母子(おやこ)、拾いました!? 〜パパになるための100のミッション〜

KNE

母子(おやこ)、拾いました!? 〜パパになるための100のミッション~(脚本)

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〇大企業のオフィスビル

〇オフィスのフロア
上翔ノボル(さて、帰るか)
同僚「マジ仕事終わんね~。 今日も残業確定だわ」
上翔ノボル(フッ、有能な俺は スマートに定時退社だがな)
同僚「あっ、部長~!」
部長「今日も残業かい? 頑張るねぇ」
上翔ノボル(トロくて時間内に 終わってないだけだろうが)
同僚「ほらオレ、最近結婚したじゃないスか~」
同僚「奥さんのためにも頑張らないと~って 気合マシマシっス!」
部長「やっぱり、結婚すると 責任感が出るよねぇ」
上翔ノボル(全世界の独身者に謝れ。 特に、有能なこの俺に!)
部長「君はいつも頑張ってるから 昇進できるように進言しておくよ」
同僚「えっ、マジすか? あざーす!」
上翔ノボル「ハァ~~~~~!?!?!?」
部長「ん? どうかしたかね、上翔(うえと)君」
上翔ノボル「い、いえ・・・なんでも」
上翔ノボル「お先に失礼します」

〇オフィスビル前の道
上翔ノボル「俺を差し置いて 金パツ無能野郎が昇進だと!?」
上翔ノボル「あんの原始人上司が・・・!」
上翔ノボル「『残業してると偉い』、 『結婚してると責任感がある』とか 何時代の話だよ!」
上翔ノボル「今は令和だぞ!? れ・い・わ!!」
上翔ノボル「・・・ん?」

〇公園のベンチ
???「・・・・・・」

〇オフィスビル前の道
上翔ノボル(こんなひとけのない場所に 女性がひとり?)
上翔ノボル(心配ではある状況だな。 一応、声をかけてみるか)
上翔ノボル(誰かが俺の善行を見ていて 会社に伝えてくれるかもしれない)

〇公園のベンチ
上翔ノボル(ん? この人、何か持って──)
上翔ノボル「拾っ・・・えっ?」
???「あっ」
???「お願いです! 私を拾ってください!!」
上翔ノボル「・・・ハァ?」
優子「私は、優子(ゆうこ)と申します」
優子「夫がギャンブルでつくった借金を 押し付けられた上・・・」
優子「一方的に離婚されてしまったんです」
上翔ノボル「うわぁ・・・クズ――いや、 ひどい人ですね」
優子「借金を返すために家を売るしかなく 今は公園のすみっこで暮らしていて・・・」
優子「両親の反対を押し切って結婚した手前、 頼ることもできなくて困ってるんです」
上翔ノボル(親御さんは元夫のクズっぷりを 見抜いてたんだろうな)
優子「人生を変えてくれる王子様のような方に 出会えないかしらって ここで待っていたら・・・」
優子「ちょうどあなたが通りかかったんです。 これはきっと運命ですよ!」
上翔ノボル「う、運命・・・ですか」
優子「はい! そういうわけで、結婚してください!!」
上翔ノボル(こんな脳内お花畑女に 付き合ってられるか)
上翔ノボル(さっさと帰──・・・ん? 結婚だと?)
上翔ノボル(これは俺にとっても 運命の出会いじゃないか!?)
上翔ノボル(面倒なアレコレを省いて 即、既婚者になれる)
上翔ノボル(昇進への道が開かれるかも!)
優子「・・・いかがでしょう? 私の新しい夫になっていただけませんか」
上翔ノボル「ええ、喜ん──」
???「ちょっと待ったー!!!!」
優子「チカちゃん!?」
上翔ノボル「誰!?」
チカ「娘です!!」
優子「もう、チカちゃん!」
優子「バツイチなだけじゃなく子どもまでいたら 敬遠されちゃうかもしれないし、」
優子「『夫になる』って約束を取りつけるまで 隠れててって言ったじゃない!」
上翔ノボル(・・・ボーっとしてるようで 意外と計算高いんだな)
上翔ノボル(だが、むしろ好都合!)
上翔ノボル(まさか妻だけでなく 子どもまでゲットできるとは)
上翔ノボル(これで部長と 「うちの娘が~」談義ができる!)
上翔ノボル「俺は、お子さんがいても構いませんよ」
「え!?」
上翔ノボル「俺はこの年までずっと一人でしたから、」
上翔ノボル「あなたのような素敵な方と こんなに可愛い子が、」
上翔ノボル「一度に俺の家族になるなんて 夢のようです」
優子「王子様って本当にいたのね・・・!」
チカ「・・・チカは認めない。 この人、怪しい!」
チカ「普通、初対面の人と 結婚しないし!」
チカ「絶対なんか企んでる!」
上翔ノボル(至極真っ当な意見だな)
上翔ノボル(だが俺は出世のためなら もう手段を選ばない!)
上翔ノボル「何も企んでなんかいないよ」
上翔ノボル「俺は優子さんに 運命的なものを感じたんだ」
上翔ノボル「もちろん、チカちゃんにもね」
チカ「・・・あんたの本気、 確かめさせてもらうわ」
上翔ノボル「あんたじゃないよ、上翔ノボル」
優子「ノボルさん・・・ お名前まで素敵!」
上翔ノボル「で、何をしたら信用してくれるのかな?」
チカ「明日までに チカが大好きなアニメの、」
チカ「全部のキャラの名前と プロフィールを覚えてきたら 信じてあげる」
上翔ノボル「・・・難問そうだな。 そのアニメのタイトルは?」
チカ「『プリンプリプリンセス』」
上翔ノボル「わかった、絶対覚えてくるよ」
上翔ノボル「じゃあ明日、この時間に、この場所でね」

〇オフィスビル前の道
上翔ノボル(あんなにヌルい条件だとはな。 フッ・・・所詮は子ども)
上翔ノボル(俺は昇進に向け、全社員の名前、 年齢、家族構成を記憶している)
上翔ノボル(アニメのキャラクターを 覚える程度のこと、造作もない)
上翔ノボル(・・・これで昇進は 確定したも同然だな)

〇空

〇空

〇公園のベンチ
  翌日、同時刻──
チカ「逃げずに来たのね」
上翔ノボル「当たり前だよ」
上翔ノボル「俺は、君たちと家族になりたいからね」
優子「ノボルさん、頑張ってください!」
チカ「・・・じゃあ、始めるよ! ママがスマホで画像を見せるから、」
チカ「キャラの名前とプロフィールを 言うんだからね!」
上翔ノボル(正直・・・予想外だった)
上翔ノボル(『プリンプリプリンセス』の キャラクター数が1万人を超える上、)
上翔ノボル(すべてのキャラクターの名前が、 ほぼ『プ』と『リ』と『ン』の 組み合わせで構成されているとはな)
上翔ノボル(だが、優秀な俺ならやれる!)
チカ「第1問!」
チカ「このキャラは──」
上翔ノボル「プリンセス・プリン! 主人公の、ちょっとドジなプリンセスだ」
チカ「でーすーが」
上翔ノボル(まさかの「ですが問題」!)
チカ「このキャラは誰!?」
上翔ノボル「プ・・・ プリップ・リップ!」
上翔ノボル「プリンセス・プリンの 優しいお姉さんだ!」
チカ「・・・まあ、これくらいは当然よね」
優子「やりましたね、ノボルさん!」
チカ「第2問、このキャラは!?」
上翔ノボル「プリプ・リリン! プリンセス・プリンのライバルだ!」
上翔ノボル「ちなみに、」
上翔ノボル「使い魔のトイプードルの名前は プリプ・プリリン!」
チカ「問題に出てないことまで 答えるなんて・・・」
上翔ノボル「言われたことだけをやってるようじゃ 三流止まりだからね」
優子「カッコイイ・・・」
チカ「こ、こしゃくな~!」
上翔ノボル「それは敵の幹部、 プルップリッパーのセリフだね?」
チカ「ぐぬぬ・・・ ここからはテンポアップするわよ!」
  数時間後──
チカ「最後の問題よ! このキャラは誰!?」
上翔ノボル「っ・・・!」
上翔ノボル(とうとう来たな・・・ このキャラクターが!)
上翔ノボル(冷静になれば、必ず言える。 昇進は目の前だぞ、ノボル!)
上翔ノボル(いざ!)
上翔ノボル「彼は・・・」
上翔ノボル「プリプープ・プリンプル・プリリアント・ ププンプンプン・プリプリ・ププリン・ プリププリリン・プルプリルン・プリリ・」
上翔ノボル「プルプルリップル・リリ・プルン・ ルンルン・プリンプ・プ・リリップ・ プリププリリン・プルップリン3世!」
上翔ノボル「プリプープ・プリンプル・ プリリアント王国の王様であり、 プリンセス・プリンの父親だー!」
チカ「・・・!」
優子「チカちゃん、これでノボルさんを パパだって認めてくれるよね」
チカ「・・・っ!」
優子「チカちゃん!? どこ行くの!?」
上翔ノボル「・・・ここは俺に任せてもらえませんか。 優子さんはここで待っていてください」
優子「は、はい・・・」

〇川沿いの公園
チカ「・・・・・・」
上翔ノボル「俺が気にくわないのは当然だよ」
上翔ノボル「知らない男が いきなり父親になるなんて ありえないもんね」
チカ「・・・それだけが理由じゃない」
チカ「パパは、ママを不幸にした」
チカ「あんたは、ママを幸せにしてくれるの?」
上翔ノボル「・・・・・・」
上翔ノボル「もちろんだよ」
上翔ノボル「君たちと家族になって、俺は出世して、 なに不自由ない暮らしをさせてあげる」
上翔ノボル「君のパパみたいに ギャンブルもしないし、 借金なんて絶対つくらない」
上翔ノボル「・・・優子さんのところへ戻ろう?」
チカ「・・・わかった」

〇公園のベンチ
優子「チカちゃん! おかえりなさい!」
チカ「・・・・・・」
チカ「ねえ、ノボル」
優子「こ、こら! 『ノボルさん』でしょ?」
優子「う、ううん、これからはもう パパ・・・でしょ?」
優子「キャーッ、言っちゃった!」
チカ「チカは、まだノボルのこと認めてないから」
「え!?」
チカ「条件を出したときのこと忘れたの?」
チカ「チカは、ノボルが 『本気かどうか確かめる』って 言っただけ」
優子「確かにそうだったかも・・・」
上翔ノボル(さっきの会話で手懐けられたと 思ったんだが・・・なかなか手強いな)
チカ「でも・・・」
チカ「あと100個のミッションをこなしたら パパとして認めてあげてもいいよ」
優子「100個!?」
上翔ノボル「ははは。 これは一本取られたな」
上翔ノボル「・・・でも、 ずっと公園で暮らすのは 大変だろう?」
上翔ノボル「パパと認めてくれなくてもいいから、 とりあえずウチに来るのはどうかな」
チカ「まぁ・・・行ってあげてもいいけど」
優子「ふふっ。 ノボルさん、お世話になります!」
上翔ノボル「じゃ、行きましょう。 2人もきっと気に入りますよ」
上翔ノボル(『一緒に住んでいる』という 既成事実さえ作ってしまえば・・・)
上翔ノボル(ミッションなんてすぐに忘れて 俺をパパと呼ぶようになるさ)
上翔ノボル(・・・所詮、子どもなんだからな)

〇空
  ノボルは結婚し、出世できるのか
  優子とチカは、幸せになれるのか
  結末は3人だけが知っているのだった──

コメント

  • 「出世して家族を持ちたい」じゃなくて「出世のために家族を持ちたい」という逆転の発想がぶっ飛んでました。名前暗記の難題も一晩でクリアする頭脳がありながらピントがずれちゃってるノボルだけど、そこが愛すべきキャラですね。

  • 優子さんとチカちゃんの温度差ww いや、チカちゃんの言動はマトモなので、優子さんがお花畑すぎるのでしょうか!? この家族未満の関係の3人が家族となる日が来るのか、楽しみですね。

  • 良い意味で、お互いが必要としている事柄があるので、全然アリだと思います。形から入って、あとから諸々のことがついてくるなんてことは世の中、たくさんありますしね。3人が好転していく展開に期待しています。

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