枯れ木に花を咲かせましょう

落花亭

10本目:支倉マサヨシについて(脚本)

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〇空
  人は、大なり小なり悩みを抱えている

〇高級一戸建て
  そして
  かつて”人だった”者も──

〇おしゃれなリビングダイニング
  ──2月27日
「ど どういうことなの・・・?」
支倉 マサヨシ「混乱しているところ 申し訳ないのですが」
支倉 マサヨシ「息子と二人きりにさせて いただいてもよろしいですか?」
「えっ・・・?」
支倉 レン「今は この人の言うことを聞いてくれ」
「わ わかったわ・・・」
支倉 マサヨシ「あの。子どもたちのケアを お願いいたします」
支倉 レン「・・・花屋でアンタの顔を見たとき」
支倉 レン「親父の幽霊だと思ったんだ。 あまりにも似てたから」
支倉 レン「そのまさか だったとはな」
支倉 マサヨシ「信じてくれるのか?」
支倉 レン「嫌でも信じるしかないだろ。 その姿で!死因も一致してたら!」
支倉 レン「・・・何しに戻ってきたんだよ」
支倉 マサヨシ「・・・罪を償いにきた」
支倉 マサヨシ「”教育”と称して レンに与えた”呪い”を解くために」
支倉 レン「”呪い”?」
支倉 レン「俺は呪われてるなんて 一度も思ったことがないよ」
支倉 レン「むしろ 教育については感謝してる」
支倉 レン「親父が教えてくれたことは 全て正しかったからな」
支倉 マサヨシ「・・・正しいなら この状況はなんだ?」
支倉 マサヨシ「間違っているから こうなっているんじゃないのか!?」
支倉 レン「間違ってなんかないさ。 俺の指導が甘かっただけ」
支倉 レン「反抗の度が過ぎてるからな。 もっと厳しくしないと──」
  お前には 子どもが
  刃物で襲いかかる理由が
  ”心の叫び”ではなく
  ”反抗期”だと
  そう思うしか
  ”方法”がないのだな
支倉 マサヨシ「・・・歪んでしまったお前を見て 私は 私が憎くてたまらないよ」
支倉 レン「さっきから『呪い』だの 『歪んでしまった』だの」
支倉 レン「ひどい言いようじゃないか」
支倉 レン「唯一 俺が歪んだと自覚するなら 親父がお袋を殺したことだな」
支倉 レン「それだけは死んでも許さない」
支倉 マサヨシ「レン・・・」
支倉 レン「悪いけど帰ってくれないか?」
支倉 レン「部屋の片付けが残ってるし 家族とも話がしたいからな」
支倉 レン「家を訪ねることも控えてほしい」
支倉 マサヨシ「・・・分かった」
支倉 マサヨシ「ただ レン。 これだけは覚えていてくれ」
支倉 マサヨシ「子どもの”未来”は子どものものだ。 親のものじゃない」
支倉 マサヨシ「どうか 子どもの”心の声”を 無視しないでくれ」
支倉 レン「・・・俺の頃はそんなこと 一言も言わなかったくせにな?」
支倉 レン「今更 何を偉そうに」
支倉 レン「早く出ていってくれ!」

〇街中の道路
  ──フローリスト・ハナサカ前

〇お花屋さん
「”あの者”の元へ行かれたのですね」
謎の男「花咲さん」
店長・花咲「・・・私はもう”花咲”ではありません」
店長・花咲「”支倉マサヨシ”です」
謎の男「・・・マサヨシさん」
支倉 マサヨシ「・・・彼は 私の状態を 受け入れてくれましたが」
支倉 マサヨシ「私の言い分は 聞き入れてくれませんでした」
支倉 マサヨシ「当然と言えば当然です」
支倉 マサヨシ「長年 植え付けられた価値観は 早々 変えられるものではない」
支倉 マサヨシ「・・・失敗です」
支倉 マサヨシ「──あなたには色々と お手数をおかけしました」
支倉 マサヨシ「フローリスト・ハナサカは 本日をもって閉店といたしましょう」
支倉 マサヨシ「ここにある全ての物」
支倉 マサヨシ「いや 建物ごと解体していただきたい」
謎の男「・・・かしこまりました」

〇街中の道路
  ──2月28日
村田 カスミ(大変!遅刻しちゃう!)
村田 カスミ(皆 スマホで何してるんだろう?)
村田 カスミ「えっ!?」
「お花屋さんが無くなってる!?」

〇綺麗な一戸建て
「行ってきます」
大原 ヒロト「花屋が・・・!?」

〇劇場の楽屋
「アキ!!」
ユキ「今 そこでスタッフ同士が 話してたの 聞いたんだけど」
ユキ「あの花屋が無くなったって!」

〇学校の廊下
女子生徒「SNSでバズった花屋さん 無くなったんだって!」
女子生徒「マジ!? 私 一回も行ってないのに〜!!」
間宮 シノブ(YU-KAさんに知らせないと・・・!!)

〇部屋のベッド
水野 ユカ「うう〜〜ん・・・何ぃ?」
「おじいさんのお店が無いって どういうこと!?」

〇街中の道路
新井 ショウゴ「はっ!?」
「嘘だろ!? 何もねぇじゃねぇか!?」

〇学校の校舎

〇教室
男子生徒「なぁ。何とかハナサカって お前と一緒に行ったトコ?」
天草 アイ「うん。そうだけど?」
男子生徒「SNSで『無くなってる』って 拡散されてんだけど」
天草 アイ「そ それっていつから!?」
男子生徒「朝から」
天草 アイ(嘘だろ。なんでいきなり・・・!?)

〇見晴らしのいい公園
  ──丘陵公園
支倉 マサヨシ「──この街は いつ見ても美しいですね」
支倉 マサヨシ「最後のわがままにお付き合いくださり ありがとうございます」
支倉 マサヨシ「・・・死神さん」
死神「まぁ・・・”仕事”ですから」
支倉 マサヨシ「・・・この場所。妻とレンと 一度だけ訪れたことがあるんです」
支倉 マサヨシ「桜が咲いた3月のことでした」
支倉 マサヨシ「家族と笑い合った記憶はこれだけです」
支倉 マサヨシ「今 思うと もっと家族の側にいればよかった」
支倉 マサヨシ「家族と向き合えばよかったと。 後悔しないときはありません」
死神「マサヨシさん」
死神「霊魂となったあなたが」
死神「『やり残したことがある』と 私に懇願してきた半年前」
死神「私はその理由を尋ねませんでした」
死神「霊魂に不要な感情を抱かないよう」
死神「一定の距離を保ちながら 行動を監視するためです」
死神「・・・ですが 人間界に 身を置きすぎたせいでしょうか?」
死神「私は あなたに”興味”を抱いてしまった」
死神「生前の行い。 ”あの者”に執着する理由を」

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コメント

  • 久しぶりの更新……嬉しいです!
    花咲さんの正体が明らかになったところだったので、更新を待ち望んでいました。
    お店が無くなってしまったことで、良縁を結んだ各キャラが慌てふためいていますが、お店は、そして花咲さん、いやマサヨシさんは……
    物語が着陸態勢なのを感じ取れますが、どこに、どのような形での着陸か、すごく楽しみです!

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