読切(脚本)
〇温泉旅館
〇旅館の和室
大河内「さあ滑川くん、遠慮なく飲みたまえよ」
滑川「では、お言葉に甘えて」
大河内「ところで、あの話は予定通りで良いのかな」
滑川「もちろんです。当初の計画通り、明日受け渡しで問題ございません」
大河内「うむ」
滑川「無事取り引きを終えられましたら、次の選挙での組織票の獲得と粉飾決済書類の処理、お約束いたします」
大河内「滑川くん、直接的な表現は避けてくれたまえ。誰が聞いているか分からないじゃないか」
滑川「ここでなら大丈夫ですよ。秘密が漏れることはありません。まあ、そちらの秘書さんが漏らしたりしなければ、ですけど」
大河内「それなら問題はない。うちの秘書は優秀で、口も固い。そうだろ、石川くん」
エム(石川真奈美)「はい。もちろんです」
滑川「冗談ですよ。では、明日のために今日は早めにお開きとしますか」
大河内「そうですな。石川君、車を呼んでくれるか」
エム(石川真奈美)「既に呼んであります。店の裏につけるよう依頼してあります」
大河内「おお、さすがは石川君。やはりうちの秘書は優秀だな」
すっ
エム(石川真奈美)「先生、ちょっと失礼します」
大河内「ん?どうした」
エム(石川真奈美)「襟のところに埃が付いていたので」
大河内「おお、そうか。悪いな」
こうして、大河内、滑川ともに上機嫌のまま会合はお開きとなった
〇作戦会議室
ここは、私たちチームMのアジト
エム(石川真奈美)「と、いうわけで盗聴器もあいつのスーツの襟の裏に無事仕込めたから」
マサキ「さすがだなエム。抜かりない」
マサキ「大河内に疑われてはいないんだな」
エム(石川真奈美)「当たり前でしょ?完全に私のことを信頼してるよ。秘書の仕事では偽名で通してるし、素性がバレることもない」
マサキ「じゃあ、あとは2人を待つだけだな」
ガチャ
マサキ「来たな。ミツキ、ミア」
マサキ「それじゃあ、明日の最終確認をするか」
ミア「ねえ、本当に、あれを実行するの?やっぱり今からでもやめたほうがいいんじゃない?」
ミツキ「は?ミア、今さら何言ってんだよ。もう少しであいつに復讐できるってのに」
ミア「だって・・・もし失敗したら、どんな仕返しをされるか分からないよ?」
エム(石川真奈美)「ミア、大丈夫。失敗なんてしない。そのために今まで慎重に準備してきたじゃない?」
ミア「でも私、やっぱり・・・」
エム(石川真奈美)「今になって日和るぐらいならやめなさい!!」
ミア「うう・・・」
エム(石川真奈美)「ミア、出て行くなら今よ」
ミツキ「お、おいエム。落ち着けよ。ミア、ちょっと不安になっただけだよな。今更抜けるなんてことないよな」
ミア「ごめんなさい・・・私やっぱり・・・やめます」
エム(石川真奈美)「わかったわ。今までありがとう。さあ、これから明日の話をするわ。ミアは帰りなさい」
ミア「・・・」
パタン
ミツキ「チッ、あいつ何考えてんだよ」
マサキ「何かあったのか?」
ミツキ「・・・あいつ、最近彼氏ができたんだ」
マサキ「へえ」
ミツキ「あいつ、自分の過去が相手に知れたらフラれるんじゃないかって言いやがって」
エム(石川真奈美)「ミアは15歳だもの。気持ちはわからないではない」
ミツキ「大河内は俺らの父親の仇なんだ。今更目先の愛だの恋だのにかまけてる場合じゃ無いんだよ」
マサキ「それでも、ミアちゃん自身が決めるべきだろう」
エム(石川真奈美)「どちらにせよ、あの状態で明日動いてもらうわけにはいかない。ちょっとでも綻びがあるとチームが不安定になる」
マサキ「なあ、さっさと明日の打ち合わせに入ろうぜ」
エム(石川真奈美)「そうね」
〇黒
まず私は朝9時に大河内家に行き、車の準備をする
〇車内
大河内は例の金をもって出てくる。私は取引相手との待ち合わせ場所である、グランドオーシャンホテルまで運転をする。
ミツキ「そんな大金、自宅から持ち出すのか?銀行からおろすとかじゃなく?」
エム(石川真奈美)「銀行で出し入れすると履歴が残って足がつくから。大河内は裏の取引で使う金は自宅の倉庫で保管してるの」
〇地下駐車場
エム(石川真奈美)「ホテルの駐車場に車を止め、まずは大河内一人だけで取引が行われる部屋に出向く」
エム(石川真奈美)「尾行されていないか、約束通り相手が一人で来ているかを確認するため。その後私に呼び出しがかかり、金を持ち出す」
マサキ「駐車場で俺はエムから現金を受け取る」
エム(石川真奈美)「私は大河内のところに行き、知らない男にナイフを突きつけられ金を取られた、盗聴されていたのかもしれない、と伝える」
マサキ「本当に大河内のスーツの襟から盗聴器が出てくるんだもんな。痛快だぜ」
ミツキ「監視カメラの死角の位置は確認してあるか」
マサキ「もちろん何度も念入りにチェックしたよ。死角になった位置でやりとりをした後、車に戻り、ミツキに金を渡す」
マサキ「急いで車を駐車場から出した後、車をホテルの正面につける」
ミツキ「俺は金が入ったバッグを持って、ホテルにチェックインする。そのまま宿泊客になりすますと」
マサキ「監視カメラに車のナンバーが映るがレンタカーだし、万が一車を調べられても何も出てこない」
ミツキ「まさか盗まれた金が同じホテルにあるなんて思わないだろうな」
〇ホテルの部屋
エム(石川真奈美)「大河内、慌てふためくでしょうね」
マサキ「金の使い道が人に言えない内容だけに、警察にも言えないしな」
〇作戦会議室
ミツキ「今までの取引の音源はエムが持ってるんだよな」
エム(石川真奈美)「そう。バッグアップも取ってある」
ミツキ「取引は白紙、おまけに金を取られて意気消沈してるところで音源を公開してやろうぜ」
マサキ「エムが、大河内の前から無事姿を消せたらな」
エム(石川真奈美)「次の日にはもう出勤せず行方をくらます予定だよ」
ミツキ「じゃあ、おれは明日サラリーマンに扮するために準備するか。金髪も今日でさよならか」
マサキ「エム、無理するなよ。危ないと思ったら計画は中止するんだぞ」
エム(石川真奈美)「わかった。ありがとう。でもきっと大丈夫。うまくいくよ」
ミツキ「じゃあ、明日。チームMの復讐、明け方から始動開始だ!」
マサキ「Good luck!」
エム(石川真奈美)「幸運を!」
復習のために集まったメンバーで、あれこれと準備してる様子が、すごい緊張感とともに伝わってきます。
上手くいけばいいんですが…。
ドキドキハラハラとしながら読みました。
3人が復讐を計画して、それを決行する前日の緊迫感がよく伝わりました。親の仇を是非とも成功して欲しいのです。頑張れ!上手くいけ!
ここでサクッと終わるスタイルがかっこいいですね。登場人物の造形もタイトで素敵です。ミアちゃんが抜けるときの容赦のなさと、抜けた後の思いやりのあるやりとりがいいなと思いました。3人の役割がしっかり組まれていて痛快です。