12話「残るトラウマ」(脚本)
〇基地の広場(瓦礫あり)
ミカ「・・・」
荒野を埋め尽くす何十万もの武装した人々。
人々は剣を持ち、槍を持ち、弓を持ち、殺し合っている。
私を殺そうとする敵に日本刀を振りかざし続ける。
殺すたび罪悪感に押し潰されそうになりながら、もう100人以上殺した。
殺されるのでわないかと、不安や恐怖に襲われ続け、怪我するたびに歯を食いし張り進み続けた。
何度も戦場から逃げたいと考えたが、ここから逃げれば国が滅ぼされより多くの人々が死ぬ事になる。
そう考えると逃げられなかった。
戦いに勝利した後戦場になった荒野を見渡した。
茶色かった荒野は血で赤く染まり、どちらが勝ったか分からない数の敵と味方の死体が転がる。
まさに地獄の様な光景。
後何度この光景を見ればいいのだろうか?
〇英国風の部屋
部屋の窓から光が入り、ちょうど目のあたりに当たり目がさめた。
白いベッドから出て背伸びをする。
また、見たくない夢を見た。
ひたすら敵を殺し続ける悪夢。
忘れたい記憶が夢のせいで鮮明に思い出された。
嫌な現実が頭をよぎる。
ミカ「私は英雄以前に人殺し‥か‥」
目を背けていた自分に死んだ仲間や敵が「こっちを見ろ」と言っているように感じた。
ミカ「私は・・・」
騎士「こっちを見ろ・・・」
騎士「思い出せ」
魔王「お前は人殺しだ」
ミカ「私は・・・」
不知火 明花「ミカ!起きたか?」
同居人の声で我に帰る。
不知火 明花「朝飯できてるぞ!」
訳あってうちに居候しているその女性はミカの心境を察してかあえて何時ものように笑顔で接してくれる。
ミカ「はい!すぐ行きます!」
〇英国風の部屋
東軍の朝は早い。
4時30分に起床し、朝食を取り、身なりを整える。
洗面所の鏡の前で服装を確認した。
瞳が赤く輝きの無い中年男性が映る。
少し前までは軍服だったが昇進し、与えられる任務が変わったことにより私服での行動が許された。
アレックス・ワトソン「いくか・・・」
こちらの世界での生活にもなれてはきたがハードな仕事には慣れない。
自分で選んだ仕事とは言え通勤時は何時も憂鬱だ、だ。
〇レンガ造りの家
玄関を出ると隣の一軒家の玄関をはわく少女がいた。
異世界とは言え着物は目立つなと改めて思うが逆に言えばそれだけ多様性が認められていると言う事だ。
アレックス・ワトソン「おはよう。朝早いんだな」
不知火 明花「ああ。おはよう。俺はこれから朝飯やら弁当やら作るからな。あんたも大変だな」
アレックス・ワトソン「なにがだ?」
不知火 明花「東軍だろ?俺達学生には8時仕事開始って言ってたぜ。なのにあんたはバカみたいに早く通勤してる。・・やっぱりブラックなのか?」
アレックス・ワトソン「まぁ・・・厄介な仕事が入って今忙しいからな」
不知火 明花「あー・・・これ以上は不味そうだから聞かないでおく」
アレックス・ワトソン「そうしてくれると助かる。ところで話は変わるがミカの部屋は2階か?」
不知火 明花「そーだけど・・・え?お前まさか!?」
アレックス・ワトソン「違うストーカーじゃない。たまたま昨日は遅くなってな」
不知火 明花「たまたま?何時もじゃなくて?」
アレックス・ワトソン「一時頃まで明かりが付いてた。‥勉強は朝の方が頭に入るし、体に悪いから早く寝ろって伝えてくれ」
不知火 明花「そんな時間に帰ってきてるあんたの方がヤバそうだけど?」
〇兵舎
石白 星華「おはようアレックス!」
アレックス・ワトソン「おはよう」
石白 星華「お湯がわいてるよ。お茶つごうか?」
アレックス・ワトソン「頼む」
何時もなぜか一番乗りしているこの女性はアレックスのバティ「石白 星華 」。過去に魔王軍にいた経歴を持つ優秀な軍人だ。
お茶を待つ間に昨日まとめた担当している放火事件の書類に目を通す。
書類にはここ数ヵ月の間に起きた火事についての情報が書かれている。
容疑者は元魔王軍所属のヘリス・ゴンザリス。
戦時中は戦争犯罪をおかし続けていたサイコパスの代表的な人物で所在は不明。
得意としているのは炎関係の魔術で犯行にも使っていた可能性が高いとみて捜索している。
石白 星華「どうぞ」
アレックス・ワトソン「これは・・・」
見覚えがある。
コップには、麦茶でも紅茶でもない、緑の液体が入っていた。
一口飲み確信する。
程よい苦味と渋み、それらが口の中に広がる。
アレックス・ワトソン「緑茶か」
石白 星華「ごめん!合わなかった?」
アレックス・ワトソン「いや!うまいよ。ありがとう」
石白 星華「そうか・・・よかった」
クロ「全員そろったようだな」
アレックス・ワトソン「あんた入れて三人だけどな」
石白 星華「おはようございます!総帥!相変わらず大きな隈ですね!ちゃんと寝れてます?」
クロ「うるせぇ!余計なお世話だ!あと俺はもう総帥じゃないからその呼び方止めろ」
クロ「本日俺達無裏郡については昨日に引き続き放火事件の調査を行う。 魔王協会が絡んでいる可能性が高いため慎重に行え」
アレックス・ワトソン「了解した」
石白 星華「了解です」
現在俺が勤務しているのは東軍の特殊対魔王教会特殊作戦郡 通称「対魔教」。
戦後各地で暴走している「魔王軍」による虐殺事件を重く見た東の国が対魔王教会を意識して立ち上げた部隊である。
この部隊の一番の特徴は「元魔王軍」と「魔王協会との戦闘経験」がある隊員のみで編成されている事だ。
クロ「事後は必ず二人以上で行動しろ。 別れ!」