聖夜に私が消える時

ゆり

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〇モヤモヤ
  2021年12月24日
  私は死んだ
  聖なる夜に最愛の恋人に刺されて
恋人「さくら・・・許さない!!」
  なんだか悲しいというよりホント自分らしくて笑える
  思い起こせば私の人生ホントろくな事が無かったな

〇住宅街の公園
  子供の頃、自分は生まれてきてはいけない人間だという事を知った
「さくらちゃんってもらわれっ子なんだって!」
「さくらちゃんのパパとママって本物じゃないんだって!」
「コラ!あまり大きな声で言うんじゃない!」
「おいで!帰るわよ!」
さくら「私のパパとママは偽物なの?」
  これがいわゆる走馬灯ってやつか
  これが初めて両親が本物じゃないって知った時だった

〇ダイニング(食事なし)
さくら「なんで私だけもらわれっ子なの!?」
さくら「なんでパパとママは本物じゃないの!?」
さくら「えーん」
  私は生まれた時からずっと不幸だった
  本当の両親は自分が赤ちゃんの時事故で死んだらしい
さくら「本当の子供じゃないなら私なんて居ない方がいいんだ!」
さくら「えーん」
  毎日辛くて辛くて楽しい事なんて何ひとつなかった

〇教室
クラスメイト1「・・・」
クラスメイト2「・・・」
  走馬灯って残酷だね
  ずっと記憶の奥底に封印して忘れてたけど
  私は学生の時クラスメイトから無視されていた
さくら(今日も1人で屋上でお弁当食べよう)
  そしていつも自分の存在意義について考えて

〇雑誌編集部
さくら「申し訳ございませんでした」
  どうやったら楽に死ねるのか毎日考えていた
先輩「このプロジェクトはうちの会社の今後の命運がかかってるの!」
部長「もっと責任持って取り組んでもらわんと困るよ君!」
  新卒で勤めた会社はいわゆるブラック企業で
  私のミスじゃない事も毎日怒られて
  私だけいつも物凄い量の仕事を押し付けられた

〇雑誌編集部
さくら「今日もこんな時間か」
  毎日仕事に忙殺されて
  自分の時間なんて何にもない
さくら「私ってなんの為に生きてるんだろう」
「こんなに遅くまで仕事してるんですか?」

〇ビルの地下通路
同僚「まだお仕事されてたんですね」
  そうそう、これが彼との初めての出会いだった
同僚「良かったら何か手伝いますか?」
  この時初めて私に優しくしてくれる人が現れた
さくら「え!?そんな!?申し訳ないです!」
同僚「良いんですよ」
  私の人生に初めて光が差したと思った

〇モヤモヤ
  彼は私の過去も理解してくれて
  生まれて初めて他人を信じる事が出来た
恋人「さくら、許さない!」
  でも・・・
  結局あなたも私の事をあまり良くは思ってなかったんだね

〇クリスマスツリーのある広場
さくら「今年もクリスマスイブに2人で過ごせて幸せだよ」
恋人「俺も幸せだよ」
さくら「クリスマスツリー綺麗だね」
  この時までは幸せを感じていたはずなのに
不審者「イチャイチャしやがって!!」
恋人「さくら!!」
さくら「う・・・背中・・・痛い」
不審者「ヤベ!逃げよ!」
  そうか
  私クリスマスツリーに夢中で全然気付かなかったけど
  彼に刺されたのではなく不審者に刺されたんだね
恋人「さくら!」
恋人「なんでこんな事に!」
恋人「許さない!」
  そうだったんだね
恋人「今からプロポーズしようと思ってたのに!」
  彼は本当に私を愛してくれてたんだ

〇雑誌編集部
  疑ってごめんなさい・・・
先輩「さくらさんは私の若い頃にそっくりでついつい厳しくしちゃうけど」
先輩「本当に期待してるんですよ」
部長「私もあの子は本当に伸びる人間だと思うよ」
  え?そうだったの?
  みんな私に期待して厳しかったの?
先輩「次のプロジェクトのリーダーに彼女を推薦しようと思ってるんですよ!」
部長「それは良いね!私からも推薦するよ!」
  なんだ・・・

〇教室
  全然知らなかったよ・・・
クラスメイト1「さくらちゃんって本当美人だよね!」
クラスメイト2「さくらちゃんみたいに群れない人って尊敬!」
  え・・・!?
クラスメイト1「話しかけたいけど1人が好きみたいだしねー」
クラスメイト2「美人すぎて話しかけるの少し躊躇しちゃうよねー!」
  なんだ
  嫌われてたんじゃ無かったんだ
クラスメイト1「いつも『おはよう』って言ってくれるのかと思ったら目が合うだけで行っちゃうからさー」
クラスメイト2「うちらみたいな一般庶民相手にしてくれないんだよ笑」
  そっか
  私から『おはよう』って言えば良かったんだ

〇ダイニング(食事なし)
  ただそれだけだったんだね・・・
さくら「えーん・・・」
  私いつも自分の事しか考えてなくて
さくら「えーん・・・」
ママ「ママにとってさくらは世界でただ1人の子供なのよ!」
パパ「パパもさくらの事はずっーと本当の子供だと思って愛してるよ!」
  全然周りの人の気持ちを考えてなかったんだ・・・
ママ「さくらそんなに悲しまないで・・・」
ママ「どんな事があってもママはさくらの味方だよ」
パパ「パパも世界で一番さくらが大事だよ」
  いつも自分ばかりなんで?!って思って
ママ「さくらの好きなオムライス作ったからみんなで食べようね」
パパ「さくらの好きなプリンもあるよ」
ママ「私のお姫様泣かないで」
パパ「さくらが悲しいとパパも悲しくなっちゃうよ」
  こんなに周りの人にたくさん愛を貰っていたのに

〇病院の診察室
  自分だけ不幸だと思って生きてきた
本当のママ「もうすぐ会えるわね」
本当のパパ「君にはたくましく美しい桜の木のようになって欲しいから」
本当のパパ「『さくら』と名づける事にしたよ」
  私は全然不幸な人間ではなかった
本当のママ「さくら私達の所に来てくれてありがとう」
本当のパパ「パパはとっても幸せだよ」
  私はこんなに祝福されて生まれてきたんだね

〇病院の廊下
  死んでからわかるなんて
恋人「さくら!戻ってこい!」
  もっと周りの人の愛に気付いて
ママ「さくら!死なないで!」
  もっと感謝の気持ちを伝えて
パパ「さくら!」
  もっと長く一緒に生きれたら良かったな・・・
  ・・・みんな
医師「ご臨終です・・・」
  今までごめんね・・・そして
  どうもありがとう・・・

〇地球
  神様
  次は絶対間違わないから
  どうかまた・・・
  私として生まれますように・・・

コメント

  • 悲しいお話でした。
    もう少し早く周りの愛情に気づくことが出来れば、幸せになれたかもしれないのに。
    受け取り方って大切ですよね。

  • 悲しすぎます。

  • 自分ばっかりとか、なんで自分だけと考えてしまう事もありますが、そんな事はないのかもと思えました。そしてさくらさんも最後にみんなの気持ちに気づけて良かった。

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