エピソード2(脚本)
〇特別教室
透真「くくくく。我が邪眼の能力をもって挑めば、この程度の結果は当然だ」
華憐「ふむ。透真よ。なかなかやるではないか。偉い偉い」
透真「えへへへ。そう?でも、華憐が勉強見てくれたおかげだよ。テストで80点なんて初めてだ!」
華憐「いつもは赤点ギリギリじゃったからな」
華憐「とはいえ、これは透真の努力の結果じゃよ。胸を張って誇るがよい」
透真「うん!ありがと!」
華憐「それにしても、透真は、ついに邪眼までも発現してしまったか。増々、闇の力が高まってしまうな」
透真「うむ!今は強大な意思の力で抑えこんでいるが、気を抜くとこの学校を・・・いや、この周辺ごと灰にしてしまう」
華憐「それはマズイな・・・ 。早急に何とかせねば。透真よ、ちょっとこっちに来るのじゃ」
透真「なに?」
華憐「少し、目を見せてもらうぞ。・・・ 邪眼に目覚めたのはどちらの目じゃ?」
透真「えーっと、左・・・ いや、右目にしておくよ」
華憐「右目か・・・ 。なかなか厄介じゃのう」
透真「え?そうなの?」
華憐「ああ。左目であれば、純粋に力を高めるという作用になるのじゃが・・・」
華憐「右目となると様々な能力に目覚める可能性が高いんじゃよ」
透真「へー。そうなんだ」
華憐「あとは何段階、覚醒しているかじゃが ・・・ 。ふむふむ」
透真「な、なんか、ジッと見つめられるのって照れるね」
華憐「阿呆。この地域の安全がかかっておるのだぞ。そんなことを言ってる場合ではあるまい」
透真「う、うん・・・ そうだね」
華憐「うむ・・・ 。今はまだ完全に休止状態のようじゃな。わずかな力も感じん」
透真「あー、うん。・・・ そうだろうね」
華憐「難しいな。現段階では、どのような作用を持つ目なのかがわからん。対抗策を講じるのが難しそうじゃな」
透真「あ、あんまり、無理しなくていいからね」
華憐「そうはいかんじゃろ。何しろ、透真の命もかかってるのじゃからな」
華憐「力が暴走して、宿主自体も消滅させる、なんてことになれば洒落にもならん」
透真「いや、それは・・・ 大丈夫だと思うけど・・・」
華憐「透真の欠点は自分の力を過信し過ぎるところじゃ。一瞬の油断で取り返しのつかないことになることもあるんじゃぞ」
透真「・・・ ごめん」
華憐「まあ、よい。儂が、明日までには何とかしよう。それまでは耐えてくれ」
透真「うん。分かった」
〇特別教室
次の日。
透真「ふはははは。今日も、世界侵略の大きな一歩を踏み出すぞ!」
華憐「おお、来たか、透真。ほれ」
華憐が透真に布を放る。
透真「え?なに?・・・ あ、眼帯だ!格好いい!」
華憐「眼帯の裏側に特殊な魔術式を組み込んである。これがあれば、そうそう邪眼が暴走することもあるまい」
透真「へー!ありがとう、華憐!」
華憐「気にするな。当然のことをしたまでじゃよ」
透真「ねえ、付けてみていい?」
華憐「ああ」
透真「よっと・・・」
透真が眼帯を装着する。
透真「どう?似合ってる?」
華憐「うむ。なかなか格好いいぞ」
透真「えへへ。照れるなぁ」
華憐「それでは、使い方を教えるぞ。よく聞くのじゃ」
透真「使い方?」
華憐「そうじゃ。眼帯に仕込んである、魔術式じゃが、それは邪眼が暴走しそうなときにのみ、発動させるんじゃぞ」
透真「眼が暴走しそうなとき・・・」
華憐「その邪眼の能力は未知数じゃ。何が起こるかわからん」
華憐「じゃから、少しでも危険を感じたら、魔術式を発動させるんじゃ」
透真「発動させたら、どうなるの?」
華憐「透真以外の世界の時間を凍結させる。もちろん、邪眼の力さえもな」
華憐「その間に透真は邪眼を抑え込む力を貯め込むのじゃ」
透真「ふーん。・・・え?ちょっと、待って。それって、時間を止められるってこと?」
華憐「そうじゃが?」
透真「凄い!それって、最強の能力だよ!ねえ、どうやって使うの?」
華憐「咄嗟に使えるように、解放方法は簡単にしておいた」
華憐「眼帯に触れて、強く念じるのじゃ。止まれ、とな」
透真「それだけなんだ?」
華憐「言っておくが、かなり強力で危険な術式じゃから、無暗に・・・」
透真「止まれ!」
〇特別教室
音がピタリと止み、時間が止まる。
透真「あれ?凄く静かになった」
透真「華憐?・・・ すごい!ホントに止まってる!」
透真「ふははははは!我は最強の能力を手に入れたぞ!時間を止める!」
透真「我が能力に相応しい!そうだろう!?華憐よ!」
透真「あ、止まってるから、返事できないのか。・・・どうやったら元に戻るんだろ?」
透真「眼帯に触って・・・ 戻れ・・・とか?」
〇特別教室
再び時が動き出す。
華憐「使うでないぞ」
透真「あ、戻った」
華憐「ん?」
透真「華憐、ありがと!最高のプレゼントだよ」
華憐「う、うむ・・・。喜んでくれてなによりじゃ」
〇学校の廊下
透真「うわー、凄いな。本当に時間が止まるなんて。何に使おうかなー。・・・ うーん。ホントに何に使おう・・・」
〇教室
テスト中。カリカリと紙に解答を書き込んでいく音が響いている。
透真(うわー。この問題の解き方、教えてもらったはずなんだけどなー。なんだっけなー。あ、そうだ!)
眼帯に触れる透真。
透真「止まれ!」
〇教室
時間が止まり、音も消えて静まる
透真「よし、時間を止めて、教科書を・・・」
〇特別教室
華憐「これは透真の努力の結果じゃよ。胸を張って誇るがよい」
〇教室
透真「・・・ やっぱり、自力で解こうっと」
〇商店街
透真「時間を止める能力って、バトルものだと最強だけど、日常生活だと使う場面、ないよなー」
グーっとお腹が鳴る。
透真「お腹減ったなぁ。でもお金無いし。あ、そうだ。時間を止めれば、盗み放題・・・」
透真「って、そんなことをするために用意してくれたわけじゃないんだから」
透真「そんなことしたら、華憐に悪いもんね」
〇特別教室
透真「お疲れ様・・・」
華憐「おお、来たか、透真よ。・・・ ん?どうした?元気がないようじゃが」
透真「眼帯、返すよ」
華憐「なぜじゃ?」
透真「これを持ってたら、僕、ダメな人間になっちゃいそうだからさ」
華憐「じゃが、邪眼はどうするんじゃ?」
透真「ふははははは!この透真様を舐めるなよ!」
透真「そんなものがなくとも、邪眼の力ごとき制御してみせるわ!」
華憐「そうか・・・ 。うむ。そうじゃな。透真の力を信じよう」
華憐「・・・ 余計なことをしてしまって、済まなかったな」
透真「ううん。僕のために凄い眼帯作ってくれて、嬉しかったよ。ありがとう」
華憐「ふむ。まあ、透真とは一蓮托生じゃ。当然のことをしたまでじゃよ」
華憐「・・・ じゃが、眼帯を受け取らないんじゃから、力の暴走は許さぬぞ」
透真「うん!任せておいて!」
華憐「む、良い返事じゃ。最近は自信がついてきたようじゃの」
透真「えへへへ。華憐のおかげだよ。これからもよろしくね」
華憐「ああ。こちらこそ、な」
終わり。
華憐ちゃんの正体がわかると、このすれ違う会話が面白くて仕方ないです。透真くんの人柄に好意を持てるラストにニッコリしました!