枯れ木に花を咲かせましょう

落花亭

9本目:支倉レンについて(脚本)

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〇街中の道路
  人は、大なり小なり悩みを抱えている

〇お花屋さん
  ──2月26日
支倉 レン「──”親父”?」
支倉 レン「・・・んなわけないよな」
支倉 レン「親父は とっくにくたばってるし」
支倉 レン「失礼!いきなりすみませんね 親父にそっくりだったので つい」
店長・花咲「いえいえ。いらっしゃいませ」
支倉 レン「私 少し離れた先にある コウヨウ中学の教諭でして」
支倉 レン「生徒から面白い話を お聞きしましてね。なんでも」
支倉 レン「『花屋に死神がいる』とか何とか」
支倉 レン「調べたら住所が実家だったので 立ち寄らせていただきました」
支倉 レン「大原め。俺を騙したな。 死神なんていない──」
店長・花咲「その生徒は元気にしておられますか?」
支倉 レン「ええ!」
店長・花咲「そうですか。安心しました」
支倉 レン「こう見えて私 花には詳しいんです。 母が好きだったもので」
支倉 レン「どれも新鮮だ。傷みが見られない。 きちんと水揚げされている証拠ですね」
支倉 レン「・・・母が生きていれば 連れてきてやったのにな」
支倉 レン「親父のせいで──」
店長・花咲「・・・その。お父様とは」
支倉 レン「あぁ すみません!私の事情ばかり! 気になさらないでください」
「こんにちは。フラワーアレンジを お願いしたいんですが・・・」
支倉 レン「お客ですね。また機会があれば 立ち寄らせていただきます」
店長・花咲「待ってくれ!レ──」
謎の男「花咲さん!本名を呼んでは 怪しまれてしまいます」
謎の男「ここは堪えてください」
店長・花咲「やっと息子に会えたと言うのに・・・」
謎の男「まだ お時間はあります」
店長・花咲「まだ と言っても残りわずかだ。 その間に来なかったら?」
店長・花咲「全て無駄骨に終わってしまう・・・」
店長・花咲「いっそ正体を明かして──」
謎の男「花咲さん。冷静になりましょう。 仮に あなたが父親だと明かして」
謎の男「あの者が すんなりと 受け入れると思いますか?」
謎の男「本来のあなたは ”ここに存在しない”のですよ?」
「あ あの・・・ お忙しいようなので今日は帰ります」
「──申し訳ありません。 またのお越しをお待ちしています」
店長・花咲「くっ・・・」

〇高級一戸建て

〇おしゃれなリビングダイニング
支倉 レン「帰ったぞ」
レンの娘「お父さん おかえりなさい」
支倉 レン「ただいま。良い子にしてたか?」
レンの息子「父さん おかえりなさい」
レンの息子「あのさ。来年の受験で 相談したいことがあるんだけど」
支倉 レン「あぁ。夕食の後でな」
レンの息子「・・・」

〇男の子の一人部屋
支倉 レン「それで?相談ってなんだ?」
支倉 レン「分かった。第一志望を 国立大附属サカエ高校に変更だな?」
レンの息子「俺 私立ソウケン高校に行きたい」
支倉 レン「・・・冗談はやめてくれ」
レンの息子「本気だよ。本気でここに行きたいんだ」
支倉 レン「駄目だ!」
支倉 レン「ソウケン高校なんて 馬鹿でも入れる学校だぞ!?」
レンの息子「馬鹿って・・・」
支倉 レン「教員の質は低く 勉強もろくに教えられない」
支倉 レン「そんな高校になんの価値がある!」
支倉 レン「絶対に駄目だ!!」
レンの息子「それでも俺 行きたいんだよ・・・」
支倉 レン「まさか。友達の第一志望が そこだから ではないよな?」
支倉 レン「・・・図星か」
支倉 レン「その友達は悪影響だ。 今すぐ縁を切りなさい」
支倉 レン「お前に合う優秀な奴が 他にもいるだろう?」
レンの息子「なんで父さんに友達のことまで 口出しされなきゃいけない──」
支倉 レン「俺は お前を思って 言ってるんだ!!」
支倉 レン「いいか?学校はな 社会的信用とつながってる」
支倉 レン「どんなにお前が優秀でも 学校の評判が低ければ」
支倉 レン「そこに属してる お前の価値も下がるんだ」
支倉 レン「父さんは 優秀なお前が 馬鹿なんだと思われたくない」
支倉 レン「ソウケン高校には行かせない。 分かったな?」
レンの息子「・・・クソッ」
レンの息子「クソクソクソクソッ」

〇おしゃれなキッチン
支倉 レン(参ったな。仕事なのに寝付けない)
支倉 レン(まさかアイツがあんなこと 言い出すなんて)
支倉 レン「・・・」

〇狭い畳部屋
  ──14歳の春
レン「お父さん!あのね」
レン「高校生になったら 花屋でアルバイトしたいんだ」
「────!!」
レン「どうしてそんなこと言うんだよ・・・」
「────!?」
レン「分かったから! 言う通りにするよ・・・」

〇おしゃれなキッチン
支倉 レン(今更になって昔の記憶が・・・)
支倉 レン「寝て忘れよう」

〇高級一戸建て
  ──翌日

〇おしゃれなリビングダイニング
「あなた。コーヒー」
支倉 レン「ありがとう」
「──■■市で昨夜 40代の男性が 包丁で腹部を刺され 死亡した事件で」
「この家に住む18歳の長男が 殺人の疑いで逮捕されました」
「警察の調べによりますと 長男は 『親が憎かった』と供述しており──」
「子どもが親を殺すなんて。 物騒な事件で嫌になるわ」
支倉 レン「18歳ということは 大学受験が控えてたんだろう」
支倉 レン「養ってもらってる身なのに 全く理解できないな」
支倉 レン「うちの子どもたちは 道を踏み外さないように」
支倉 レン「しっかりと教育していかないと」
支倉 レン「ごちそうさま。行ってくるよ」

〇白い校舎

〇学校の廊下
女子生徒「もうすぐで卒業だね〜」
女子生徒「ウチの先生 ウザかったけど ちょっと いや だいぶ寂しいわ」
女子生徒「好きだったんじゃない?」
女子生徒「あー。変に熱かったし。 『心で語り合うのも勉強だ!』とか」
女子生徒「支倉先生は?」
女子生徒「いい先生だったよ。 進路の相談も乗ってくれたし」
女子生徒「成績が下がったときも心配してくれたし」
女子生徒「けど それだけかな」

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コメント

  • ついに花咲さんの正体が明かされましたね!そして、レンさんとの父子関係がちょっとアレな様子で……。レンさんの価値観やその息子との関係は、花咲さんとの関係の世代間連鎖なのか否か、真相が気になります。
    それにしても、子供達を「テスト成績」だけで評価判断する大人達、幼き頃の私の周囲にも山ほどいました。。それによる理不尽な扱いなどの記憶が一気に蘇りました( ´ཫ` )

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