私立桜田高校演劇部 ~春は舞台で青く色づく~

YO-SUKE

第二十話「ショーマストゴーオン」(脚本)

私立桜田高校演劇部 ~春は舞台で青く色づく~

YO-SUKE

今すぐ読む

私立桜田高校演劇部 ~春は舞台で青く色づく~
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇広い更衣室
小山内陽菜「ダメ・・・やっぱり沙也加、どこにもいない」
摂津亜衣「もうすぐリハなのに」
平井智治「どうしましょう・・・」
海東三鈴「沙也加なしでやるしかないでしょ。 智治、リハは代わりに入って」
平井智治「ぼ、僕ですか!?」
小山内陽菜「ねえ、三鈴。もし本番も沙也加が来なかったらどうするの?」
海東三鈴「大丈夫。沙也加は絶対、戻ってくる!」

〇花模様
  第二十話「ショーマストゴーオン」

〇船着き場
青野沙也加「私の人生全てを賭けて決めたこと。 最初にお母さんに聞いて欲しい」
青野寿子「人生全てなんて、ずいぶん大げさね」
青野沙也加「私・・・女優になる。 演劇部も辞めるつもりはない」
青野寿子「・・・それは、本気で言ってるのね?」
青野沙也加「うん。でも私は、絶対お母さんみたいな女優にはならない。家族も友達も犠牲にはしない」
青野寿子「それは過酷なことなのよ?」
青野沙也加「わかってる。大丈夫」
青野寿子「どこからそんな自信が出て来るわけ? 根拠も何もないじゃない」
青野沙也加「仲間がいる」
青野寿子「・・・・・・」
青野沙也加「弱気なときは叱ってくれたり、くじけそうなときには手を差し伸べてくれたりする・・・そんな大切な仲間が」
青野寿子「あなたのためを思って言ってるのよ。 あなたに傷ついて欲しくないから」
青野沙也加「傷つくことは怖くない。 それより後悔して生きるほうが嫌だ」
青野寿子「覚悟があるのね?」
青野沙也加「うん・・・自分の人生は自分で決めたい」
青野寿子「なら・・・好きにしなさい」
青野沙也加「・・・・・・」
青野寿子「あなたの人生なんだから」
青野沙也加「・・・うん。私、これから本番だから、行くね」
  立ち去った沙也加と入れ替わるようにして、雄一郎がやってきた。
青野雄一郎「あれ・・・沙也加、もう行ったのか?」
青野寿子「私の演技もまだまだね」
青野雄一郎「なんの話だ?」
青野寿子「いい母親の振りをして、夢を諦めさせようと思ったのに」
青野雄一郎「そんなこと言って・・・本当はあの子の意思を確かめる、最終テストのつもりだったんだろ?」
青野寿子「さあ、どうだか──」
  そう言って寿子は歩き始める。
青野雄一郎「おい、どこ行くんだ? これから撮影なんじゃないのか?」
青野寿子「私が戻るまで少し待たせておいて」

〇広い改札
青野沙也加「ハァ・・・ハァ・・・」
青野沙也加(リハには間に合わなかった・・・みんな・・・ごめん)
青野沙也加(でも本番まではあと一時間ある。 まだ充分間に合うはず)
  しかし改札には人だかりが出来ている。
  駅の電光掲示板には「運転見合わせ」と表示されていた。
青野沙也加「嘘でしょ・・・!? 会場までたった2駅なのに・・・!」
青野沙也加「こんなときに携帯も忘れちゃったし・・・!」

〇劇場の座席
桐島香苗「ちょっと・・・! なんで青野沙也加がいないのよ!?」
桐島優「沙也加さんはどうしたんですか?」
小山内陽菜「それがその・・・ちょっと行方不明で」
桐島香苗「行方不明!?」
海東三鈴「ああっ! もう! あんたたちまで大げさにしないでよ」
海東三鈴「沙也加は戻って来るって言ってるでしょ!?」
桐島香苗「戻って来なかったらどうするの?」
海東三鈴「沙也加は戻って来る。万が一間に合わなかったら・・・智治、女装して」
平井智治「本気ですか・・・!?」
海東三鈴「リハもなんとかなったじゃん。 本番もその調子で」
平井智治「む、む、無理ですって! できっこありません!」
摂津亜衣「陽菜。やっぱりもう一度沙也加を探しに行こう」
小山内陽菜「うん・・・!」
桐島香苗「いや、あんたたちはいい。うちらが探す。プリセットとか色々あるでしょ?」
小山内陽菜「え? でもなんで──」
桐島香苗「青野沙也加の演技を見たいからに決まってるでしょ! 優、行くよ!」
桐島優「実はお姉ちゃん・・・昔、演劇をやるって言い出したのは、子役時代の沙也加さんの影響なんです」
小山内陽菜「そうなの!?」
桐島優「ふふ。私も探してきますね!」

〇街中の道路
青野沙也加「ハァ・・・ハァ・・・!」
  渋滞している道路の脇を、沙也加が必死に走る。
青野沙也加「大丈夫・・・! 絶対間に合う・・・!」
  そのとき、沙也加の前に横から走ってきた自転車が飛び出した。
青野沙也加「・・・っ!!!」
  甲高いブレーキ音が鳴り響く。

〇舞台下の奈落
平井智治「やっぱり僕には無理ですよ!」
  ステージ横でスタンバイする中、女装させられた智治が言った。
海東三鈴「あんたはあくまで保険だから。 沙也加はちゃんと来るから大丈夫・・・!」
小山内陽菜「三鈴のバカ! いい加減にしてよ。 もう幕が上がるんだよ!」
小山内陽菜「さっきから沙也加は来るしか言わないじゃん!」
摂津亜衣「ハハハ。今更ながら、とんだ部長がいる部活に来ちゃったな」
  開演5分前のブザーが鳴る。
小山内陽菜「亜衣も笑ってる場合じゃない・・・!」
摂津亜衣「でもなんだか、私も信じてみたくなってきたんだ」
小山内陽菜「どういうこと?」
摂津亜衣「沙也加のこと。仲間だろ?」
小山内陽菜「・・・あー! もういい! こうなったらやぶれかぶれだ!」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

成分キーワード

ページTOPへ