14話「勝手に信じろ」(脚本)
〇道場
石白 星華「・・・」
アレックス・ワトソン「こんな時間まで自主練か」
石白 星華「アレックス!! どうしたの?」
アレックス・ワトソン「俺も体を動かしたくなってな。 相手してくれないか?」
石白 星華「そういうことならませてよ!」
石白 星華「さあ!やろうか!!」
〇柔道場
ミカ「八万八千ニ十一」
ミカ「八万八千ニ十二」
「先生に礼!」
「ありがとうございました!!」
ミカ(私も終りたいな・・・)
休校中に外出て、遊んでいたバツにと素振りを十万回終わるまで帰さないとのこと。
その上休んだり、喋ると1万プラスという鬼畜ぶり。
久々に豆ができそうだ。
ラン「おつかれ~ミカ!」
ミカ「お疲れ様!」
ラン「ミカって剣の振り方綺麗だよね! 見てるだけで参考になるよ」
不知火 白夜「しゃべる余裕があるみたいだから1万プラスな」
ミカ「・・・」
ラン「ごめん!」
ミカ「気にしないで」
小声ならばれないだろう。
不知火 白夜「1万プラス」
ラン「・・・外で待ってるよ」
〇更衣室
女子用の更衣室で道着を脱いだ。
道着は汗が染み込み固くなっており、いつも以上に汗を流したなと実感する。
下着姿で更衣室の鏡の前に立つ
鏡には、横腹の赤い痣が目立って映る自身の姿があった。
「痛いか?」
石白 星華「何やってるの!?ここ更衣室だよ!」
とくに興奮しているわけでもなく、いつもの冷静沈着のいつもと変わらない仏頂面。
下着の女とひとつ屋根の下、二人きり、そんな状態で何も感じないのはアレックスらしい。
アレックス・ワトソン「質問にこたえろ。痛いのか?」
石白 星華「そりゃ痛いよ」
アレックス・ワトソン「何で俺に隠してた?」
石白 星華「言ったら治してくれたの?」
アレックス・ワトソン「そんな話じゃねえ。さっき手合わせした時、お前はその傷をかばう動きを何度も見せた」
石白 星華(バレてたか・・・)
アレックス・ワトソン「もし、俺ら二人かがかりで苦戦する敵と戦ってお前がその傷をかばって死んだら俺はどうなる?」
石白 星華「それは──」
アレックス・ワトソン「二人揃って死んじまうだろ?」
石白 星華「・・・・・・」
アレックス・ワトソン「次からお前が怪我してる前提で戦闘する。異論はないな?」
石白 星華「・・・了解」
怪我を隠していたのは無意識に周りを疑っているせいだ。
小さい頃からそうやって育てられた身で、敵だった国で働くとなればなおさらそうなる。
石白 星華「ごめん・・・」
〇建物の裏手
「着替え見て悪かったな」
石白 星華「アレックス!待ってたの?」
アレックス・ワトソン「ああ。動いたら腹が減ってな。晩飯おごるから付き合ってくれないか?」
石白 星華「いいよ!私もあなたと話したかったから」
軽く走ってアレックスの隣に並んだところで歩調をあわせて歩き始める。
アレックス・ワトソン「さっきの話だが」
石白 星華「命に関わる仕事で健康状態を報告しないのは論外だ。 ごめん。次から気を付けるよ」
アレックス・ワトソン「過去に何があったかは聞く気はない。ただこれだけは言っておく。俺はお前を勝手に信じる。お前はお前で勝手にしろ」
「勝手にしろ。」その言葉は何度も聞いたことがある言葉だ。
でも、今までとは違う温もりをかんしじた。
「勝手にしろ。」いい加減のような言葉だが、こちらの事を考えた彼なりの優しさなのだろ。
石白 星華「わかった!じゃあ、勝手にさせてもらよ!」
きっと彼となら私は──