脇役派遣事務所 アンダー

紅石

霧ノ狭間ノ獣(脚本)

脇役派遣事務所 アンダー

紅石

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〇教室
五十嵐 翼(はぁ・・・今朝はひどい目にあった なんだったんだ?あの女)
男子生徒「なぁ、今日転校生が来るってさ!」
女子生徒「聞いた聞いた。どんな子だろーね」
教師「はい、静かにー 今日は転校生を紹介するぞ」
教師「じゃあ、入って」
女子生徒「わっ!超美人っ!」
五十嵐 翼「げっ!お、お前は!」
姫原 ありす「あら、今朝の」
姫原 ありす「やっぱり、私たち巡り合う運命なのね」
姫原 ありす「ね。私のお婿さん候補さん」
「お婿さんー!?」
五十嵐 翼「ふ」
五十嵐 翼「ふざけるなっー!!」

〇シックなリビング
ハナ「ふわぁ・・・ ママ、おはよう」
コノハ「あら、おはようハナちゃん 朝ごはんできてるわよ」
ハナ「うん、いただきます」
コノハ「パパもショウくんもお寝坊さんかしら」
ハナ「おじいちゃんは?」
コノハ「お庭で体操してるわ 今朝もわたしより早起きだったのよ」
ハナ「相変わらずだね」
コノハ「あら?」
ショウ「おはよー 父さん起こすのに手間取っちゃって」
ヨタカ「・・・」
コノハ「まぁ、パパを起こしてくれてたの ありがとう、ショウくん」
コノハ「おはよう、ショウくん。パパ」
ヨタカ「・・・ぉはょぅ」
コノハ「朝ご飯できてるから、座って コーヒーと紅茶は──」
ショウ「ん、今の音は玄関?」
「え!?ここ、どこだ!?」
ヨタカ「・・・仕事、か」
水宮 和真「あ、あの!」
水宮 和真「その、実は・・・」
水宮 和真「俺たちを、 俺たちの物語を助けてください!」

〇シックなリビング
水宮 和真「はっ!」
水宮 和真「い、いきなりすみません!」
水宮 和真「俺たちの物語の危機というか とにかく大変な状況で」
水宮 和真「助けてくれる人たちがいると噂を聞いて 探しにきたんです」
水宮 和真「それで、てっきりみなさんが」
水宮 和真「いやでも確証とかはぜんぜんなくて」
???「はははっ! まぁ落ち着きたまえ若人!」
カメ「きみが焦っている理由は分かる」
カメ「物語の脇役が足りない、だろう?」
水宮 和真「じゃあ、みなさんが・・・!」
カメ「そう、我々が脇役派遣事務所」
カメ「『アンダー』だ」

〇シックなリビング
コノハ「はい、どうぞ」
水宮 和真「ありがとうございます」
カメ「それじゃあ、改めてお前さんのことを 聞かせてもらおうか」
水宮 和真「はい」
水宮 和真「俺は『霧ノ狭間ノ獣』という漫画の主人公 水宮和真(みずみやかずま)と言います」
水宮 和真「霧の中から現れる怪物と戦う少年漫画で、 明日発売の雑誌に第一話が掲載されるん ですが」
水宮 和真「脇役が逃げ出してしまって・・・」
水宮 和真「このままではコマに空白ができて、 漫画がおかしなことになってしまいます」
水宮 和真「それで」
カメ「逃げた脇役はどんな役だ?」
水宮 和真「え?えっと 俺と同じ高校に通う男子生徒です」
カメ「なら、ショウだな」
ショウ「おっけー。任せて、じいちゃん」
カメ「こら、仕事の時は社長と呼ばんか」
ショウ「はーい」
水宮 和真「あの、もしかして」
カメ「ああ。その脇役、アンダーが引き受けよう」
水宮 和真「あ、ありがとうございます!!」

〇シックなリビング
カメ「では、改めて」
カメ「俺は隼雲亀(はやくもかめ) ここの社長であり、隼雲家の父で、祖父だ」
カメ「こっちは孫のショウ」
ショウ「どもー!」
水宮 和真「よろしくお願いします」
カメ「俺たちは様々な創作物で 脇役代理をしている」
カメ「仕事ぶりに関しては そうだな、その雑誌を見てくれ」
カメ「新連載の・・・なんだったか」
ハナ「『おむこさんこうほ!』 巻頭カラーの漫画ね」
水宮 和真「えっと、これか」
水宮 和真「最高のお婿さんを探すお嬢様と 巻き込まれた男子生徒のラブコメ ・・・あ!」
水宮 和真「このクラスメイト」
ハナ「あたし」
ハナ「あなたと同じように、第一話の生徒が 足りなくなったからって」
ハナ「脇役なんて嫌だ、って逃げ出す 責任感のない人はどこにでもいるのよ」
カメ「これで分かってもらえたかな?」
カメ「あとは、そちらさんに台本と衣装を 用意してもらいたいが」
水宮 和真「台本なら」
水宮 和真「というか、ネームですけど」
ショウ「だいじょぶ、だいじょぶ えーと、この赤丸ついてる男子生徒?」
水宮 和真「はい」
カメ「では、明日にはショウをそっちに送るから 今日は一旦帰りなさい」
カメ「ヨタカ、コノハ、見送りを」

〇シックな玄関
水宮 和真「あの、さっきは無我夢中だったので どうやってここに辿り着いたのかも、 帰り道も分からないんですが」
コノハ「大丈夫よ。この玄関から出れば、 あなたの漫画に繋がってるわ」
コノハ「この家は次元の狭間に建っているの すべての二次元に繋がっているし、 すべての二次元に存在していない」
水宮 和真「は、はぁ・・・ よく分からないけど、すごいですね」
コノハ「うふふ、そうでしょう」
コノハ「和真くん。不安でしょうけど、 わたしたちは脇役のプロ 絶対にあなたの力になるわ」
水宮 和真「はい!よろしくお願いします コノハさん、ヨタカさん」
ヨタカ「・・・あぁ」
水宮 和真「あっ、すみません 馴れ馴れしかったですか?」
コノハ「気にしないで。ヨタカさんは口下手なの」
ヨタカ「・・・早く帰れ」
コノハ「今のは 『明日は大変だから帰って休みなさい』 の意味よ」
水宮 和真「は、はい それでは失礼します」

〇シックなリビング
ショウ(オレの台詞は2つ)
  化け物が現れて、
  水宮たちは廃墟へと逃げ込む
ショウ「何だよあの化け物は!?」
  辺りが騒がしくなると同時に
  廃墟へと飛び込んできた男は、
  水宮たちの目の前で化け物に喰われる
ショウ「う、あ、わぁああッ! 人が、死んで・・・!」
ショウ「・・・よし」
ショウ「庭で体動かしてくるか」
ハナ「あ、もうお兄ちゃんってば 仕事のネームを放置なんて」
ショウ「ネーム出しっぱなしにするなって じいちゃんに怒られたー」
ハナ「はぁ・・・明日はしっかりしてよね」

〇廃墟の倉庫
水宮 和真「なんとか逃げてこられたな」
男子生徒「何だよあの化け物は!?」
男子生徒「ね、ねぇ、ぼくら助かるよね・・・?」
水宮 和真「霧も、化け物も、一体何なんだ・・・」
男子生徒「近くにいる!ぼくら死ぬんだぁ!」

〇廃墟の倉庫
水宮 和真「よし、順調だ ここから2ページは外の話で──」
風折 鈴「和真!」
水宮 和真「鈴!?君の出番は最後だろ?」
風折 鈴「いないの!化け物に殺されるモブが!」
水宮 和真「え!?」
水宮 和真「それって、ここで殺される男?」
風折 鈴「うん。どうしよう そのショックで和真の力が目覚めるのに」
水宮 和真「何で・・・」
水宮 和真「どうして、こんな・・・」
ショウ「・・・」
ショウ「鈴さん。それってかなり広まってる?」
風折 鈴「えっ。誰、あなた」
ショウ「ただのモブ で、どうなの?」
風折 鈴「・・・この数ページに登場する人以外は ほとんど知ってるよ 街中もかなりざわついてるし」
ショウ(そこまで大事になってるなら じいちゃんが気づいてるはず)
ショウ「和真さん。これは最終手段だけど、 どうにもならなかったら オレが廃墟から飛び出して殺される」
ショウ「これで話は繋がるはずだ」
風折 鈴「でも、それだとコマ割りや効果音が」
ショウ「だから最終手段」
ショウ「そうさせないために、ウチが動いてる」
ショウ(・・・はず 確証はないけど、余計なことは 言わないほうがいいよな)
ショウ「ほら、ウチは脇役代理のプロだから!」
風折 鈴「そう言われても ねぇ、和真・・・和真?」
水宮 和真「『霧ノ狭間ノ獣』は、もう、無理だ・・・」
水宮 和真「第1話なのにトラブルばかりで、 脇役が2人も逃げ出すなんて」
水宮 和真「この物語は失敗だ」
ショウ「ダメだよ」
ショウ「まだ始まってもない物語に 失敗なんて、言っちゃダメだ」
ショウ「作者と和真さんたちが、何度も何度も 練り直して生まれた物語だろ?」
ショウ「愛着、ない?」
水宮 和真「・・・」
水宮 和真「・・・ある」
ショウ「なら進めようよ! 筆を!ページを!物語を!」
ショウ「だいじょぶ! ヒロインも脇役も、物語の味方だ!」
水宮 和真「ありがとう、ショウさん」
水宮 和真「弱音吐いてごめん 頑張るよ、俺。この物語が好きだから」
水宮 和真「鈴、教えに来てくれてありがとう もうすぐページが捲られるから」
風折 鈴「うん!頑張って、和真!」
水宮 和真(どうなるか分からないけど とにかく今は、第1話を 終わらせることを考えるんだ)
水宮 和真「よし、次のページだ!」

〇廃墟の倉庫
水宮 和真「マズい!」
男性「君たち!早く逃げ──」
男性「ぎゃああああっ!!!」
男子生徒「え・・・あ・・・」
男子生徒「う、あ、わぁああッ! 人が、死んで・・・!」
水宮 和真「・・・なんだよ、これ」
水宮 和真「来るな」
水宮 和真「来るなぁ!!」

〇廃墟の倉庫
  力の目覚めた和真と謎の少女、鈴
  崩れ去った日常は、戻ってこないのか
  ──3月号へ続く

〇廃墟の倉庫
水宮 和真「お二人とも 本当にありがとうございました!」
ショウ「和真さんもお疲れ様!」
水宮 和真「まさかヨタカさんが来てくれるなんて」
ショウ「助かったよ、父さん」
ヨタカ「・・・あぁ」
水宮 和真(相変わらず無口だ さっきの鬼気迫る殺されっぷりが 嘘みたいだなぁ)
ヨタカ「・・・帰るぞ」
水宮 和真「え、もう?」
水宮 和真「まだちゃんとしたお礼もできてないのに」
ショウ「いーのいーの、気にしないで これがオレたちの仕事だから」
水宮 和真「そうですか・・・」
水宮 和真「ショウさん。俺、この物語をたくさんの人 に知ってもらいたいです」
水宮 和真「だから、頑張ります もっともっと面白い漫画にするために」
ショウ「うん!」
ヨタカ「・・・頑張れよ」
水宮 和真「はい!」
水宮 和真「あの、また会えますか?」
ショウ「えー、オレたちの出番なんて ない方がいいんじゃない?」
水宮 和真「あ!」
ショウ「あははっ」
ショウ「そうだなぁ。次に来るときは 人気投票ランクイン!とかがいいな」
ショウ「その時は喜んで来るからさ 呼びに来てよ。また玄関を開けて」

コメント

  • 脇役にスポットを当てるお話斬新で面白いですね!!✨😊
    色んなストーリーの、色んな登場人物たちと出会えそうで、毎回新鮮なお話が楽しめそうと思えました!!✨😊

  • アンダー達こんな頑張っているのにセリフは脇役というかモブだからある意味可哀想ですね。
    いつか脇役とはいえ、重要なポジションの役とかやってもらいたいな。

  • 脇役にスポットを当てるという発想は斬新でいいですし、家族というテーマもあってそれぞれのキャラから色々な話ができそうですね!
    新鮮な作品でした!(⌒▽⌒)

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