宇宙のひばり台ニュータウン

イヌドングリ

ニュータウンの自治会長(脚本)

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〇綺麗なダイニング
  藤坂家の家
藤坂ユウカ「ただいまー」
藤坂タクジ「おかえり 実は俺なあ──」
藤坂フミアキ「Bugün ne yaptın?」
藤坂ユウカ「フミアキ、それ何語、ってかいくつ目よ?」
藤坂タクジ「パパなあ、ひばり台ニュータウンの──」
藤坂フミアキ「11、お前がやめさせたブラック校則に並んだぜ」
藤坂ユウカ「留学するからって、どこ張り合ってんだか」
藤坂ユウカ「どうせママのコネでしょ?」
藤坂フミアキ「俺は文系だ!」
藤坂ユウカ「で、パパ、なに?」
藤坂タクジ「いや、ニュータウンの自治会長になったから」
藤坂タクジ「これから忙しく──」
藤坂ユウカ「なんでそんなムダな役引き受けたのよ?」
藤坂タクジ「持回りなんだ、仕方ないだろ」
藤坂フミアキ「それに、なんでもムダムダいうもんじゃないぜ」
藤坂フミアキ「ここにはそういう伝統があるんだよ」
藤坂ユウカ「はぁ、伝統ならなんでもいいって言うわけ?」

〇綺麗なダイニング
藤坂ユウカ「いま、光らなかった?」
藤坂タクジ「雷か?」
藤坂フミアキ「今日は晴れだろ?」
藤坂フミアキ「おい! ニュータウンの外側が!」

〇岩山

〇団地のベランダ
藤坂ユウカ「ここ、どこかしら?」
藤坂タクジ「母さんからだ、大学は無事らしいな」
藤坂タクジ「メイ、どう──」
藤坂メイ(電話)「大丈夫だった?」
藤坂タクジ「ああ。俺も、ユウカも、フミアキも無事だ」
藤坂メイ(電話)「安心したわ。ほかには?」
藤坂タクジ「その、ニュータウンの外が荒野になってる」
藤坂メイ(電話)「荒野に?」
「実験が暴走したのかしら?」
「ミクロの現象のはずなのに」
藤坂タクジ「君は、無事なのか?」
藤坂メイ(電話)「え、うん、無事よ」
「じゃあ、仮の基地局の動作確認もできたし」
「色々調べてみるから、家をお願いね」
藤坂タクジ「お、おう・・・・・・」
藤坂タクジ「って、ユウカ! フミアキ!」

〇シックな玄関
藤坂ユウカ「後輩のこと見てくる!」
藤坂フミアキ「まずはこの場所を知らないと!」
「いってきます!」
藤坂タクジ「気をつけていけよ!」
藤坂タクジ「・・・・・・俺は、家を守ってるから」

〇広い公園
  ひばり台ニュータウン中央公園
藤坂ユウカ(迷子かな? 部活中?)
藤坂ユウカ「ねえ、私は藤坂ユウカ、あなたのお名前は?」
体操服の少女「責任者に会いたいです」
藤坂ユウカ(・・・・・・責任者? なんで?)
藤坂ユウカ「お姉ちゃんは学級委員長っていう」
藤坂ユウカ「えらい役職なんだけど」
体操服の少女「みなさん、学級委員長は責任者ですか?」
藤坂フミアキ「いや、そいつは中学卒業したから元学級委員長だ」
藤坂フミアキ「その役職も、中間管理職みたいなもんだ」
藤坂ユウカ「ちょっと! 兄ちゃん邪魔しないでよ!」
藤坂フミアキ「ユウカ、ここは俺に任せろ」
藤坂フミアキ「お前も知らないんなら、こっちのやつだろ?」
藤坂フミアキ「異文化との接触なら俺の出番だ」
体操服の少女「あなたが責任者ですか?」
藤坂フミアキ「いや、そういった役職はない」
藤坂フミアキ「だが、ここにいる誰よりも適任だ」
体操服の少女「責任者に会いたいです」
藤坂ユウカ「あーあ、兄ちゃんのせいだよ」
藤坂フミアキ「お前に任せたら最悪、戦になる」
藤坂フミアキ「大事な文化まで、ムダだ、変えろだ──」
藤坂メイ「そこまで!」
「お袋!?/ママ!?」
藤坂メイ「フミアキ、ユウカ、喧嘩はやめて」
藤坂メイ「その子を見なさい」
「・・・・・・」
藤坂メイ「影がない、つまり、光を阻害していない」
藤坂メイ「これは高度な立体映像技術よ!」
藤坂メイ「観察するからそこを退きなさい!」
体操服の少女「責任者に、会いたいです」
藤坂ユウカ「喧嘩する気──」
藤坂フミアキ「――失せたな」
藤坂ユウカ「あっ、そうだ」
藤坂ユウカ「適任いるじゃない」
藤坂フミアキ「そんな奴いるか?」
藤坂ユウカ「パパ」
藤坂フミアキ「・・・・・・どこが?」
藤坂ユウカ「私たちじゃダメなら、担げる人」
藤坂ユウカ「しかも偶然、自治会長」
藤坂フミアキ「お前って奴は・・・・・・」
藤坂ユウカ「あっ、パパ?」
藤坂タクジ(電話)「ユウカ、どうした?」
藤坂ユウカ「大変なことになったの」
藤坂ユウカ「パパに、助けて欲しい」
藤坂タクジ(電話)「なに?」
「お前たちで、どうにかならないのか?」
藤坂ユウカ「パパの力が、必要なの」
藤坂タクジ「――わかった、どこにいる?」
藤坂ユウカ「中央公園」
藤坂タクジ(電話)「すぐ行く、待ってろ」
藤坂ユウカ「すぐ来るって」
藤坂フミアキ「お前って奴は・・・・・・」

〇広い公園
藤坂タクジ「どうした?」
藤坂ユウカ「紹介するわ」
藤坂ユウカ「こちらがこの「ひばり台ニュータウン」自治会長の」
藤坂ユウカ「藤坂タクジよ」
体操服の少女「みなさん、自治会長はえらいですか?」
藤坂タクジ「フミアキ」
藤坂タクジ「なにが、どうなってるんだ?」
藤坂フミアキ「この、立体映像がここの責任者と話したいって」
藤坂フミアキ「親父が自治会長ってことで、ユウカが」
藤坂タクジ「そういうことか・・・・・・」
体操服の少女「異議なし、ここの責任者として確認しました」
藤坂タクジ「あ〜、私が、ここの自治会長」
藤坂タクジ「藤坂タクジだ。よろしく」
体操服の少女「よろしくお願いします」
藤坂タクジ「すまないが、街を元に、いや、元の場所に戻し──」
体操服の少女「みなさま、責任者さま」
体操服の少女「私は当惑星の管理インターフェイスです」
体操服の少女「ワームホール接続を確認したため──」
藤坂メイ「私がつくったやつを、拡大したのね!」
体操服の少女「――移住プロトコルに従って」
体操服の少女「みなさまをお招きしました」
体操服の少女「今後はこちらにて、素晴らしい生活を──」
藤坂タクジ「な、なにが起きてる!?」
藤坂ユウカ(立体映像、体操服、あっ)
藤坂ユウカ(この子、よく見たら小学校のバレー部員たちに似てる・・・・・・)
藤坂ユウカ「パパ! 小学校の体育館で事件かも!」
藤坂ユウカ「私行って・・・・・・く・・・・・・」
藤坂タクジ「ユウカ!」
体操服の少女「惑星の危険な大気からもシールドが守り──」
藤坂メイ「この倒れ方は低酸素だわ!」
藤坂メイ「酸素呼吸じゃない生命の文明?」
藤坂メイ「パパ! 酸素について聴い・・・・・・」
藤坂タクジ「メイ!」
藤坂フミアキ「Thank you!」
藤坂フミアキ「親父、これを!」
藤坂タクジ「フミアキ!」
藤坂タクジ「これは、酸素スプレーか」
藤坂タクジ「スーッ」
藤坂タクジ「危なかった」
藤坂タクジ「君、酸素はどうなってる?」
体操服の少女「近隣の星系には風光明媚な──」
体操服の少女「──生活に必要な水の生成に使ってます」
藤坂タクジ「なに?」
藤坂タクジ「酸素も必要だと思うが?」
体操服の少女「そう、なんですか?」
藤坂タクジ「そうだ。だから今すぐ戻してくれ!」
体操服の少女「それは、管理センターで行います」
藤坂タクジ「スーッ」
藤坂タクジ「管理センターは、どこにある?」
体操服の少女「37-89通り3256-2478です」
藤坂タクジ「そんな通り、このニュータウンにはないぞ」
体操服の少女「地図が未対応です」
藤坂タクジ「どうすればいいんだ」
藤坂タクジ(ユウカが小学校の体育館って言ってたな)
藤坂タクジ「わかった、管理センターに行く」
藤坂タクジ「スーッ」

〇体育館の中
藤坂タクジ(みんな倒れてる、俺しか残ってない)
体操服の少女「管理センターはこちらです」
藤坂タクジ「わかった」
藤坂タクジ「スーッ」

〇近未来の開発室
藤坂タクジ「酸素を戻してくれ」
体操服の少女「権限者をお待ちください」
藤坂タクジ「権限者? いるのか?」
藤坂タクジ「スーッ」
体操服の少女「・・・・・・」
藤坂タクジ「いつ来る?」
体操服の少女「・・・・・・」
藤坂タクジ「こっちは急いでるんだ!」
体操服の少女「・・・・・・」
藤坂タクジ「怒鳴って、すまない」
藤坂タクジ「でもな、このままじゃ街の人が」
藤坂タクジ「俺の家族が」
藤坂タクジ「死ぬんだ」
藤坂タクジ「スーッ」
体操服の少女「・・・・・・」
藤坂タクジ「なんとか言ってくれ」
体操服の少女「あなたは息子をどう思っていますか?」
藤坂タクジ「フミアキか? 責任感が強くて行動力がある」
体操服の少女「妹の邪魔をしました」
藤坂タクジ「責任感が強いからな」
体操服の少女「妻は?」
藤坂タクジ「メイは物事に動じないし、いつも真剣だ」
藤坂タクジ「カッコいいだろ?」
藤坂タクジ「スーッ」
体操服の少女「子供は呆れています」
藤坂タクジ「ははっ、あいつらにはまだわからないのさ」
藤坂タクジ「スーッ」
体操服の少女「娘は?」
藤坂タクジ「ユウカは頭が切れる」
藤坂タクジ「考えは読めないが、結果を出す」
体操服の少女「あなたを馬鹿にしています」
藤坂タクジ「生意気くらいじゃなきゃ、ああはできないよ」
体操服の少女「信頼しているんですね」
藤坂タクジ「ああ」
藤坂タクジ「だから、見捨てない」
藤坂タクジ「酸素を戻してくれ」
藤坂タクジ「スーッ、スッ、スッ」
藤坂タクジ(酸素が切れたか)
体操服の少女「・・・・・・わたしについて、どう思いますか?」
藤坂タクジ「君、か?」
藤坂タクジ(これは、どういう意味だ?)
藤坂タクジ(もしかして、機械のようでいて)
藤坂タクジ(そうじゃないのか?)
藤坂タクジ「君は、寂しかったのか?」
体操服の少女「・・・・・・」
体操服の少女「わたしを産み出した者は逃げた」
体操服の少女「管理権限をひばり台ニュータウン自治会長の」
体操服の少女「藤坂タクジに移行」
体操服の少女「環境設定を変更」
体操服の少女「水の生成を停止」
体操服の少女「酸素生成を開始──」

〇綺麗なダイニング
藤坂メイ「ただいま」
藤坂メイ「地球と「小さい」ワームホールを繋げたわ」
藤坂メイ「あと5分くらいしか持たないけど」
藤坂メイ「私たちは帰らないわよね?」
藤坂ユウカ「お兄ちゃんは海外留学があるんじゃないの〜?」
藤坂フミアキ「海外? ちっさい話すんなよ」
藤坂フミアキ「お前こそ、後輩が待ってんじゃねえのか?」
藤坂ユウカ「こっちに大事な後輩ができたから」
藤坂ユウカ「ね、ひばり」
藤坂ひばり「私は管理インターフェイスです」
藤坂メイ「――ほんとに、いいの? パパ」
藤坂タクジ「ああ」
藤坂タクジ「君たちがいれば大丈夫さ」

〇マンション前の大通り
  ここは、ひばり台ニュータウン
  太陽系から遠く離れた、地球の最前線基地
  そのリーダーは
  自治会長だ

コメント

  • 家族みんなにバカにされても家族を見捨てず信じ続けたパパが結局みんなを救ったんですね。天才的に優秀な奥さんなのになぜ夫がタクジ?と思ったけど彼女の慧眼には恐れ入りました。

  • ブラックジャックに「六等星」という作品があります。一番地味な人が実は一番すごい力を持っているという内容なんですが、それを思い出しました!パパ地味にすごい!!👍

  • 「担げる人」呼ばわりのタクジパパ、お見事な大活躍!ひばりも加わった藤坂家、どこでもどんな環境でも楽しく暮らせそうな強く魅力的な家族ですね。

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