんみたいに太るぞ〜」
おばちゃん「失礼しちゃうわねぇ、太ってるんじゃなくて、赤ちゃんがいるの!」
リョウ「えっ」
あかり「おめでとうございます〜」
  周りの人たちが「ひぃ姉の誕生日と同じくらいだろ?出産予定日!」
  「誕生会やろうってよ、みんなで」
おばちゃん「もぅ〜あんた達は〜そう言って 飲みたいだけでしょ〜 もぅ〜そんなにこぼして〜」
おばちゃん「ごめん〜ちょっと行ってくるわ〜」
リョウ「身重なのに、いいのかよ。 オッサン達も少しは動けよ」
あかり「リョウ・・・」
リョウ「何?」
あかり「なんか偉いね。 リョウ優しいパパになれるよ」
リョウ「ムリ。 俺、女好きじゃないし」
あかり「この間、部活の後に呼び出されて告白された話、噂で聞いたよ。モテモテじゃん」
  そう私、聞いて焦ってた。
  
  だからプレゼントと一緒に
  告白しようと。
リョウ「断ったよ、面倒そうだし。 友達からって言うけど、気を持たせたら悪いじゃん」
あかり「ばっかじゃない。 あの子クラスで人気あったのに。 それに私とは普通に話すじゃん」
リョウ「あのさあ・・・ 俺、あかりのこと「女」と思わないようにしてるから」
あかり「なにそれ、ひどーい」
リョウ「そうじゃなくてさ 「女」と思うと、意識するだろ 苦手なんだよ、そういうの」
あかり「えっ」
  ♬♪♬♪♬〜
  
  スマホが鳴った。
あかり「もしもし・・・」
  「もしもし、藤嶺さんのお電話?
  容体が急変しまして、ご家族に連絡を・・・」
あかり「す、すぐ行きます!!!」
リョウ「どうした?」
あかり「一緒に来て!」

〇病院の入口
あかり「ひぃばぁば・・・」
リョウ「ほら、濡れるぞ。 しっかりしろ、捕まえててやるから」
  いつの間にか、雨が降り始めてた。傘をさしてくれ、震える肩をリョウに支えられて病院に向かっていた。

〇集中治療室
あかり「ひぃばぁば!」
看護婦さんA「急に呼び出して、ごめんなさいね、親御さんに連絡がつかなかったの。 急性治療するのに書類を書いてもらわないといけなくて」
看護婦さんA「藤嶺さんは特に重要な疾患はないのだけど、だいぶ老齢で心臓が弱ってて、不整脈を起こしたので、安定するまで集中治療の方針でと」
看護婦さんA「お話もできるし、意識もあるので、今のところ安定していますよ。 なんか貴女にお話したいそうなので、私は向こうにいますね」
看護婦さんA「夜も遅いし雨も強いので、よければ朝まで病院に居てもいいですよ。私も朝までいますので」
  看護師はナースステーションに行ってしまった。
  機械の波形音がするけど
  数値は少し低めだけど安定している。
  私は、手を握っている。
  ひぃばぁばの手、少し冷たい。
ひぃばぁば「お嬢様・・・ごめんなさい・・・ お嬢様・・・」
あかり「ひぃばぁば? お嬢様って、どこの?」
ひぃばぁば「これを」
あかり「これは・・・」
リョウ「手帳?」
ひぃばぁば「お嬢様を探して・・・ 眠い・・・」
あかり「寝ちゃった・・・のかな?」
リョウ「息もしてるし、顔色も赤みがあるから、寝てるだけだと思うけど・・・」
あかり「私、もう少しここにいる ここにいて、ひぃばぁば見てる」
あかり「これ、預かってて。 リョウなら失くさないでしょ。 いまは、読む気になれない・・・」
  手帳を渡した。
リョウ「わかった。 読んでもいい? なんか、調べてほしそうだったし。 わかったら言うよ」
あかり「うん、ありがとう」
リョウ「じゃあ待合にいるよ。なんかあったら呼んで」
  パタン
あかり「一緒に完成させよって・・・ 言ってたのに」
あかり「・・・(声を殺して泣いてる声)」

〇街中の道路
あかり「もう・・・本当にママのバカ なんで来ないのよ・・・」
リョウ「置いてくなよ。待ってたんだからな」
あかり「待っててなんて、言ってないもん」
リョウ「何、怒ってんだよ」
あかり「別に。 もう、学校始まっちゃうから、急ぐよ」
リョウ「俺は少し寝てたからいいけど、あかり寝てないだろ。大丈夫か?」
あかり「平気、慣れてるし。 休み時間に寝るからいい。 どうせテスト勉強と面談で、短縮授業だし」
リョウ「へー、すげーな。俺は寝ないとダメかも。 俺も試合終わったから、しばらく自主練だし、少し暇なんだよ」
リョウ「例の手帳な、少し調べたんだけど。 よかったら、探索に行かないか?」
あかり「えっ、なにか分かったの?」
リョウ「知りたかったら、今日の放課後に「例のところ」に集合な!」
あかり「ちょ、ちょっとー」
にゃー「にゃーん」

〇高い屋上
あかり(例のところ・・・ それは屋上)
リョウ「さすが、よく分かってるな」
あかり「当たり前じゃない。部員が私達(と幽霊部員)しかいないんだから」
  天文部だけ入れる部室。太陽黒点観測や流星観測のために、私達にだけ鍵が扱える。秘密の部屋、屋上。
  勝手に使っていても、黙認されている。
  私達は見学時、存続のために、先輩たちに無理やり入部させられた。
  掛け持ちでリョウはサッカー部、私は手芸部に所属してる
  私達だけが「鍵を持っている」
あかり「端に行かないでね、老朽化で床が抜けて下の教室に落ちるから」
リョウ「マジかよ~おっかねえ」
あかり「それより手帳の秘密を教えて」
リョウ「じゃあ、こっちへ」

〇テントの中
  貯水槽の裏、屋上の死角に、テントが置いてある。
  私達は肩を寄せ、潜り込む。
あかり「もっと詰めて」
リョウ「太ったんじゃねえの?」
あかり「失礼なヤツ!」
あかり「・・・」
リョウ「・・・」
あかり「えーと、それで? わかったことは、探偵リョウくん」
  ページをめくると、それは思い出の記憶と、生涯の記録で
  
  最初の数ページは箇条書き、出来事がメモになってて後は日記
リョウ「生涯年表にしてみたんだよ。 歴史の教科書みたいだよ」
リョウ「一緒に埋めて欲しいんだけど・・・」
あかり「わかったわ」

〇集落の入口
  私は、東北の養蚕農家の生まれで
  あまり裕福な家ではなかった。
  
  家業を手伝いながら尋常小学校に通っていた。

〇レトロ喫茶
  学校卒業後に、知り合いの呉服屋に、12歳で奉公に出された。
  お嬢様のお供で連れて行かれたカフェ。
ひぃ(田舎者の私には、場違いだわ)
ひぃ「お嬢様!」
お嬢様「どう?楽しんでます? いいでしょう。お父様にお願いして、やっと開店したお店なの」
ひぃ「お嬢様が?す、凄い・・・」
お嬢様「そんなことないわ、貴女にも洗練された感覚を磨いて欲しいものね」
ひぃ「ありがとうございます、お嬢様」
マスター「いかがです?」
お嬢様「あぁマスター。素敵です。 大変よろしゅうございますわ」
マスター「ありがとうございます。 では、お嬢様、後ほど・・・」
お嬢様「えぇ。ありがとう」
  お嬢様は優しく強く、皆の憧れだった。
  あいつが現れるまでは・・・

〇古書店
  私の唯一の楽しみは、本だった。
  休みには街で
  流行りの洋裁カタログや雑誌を見ていた。
  新しいことを知るには、写真や本から得るしか、ないから。
  しかし私の給金は実家に仕送りするのが精一杯で、余裕がなかった。
あいつ「お嬢ちゃん、本が欲しいのかい?」
ひぃ「えぇ。勉強しなきゃと思って」
あいつ「偉いね。 確か、君はお嬢様のところで働いている奉公人だよね。僕はお嬢様の知り合いでね」
  そういえば、この方は、お嬢様主催の園遊会で、何度か見たことがある。
  私はその時に、給仕をしていた。
あいつ「僕のお願いを聞いてくれたら、本を買ってあげるよ。 これは、とても高価だろうし」
ひぃ「本当?どんなお願いですか?」
あいつ「ある場所に、案内してくれたら、いいだけだよ」
  疑うことを知らない当時の私は、男の口車に乗ってしまう。
  それがいけなかった。
  男はお嬢様を誘拐したのだ。

〇レトロ喫茶
  幸いにお嬢様は、すぐ発見され、誘拐の片棒を担いだ私は、解雇された。
  信頼してたお嬢様を裏切ったのだから、当然。
ひぃ(なんてことを、してしまったんだろう)
  帰るところもなく、行くところもなく。
  あてもなくさまよっていると、例のカフェにたどり着いた。
マスター「入りなさい」
ひぃ「でも、お金もないし」
マスター「わかってるさ」
  店主は私にホットミルクを出した。
  
  お嬢様は、店主が好きだった。
  そして店主も。
  私は後悔したこと、お嬢様に酷いことをしたこと、その人に全部話した。
マスター「私はね、お嬢様とは身分違いだと思っているんだ。 でもお嬢様は、好きって言ってくれた」
ひぃ「・・・」
マスター「君なら、僕らのことを、秘密にしてくれるだろう?」
ひぃ「はい・・・」
マスター「僕が君を雇うよ。給金も今までの倍だ。2階に空き部屋もあるから使うといい」
マスター「合間に君の好きな洋裁でもするといいさ。 でも僕らのことを話さない。 わかった?」
ひぃ「はい」

〇古書店
  そして平凡な日々が続いた。雇われたお陰で、仕送りも本を買うお金もできた。
あいつ「おい。久しぶり。 調子はどうだい?」
ひぃ「あっ あなたは・・・」
あいつ「君のお陰で、お嬢様と結婚できることになったよ」
ひぃ「えっなんでっ」
あいつ「お嬢様が懐妊なされてな。 頭のいい君なら、あとは言わなくてもわかるだろう?」
あいつ「これは報奨だ、じゃあな」
ひぃ「こ、こんなの受け取れません」
あいつ「これじゃ足りないってかい? 欲の深いやつだな」
ひぃ「やめてください」
あいつ「まぁいい、目的は達成したのさ。 ハハハハハハ」
ひぃ「お嬢様・・・」

〇公園のベンチ
ひぃ(もう合わせる顔がない・・・ あんなに親切にしてもらったのに)
マスター「こんなところにいたのか!」
ひぃ「ごめんなさい、マスター もう二度とお目にかかりません」
  マスターは、私を抱きしめた。
マスター「君のせいじゃない。 決して君が悪いわけでは・・・」
ひぃ「マスター・・・」
マスター「彼女に宿しているのは、僕の子どもだ」
マスター「だから出ていっちゃダメだ。 僕が悪いのだ」
ひぃ「お嬢様のところに行きましょう。 お嬢様を迎えに行くのです」
ひぃ「私も謝りに行きます。 土下座でも殴られでも、何でもします。 だから行きましょう お嬢様を不幸にしたくないのです」
マスター「ありがとう。 正直、少し疑ったことを謝るよ」
ひぃ「疑われて当然のことをしたのですから 当たり前です」
  失敗は、何度でも、やり直せる。ちゃんと誠意を持って物事に当たれば。

〇テントの中
あかり「お嬢様はどうなったの?」
リョウ「説得に行った先で店主が横取りしたアイツを殴り倒して、お嬢様を奪って駆け落ちしたみたいな記述が・・・」
あかり「やるじゃん。 あっでも仕事なくなっちゃう?」
リョウ「店主の計らいで、その場所を引き継いで、カフェ改造して洋品店を開いたみたいだよ」
あかり「それが家?」
リョウ「そうかもしれないね かなり古いとは聞いてたけど」
リョウ「その後、戦争も震災もあるし、 色々調べないといけなさそう。 調べ尽くせるのかな」
あかり「へぇ 家を探せばまだ何かあるかも しれないわよね・・・」
リョウ「そうだね」
  ♬♪♬♪♬〜
  スマホが鳴った。
あかり「あっ、もしもし・・・ 看護婦さん? そうなんですか。 わかりました、ありがとうございます」
リョウ「どうした?」
あかり「ひぃばぁばが、急に良くなったって」
リョウ「良かったじゃん」

〇病室のベッド
麻子(母)「私はね、母のようになりたくないの」
ひぃばぁば「なる必要はないさ、でもそれをあかりに、押しつけないでおくれ」
麻子(母)「押しつけてなんかいないわ」
ひぃばぁば「アンタがそうだと、まだ死ねないわ」
麻子(母)「まったく頑固なババァなんだから」
ひぃばぁば「頑固ババァだから 生きられるのさ」
看護婦さんA(なんだかんだ言って、仲良いわよねえ、この人達)
看護婦さんA「あのー そろそろ・・・ お薬の時間で・・・」
麻子(母)「また来るわ。 そのババァ顔を見にね」
ひぃばぁば「はいはい、いってらっしゃい」
ひぃばぁば「すみませんね」
看護婦さんA「元気になられて、よかったです。 もうすぐ退院ですし、 退院したら何します?」
ひぃばぁば「ひ孫が誕生会開くって」
看護婦さんA「いいですねぇ」

〇カウンター席
あかり「おめでとう!」
  あかりが、花束を渡す。
  
  と同時に、取材のフラッシュが、眩しい。
ひぃばぁば「ありがとうね」
  「おめでとう!」「良くなってよかったなぁ」「もっと長生きしろよ!」
ひぃばぁば「ここまで来ると、死ぬ気がしないよねぇ」
  どっ(笑い)
  「そうだそうだ!」
  「さすが俺たちのひぃ姉!!!」
  「いいぞー!」
おばちゃん「赤ちゃん産まれました! よかったら、お名前をつけてください!」
ひぃばぁば「おや〜産まれたのかい! かわいいねえ〜 そうねぇ「ぼたん」や「ふみ」は、どうだい? どちらも縁起のいいモノだよ」
ひぃばぁば「牡丹は百花の王、文は縁結びさ。 人に好かれて愛されるように」
おばちゃん「ありがとうございます。 大切にします」
  「はい、そのまま、赤ちゃんも一緒に撮りますよ〜」
  「はい、チーズ」
  パシャリ
ひぃばぁば「ところで・・・」
ひぃばぁば「オマエたちの結婚式は、いつだい?」
リョウ「ぶふー(ドリンクを吹き出す)」
あかり「ひぃばぁば!私達は、まだ中学生!」
ひぃばぁば「何いってんだい、私の頃には、もう結婚してたよ。 あたしが生きてるうちに出るんだから はやく決めな!」
あかり「ひぃばぁばには、かなわないなぁ」
にゃー「にゃーん」

〇幻想空間
  おわり

次のエピソード:ひぃの回顧録

コメント

  • ひぃばぁばの過去を読み解く2人を見ているうちに、タイムスリップしたかのような感覚になりました。
    とても丁寧に作られているので、真剣に読み耽ることが出来ました。
    続きあるようなので、そちらも読みたいです。

  • 素敵な作品です。様々な愛の形を感じる事が出来ました!

  • どれも削ってほしくない素敵な物語でした。途中で何度か登場する「にゃー」もとても癒されて、すぐに気に入ってしまいました。ぜひ次回作を楽しみにしています。

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