セーブポイント(脚本)
〇教室
サムライ先生「皆の者。 よくぞここまで来た!」
教壇に立ったサムライ先生。
本名は井寺だが、イ寺と書いてサムライ。
落ち武者と呼ぶ生徒もいる。
しかし、
ここはセーブポイントのはずだが・・・
サムライ先生「明日はいよいよ期末試験。 備えあれば憂いなし! 文房具の用意も完璧に行え!」
サムライ先生「必要ならば備えよ! えんぴつ 10G◀ 消しゴム 15G ノート 20G 下じき 15G」
サムライ先生「必要ならば備えよ! えんぴつ 10G 消しゴム 15G ノート 20G◀ 下じき 15G」
ノートは持っている。
サムライ先生「えんぴつ 10G 消しゴム 15G ノート 20G 下じき 15G 三角定規 30G◀」
サムライ先生「どちらの三角定規だ。 45°・45°・90° 30G◀ 30°・60°・90° 30G」
サムライ先生「どちらの三角定規だ。 45°・45°・90° 30G 30°・60°・90° 30G◀」
サムライ先生「よし、売った! 獅子奮迅の働きを見せよ!」
三角定規を手に入れた。
サムライ先生「セーブして進みますか。 準備がまだ ◀ いざ、臨む!」
サムライ先生「セーブして進みますか。 準備がまだ いざ、臨む! ◀」
しばらくお待ちください・・・
〇魔界
勇者は三角定規を使った!
魔王に0のダメージ!
魔王「ガハハハ! そんなもので我を倒せるとでも? おこがましいわ!」
魔王の攻撃。
勇者に8100000のダメージ
勇者は力尽きた・・・
〇公園の砂場
カイ「でさ、ここで詰まるわけよ」
シュウ「だよな~ボス強いから」
カイ「ボスの強さより、こっちの弱さだろ? そもそも文房具って戦力になるわけ?」
シュウ「さすがに文房具では勝てないだろうな」
カイ「じゃあ最後の教室って、 体力回復するためだけの部屋なのか?」
シュウ「それはないな。ボス戦の前日だろ。 最も緊張感が高まる場面で、 お遊び対応するかな・・・」
カイ「でも、期末試験とか、サムライ先生とか。 このエリアだけ、設定なし崩しだぜ!」
シュウ「こう考えたらどうだ? 非現実における現実は、非現実に等しい。 つまり教室は、あっちの世界では異世界。 ということは・・・」
カイ「勇者にとっては、幻?」
シュウ「その通りだ。 三角定規は幻影。 幻影をぶつけても、魔王には勝てない!」
カイ「じゃあ、魔王に勝つには?」
〇教室
サムライ先生「皆の者。 よくぞここまで来た!」
サムライ先生「必要ならば備えよ! えんぴつ 10G◀ 消しゴム 15G ノート 20G 下じき 15G」
サムライ先生「必要ならば備えよ!◀ えんぴつ 10G 消しゴム 15G ノート 20G 下じき 15G」
サムライ先生「・・・・・・・・・◀ 必要ならば備えよ! えんぴつ 10G 消しゴム 15G」
サムライ先生「・・・・・・・・・◀ ・・・・・・・・・ 必要ならば備えよ!」
サムライ先生「・・・・だ・・・・◀ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・」
サムライ先生「・・・・ス・・・・◀ ・・・・だ・・・・ ・・・・・・・・・」
サムライ先生「・・・・ボ・・・・◀ ・・・・ス・・・・ ・・・・だ・・・・」
サムライ先生「・・・・が・・・・◀ ・・・・ボ・・・・ ・・・・ス・・・・ ・・・・だ・・・・」
サムライ先生「・・・・私・・・・◀ ・・・・が・・・・ ・・・・ボ・・・・ ・・・・ス・・・・ ・・・・だ・・・・」
ボスが現れた!!
〇公園の砂場
シュウ「はい、隠しステージ発見!」
カイ「こんなの気づくかよ! てか、先生がボスとか、マジ弱じゃねえ?」
シュウ「確かにね。 でも、本気で戦うつもりかい?」
カイ「え?ボスだったら戦うしかなくないか?」
シュウ「忘れてないかい? ここは、勇者にとっての非現実世界。 勝利しても、ゲーム進行には影響ないよ」
カイ「え・・・ すると、先生と戦っても無意味?」
シュウ「その通り! 先生と戦ってる場合じゃない」
カイ「じゃあ、おれはどうすれば・・・」
シュウ「簡単だよ。 勇者が夢から目覚めさえすればいい・・・」
カイ「そうか、夢の中だもんな!」
カイ「でもさ、勇者が目覚めるための コマンドなんかないぞ」
シュウ「落とすんだよ」
カイ「何を? ・・・って、おい!」
ゲーム機が壊れた!
〇兵舎
カイ「・・・・・・!」
カイ「夢か・・・」
ウェンズ「カイ、どうかしたのか?」
カイ「いや、妙な夢を見ただけだ」
ウェンズ「おいおい、心配させんなよ。 明日は、魔王とご対面だってのに。 ビビってんじゃねえか?」
カイ「大丈夫だ。 夢は所詮、夢。 必ずや、明日は魔王を討伐してみせる!」
ウェンズ「おう!その意気だぜ! だがしかし、今は休まねえとな。 お休み!カイ」
カイ「ああ、お休み・・・」
〇特別教室
「ああ、お休み・・・」
サムライ先生「おいコラ!授業中だぞ!」
カイ「ふぇ・・・・・・あれ、魔王は?」
サムライ先生「何を寝ぼけてんだ! ゲームのやりすぎか?」
カイ「ボス・・・?」
サムライ先生「誰がボスだ! 早くノートを開いて、問題を解け!」
カイ「は・・・はいっ!」
カイ「くっそぉ、何が何だか・・・」
サムライ先生「こんな問題に手こずってるのか?」
カイ「いえ、違います。 もっと大きな問題で混乱してて・・・」
サムライ先生「集中力が足りんからだ! 明日は期末試験だぞ! もっと精神を磨け!脳を活性化させろ! 備えあれば、憂いなしだ!」
カイ「先生。 三角定規って、必要ですか?」
サムライ先生「おまえ、ふざけてんのか!!」
どうやら、この世界が「現実」のようだ。
ただ、夢でも現実でもサムライ先生は、
ある意味ボスなのかもしれない。
〇特別教室
~ 完 ~
ボスの前のセーブポイントがあるゲームは、わりと親切なほうだと思うんですよ。
たまに長いダンジョンの後に、セーブポイントなしで戦う仕様もありますから。
お友達の解決の仕方がすごいと思いました。笑
(笑)短いお話しの中にししっかり内容が凝縮されていて楽しいストーリーでした。三角定規とは。
今後の続きもあれば読んでみたい気がします。
非現実世界のゲームの中での非現実要素、裏の裏の裏の裏みたいな混沌感がクセになりそうです。ラスボスに三角定規は笑ってしまいました。