11本目:枯れ木に花を咲かせましょう(前)(脚本)
〇見晴らしのいい公園
死神「・・・なるほど。その後は」
支倉 マサヨシ「レンはアルバイトを諦め 勉学に励み 私が指定した高校と大学を受験」
支倉 マサヨシ「一人暮らしを始めた後 実家に帰りませんでした」
支倉 マサヨシ「・・・私を避けていたのでしょう」
支倉 マサヨシ「サクラとは 外で会っていたようです」
支倉 マサヨシ「・・・レンと再会したのは サクラが緊急入院した夏のことでした」
支倉 マサヨシ「私は サクラがガンを 患っていたことを知りませんでした」
支倉 マサヨシ「初めて 息子に怒鳴られましたよ。 『全部 親父のせいだ』と」
支倉 マサヨシ「愚かな私は その言葉の意味を 理解できませんでした」
支倉 マサヨシ「・・・サクラが危篤に陥る数日前。 その日の会話でようやく分かったのです」
〇病室のベッド
──数年前
支倉 マサヨシ「サクラ」
「マサヨシさん・・・」
支倉 マサヨシ「具合はどうだ?」
「これは夢ね・・・」
「だって マサヨシさんが 気にかけてくれるなんて・・・」
支倉 マサヨシ「夢・・・」
「なんて 幸せな夢・・・」
支倉 マサヨシ「サクラ すまなかった・・・」
〇見晴らしのいい公園
支倉 マサヨシ「サクラの言葉を聞いて」
支倉 マサヨシ「これまでの自分の行いを恥じました」
支倉 マサヨシ「家族のためだと言いながら 結局 私は自分のために生きていた」
支倉 マサヨシ「・・・父親失格だ。と」
死神「・・・そういうことでしたか」
支倉 マサヨシ「先にサクラが逝き 私は このままではいけない」
支倉 マサヨシ「何とかして レンと 対話しなければならないと思いました」
死神「その志半ばで あなたは 命尽きてしまった・・・と?」
支倉 マサヨシ「ええ。そういうことです」
死神「あなたが 花屋を始め 花言葉を覚えたのも──」
支倉 マサヨシ「花が好きだったからです。レンが」
支倉 マサヨシ「私が 家族と繋がれるものは これしか ありませんでしたから」
死神「それなら 全ての理由に納得がいきますね」
死神「・・・でしたら このような結末。 なおのこと 本意ではないのでは?」
支倉 マサヨシ「ええ。でも 仕方がありません」
支倉 マサヨシ「それに。これ以上 あなたに ご迷惑をおかけしたくないですから」
支倉 マサヨシ「・・・失望したでしょう?」
死神「なぜ?」
支倉 マサヨシ「私自身 立派に 生きてきたわけでもないのに」
支倉 マサヨシ「花屋で 恋人やご家族との関係に悩む お客様に対し 忠告していたことに」
死神「・・・失望はしていませんね」
死神「あなたは ご自身の行いを 省みているじゃないですか?」
〇お花屋さん
それは つまり
『自分のようにならないでほしい』
『つらい思いをしないでほしい』
そう ご自身の教訓を活かし
皆の幸せを願ったのだと──
〇見晴らしのいい公園
死神「私は思いましたので」
支倉 マサヨシ「・・・買い被り過ぎです」
支倉 マサヨシ「・・・そろそろ逝きましょうか。 道案内 よろしくお願いします」
「店長さん!!」
支倉 マサヨシ「あなたは・・・どうして・・・」
天草 アイ「どうしてって・・・ それ こっちのセリフですよ!」
天草 アイ「友達から花屋が無いって聞いて SNSを見たら噂になってて・・・」
天草 アイ「夜逃げしたんじゃないか?とか 建物ごと消えるのはおかしい!とか」
天草 アイ「それで この間 会った人たちの投稿と アヤメが好きな女優さんの投稿に」
天草 アイ「#花屋のおじいさんを探せ! ってタグと画像があったから・・・」
〇部屋のベッド
水野 ユカ「確か 顔はこんな感じ・・・ あ〜 似てる有名人 いたっけ!?」
水野 ユカ「えぇい!タグ付けて送信!」
水野 ユカ「はぁ。心配だな」
〇学校の廊下
間宮 シノブ(YU-KAさんの投稿!)
間宮 シノブ「#花屋のおじいさんを探せ! YU-KAさんらしいや」
間宮 シノブ「私もお手伝いしよう」
〇公園通り
新井 ショウゴ(#花屋のおじいさんを探せ!)
新井 ショウゴ(この絵 似てるっちゃ 似てっけど なんか足りない気がすんなぁ?)
新井 ショウゴ「うーん?」
村田 カスミ「キャッ!!」
村田 カスミ「ショウゴくん!? なんで!?」
村田 カスミ「えっ。わざわざ ここまで 会いに来た訳じゃ──」
新井 ショウゴ「違っ!偶然!偶然っス!」
村田 カスミ「そ そっか。そうだよね。 それにしても歩きスマホは危ないよ」
新井 ショウゴ「ハイ・・・ これが気になって つい」
村田 カスミ「#花屋のおじいさんを探せ! あれ?これ 眼鏡が足りないね?」
新井 ショウゴ「それだ!!!!」
〇劇場の楽屋
一条 アキ「ユキ姉。この絵と眼鏡だけだと ピンとこないよね」
ユキ「確かにね。他の特徴が あればいいんだけど」
女性「お二人とも 何のお話ですか? ・・・あぁ 噂の店長!」
女性「私の友人 常連だったみたいで。 山谷ユタカさんに激似らしいです」
女性「本物に会えないから 店長で満足してたらしくて──」
一条 アキ「この情報なら探しやすいよね?」
ユキ「うん。そうだね」
〇学校の廊下
支倉 レン「大原!暗いぞ!どうした?」
支倉 レン「卒業に寂しくなったか?」
大原 ヒロト「いえ。気になることがあって」
支倉 レン「気になること?」
大原 ヒロト「僕が行った花屋と店長。 急に無くなったって騒ぎになってて」
支倉 レン「そうか。それは残念だな」
大原 ヒロト「僕 店長に助けてもらったのに ちゃんとお礼を言えてなくて」
支倉 レン「助けてもらった?」
大原 ヒロト「先生。僕 死ぬことを考えてました。 親も 先生も 勉強と自慢のことばかり」
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境遇や人生、人間関係等の悩みを抱える各話の主人公を優しく諭し導いた花咲さん、彼もまた悩みを抱える存在だったのですね。だからこその重みのある言葉だったのかと。
ふたたびの生も終わり間近の花咲さんことマサヨシさん、彼の願いは結実するのか、最終回が楽しみです