ペットが“貝”で何が悪い!

さざえと金平糖

栄螺との出逢い(脚本)

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〇アパートのダイニング
砂糖 菓子(さとう かこ)「おはよー!」
砂糖 菓子(さとう かこ)「今日も元気ね!」
  そう言って、彼女は水槽の中の栄螺(さざえ)に話し掛ける。
栄螺(さざえ)「・・・・・・・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「お腹空いた?」
砂糖 菓子(さとう かこ)「ワカメ食べようか!」
砂糖 菓子(さとう かこ)「今、持ってきてあげるからね!」
  彼女は、冷蔵庫から海藻サラダ(ドレッシング別売り)を取り出した。
砂糖 菓子(さとう かこ)「お待たせー!」
  海藻サラダの中からワカメだけを抜き取り、ピンセットでワカメを摘んで水槽内のさざえに与える。
栄螺(さざえ)「・・・・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「今日もイイ食べっぷりね!」
砂糖 菓子(さとう かこ)「私も朝ご飯にサラダ食べちゃお〜♪」
栄螺(さざえ)「・・・・・・」
  一人の部屋。一つの水槽。
  彼女が一人で貝に話し続ける姿は、さぞかし不気味なことだろう。
  しかし、ただの貝でも彼女にとっては大事なペットの栄螺(さざえ)だ。
  ペットは家族だ。
  これは、そんな彼女と栄螺(さざえ)の物語である・・・。

〇スーパーマーケット
  あれは、真夏の暑い夜のことだった・・・。
砂糖 菓子(さとう かこ)「あーーー、仕事だっっっる!!!」
砂糖 菓子(さとう かこ)「コピー機も私もちょっと不調だっただけよ! もぉおおおーーーっ!!!」
砂糖 菓子(さとう かこ)「だいたい、コピー機を使った前の人が紙詰まりのまま放置してたのが悪いのに・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「手がすべって、インクを床にぶち撒けたのはマズかったなぁ・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「おかげで課長にカンカンに怒られた・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「まぁいいや、頑張った自分へのご褒美に、美味しい物でも食べよ・・・」
  彼女は夕飯を買いに、いつものスーパーへと向かった・・・。

〇スーパーの店内
  生鮮売場
砂糖 菓子(さとう かこ)「えーと、今日のご飯は何にしようかな?」
砂糖 菓子(さとう かこ)「肉か魚か、どうせなら豪勢にいきたいよね!」
砂糖 菓子(さとう かこ)「でも、この時間だと大したものは残ってないかも・・・」
  案の定、食材はほとんど残っていない。
砂糖 菓子(さとう かこ)「あ!魚介コーナーに何かある!」
  彼女は魚介コーナーへとやってきた。
  彼女は大きなポスターの見出しに目が行く。
砂糖 菓子(さとう かこ)「『夏祭りフェア』?・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「あ!屋台に並んでた具材があったんだ!」
砂糖 菓子(さとう かこ)「お祭りなんて久しく行ってないよ、懐かしいなぁ〜・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「イカの丸焼きとかよく食べたっけ・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「どれどれ、どんな食材が残ってるのかな?」
砂糖 菓子(さとう かこ)「・・・・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「活、サザエ?・・・」
栄螺(さざえ)「・・・・・・」
  ブクブクと空気が送られている発泡スチロールの容器の中で、トゲトゲのツノを生やした貝の栄螺(さざえ)が売れ残っていた。
砂糖 菓子(さとう かこ)「へぇ〜、生きてる栄螺(さざえ)なんてこのスーパーでも売ってるんだ・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「んー・・・・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「・・・・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「つぼ焼き!」
砂糖 菓子(さとう かこ)「そうだ、栄螺(さざえ)のつぼ焼きにしよう!」
砂糖 菓子(さとう かこ)「つぼ焼きなら簡単に作れるよね!」
砂糖 菓子(さとう かこ)「すいませーん、活サザエ一つくださーい!」

〇アパートのダイニング
  スーパーで買い物を済ませた彼女は家路につき、玄関の扉を開けた。

〇アパートのダイニング
砂糖 菓子(さとう かこ)「ただいまー」
  彼女は買ってきたビニール袋を床に置き、靴を脱いで家に上がる。
  スーパーの袋を床からテーブルの上へと置き直し、彼女は先に着替えに奥へと歩いて行った。
  数分後・・・。
  部屋着に着替えた彼女が戻ってきた。
砂糖 菓子(さとう かこ)「それでは、作りますか!」
  台所に備え付けられた魚焼きグリルの予熱の前に、網が汚れていないかを彼女は確認する。
砂糖 菓子(さとう かこ)「げっ・・・・・・」
  魚焼きグリルの網はキレイだったが、彼女はあることに気が付いたようだ。
砂糖 菓子(さとう かこ)「栄螺(さざえ)が大き過ぎて、入らない!」
  魚焼きグリルの高さに対し、栄螺(さざえ)の大きさは拳よりも大きいため入り切らないのは一目瞭然だ。
砂糖 菓子(さとう かこ)「どうしよう、せっかく買ってきたのに・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「活サザエが死んだらただの生ゴミだよ・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「うーーーん・・・」
  その時、彼女は部屋の中にある水槽へ目を移す。
砂糖 菓子(さとう かこ)「そうだ!とりあえず栄螺(さざえ)は、この『海ブドウ畑』に入れておこう!」
砂糖 菓子(さとう かこ)「同じ海の生き物なら、生きていられるよね!」
  『海ブドウ畑』とは、ツブツブしたブドウのような海藻の生えた水槽ことだ。
  海ブドウという海藻に興味を惹かれ購入したものの、口に合わなかったが食べ物を粗末にできず、インテリアとして栽培していた。
  海水魚のいない、砂地に海ブドウが生えているだけの殺風景な水槽だが、彼女の生活スペース内で唯一の観葉植物である。
砂糖 菓子(さとう かこ)「我ながらナイスアイデア♪」
  しかし、海ブドウしか育てていない水槽など果たして栄螺(さざえ)にとって安全だろうか?
  目に見えない、ただならぬ汚れを察した彼女は栄螺(さざえ)を入れるのを躊躇った。
砂糖 菓子(さとう かこ)「うーーーん、塩分濃度とか心配だから、先に水槽の中を掃除しよう・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「あ、でも栄螺(さざえ)を海水に浸さないと乾いちゃう!」
  彼女は慌ててスーパーの袋を開けた。
砂糖 菓子(さとう かこ)「まだ生きてるかな?・・・」
  彼女は恐る恐るスーパーの袋から栄螺(さざえ)を取り出した・・・。

〇アパートのダイニング
砂糖 菓子(さとう かこ)「大丈夫・・・かな?・・・」
栄螺(さざえ)「・・・・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「生きてるかわからないけど、急いで新しい海水を作らなきゃ!」
  彼女はバケツを用意すると、台所から汲んできた水に熱帯魚用の塩を加えた。
  塩分濃度メーターの針が適正な値になるよう調整し、カルキ抜き剤を加えて掻き混ぜる。
砂糖 菓子(さとう かこ)「・・・よし、海水の準備ができた」
砂糖 菓子(さとう かこ)「早速入れてみよう!」
栄螺(さざえ)「・・・・・・」
  海水に沈めても何の動きもない。
砂糖 菓子(さとう かこ)「栄螺(さざえ)の蓋がしっかり閉まってる間はまだ生きてる、はず・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「大丈夫、かな?・・・」
栄螺(さざえ)「・・・・・・」
栄螺(さざえ)「・・・・・・・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「わっ!?」
  それは、唐突に起きた。
  今まで閉まっていた栄螺(さざえ)の蓋が前触れもなく開き、真っ黒な身が出てきた。
  今まで食材としてしか見ていなかった栄螺(さざえ)の本来の姿を、彼女は生まれて初めて見た。
砂糖 菓子(さとう かこ)「すごい・・・、黒いカタツムリみたい・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「お腹の部分だけがオレンジ色だなんて、初めて知ったよ」
栄螺(さざえ)「・・・・・・!!」
  長い触覚で辺りを警戒する栄螺(さざえ)は、目の前の彼女の姿に驚き、慌てて身を引っ込めて蓋を閉じてしまう。
砂糖 菓子(さとう かこ)「あらら、引っ込んじゃった・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「・・・・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「・・・・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「栄螺(さざえ)も、生き物なんだよね・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「今までスーパーのパックに入ってるか、蓋が閉じたままの状態しか知らなかった・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「怖かったから、蓋を閉じてたんだよね・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「・・・・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「なんだか、可哀想になっちゃった・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「もう、この子を調理するの、無理!・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「こうなったら・・・」
  彼女はある決意をする。
砂糖 菓子(さとう かこ)「食べるつもりで買った命だけど・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「この子をペットとして、家族として大切にすることを誓う!!!」
砂糖 菓子(さとう かこ)「それが、この子を買った私の責任だもの!」
砂糖 菓子(さとう かこ)「食べられもせずこのまま死んでしまうなんて、決してそんな無駄な命にさせないから!」
砂糖 菓子(さとう かこ)「栄螺(さざえ)を飼うのは初めてだけど、生態についてちゃんと勉強するから!」
砂糖 菓子(さとう かこ)「少しでも、幸せを感じてくれるように頑張るから!・・・」
栄螺(さざえ)「・・・・・・」
砂糖 菓子(さとう かこ)「・・・あ、出てきた!」
  栄螺(さざえ)の蓋が恐る恐る開いた。
  今度は彼女の姿を見ても驚かずに、栄螺(さざえ)はゆっくりと触覚を出すのだった・・・。
  こうして、彼女と栄螺(さざえ)の奇妙な生活が始まった・・・。

コメント

  • きっかけはどうであれ、一度世話をした生き物を食べるのは絶対無理という感覚わかります。サザエが蓋を開けて出てきた姿の描写には感動。どんなセリフを言うかと待ってたら「!!」と反応がありましたね。ついでに主人公の名前にも目が釘付けでした。

  • 小説みたいで読みやすかった!
    1人語り&沈黙での進行が、わちゃわちゃしがちな他の作品と一線を画してますね。こういう世界、好きです。
    気になったのは、誤字脱字と、地の文(ナレーション)の背景が白かったり黒かったりするところ。そこを磨いてコンテストに勝ち残ってほしいなーと思いました。

  • 主人公と栄螺が醸し出すこの不思議な空気感、もう楽しすぎます!
    グリルに入らなければ、フライパン調理やお刺身とか……、いやいや、今や可愛いペットですよね

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