越百(コスモ)さん家(チ)はフツーでいたい

東北本線

普通の第一話(脚本)

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〇アパートのダイニング
母「まさむねぇー!!早く起きなさーいっ!また遅刻しちゃうわよー!?」
マサムネ「分かってる!言われなくても遅刻だよっ!」
マサムネ「マジで最悪だっ!!なんで起こしてくんなかったの!?」
母「何回も起こしたし、何回も呼んだんだけど?」
マサムネ「ちゃんと起こしてくれって、いつも言ってるじゃんか!」
父「また遅刻か。いったい、誰に似たんだ?」
母「え?あなた、まさか私だって言うんじゃないでしょうね?」
父「はっはっは」
父「じゃあ俺だっていうのかい?」
マサムネ「うるさいなっ!のんびりしてる場合じゃないんだってっ!」
父「なんだ、正宗!親に向かって、その口の聞き方は!」
母「ホントよ。そんな子に育てた覚えはありませんよ?」
マサムネ「子どもが遅刻しそうだって時に、のんびりコーヒーを啜ってる方が悪いっ!」
父「む、言ったな?」
父「・・・」
父「まあ、お前は拾ってきた子だからな」
マサムネ「そんな冗談、聞き飽きたよっ!」
マサムネ「そういうのは、小学校低学年までにしてくれよなっ!」
マサムネ「いってきまーす!」
母「・・・」
母「アナタ。そういうのは言わないでって、前にも言ったじゃないですか?」
母「教育に悪いって聞きますよ?」
父「はっはっは・・・」
父「・・・すまん」
母「あら?あの子、今日のお弁当・・・」

〇開けた交差点
マサムネ(やっべーよ!遅刻だよ、遅刻!)
マサムネ(あーあ。こんな時にオリンピック選手より早く走れる脚とか、)
マサムネ(カチッとカプセルを押すと、空を飛べるマシンが出たりとか、)
マサムネ(なんでも願いを叶えてくれる、青い未来の猫型ロボットとか、)
マサムネ(そんなマンガみたいな物が、あったらいいのになぁ!)
マサムネ「そんなの、あるわけねえけどさぁ!」
マサムネ(もしくはそこの角を曲がった出会いがしらに?)
マサムネ(同じく遅刻しそうな、食パンくわえたカワイイ女の子とかが、いちゃって?)
マサムネ(出会いがしらに、ぶつかっちゃってさ?)
女の子「いったいわねぇ!なんなのよアンタっ!」
マサムネ「ああ、すまない・・・(髪サラサラァ~)」
女の子「あ・・・(ドキィインっ←恋に落ちる音)」
マサムネ「みたいなことがあったりしちゃってさぁー!」
マサムネ「まあ、角は普通に、通り過ぎてしまうわけだけどっ」
マサムネ(でも最近の流行はアレか?)
マサムネ(そこの横断歩道を渡ろうとした、その瞬間っ!)
マサムネ(信号無視したトラックに轢かれてっ!)
マサムネ(超絶美人の神様登場ぉ~、からの!?)
マサムネ(すみませぇん。間違って死なせてしまいましたぁ~、からの!?)
マサムネ(異世界にお望みのスキルてんこ盛りで、転生させますからぁ~、みたいな!)
マサムネ「そんで、異世界で大活躍しちゃったりして!」
マサムネ「よぉし!横断歩道もしっかり通り過ぎたわけだ!」
マサムネ「・・・」
マサムネ(いつも通りの、退屈な日常・・・)
マサムネ(いつも通りの、ただ遅刻しそうなだけの、俺だ)
マサムネ(毎日毎日、同じことの繰り返し・・・)
マサムネ(ずっと普通のままの、俺・・・)
マサムネ「くそっ!つまんねえっ!」

〇学校の裏門
先生「なにがだっ!マサムネ、遅刻だぞ!」
マサムネ「うわぁああっ!」
先生「もう何回目だ!?お前、最近たるんどるぞっ!」
先生「次やったら、保護者を学校に呼ぶからなっ!」
マサムネ「ひ、ひぃ!す、すみませぇええん!」
先生「待て」
マサムネ「は、はい?」
先生「さっき親父さんから、お前の忘れ物を預かった。ほれ、弁当」
マサムネ「は、あ・・・、ど、どうも・・・」
先生「・・・」
先生「定時連絡、4B154。本日も異常なし」
先生「はぁ・・・」
先生「こんなことしてて、一体いつになったら会えるっていうんだ?」

〇教室
マサムネ(しっかり担任にしぼられてしまった・・・)
マサムネ(朝からツイてない・・・)
マサムネ「親父、俺が家を出る時は、まだ家にいたよなぁ?」
マサムネ(車で追い越して、弁当を届けてくれたのかな?)
マサムネ「だったら学校まで送ってくれよ・・・」
マサムネ「・・・」
マサムネ(いや、実は親父は正義のヒーローで、)
マサムネ(あの、どこにでもいそうなボンクラな姿は、)
マサムネ(世を忍ぶ仮の姿ってやつで、)
マサムネ(超人的なパワーを駆使して、弁当を届けてくれたのかもしれない)
マサムネ(実は、俺にも遺伝的にそんな力が秘められていて、)
マサムネ(潜在能力は当然、親父なんか超えていて、)
マサムネ(親父が黙っているせいで、この学校にも敵の軍勢が襲来することになって)
マサムネ(みんなの窮地に、突如として覚醒した俺が、クラスメイトや世界を救う、みたいな)
マサムネ(ほら。あの教室の扉が、今にも乱暴に開いて、)
マサムネ(黒ずくめの敵が・・・)
先生「おら、1時間目だぞ~」
マサムネ「んなわけないんだよなぁ~」
マサムネ(マジでさ。このクラスごと異世界に転移して、)
マサムネ(なんか、俺だけ勇者に選ばれるみたいなこと、ないもんかな)
マサムネ「いつまで俺は、凡人のままでいればいいんだよ」
マサムネ(普通の家庭で、普通に育って、成績も普通)
マサムネ(特筆できる得意科目もなく、運動も中の下)
マサムネ「最悪だよ・・・」
先生「おい、マサムネ!なんなんだっ!聞こえてるぞ!」
マサムネ(やっべ。独り言してた!)
マサムネ「な、なんでもありませんっ」
マサムネ(本当に、)
マサムネ(フツーなんて、サイアクだ)

〇古い図書室
  ーー放課後。
部長「さて」
部長「今回、諸君に小説の題材にしてほしいのは、」
部長「宇宙、についてだ」
男子生徒「SFですか、部長?」
男子生徒「アイアム、ユア、ファーザー的な?」
部長「ノー」
部長「いや、ノォオオオオ!だ!」
部長「ちなみに俺は、7も8も9も面白いと思っている」
部長「なぜ、あんなに不評なのかっ!」
男子生徒「すみません。話を進めて下さい」
部長「・・・」
部長「そうだな」
部長「書いてもらうジャンルは、SF限定とはしない」
マサムネ「というと?」
部長「この間、街の歴史資料館で、戦国時代から江戸時代初期にかけて」
部長「宇宙からの飛来物が、この町の付近に落ちたという情報を得た」
部長「その時、俺は天啓を得たんだ」
部長「宇宙を舞台にした、小説をみんなに書いてほしいって」
マサムネ(要は思いつきかよ)
マサムネ(この人、いつもそうなんだよな)
部長「その通り!俺の思いつきだ!とにかく宇宙をテーマにしてほしい!異論は認めん!」
マサムネ(俺、口に出したか?いや、出してないよな)
マサムネ(ホント、つかめない人だよなー)
部長「なんでも、その昔に落ちた飛行物体は、とても大きかったらしい」
部長「時の藩主が、極秘裏にそれを回収したとか、しないとか」
部長「その回収物は、一体どうなったんだろうな?いま、どこにあるんだろうな?」
部長「ロマンがあると思わないか!?」
部長「創作意欲が、湧いてこないかー!?」
男子生徒「さ、さすが部長!着眼点が素晴らしいですね!」
部長「いやいや、それは違うぞ」
部長「ここまでは、スタートライン。ただの興味の問題だ」
部長「その興味を、どのように作品に昇華するのか。それは、みんなの腕次第だ」
マサムネ(いまいち、この人がなにを考えてるのか分からない)
マサムネ「部長こそが宇宙人なんじゃ・・・」
部長「マサムネくんっ!」
マサムネ(うわぁあっ!また頭ん中のこと、声に出しちまった!)
部長「それこそ、素晴らしい設定だ!」
部長「宇宙人が人間の間に紛れている!そんな素敵な空想が、この世にあるだろうか!」
マサムネ(な、なんか褒められたんだけど!?)
マサムネ「あ、ありがとう、ございます・・・」
部長「しかし、僕は宇宙人ではない」
部長「そうであったら、どんなに良いかとは思うがね」
部長「ああ!キャトルミューティレーションされてみたいっ!」
部長「宇宙人に会いたい!会って握手がしたい!」
マサムネ(握手・・・、アイドルかなんかか?)
マサムネ(ホント部長って、十分なくらい宇宙人っぽいけどなぁ)

〇アパートのダイニング
???「ただいま」
母「あら、おかえりなさい。お弁当届けてくれてありが・・・」
母「あなたっ!」
???「ん?」
???「あっ!すまん!」
???「・・・」
父「・・・」
父「大切な一人息子が食事に困ってはいけないと思ったら、」
父「いつの間にか、この姿で、学校に着いていた」
父「しかも息子を、いつの間にか追い越していたようだ」
父「担任の先生が、教えてくれたよ」
母「気を付けて下さいね。正宗の担任教師は・・・」
父「ああ、分かってる」
父「あの姿を見られたわけでもない。気付きはしないよ」
母「なら、いいですけど」
母「・・・」
母「分かっていると思いますが、」
母「私たちがこの惑星で暮らしていくには、普通の家庭を築くことが大切」
母「あの日、そう言ったのは、誰でもない、あなたです」
母「この450年の間に、私たちは学んだじゃないですか」
父「すまん。私が言い出したことだってのに」
父「今日のは私のミスだ」
母「・・・」
母「故郷(くに)に、帰りたくなりましたか?」
父「・・・」
父「やめよう」
父「その話は、300年前に結論が出たじゃないか」
母「そうですね」
母「じゃあ、私たち家族は、いつも通り、普通の生活を続けるしかない」
母「そうですよね?」
父「ああ、そうだな」
父「こんな私に、付き合ってくれて、ありがとう」
母「いえいえ」
父「じゃあ、そろそろ仕事に出かけるよ」
母「今日も普通に。いってらっしゃい」
父「今日も普通に。行ってきます」

コメント

  • マサムネは嵐の真ん中にいて「嵐が来ないかな」って言ってるようなものなんだ。彼は作者や読者がいなくなってもずっと「何か面白いこと起きねーかなー」って言ってそう。でも世の中の人も大半が鈍感力を発揮して普通だと思い込んでいる毎日をこなしているんでしょうね。

  • マサムネ、想像力がすごい豊かだなあと思いました😂
    寝坊した朝お父さんが、拾った子みたいなことを言っていて、よくある冗談だと思っていたらどうやら本当っぽいですね🫢
    担任の先生も普通の人では無さそうな雰囲気な気になりました!

  • 私もこうならないかなー、といった妄想はよくします笑
    大体何も起きずにいつも通りの生活が待ってるわけですが、普通で無くなったら普通が恋しくなる物かもしれませんね。

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