閉じ込めたのは私ですが解除魔法を忘れてしまいました。(脚本)
〇神殿の門
リリィ「イフタフ・ヤー・シムシム!」
・・・
重そうな扉はピクリとも動かない。
リリィ「あっれー。おっかしいなあ?」
マリア「おかしいなぁ? じゃないわよ!」
マリア「いい加減にしなさい!」
マリア「いつまでこんなとこに居させるつもりなのよ!」
大きな声を上げているのはこの国の王女、マリア。
二人はシードフラワー城の地下の一室に訳あって閉じ込められていた。
リリィ「もう そんなカリカリしないで下さいマリア様」
リリィ「あんまり怒るとブサイクになるって噂ですよ?」
マリア「だ、誰のせいでこんな状況になってると思ってるの!?」
リリィ「誰って、マリア様がイタズラするから閉じ込められたのでしょうに」
マリア「そ、それはそうだけど」
マリア「問題はその後でしょう!?」
〇洋館の玄関ホール
2日前─
城内でイタズラを働いたマリアは、王様の命によって反省のため閉じ込められた。
しかも、普通に閉じ込めては鍵でも盗ませてすぐに出てきそうだからと
魔法で鍵をかけた。
その魔法をかける役に選ばれたのが─
マリアと同い年ながら城の『専属魔導師』であるリリィだ。
〇神殿の門
閉じ込める時にマリアが大暴れしたから
リリィも一緒に入った状態で魔法で鍵をかけ
今2人で仲良く閉じ込められているのだ。
そしてマリアがプンプンと怒っている理由は──
マリア「反省したからもう出て良いって、お父様が言ってたじゃない!」
リリィ「そ、それは〜その・・」
そう。
昨日の夜、王様からこの部屋から出してやる様にとの連絡は既に来たのだ。
しかし──
リリィがかけた魔法の解除法を忘れてしまって出られなくなっているのだ!!
そりゃ怒るのも無理はない。
マリア「はあ」
マリアは大きなため息をついた。
〇神殿の門
マリア「もう。どうすればいいのよ・・・」
リリィ「ど〜しよ〜もないって〜」
リリィ「時間で解けるまで待つしかないよ〜」
マリア「解けるまでってどのくらい・・」
マリア「ってゆうか何急にタメ口になってるのよ!」
リリィ「え〜。いいじゃん」
リリィ「一晩一緒に過ごした仲じゃない」
マリア「あなたのせいでね!」
リリィ「だってもう思い出せる気がしないよ〜」
マリア「全くもう、今夜はクリスマスだっていうのに・・」
リリィ「クリ・・スマス」
マリア「そうよ? クリスマスよ!」
リリィ「クリマスチキンもあるしクリスマスケーキだって!」
マリア「ツリーの飾り付けもしようと思ってた!」
マリア「それに今年こそサンタさんから直接プレゼント貰おうってしてたのに!」
マリア「だから良い子にするために大人しく閉じ込められてあげたのよ・・」
マリア「それなのに・・」
リリィ「・・・」
リリィ「そうだ! クリスマスだ!」
マリア「な、何がよ」
リリィ「魔法よ! 解除魔法!」
マリア「え!?」
マリア「もしかして思い出したの!?」
リリィ「そう! 思い出したの!」
マリア「は、早く開けてよ!」
マリア「ここから早く出ましょう!」
リリィ「もう、マリア落ち着いて」
〇神殿の門
リリィ「イフタフ・ヤー・クリスマス!」
・・・
リリィ「イフタフ・ヤー・トナカーイ!」
・・・
リリィ「イフタフ・ヤー・サンタクロース!」
・・・
リリィ「あ〜。やっぱりダメだぁ」
マリアと2人でクリスマスに関する言葉を考えながら魔法を唱えても、扉が動く様子はなかった。
リリィ「はぁあ。もう何も思いつかない〜」
リリィがグダっと床に座り込む
”クシャ”
リリィ「ん? なんだろ」
ポケットからその音の原因を取り出す。
リリィ「あぁ!」
マリア「な、今度は何よ」
リリィ「見て! マリア」
リリィが取り出したのは小さな紙。
リリィ「そう言えばちゃんとメモしといたんだった!」
マリア「ええっ!」
マリア「じゃあ開けれるじゃない! なんだったのよその言葉は!」
クシャっと丸まった紙を見る。
書いてあったのは──
↑↑
こと
──これだけ。
マリア「な、何よ、これ・・?」
リリィ「さあ?」
マリア「だから、さあ?じゃないのよ・・」
マリア「あなたが書いたんでしょ?」
リリィ「なんか、最近謎解き?にハマってて、それで書いたのよね」
リリィ「でもね・・・」
リリィ「答え忘れちゃったから、マリア考えてくれない?」
マリア「・・・」
マリア「何言ったってしょうがない気がするわ。 ささっと考えて出ましょう」
リリィ「うんっ」
マリア「まあ私、こういうの得意だから」
マリア「”こと”に矢印で上マークがついてるんでしょ?」
マリア「きっと五十音で考えればいいだけよ」
リリィ「五十音?」
マリア「そうよ」
〇神殿の門
マリア「”こと”の上だから”けて”ね」
マリア「答えは”けて”だわ!」
リリィ「・・・」
リリィ「クリスマスとの関係は?」
マリア「・・・」
リリィ「それに”けて”ってな・・」
マリア「あー、もう分かったわ。もうちょっと考えるわよ!」
マリア「きっと考え方はあってるはずなのよ・・」
マリア「”こと”の上なら”けて”でしょ? さらにその上だと・・・」
マリア「はっ! 分かったわ!」
リリィ「え! なになに!?」
マリア「やっぱり”けて”なのよ」
リリィ「え、でも・・」
マリア「”けて”は”こと”の上にあるけど、それと同時に何かの下でもあるんだわ!」
リリィ「何かの下?」
マリア「そうよ。 五十音で”けて”の上にあるのは何?」
リリィ「ええっ。えっと、くとつ?」
マリア「そう、つまり”こと”の上は”くつ”の下のよ!」
リリィ「くつの下・・・」
リリィ「ああ!」
リリィ「そうだ! くつ下だ!」
リリィ「すごいわマリア! 天才じゃないかしら!」
リリィが飛び跳ねながらマリアに抱きついた。
マリア「まあ、そ、それほどでもないわ」
マリア「と、とにかく分かったんだから早く開けなさい」
リリィ「はーい」
リリィ「行くよ〜」
リリィ「イフタフ・ヤー・クツシータ!」
ゴゴゴゴ!
重苦しい音を立て、扉はゆっくりと開いた。
マリア「やったわ!」
リリィ「やったやった!」
2人で手を取って喜び合う。
リリィ「はぁ〜良かった〜出れて」
リリィ「何だかんだ仲良くなれて楽しい時間だったじゃない?」
マリア「まぁ、そうね」
マリア「お父様に報告しなきゃいけないあなたの失敗は沢山あるけれどね」
リリィ「え〜! そんな〜マリア〜」
マリア「まあ今日はクリスマスに免じて許してあげるわ」
謎解きが楽しかったです!
私はわからなかったんですが、お姫様すごいですね。
それと、そんな謎を考えた魔術師さんもすごいと思うんですが…そもそも呪文を忘れてるあたりが!笑
謎解きが小説の中に入っていたので、ふたりと一緒になって答えを考えるのが楽しかったです。こういう遊び心のある小説っていいですね。
長く一緒にいるとお友達になったとリリィは思っているところが図々しけど笑った。リリィは案外ズボラでだらしなくていい加減な性格なのかなと思いました。