第3話 幽霊漫才師、爆誕?(脚本)
〇荒廃した教室
乃子「な、なんで、や、ねん・・・」
死ぬ代「何やその元気ないツッコミは! 死んでんのか!」
乃子「あ、先週死にました」
死ぬ代「素で答えんなや! そこは『もう死んどるがな〜』やろ!」
乃子「も、もう死んでるがな〜」
死ぬ代「手がお留守! ツッコミ!」
乃子「て、ていっ」
死ぬ代「いたっ! 肋骨折れてもうたぞ! 殺す気か!」
乃子「え。死ぬ代さんもう死んで・・・」
死ぬ代「わかっとるわ! ボケをボケで返すなっちゅうねん!」
乃子「す、すみません!」
この人は死ぬ代さん。
事務所の先輩芸人で・・・私の相方さんです。
私は死ぬ代さんと『ザ☆浮遊霊ズ』という漫才コンビを結成して『霊1グランプリ』という霊界の漫才大会に出場するのです。
どうしてこんなことになったのかと言うと・・・
〇荒廃した教室
霊司「乃子さんに3万人の推しがついてますよ」
乃子「3万人!?」
霊司「今日の女の子がSNSに投稿してますね。 乃子っていう幽霊に勇気をもらったって。 その投稿がバズってます」
乃子「それで推しが入るんだ・・・」
霊司「世間に乃子っていう幽霊が認知されましたから」
P 「3万あればしばらくは現世に留まれるな」
乃子「よかった・・・」
霊司「推しに応じてREICAも3万振り込まれてますよ」
乃子「REICA?」
紫怨「霊界のお金さ」
乃子「死後の世界にもお金? 何に使えばいいんでしょうか・・・」
P 「お前、死んだとき鼻血を出してスカート捲れてただろ」
P 「だから今爽介くんに会いに行ってもその姿なわけだけど」
乃子「改めて言わないで・・・」
紫怨「REICAを使えば鼻血を消したり、衣装を変えたりできるのさ」
乃子「えっ! ほ、本当ですか!?」
乃子「あの、鼻血を消して服の乱れを直して、あと髪型もちょっと整えたらどれくらいかかりますか?」
紫怨「100万くらいかねぇ」
乃子「ひゃくま・・・」
P 「霊界は物価が高いんだよ」
乃子「・・・REICAを稼ぐのって推しを得るしかないんですか?」
P 「基本そうだけど、霊界のイベントでももらえるぞ」
P 「そういやちょうど出演者を募集してるイベントがあったな。 確か優勝賞金が100万REICA・・・」
乃子「で、出ます!」
P 「マジで?」
乃子「ちゃんとした姿で爽介くんに会えるなら、私、何でもやります!」
P 「お、言ったね? じゃあがんばってみよっか、漫才!」
乃子「え? 漫才?」
〇荒廃した教室
死ぬ代「やめさせてもらうわ!」
乃子「そ、そんなこと言わずにお願いします・・・!」
死ぬ代「アホ! これは漫才が終わるときのお約束や!」
乃子「そ、そうなんですね・・・」
P 「よう、調子はどうだ」
死ぬ代「あかんな。素人丸出しや」
乃子「・・・す、すみません」
死ぬ代「技術的なことより、まずはハートやな。 大事なのは自分の喋りで誰かを笑顔にしてやるっちゅうエゴやで!」
乃子「は、はい!」
〇廃列車
乃子「なんでやねん・・・なんでやねん・・・」
P 「心霊スポットでツッコミの練習すんなよ。 雰囲気台無しだぞ。 いや一周回って逆に怖いけど」
乃子「死ぬ代さんの足を引っ張らないように少しでも練習しなくっちゃ」
P 「お前さ、REICA稼ぎもいいけど、推しを得ないと現世に留まり続けられないの忘れてない?」
乃子「忘れてないです。でも現世に残って爽介くんに会うためには、推しとREICAの両方を稼がなくっちゃ・・・」
P 「ま、そうね。 そのために心霊スポットに営業に来てるわけだけど・・・」
乃子「誰も来ませんね・・・」
P 「こないだみたいな自殺志願者なんてそうそう来ないし・・・お?」
乃子「だ、誰か来ました!」
芸人「・・・・・・」
P 「思いつめた顔してるぞ。 また自殺志願者じゃないか?」
芸人「・・・実は僕、自殺しようと思ってるんですよ」
乃子「え! ホントに自殺志願者? 止めなくちゃ!」
P 「今から自殺するやつがこんなこと言うか? てか誰に言ってんだよ」
乃子「だめです、考え直してください!」
P 「聞こえてないな。 てかブツブツ呟いてるけど」
芸人「・・・もういいよ! ありがとうございました〜」
乃子「え?」
芸人「だめだ、こんなんじゃ相方に怒られる! 漫才の大会は明日なのに・・・」
P 「こいつ芸人か? なんでこんなとこでネタの練習してんだ」
芸人「1人で練習しててもうまくできない・・・ いっしょに練習してくれる人がいれば・・・」
乃子「あ、あのっ!」
芸人「わっ、誰!?」
乃子「あ、えっと、き、聞こえますか? 私、乃子って言う・・・ゆ、幽霊です」
芸人「えっ? うわっ! ホントだ! ぼんやり光ってる!?」
乃子「あ、逃げないでください! 脅かすつもりはないんです」
芸人「・・・幽霊なのに?」
乃子「あの、何か事情があるんですか? こんな場所で練習なんて」
芸人「いえ・・・僕、人前だと緊張してうまくしゃべれないんです。 それで人気のない場所を探して・・・」
P 「だからって心霊スポット来るか?」
芸人「相方にも呆れられてて、明日までに仕上げてくるって約束してきたんですけど・・・」
乃子「あの・・・私に練習の相手をさせてもらえませんか? 私も漫才勉強したいんです!」
芸人「幽霊が漫才?」
乃子「事情があって・・・」
芸人「・・・このチャンスを逃したらもう練習の時間がない。 わかりました、お願いします!」
芸人「ではそちらの幽霊さん、漫才見ててもらえますか?」
P 「え、俺?」
〇廃列車
芸人「どうも、ありがとうございました〜」
乃子「・・・どうでした?」
P 「乃子が暗いのはいいとして・・・何でお前まで暗いんだよ! 仮にも芸人だろ?」
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