明日世界が滅亡したら

宇野木真帆

エピソード1(脚本)

明日世界が滅亡したら

宇野木真帆

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〇黒
  明日、世界が滅亡するとしたら
  俺が..

〇荒廃した市街地
天使「このままでは..」
天使「明日にでも世界は滅亡してしまう」
天使「これからどうすれば..」

〇黒

〇映画館の座席
アキラ「いやー!面白かったな!」
アキラ「久しぶりの映画いいわー!」
ノブ「『明日世界が滅亡したら』か..」
アキラ「ノブ、お前ならどうするよ?」
アキラ「明日世界が滅亡するとしたら」
アキラ「何する?」
ノブ「うーん、そうだな..」
アキラ「お、なになに?」
ノブ「アキラに告白するわ」
アキラ「えっ!?」
アキラ「そ、そしたら、俺が..」
ノブ「はっはっは!」
ノブ「冗談だ」
アキラ「んだよー」
ノブ「でも、アキラに言うべきことはある」
アキラ「はぁ? どーせまた..」
ノブ「来月から入院するんだ」
アキラ「はぁっ!? お前それじゃあ..」
アキラ「ダブルスどうすんだよっ!?」
ノブ「それは..」
店員「次の来場がございますので、ご退場くださーい!」

〇黒

〇ファミリーレストランの店内
店員「以上でよろしいでしょうか?」
ノブ「はい、大丈夫です」
アキラ「...」
アキラ「で、入院ってのは来月のいつからなんだ?」
ノブ「上旬からだ。 詳しい日程はまだ決まっていないが」
ノブ「今回の試合にオレは出られない」
ノブ「すまないな、アキラ..」
ノブ「切り出そうにも、なかなか言えなくてな」

〇黒
  オレはあの時も
  お前に言えなかった。

〇テニス部の部室
アキラ「づかれだー..」
ノブ「もう真っ暗だ。 さっさと着替えて帰ろう」
アキラ「なぁ、ノブ。俺たちさ..」
ノブ「ん?」
アキラ「こんだけ練習してるんだ」
アキラ「だから..」
ノブ「大丈夫だ。 まだ試合まで時間はある」
ノブ「オレたちはもっと強くなる」
ノブ「だろ?」
アキラ「そうだけどよ..」
ノブ「オレにはお前がついてる」
ノブ「お前にはオレがついてるだろ?」
アキラ「そうだな」
ノブ「自信をもてよ」
アキラ「そうだよな!行くぜ全国!」
ノブ「あぁ!もちろんだ!」
アキラ「ヤッベ.. コートにタオル置いてきちまった!」
アキラ「ノブ、先に着替えててくれ!」
ノブ「あぁ。わかった」
ノブ「大丈夫だ。お前は強い」
ノブ「オレがいなくても」
ノブ「お前なら、必ず..!」

〇ファミリーレストランの店内
アキラ「それで、体は大丈夫なのか?」
アキラ「今回の試合に出られなくても、俺たちにはまだ来年もある」
ノブ「...」
ノブ「大したことはない。 学校の健康診断でちょっと引っかかってな」
ノブ「精密検査ってところだ」
アキラ「そうか。なら良かったよ」
アキラ「しゃーねーから、他のやつとダブルス組んで先に全国行ってるぞ」
ノブ「あぁ、すぐに追いかけるさ」

〇黒

〇テニス部の部室
  それから俺は後輩とダブルスを組んで試合に臨んだ。
  ノブには強気で言ったが、付け焼き刃のダブルスで全国へ行けるはずがなかった。
  あれからノブと顔を合わせていない
  俺はまだ..
  後輩とダブルスを組んでいる
後輩「先輩..平気ッすか?」
アキラ「いやー、けっこうヒネっちまったな..」
アキラ「わりーが、俺は先に上がらせてもらうわ」
アキラ「明日、病院行ってくる」
後輩「了解ッす」

〇黒

〇病院の待合室
アキラ(思ったより酷くなかったが)
アキラ「全治1か月。ヒマだなぁー..」
アキラ「おいっ!!」
アキラ「お前ノブじゃねーかっ!!!」
ノブ「あ、アキラか!?」
ノブ「どうした!?」
ノブ「怪我でもしたのか!?」
アキラ「いや、それより、なんでお前..」
看護師「病院では静かにしてください!」
ノブ「っと、場所を変えよう」

〇病室のベッド
アキラ「なんだよ、お前..」
アキラ「全然連絡つかねぇと思ったら、まだ入院してたのかよ」
ノブ「そうだ」
アキラ「体のことは心配しなくていいって..」
ノブ「そうだ」
アキラ「検査だから大したことないって..」
ノブ「そうだ」
ノブ「大したことない」
アキラ「んなわけねーだろ!!」
アキラ「大したことなくて!」
アキラ「なくて..」
アキラ「1か月も入院しねーだろ」
ノブ「そうだ、な..」
アキラ「言えよ」
アキラ「本当のこと..」

〇黒
  どーしてあと1日..
  お前は待てなかったかな..

〇病室のベッド
ノブ「明日、オレは死ぬんだ」
アキラ「は?」
ノブ「余命宣告って、知ってるだろ?」
アキラ「あぁ、でも..」
アキラ「そんな元気そうなのに」
ノブ「はは。確かに..」
ノブ「こんな元気”そう”なのにな」
アキラ「...」
ノブ「そうだ!」
アキラ「なんだよ..」
ノブ「やっぱりアキラに告白するわ」
アキラ「ど、どうしたんだよ、いきなり..」
ノブ「『明日世界が滅亡したら』っていう映画観ただろ?」
アキラ「え、縁起でもねーこと言うなよ..」
ノブ「まったく。 待てなかったのはお前の方だろ..」
ノブ(あと1日違えば『明日死ぬ』なんて言わずに済んだのに)
ノブ(いや、待てなかったのは、オレの方かもしれないか)
ノブ「とにかく今は『その日』の前日なんだ」
ノブ「最期にお前に会えたということは」
ノブ「そういうことだろ」
アキラ「お、俺が..」
ノブ「なぁ、アキラ..」
アキラ「な、なんだよ」
ノブ「お前は強いんだ」
ノブ「自信をもて」
ノブ「そうすればもっと強くなれる」
ノブ「全国だって世界だって」
ノブ「お前はどこへでも行けるさ」
アキラ「い、行けねーよ!」
アキラ「ノブがいないと」
アキラ「俺はどこにも..」
ノブ「最期だから言うけどよ!!」
ノブ「オレはアキラのそういう所が大嫌いだ!!!」
アキラ「の、ノブ..」
ノブ「強くなるまで二度とツラ見せんな!!!!」
ノブ「もう帰れっ!!!」
アキラ「ちょ、ちょっと待て..」
ノブ「いいから早く出てけっ!!!」
アキラ「わ、わかったよ..」
ノブ(これでいい)
ノブ(これがオレたちだ)

〇黒
  あの映画は
  世界が滅亡する前日に..

〇荒廃した市街地
天使「このままでは..」
天使「明日にでも世界は滅亡してしまう」
天使「これからどうすれば..」
天使「あ、あれは!」

〇荒廃した市街地
天使「ヒーローが!」
天使「神は我々を見捨てはしなかった..!」

〇黒
  ヒーローが現れて
  世界は救われた。
  結局、世界は滅亡しなかったんだ..

〇テニス部の部室
アキラ(今日も遅くなっちまったな)
アキラ(俺が最後か..)
  俺の世界にヒーローは現れなかった。
  だから次の日..
  ノブは救われなかった。
  ノブのいた俺の世界は滅亡しても
  また新たな形で、俺の世界は続いていく。
アキラ「よしっ、早く着替えて帰ろう」
  まだノブに顔向けはできない。
アキラ「明日も朝練だな!」
  俺はまだまだ弱いから。
アキラ「朝練のメニューも増やして..」
アキラ「走り込みもして..」
  いつかノブの墓参りへ行けたら
  俺が..の後を今からでも言おう。
アキラ「早く強くならねーとな..!」
  明日世界が滅亡するとしたら
  俺が..
  お前のヒーローになってやる。
  だいぶ遅くなっちまったけどな、とつけ加えて。

〇黒
  END

コメント

  • アキラはノブの死によってより強くなっていくのだと思います。きっとここに書かれていない二人の長い深い友情があってのことだと。辛い時期を乗り越え、ノブに早く勝利の報告ができるといいですね。

  • 切ないですが、希望の持てるお話でした。
    残された時間を滅亡にたとえて、ダブルスはもう出来ないことを考え、他の人とがんばってもらえるように…と考えた彼は強い人です。
    残された彼はがんばらなくては。

  • 結局ノブは助からなかったんですね。
    助かってまたダブルス組んでほしいなぁと思ってしまいました。
    しかし…強いですね。
    お互い相方は強いと思っていても、自分の強さには気付かないものなんですね。

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