私の推しは「眼鏡男子」!!(脚本)
〇一人部屋
「カガミ君?寝てるのー?」
・・・ちさっちゃん・・・
「入るよ!生存確認だけはさせてね!!」
千里「カガミ君?どこー?」
千里(あれ?カガミ君の眼鏡?裸眼じゃほとんど見えないって言ってたのに──)
???「うわあっ!!」
千里「ええっ!?」
???「あ。えっと、その──!」
千里(め、眼鏡が喋ってる!?)
???「──ちさっちゃん」
千里「あ、はいっ!?」
???「僕、カガミなんだ──」
千里「えええええ~~!!!!」
〇黒
2日前まで彼は・・・人間でした。
人間だと、思ってました──
〇黒
〇森の中
???「『──本当に強くなりましたね』」
???「『先生!!』」
???「『さあ、お行きなさい。 ──立ち止まるんじゃ、ありませんよ』」
〇明るいリビング
千里「うわああん!クラウディオ先生!!!!」
カガミ「あー、退場しちゃったねー」
千里「登場からフラグ立ってたけど!!まだいけるって言い聞かせてたのにいっ!!」
カガミ「ちさっちゃんの推し眼鏡が退場するのこれで何人目だろう」
千里「もう数えきれないほど星になったよ・・・」
私は二次元特化「眼鏡男子」大好き女子。
お約束のキャラ死亡シナリオで、我が推し達はいつも見事に画面から消えてく。
千里「無難にラブコメとかだったら途中退場なんてしないの!でも私!バトルもファンタジーも大好きだからっ!!」
カガミ「うんうん。どこか影とかあって一筋縄じゃいかない眼鏡が好きなんだもんね」
千里「そう!そうなんだけど〜!!」
カガミ「温かい物でも飲んで落ち着こう。お風呂も沸かしておいたし、今日はゆっくり休もう。ね?」
千里「都会のお母さん!!カガミ君大好き〜!!」
カガミ「絢香(あやか)さんにも連絡しておいたから。明日話聞いてもらいなよ」
千里「ありがとう!!うちの同居人様ってば神〜!!」
カガミ「僕も納期でゾンビ化してる時にちさっちゃんに助けてもらってるからお互い様だよ」
千里「うん!次の修羅場の時も任せてね!!」
〇テーブル席
絢香「これで付き合ってないなんて、嘘みたいな話なのよねー」
千里「彼は私のオタ心を理解する神なの。恋人なんてそんな浅いもんじゃないのよ!」
千里「これはもう!恋とか愛を超えた「家族の絆」としか言えないわけ!!」
絢香「そうね。確かに彼の理解力は恋人の域を超えてるわ」
千里「うん!ママ達に紹介した時も人畜無害認定もらったし!」
千里「男女超越しちゃって、健全&安全!!」
絢香「でもさ、カガミ君に恋人できたらこの関係も終わりじゃないの?」
千里「最初の頃はそういう不安もあったんだけどなんか彼、恋愛にピンと来ないんだって」
絢香「そういうのあるっていうね。まあ私達も今のところ二次元に忙しいから同類かも」
千里「まだ23だしね。ママ達の修羅場見てるから三次元って大変そうとか思うし」
絢香「ママさんバツ3だっけ?」
千里「そう。姉ちゃん達もバツ1以上でシングルマザー」
絢香「うちの地元そういうの多いよねー。私もゴタゴタが嫌で上京選んだワケだし」
千里「私も勉強頑張って先生味方につけて大学行かせてもらったけど──」
絢香「みなまで言うな。オタクが上京したい本音など推し活以外に他ならんわ!!」
千里「だよね〜!!」
絢香「そうだ。カガミ君から頼まれてたの。生前の推し様、祭壇に供えておいて」
千里「ありがとう!!親友が神絵師で嬉しい〜!!」
絢香「退場のタイミング完璧に把握して結構前から依頼してきたんだよ。さすがよね!」
千里「絢香もカガミ君も神すぎて泣ける!!」
絢香「まあ、傷心には気晴らしも必要だしさ。今度ミネラルショー付き合ってよ!」
千里「ミネラルショー?ってもしかして!!」
絢香「そうなの!『ジュエルファイト』リメイク決定だって!!」
千里「やったね!中学の時のアニメだから10年ぶりか~」
通称『ジュエファイ』は天然石の精霊と少年達のバトルアニメだ。
あの頃のファン達は推しの石を組み合わせて、大いに盛り上がった。
絢香「また推しの祭壇作るつもり!良い石探すからアンタの力も頼りにしてるわよ!!」
千里「え?力って──?」
絢香「とぼけないでよ〜。千里、石に何か憑いてるってよく言ってたじゃない!」
千里「あ、そうだったね・・・」
絢香「ほら!千里の言うこと聞かないで変な石持って行った子が事故ったこともあったでしょ!」
千里「たまたまかもしれないけどね。でも「何かヘン」っていうのは感じてたかな」
絢香「一緒に見てもらった部屋も事故物件だったし。私、アンタの野生の勘信じてるから!」
千里「うん。良い石見つけようね!」
〇繁華な通り
千里(──石っていえば、あの「お守り」引っ越してからどこにやったんだっけ)
〇女の子の一人部屋
千里「あったー!!」
カガミ「どうしたの?こんな遅くまで部屋掃除?」
千里「大切にしてたお守りのこと思い出してね、どこにしまったか確認してたの!」
千里「ほら綺麗でしょ?」
カガミ「え、それ。なんで今更──」
千里「うちの地元って大昔に隕石とか落ちて『宇宙人の里』とか言って町興ししてるの。ウケるよね!」
千里「でもこれ、大好きだったお兄ちゃんと一緒に見つけてね。持ってると何か元気になれたんだ・・・」
千里「何の石かはわからないけど、隕石とかだったらロマンだよねー♪」
──そんなところにあったのか──
カガミ「──っ!!!!」
千里「カガミ君!顔色悪いよ!!──どうかした!?」
カガミ「ううん。何でもない。これから僕ちょっと作業で篭るから・・・ごめんね」
千里「あ、うん。頑張って・・・」
千里(納期は来月って言ってたのにどうしたんだろ。急ぎの手直しとか入ったのかな?)
〇部屋の前
千里「ねえ、カガミ君!生きてる!?倒れてない!?」
千里(2日も顔見てない。私が寝てる間とかに出入りしてるんだろうけどちょっとおかしいよね・・・)
千里(──あれ、鍵開いてる)
千里「入るよ!生存確認だけでもさせてね!!」
〇一人部屋
千里(誰もいない。人の気配はしてたと思ったんだけど──)
千里「カガミ君?どこー?」
千里(寝ぼけてベッドの向こうに転がってる?それともベランダに出て倒れちゃった?)
千里(あれ?カガミ君の眼鏡?裸眼じゃほとんど見えないって言ってたのに──)
私が彼の仕事用デスクに置いてあった眼鏡を手に取った瞬間──
???「うわあっ!!」
私の同居人は喋る「眼鏡」になってしまっていたのです──!!
〇明るいリビング
千里「乗っ取った体に逃げられた!?」
カガミ「乗っ取ったっていうと物騒だけど、ちゃんと合意の上で契約したんだよ?」
千里「ごめん。話についていけないんだけど──つまり眼鏡が「本体」だってこと?」
カガミ「正確には君が持っていたお守りが母体。多分「金属を主成分とした生命体」というのが僕の正体なんだと思う」
千里「もしかして私の地元に落ちた隕石って──」
カガミ「うん。僕じゃないかな?バラバラになって地面に埋まったのを君が見つけてくれた」
千里「でも、お守りがなんで眼鏡に?」
カガミ「ちさっちゃんが「眼鏡好き」っていうなら金属だしなれるかなって思って♪」
千里「へ、へえ〜。ファンタジー。いや、SFなのかなー?」
カガミ「まあまあ。これでも飲んで落ち着いて」
千里「あ、ありがとう・・・」
千里(眼鏡にコーヒーを淹れてもらっている図って一体・・・)
カガミ「こんな姿が本性なんて、気持ち悪いよね」
千里「そ、それは──!?」
カガミ「──君に嫌われたら僕は生きていけない。海に沈んで朽ちる運命を選ぶよ」
千里「何もそこまでしなくても!!」
カガミ「じゃあ、今まで通り僕を君の「家族」として接してくれる?」
千里「・・・・・・」
カガミ「──なんてね。優しい君に無理をさせようとは思わないよ」
カガミ「でもね。僕がいなくなったら君のオタ生活が終わりになってしまうのが気がかりなんだ──」
千里「えっ・・・?」
カガミ「ここの家賃とか君の給料だけでも無理すればいけると思うけど、推しに捧げる力は少なくなるよね?」
千里「ああっ!!もう少ししたら更新料も発生する!!」
カガミ「そう。通勤20分以内。駅近イベント行き放題!この理想郷を手離さなきゃならないなんて!!」
千里「うわああん!どうしよう~!!!!」
カガミ「──こんな姿になったけど念力でPCも動かせるし仕事だって今まで通り!!」
カガミ「僕が君を大好きなのはずっと変わらない!!」
千里「カガミ君──!!」
千里「そうだよね!眼鏡になっちゃったけど、カガミ君はカガミ君だもんね!!」
カガミ「──これからも僕と一緒にいてくれる?」
千里(──背に腹は代えられない)
千里「私は!推し活を取る!!!!」
千里「うんっ!これからもよろしくね!!」
〇朝日
推し活と異星人との同居。
天秤にかけて勝ったのは潤沢なる日々。
新たな「家族生活」がここから始まる──!!
物語の冒頭でクライマックスシーンを持ってくる手法が、ばっちりハマってました。さかなクンも本体はあのフグの帽子だという説がありますね。中尾彬のネジネジとか。実は身に着ける小物のほうが本体の人間って知り合いにもけっこういたりして。
面白い!
素敵なスチルに私も眼鏡男子に倒錯しそうになりました。でも眼鏡だけを愛せるかは自信ないなあと思っていたら、まさかのハイスペで養ってくれるんですね!?
ぜひ、カガミクンをお迎えしたいと思いました!
かわいい表紙に惹かれて読ませていただきました。
面白かったです!😆
メガネ男子いいですよね!
タップノベルの立ち絵にメガネ男子が増えてくれますようにw