エピソード1(脚本)
〇美術室
私は仙台市内にある高校に通うごく普通の高校生、日向愛子。
今日も授業を終えると、美術室に向かった。
日向 愛子「先輩の絵、いつ見ても素敵ですね」
高校時代、美術部に所属していた私は放課後デッサンや作品制作に取り組んでいた。
その横ではいつも1学年上の青葉先輩が絵を描いていた。
〇美術室
青葉 都「ありがとう。そう言って褒められると照れちゃうな」
先輩の描く絵は花や植物、そして新緑の木々が生い茂る風景が多かった。
絵の前に立ってみると、まるでその場に居る様な錯覚になる。
それくらい先輩の絵はリアルで生き生きとしていた。
私は先輩の絵の大ファンだった。
〇美術室
日向 愛子「先輩、花とか緑の多い場所をよく描いてますけど元々お好きなんですか?」
何気なく私は尋ねた。
青葉 都「そうね。あと、仙台って「杜の都」って呼ばれるくらい新緑が多いじゃない? そのせいか自然と目に入ってきて描きやすいのかも」
青葉 都「そのせいでグリーン系の画材の消費が凄くていつもその色を買い足してるよ。 バイト代、画材で消えちゃうな」
先輩は苦笑いしながら言った。
日向 愛子「そうだったんですね! 私、そんなに使ってないんで良ければ先輩使って下さいよ!」
そう言って私はホルベイン透明水彩絵の具の箱の蓋を開けた。
オリーブグリーン、パーマネントグリーン、ビリジャンヒュ―といった様々な種類の緑の色の絵の具を掴み取り、先輩の手に渡す。
青葉 都「えぇっ!?いいよ、そんな。 日向が使いなよ」
日向 愛子「いいんです! 私、先輩の絵もっと見たいんですから。 これは「推し活」です! この絵の具で新作どんどん描いて下さいよ!」
青葉 都「お、推し活・・・?」
困惑した表情で先輩は私を見つめる。
そう、私にとって先輩の絵、それを描く先輩は、尊敬し推している「神」の様な存在なのだ。
青葉 都「そこまで言うなら・・・有難く貰うね。 今度お礼に一枚描くよ!」
日向 愛子「やったぁ! 青葉先輩、いや、青葉先生の新作、楽しみにしてます!」
青葉 都「おおげさだなぁ・・・」
そんな青春時代を過ごし、月日が過ぎていった。
青葉先輩は県外の美術大学の受験に見事合格したことを知った。
〇美術室
日向 愛子「先輩、美大合格おめでとうございます!」
青葉 都「有難う。 予備校で必死にデッサンの勉強した甲斐があったよ!」
受験シーズン時の先輩はバイトと予備校を行き来し、部活でも必死にデッサンをしていたのをずっと側で見ていた。
だから、合格を知った時は自分のことの様に嬉しかった。
日向 愛子「お祝いにこれからケーキ食べに行きませんか? 勿論私がご馳走します!」
青葉 都「やった!何食べよっかなぁ♪」
そう言って私達は美術室を後にし、カフェへ向かった。
〇カフェのレジ
先輩はカフェで一番人気のフルーツロールケーキを嬉しそうに頬張った。
青葉 都「美味しい~♪ 久々に食べるなぁ、このケーキ」
日向 愛子「美味しいですよね!フルーツの酸味とロールケーキの甘味のバランスが良くて」
青葉 都「卒業したらここでしばらく食べられなくなるし、じっくり味わうね」
そうだ・・・。
先輩は卒業したら仙台から出て行くんだ。
私はそれを実感し少し切なくなった。
青葉 都「そういえば、日向は受験どうするの?」
日向 愛子「えっ!えっと・・・私・・・これから考えようと思ってて・・・」
本当は先輩と同じ大学を受験するつもりでいた。
けど、私の力は先輩に及ばないし、という気恥ずかしさもあった。
青葉 都「何かあればいつでも相談してね。 一応、私が行っていた予備校のパンフレット持って来たんだ」
そう言って、最新のパンフレットを渡してくれた。
合格の報告をしに行った時に取っておいてくれたのかな。
日向 愛子「有難うございます!」
その日は部活のこと、今後のこと、美術のこと。
色んな話をして盛り上がり、ケーキを存分に楽しんで解散した。
私も美術部だったので、絵具の名前とか部活の雰囲気とか懐かしく感じながら読みました。仙台という場所にも縁がありまして、緑の多い魅力的な街並みも思い出されました。「色を喪う」というタイトルに込められた意味を早く知りたいですね。
彼女達の年齢で、しかも1歳の年齢さでこうしてリスペクトが生まれるところが読んでいてとても清々しくなりました。タイトルの意味が読み続けながら分かりたいようなそうでないような気持ちです。
続きがすごく気になる物語です☺️
私はこんなに仲良くしたり相談したりできる先輩は居なかったのでうらやましいです😌
絵の具を先輩にあげていたり、本当に青葉先輩へのリスペクトが強いんだなと思いました(^^)