それはそうとして浜崎くん

jloo(ジロー)

それはそうとして(脚本)

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〇線路沿いの道
  いつもの通学路、見慣れた風景が流れていく。
  ふとその風景の中に、異質な何かを見つけた気がして、僕は思わず立ち止まった。
浜崎夕人「・・・・・・ゾンビ?」
  思わず声に出して呟く。
  その言葉通り、僕の視線の先には、体中から腐った汁を垂れ流しながら歩いている人間の姿があった。
  多分、襲われたら死ぬ。いや、間違いなくあの世行きだ。
クラスメイト「浜崎くん、おはよう」
浜崎夕人「君は、誰? うちの学校の生徒みたいだけど」
クラスメイト「学校、遅刻しちゃうよ。こんなところで立ち止まっていていいの?」
浜崎夕人「あの、そこにいるゾンビ・・・・・・気づいていないのかな?」
クラスメイト「いえ、気づいているわ。ここだけじゃなく、街中ゾンビだらけよ」
浜崎夕人「分かっているなら、逃げようよ。学校に通うどころじゃ無いって!」
クラスメイト「今は、襲ってこないわ。私たちのこと、見えてないから」
  確かに、ゾンビは周囲を徘徊するだけで僕たちを襲う気配はない。
  だからと言って、安心できる訳が無い。一体、何が起こっていると言うんだ。
クラスメイト「とにかく、学校に向かいましょう。ここに居ても、退屈だから」
浜崎夕人「あ、待ってよ」
  彼女の、後を追う。こんな所で、一人にされるのは御免だった。

〇学校の校舎
  学校に辿り着くと、そこもやはりゾンビで溢れていた。
  皆一様にうつろな目をしており、口元からはダラリと唾液を垂らしている。
  だがやはり、一向に襲ってくる気配は無い。
  この空間では、むしろ僕たちの存在の方が異質に思えた。
クラスメイト「さぁ、教室に向かいましょう」
浜崎夕人「うん・・・・・・」

〇教室
  まるで世界の終わりのような光景に、何故か現実感が湧かなかった。
  彼女の落ち着いた態度が、そう錯覚させるのかもしれない。
  この状況を、おかしいとは思わないのだろうか。
浜崎夕人「あの、どうしてそんなに落ち着いているの? 今の状況、異常だよ」
クラスメイト「私は、これが正常だと思うけど。浜崎くんこそ、どうしたの?」
浜崎夕人「どうしたって・・・・・・。明らかに、おかしいじゃないか! いきなり街中にゾンビが現れるなんて」
クラスメイト「いいえ、私たちがこの世界に来たのよ。浜崎くんは、覚えていないかもしれないけど」
浜崎夕人「どういうこと?」
クラスメイト「それはそうとして浜崎くん」
浜崎夕人「何?」
クラスメイト「私、お腹空いてるんだけど。何か持ってない?」
浜崎夕人「いや、何も持っていないけど」
クラスメイト「嘘。鞄の中に、お菓子が入っているはずでしょう?」
  言われて、鞄を漁る。
  そこには、入れた覚えも無いチョコレートが入っていた。
クラスメイト「ほら、あった」
浜崎夕人「こんなもの、いつ入れたんだろう・・・・・・溶けてないのも、おかしいし」
クラスメイト「それはそうとして浜崎くん」
浜崎夕人「何?」
クラスメイト「私、お腹空いてるんだけど。何か持ってない?」
浜崎夕人「いや、何も持っていないけど」
クラスメイト「嘘。鞄の中に、キャンディがあるはずでしょう?」
  言われて、鞄を漁る。
  そこには、入れた覚えの無いキャンディが入っていた。
クラスメイト「ほら、あった」
浜崎夕人「こんなもの、いつ入れたんだろう・・・・・・溶けてないのも、おかしいし」
クラスメイト「それはそうとして浜崎くん」
浜崎夕人「何?」
クラスメイト「私、お腹空いてるんだけど。何か持ってない?」
浜崎夕人「いや、何も持っていないけど」
クラスメイト「嘘。鞄の中に、ビスケットがあるはずでしょう?」
  言われて、鞄を漁る。
  そこには、入れた覚えの無いビスケットが入っていた。
クラスメイト「ほら、あった」
浜崎夕人「こんなもの、いつ入れたんだろう・・・・・・溶けてないのも、おかしいし」
クラスメイト「それはそうとして浜崎くん」
浜崎夕人「何?」
クラスメイト「いつになったら、あなたは死んでくれるの?」
浜崎夕人「え?」

〇病室
  ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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  ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ。

コメント

  • タイトルのセリフが、浜崎くんの死へのカウントダウンだったとは。日常の何気ない一言なのに、リピートされるだけで、そこはかとない恐怖心が増幅していく感じが良かったです。

  • タップしながらどんどん同級生が正当化する世界にひきづりこまれるようでした。彼女がお腹がすいている・・という度にゾクッとしてしまい、それでもチョコやビスケットというアンバランスな可愛いさがよかったです。

  • ビスケットってチョイスがよかったです!

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