乃子さんに推されたい

中村朔

第7話 たくさんの推しをありがとう(脚本)

乃子さんに推されたい

中村朔

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〇テレビスタジオ
司会「みなさんこんばんは、『怪奇大発見』の時間がやってまいりました」
アシスタント「本日はスタジオより生放送でお届けしています!」
乃子「お客さんがこんなに・・・私、ここで喋るんですか・・・」
霊司「視聴者はこの何万倍もいます。 喋る内容は決めました?」
乃子「まだはっきりとは・・・」
霊司「目的は推しを増やすことです。 みんなの記憶に残りそうな、推してもらえそうなことを喋ってください」
霊司「私を信じると幸せになるとか、信じないと呪ってやるとか・・・」
乃子「は、はい」
霊司「乃子さんの推しはもうほとんどありません」
霊司「推しを得られなければ放送中に消滅するかも・・・それを忘れないでください」
乃子「はい・・・あの、紫怨さんとPさんは?」
霊司「Pさんはわかりません。 紫怨さんは・・・パニックになるといけないので、やっぱり伝えておきます」
霊司「紫怨さんは今、爽介さんを呼びに行っています」
乃子「えっ? ええっ!」
霊司「乃子さんが全力を出せるようにと」
乃子「そ、そんなこと急に言われても・・・」
紫怨「・・・霊司」
霊司「紫怨さん! 爽介さんは?」
紫怨「ごめん、連れてこれなかった。 昨日から家に戻らないんだ」
乃子「爽介くんに何かあったんですか!?」
紫怨「わからないけど、仕方ない。 乃子、このままやるよ」
乃子「は、はい・・・爽介くん・・・」
殺芽「あれ〜、顔色悪いけど大丈夫〜?」
紫怨「殺芽!? どうしてここにいるんだい!」
殺芽「この番組に出るって聞いたの。おたくの社長から。あ、今はうちの事務所のマネージャーだっけ」
紫怨「は?」
殺芽「今ごろ爽介くんに憑依して別の場所にいるはずだけどね〜。キャハッ!」
乃子「えっ!? そんな、Pさんが!?」
紫怨「・・・あのポンポコPめ、裏切りやがったね!」
霊司「・・・乃子さん、時間がありません。 始めましょう」
殺芽「ムダだと思うけどやれば? 今のアンタが人に見えるとは思えないけどね〜」
乃子「・・・だ、誰か! 私の声が聞こえませんか!」
霊司「・・・誰も反応しませんね」
紫怨「・・・乃子? 何だか姿が薄くなってきてないかい?」
乃子「えっ?」
霊司「推しが消えかけてる・・・このままじゃ放送中に消滅しちゃいますよ!」
乃子「だ、誰か・・・私の話を聞いてください!」
殺芽「ムダよムダ! あんたは今日で消えるの! キャハハハハッ!」
スタッフA「――いま生放送の収録中ですよ!」
スタッフB「――すぐに出ていってください!」
殺芽「なんか騒がしいわね」
???「うるせえ! 乃子! どこだ!」
乃子「えっ、この声・・・」
爽介「乃子っ!!」
乃子「爽介くん!?」
爽介「悪いな、遅くなっちまったぜ!」
紫怨「え。この喋り方・・・社長?」
乃子「なんで爽介くんの格好してるんですか!?」
殺芽「てか何でここにいるのよ!? あんたの役目はそいつが来れないように遠くに連れて行くことでしょ!」
爽介「気が変わったんだよ!」
紫怨「あんた、裏切ったんじゃなかったのかい」
爽介「さ、最初はそのつもりだったけどよ・・・」
紫怨「ふん、性根までは腐っちゃいなかったみたいだね」
乃子「は、早く爽介くんの体から出てください!!」
爽介「これは本人も了承済みだ。 ここに来たいって言うから、俺が入って案内したんだよ」
乃子「え?」
爽介「ほら、続きは──」
P 「――自分で喋れ!」
爽介「お・・・押井!」
乃子「・・・爽介くん」
爽介「話は聞いた。 押井が生き返れるかもしれないって。 それが俺の応援にかかってるって」
爽介「・・・押井、俺が応援する。 お前のこと、全力で推してやるから」
爽介「・・・最後まで諦めるな!」
乃子「・・・!」
殺芽「え? 何ごと? 何よこの光!」
紫怨「乃子が光ってる!?」
P 「やる気出すぎだろ!」
スタッフA「――おい、あそこ! 幽霊がいるぞ!?」
スタッフB「――カメラを回せ!!」
P 「よくわかんねーけど、行け!」
紫怨「このチャンス逃すんじゃないよ!」
霊司「もう姿がだいぶ薄い・・・時間がないです! 早くアピールを!」
乃子「はははじめまして、ののの乃子と言います・・・」
司会「乃子? もしや最近噂になった幽霊の『乃子』さんですか?」
乃子「はははい」
司会「推された人が幸運になるという、あの推し幽霊の乃子さんですね!?」
P 「あいつ、そんな名前で呼ばれてんのか」
乃子「・・・私、そんなありがたい霊じゃないんです」
乃子「自分に自信がなくて、自分のことが嫌いで、でも変える勇気もなくて・・・普通の人より、全然へなちょこで・・・」
P 「おい、そんな言い方じゃ推しが増えないぞ!」
乃子「・・・だから逆なんです」
司会「逆?」
乃子「私がみんなを推したんじゃなくて、私がみんなに推してもらったんです」
乃子「みんなのがんばる姿を見て・・・私もがんばらなきゃって、逆に勇気をもらったんです」
乃子「だから、私も勇気を出します・・・私、どうしても言いたいことがあって・・・それが言えれば、消えてもいいから」
紫怨「乃子? 何言ってんだい!」
乃子「・・・爽介くん」
爽介「・・・・・・」
乃子「爽介くんはいつも明るくて、見てるだけで太陽に照らされてるみたいで、私もがんばろうって気持ちになるの・・・」
乃子「私も爽介くんみたいに、人を応援できたらなって・・・それが好きの始まりでした」
爽介「・・・押井」

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コメント

  • ハッピーエンド嬉しかったです!!✨☺️
    そうすけくんとのこちゃんが今後だんだんと仲良くなっていくのかなーと考えるとニコニコしちゃいますね✨
    素敵なお話ありがとうございました!!✨☺️

  • 今更ながら最終話まで読み終えました。
    乃子ちゃん生き返って良かった……!
    応援って大事ですね。

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