見える。見えない。

ミッツー

読切(脚本)

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〇闇の闘技場
冥界の使い「──じゃ、ホントにいいんだね」
クロダ「うん。これ以上続けてたら、、、」
冥界の使い「そっか。明日には契約が完全に解ける から、みんなにお別れしてきな」
クロダ「うん。ありがとう」

〇先住民の村
タケダさん「おはよう!黒田くん!」
クロダ「あ、タケダさん!どうも!」
タケダさん「聞いたよ。もう、解け始めてるんだってね」
クロダ「うん」
タケダさん「・・・まあ、あたしらなんてのはさ、見えないほうがいいのよ」
クロダ「そんな言い方しないでよ」
タケダさん「いや。・・・自分でも分かってるから契約を解きに行ったんだろ?」
クロダ「・・・」
タケダさん「たまに思い出すくらいでいいよ。十分だから」
クロダ「おれ、もし思い出さなくなっちゃったらって、」
タケダさん「そんなの、クロダくんの勝手でいいよ」
クロダ「──ごめん」
タケダさん「元気だせ!クロダ!」
タケダさん「じゃあね。がんば──」
クロダ「・・・」
クロダ「あぁ、そっか。こんな感じか」

〇西洋の街並み
クロダ「サエキさん!」
サエキさん「あ、クロダくん。こんにちは」
クロダ「あの、こんにちは」
クロダ「あの、えっと」
サエキさん「──どうしたの?」
クロダ「あの、俺、契約を解くことになって」
サエキさん「・・・そっか」
クロダ「それで、どっか行きませんか。最後に」
サエキさん「・・・やめとこう、そういうの。踏ん切りつかないよ」
クロダ「・・・」
クロダ「俺はっ!・・・つかなくてもいいです」
サエキさん「あんまり困らせないで。どうせ見えなくなるのに」
クロダ「・・・」
クロダ「・・・」
タクマ「どうした。クロダ」
クロダ「・・・」
クロダ「お前は、生きてんだよな?」
タクマ「なんじゃそりゃ」

〇海辺
タクマ「なるほどなぁ。・・・でも、俺らにはそもそも見えなかった人達だしな」
クロダ「・・・」
タクマ「何で契約解いちゃうんだよ。見えなくなんのに」
クロダ「タケダさんの葬式、覚えてる?」
タクマ「あぁ、デカかったなぁ。あの葬式」
クロダ「みんなさ、もう見えないから、語り合ってタケダさんのいろんなこと思い出してさ」
タクマ「うん」
クロダ「そういうのできなかったんだよ。見えてるし、まだ、タケダさんは過去じゃかったから」
タクマ「・・・んー。分かんねぇ話だな」
クロダ「だから、皆みたいに、なんか、終わりにしようって。死んだらそれで一旦終わり」
クロダ「それで、ちゃんと思い出して、ちゃんと覚えときたいんだよ。皆のこと」
タクマ「落ち着けよ。まぁ、そうな。いなくなった方が絆とか感じるもんな」
タクマ「俺とか最近、いる時にちゃんと仲良くなってればとか思うもん」
クロダ「うん。でも、いないわけじゃないよ。目に見えなくてもいるって」
タクマ「・・・そうだよな」
タクマ「そんで、どうすんの?まだ誰かに会いにいく?」
クロダ「いや、そろそろ洞窟に戻るよ」
タクマ「そっか。じゃ、慣れないうちは辛いかも知んねぇから、頑張れよ。俺も話聞くし」
クロダ「うん。ありがとう」
クロダ「・・・」
クロダ「分かんねぇ話か・・・」

〇闇の闘技場
冥界の使い「分かんなくて当然だよ。そんなの」
冥界の使い「見えてた君だけにしか分からない」
クロダ「・・・そっか」
冥界の使い「もっと言えば、見えなくなるっていう苦しみだって、君にしか分からない」
クロダ「うん。・・・ねぇ、」
冥界の使い「なに?」
クロダ「・・・」
冥界の使い「まだ、ちゃんとお別れしたい人でもいた?」
冥界の使い「もうほとんど見えなくなってるけど」
クロダ「いや、」
冥界の使い「どうしたの?大丈夫?」
クロダ「あの、やっぱり契約解くの辞めてもらえないかな」
冥界の使い「・・・」
冥界の使い「・・・意味分かんない。あたし聞いたよね、ほんとにいいのって」
クロダ「ごめん。でも俺、ほんとに嫌で」
冥界の使い「嫌でって言ったって、今さら無理だよ。結び直すのは」
クロダ「なんで!契約なんだから、代償を払ったら結び直せるだろ!」
冥界の使い「ねぇ。これを結んだときの代償ってなんだった?」
クロダ「・・・」
冥界の使い「私に言わせないで」
クロダ「・・・能力を失った時の苦痛、喪失感、恐怖」
冥界の使い「君はまだこれを払ってないんだよ」
冥界の使い「そして、払う日を明日に決めちゃった」
冥界の使い「・・・延長できないようになってるの」
冥界の使い「ねぇ。聞いてる?」
クロダ「でも、嫌なんだよそんなの!」
冥界の使い「なにが嫌なの!」
クロダ「君に会えなくなるのが嫌なんだよ!」
冥界の使い「・・・はぁ?」
クロダ「だって、僕、君の名前すら知らない」
冥界の使い「あぁ、別に無いから。名前とか」
クロダ「そういうことじゃないんだよ!こんなに僕ら一緒にいただろ!」
クロダ「・・・怖いよ、君がいなくなるのが」
冥界の使い「あー、分かった。私のこの体は入れ物だから、寂しいならあげる」
クロダ「だから、そういうことじゃないって!」
冥界の使い「契約が溶けても見えるものが欲しいんじゃないの?」
冥界の使い「ねぇ。あのさ」
冥界の使い「あたし、もう帰って他の事したいんだけど」
クロダ「だから!体だけ貰っても意味ないんだって!」
冥界の使い「それ以外は無理だから言ってんじゃん。ちゃんと決めて。いるの?いらないの?」
クロダ「なんだよそれ。ちょっと待ってよ!」
冥界の使い「もう分かった。帰るね」
クロダ「待ってって!・・・欲しいよ。体だけでいいから」
冥界の使い(冷水「はい」
冥界の使い(冷水「・・・あたし、見てたからね。サカキさんに、君がおんなじように駄々こねてるとこ」
クロダ「・・・」
冥界の使い(冷水「怒ってるわけでも、嫉妬してるわけでもない」
冥界の使い(冷水「ただ、君のそういう不誠実なところが」
冥界の使い(冷水「死ぬほど嫌い」
クロダ「・・・」
クロダ「グスッ」

〇先住民の村
タクマ「ハクさん、クロダは!?」
ハクさん「ダメだ。女の子の死体にずっと祈ってる」
ハクさん「あいつ、日を跨ぐまで続けるつもりだ」
タクマ「チッ」

〇闇の闘技場
クロダ「お願いします。契約結び直してください」
クロダ「お願いします。契約結び直してください」
クロダ「・・・お願いします」
タクマ「何やってんだよお前!」
クロダ「お願いします」
タクマ「ふざけんなよお前!」
クロダ「・・・なにすんだよ」
タクマ「散々俺に語っといて、このざまかよ」
クロダ「あぁ、そういう説教なら、さっき散々聞いたから」
タクマ「やりたい事があったんじゃねぇのかよ!」
クロダ「僕には無理なんだよ」
タクマ「なんでだよ・・・そんなことねぇって」
タクマ「大丈夫だよ!」
タクマ「目に見えなくても、いるんだろ? いなくても!心のなかには──」
クロダ「おい、何だその言い方」
タクマ「えっ、」
クロダ「なんで、わかったような口きくの?タクマ、」
クロダ「お前、本気でそんな事信じて言ってる?」
タクマ「当たり前だろ!」
クロダ「・・・ふざけんなよ」
クロダ「どこにもいないよ。いるわけないじゃん」

〇黒
  見えないんだから

コメント

  • それまでが”当たり前”だったことが、そうではなくなると想像すると、なかなか心にきますね。しかも”代償”ありとなると、、、

  • 彼が煮え切らない理由もわかりますが、どんどん心をむしばまれていく様子が怖かったです。
    この心が代償だったわけですね。
    彼はこれからどうなっていくんだろう…。

  • 主人公の気持ちが揺らいでいる所がモヤモヤ、イライラ、メソメソという気持ちがしました。男のくせにと言いたい所でしたが、能力者の気持ちがわからない私はどうしたものかわかりません。

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