乃子さんに推されたい

中村朔

第4話 誰にも見えないこの想い(脚本)

乃子さんに推されたい

中村朔

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〇荒廃した教室
乃子「あ、あなたが好き・・・」
乃子「・・・すきだらーけー♪」
P 「やめ!! 忍者かお前は!」
乃子「す、すみません」
P 「お前が歌ってるのは何だ? ラブソング作れって言ってんだろ!」
P 「今の歌詞のどこがラブいんだよ! もっと売れそうな歌詞を書け!」
乃子「うう、作詞とかのセンス、ほんとないんです・・・私が書かなきゃダメですか?」
P 「コンテストのルールだからな。 がんばれよ、エントリすればお前の歌が現世に流れるんだぞ」
乃子「恥ずかしいです・・・」
P 「爽介くんが聞くかもしれないぞ」
乃子「なおさら恥ずかしいです!」
乃子「あの、そもそも幽霊の歌をどうやって現世に配信するんですか?」
紫怨「現世で発売される歌の中にこっそり紛れ込ませるのさ」
P 「それが『霊の声だ!』って噂になれば歌ってる霊に推しが入る。 その推しの数を競うコンテストなわけ」
乃子「・・・うう、自信ないです」
  この度、霊界の歌のコンテストに出場することになりました。
  『歌姫発掘! 現世に届け、霊界・ラブソング!』という私には縁がなさそうなコンテストです。
  もちろん自信はまったくないのですが・・・
P 「優勝賞金は100万REICAだぞ」
乃子「う」
紫怨「100万あれば見た目をデコって胸張って爽介くんに会いに行けるじゃないか」
乃子「うう・・・がんばります!」
紫怨「この子、爽介くんが絡むと弱いね」
P 「まあでも優勝は難しいな」
紫怨「どうしてだい。 この子ツキがあるし、ひょっとするかもしれないよ」
P 「アイツが出るんだよ」
紫怨「アイツ?」
殺芽「地味子発見〜! キャハハ!」
P 「出たな」
紫怨「ああ、殺芽が出るのかい」
殺芽「ムダよムダ! 私の『冥土 in ラブ』が優勝に決まってんだから!」
紫怨「出落ちみたいなタイトルだね」
殺芽「無駄な努力だと思うけどがんばってね〜。 キャハハ!」
乃子「・・・殺芽さん、歌が上手なんですか?」
紫怨「事務所力が強いんだよ」
霊司「殺芽さんの歌は人気アイドルの曲に入るんです。 ファンも多いし、話題になるでしょうね」
P 「乃子のは誰の歌に入るんだ?」
霊司「ザ・直進ズです」
P 「聞いたことねぇな」
霊司「頑固で真っ直ぐな歌を歌うみたいです。 今っぽくないですね。 ランキングも縁なしです」
P 「バンドガチャも外れか・・・乃子、お前の歌詞が頼みだ!」
乃子「でも何を書けばいいか・・・」
紫怨「曲を聞いてみたらどうだい。 イメージが膨らむかも」
乃子「聞けるんですか?」
紫怨「霊界タブレットで直進ズの様子を見てみようか」

〇音楽スタジオ
鉄「もう1回いくぜッ!」
ガン「鉄、新曲はどうだ?」
鉄「ガンさん! いい感じです。 タイトルも決まりました。 『男は角を曲がらない』」
ガン「まっすぐだな」
ガン「なあ鉄、もっと売れ線の歌詞を書いてみないか?」
鉄「ガンさん、それやっちゃ俺たちじゃなくなっちまう」
鉄「言いたいことをまっすぐに! 飾らずに届けるのが直進ズです!」
ガン「だよな。 気にすんな、社長が言ってるだけだ。 歌いたいように歌え」
鉄「オスッ!」

〇物置のある屋上
乃子「・・・・・・」
紫怨「歌詞を考えてるのかい?」
乃子「あ、いえ・・・さっきのことを思い出してました」
紫怨「強烈なキャラだったねぇ」
乃子「・・・少し、うらやましかったです」
紫怨「うらやましい?」
乃子「私、言いたいことがあっても、まっすぐ言えずに生きてきたから」
紫怨「でも、そうじゃないこともあっただろ? 爽介くんに告白したときさ」
乃子「・・・そうですね」
乃子「・・・会えないけど、まだ好きなんです。 死んだけど、爽介くんのことが大好き」
乃子「だから、爽介くんのことを好きって感情は、まだ死んでないんです」
乃子「今の私といっしょで、誰にも見えないかもしれないけど」
乃子「・・・その想いはちゃんと、この胸に生きてるんです」
紫怨「歌の歌詞みたいだね」
乃子「え?」
紫怨「それ、そのまま歌にしてみなよ。 いい歌になる気がする」
乃子「・・・やってみます!」

〇荒廃した教室
  ――1週間後。
P 「昨日、乃子の曲がリリースされた」
紫怨「水臭いよ、こっそりレコーディングしちゃってさ」
乃子「は、恥ずかしくて・・・」
霊司「Pさん、どんな歌なんですか?」
P 「ん、まあ・・・それより霊司、初動の結果は?」
  ──カチャカチャ
霊司「やっぱり殺芽さんがトップですね。 初日だけで10万推しです」
P 「曲が売れてるからな。乃子の曲は?」
霊司「売れてないです。 SNSでもほとんど話題に・・・あ、本人が反応してます。変な声が入ってるって」
乃子「変な声・・・」

〇音楽スタジオ
鉄「・・・・・・」
ガン「また聞いてるのか。不思議だよな。 幽霊の歌だったりして」
鉄「変な歌ですけど心に響くんです。 恥ずかしいことを恥ずかしげもなく歌ってる・・・」
鉄「不思議なんです。 俺、霊感とかないけど、歌ってる子の顔や名前が浮かんでくるんですよ」
鉄「自分に自信がない、でも譲れない想いがある・・・そんな女の子が一生懸命に歌ってるシーンが」
ガン「不思議だな」
鉄「・・・俺、やりたいことがあるんです」

〇荒廃した教室
  ――さらに1週間後。
P 「今日も地道に営業するか」
乃子「はいっ」
殺芽「足で稼ぐしかない人は大変ね〜。 キャハハ!」

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コメント

  • 面白いですー!!✨そして、乃子が可愛いですね✨😊
    はうーも、なんでやねん!も好きですね✨
    これからどうなって行くのか気になります✨😊🌸

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