読切(脚本)
〇広い公園
放課後。学校近くの児童公園にて──
美樹「いよいよ期限は明日だ!」
この凛々しい少女は、私の親友であり、クラスメイトでもある美樹(みき)だ。
美樹「絶対に今日ここで、あの技を完成させる!」
彼女がいうあの技とは、〝紅いつむじ風〟のこと。私が勝手に名付けたんだけど。
美樹「いち! に! さん! よん!」
美樹は、右足だけの片足スクワットでウォーミングアップを始めた。
なにせ彼女は、太さが左右で違えるほど、ここ数カ月間右足だけを鍛えまくっているのだ。
さらには身体を軽くするため、過酷な黒酢ダイエットも行った。
バスケ部のキャプテンとして活躍する美樹は、もともとが運動神経抜群だ。(ちなみに私はそのマネージャー)
その彼女がここまで修練したのだから、〝紅いつむじ風〟の完成も不可能ではないだろう。
ただし、ともなう危険があまりに大きすぎる・・・!
美樹「あたしの前に現れる者全員を、この技で恐怖のどん底に叩き落とす!」
佳奈「美樹、無理しないでね」
美樹「心配しないで、佳奈(かな)。一発で決めてみせるから!」
美樹は両腕を斜め下に伸ばし、左足をあげて片足立ちになる。カカシのポーズにやや近い。
〇炎
美樹「行くよ!!」
熱血で真っ赤に燃えたぎる美樹は、右足ケンケンで大きく跳ねながら前進する。
もう一方の左足は、絶対に膝より下におろすことはない。
美樹「ちぇすとーっ!!」
美樹は掛け声とともに思い切りジャンプし、空中で横回転をはじめる。
助走も踏み切りも右足一本のため、バレエやフィギュアスケートよりも難易度は高い。
美樹「うおおーっ!」
バターンッ!!
〇広い公園
佳奈「美樹!!」
美樹は一回転半でバランスを崩し、地面に叩きつけられる
美樹「アイタタタタ・・・」
佳奈「美樹、だいじょうぶ!?」
美樹「開催は明日に迫ってるのに。これじゃあ、間に合わない・・・!」
佳奈「やっぱり空中二回転なんて危険すぎるよ!」
美樹「でもこの技を完成させないと、あたしたちの勝利はないわ」
たしかに、それは彼女の言う通りかもしれない。
〇メイド喫茶
1組のメイド喫茶は美人ぞろいだし、
〇装飾された生徒会室
2組の甘味処はお菓子作りの名人ぞろいだ。
〇占いの館
3組の占いの館はかなりの本格派だし、
※二人とも生徒です
〇ジェットコースター
4組にいたっては、グラウンドに手作りのジェットコースターを組み上げてしまった。
※画面はイメージです
〇広い公園
どこのクラスも強敵ばかりだ。
美樹「もう一度やってみるわ! とおっ!!」
ドターンッ!!
美樹「うぐぅ・・・!」
美樹はまた失敗し、土まみれのボロボロの姿になる。
佳奈「美樹、もうやめて! このままだと死んじゃうよ!」
美樹「そうはいかないわ、あたしがリーダーでエースなんだから。この命燃え尽きようともあきらめるわけには・・・」
ピコン♪ ヴヴヴヴヴ・・・
美樹「あたしのスマホだ。誰からだろ?」
それは、いっしょに出し物をするクラスメイトからのものだった。
〝明日はみんなで力を合わせてガンバロウ!〟という胸の熱くなるメッセージ。
昨日、教室で準備作業中にみんなで肩を組んで撮った写真もいっしょに送られてきている。
美樹「みんな・・・」
美樹「そうだった! あたしは一人で戦ってるんじゃないんだ!」
美樹は感動して、ブワッと涙をあふれさせる。
佳奈「そうだよ。美樹にはみんながついてるから。もちろん私もだよ、裏方だけど」
美樹「ありがとう、佳奈。そう思うと気が楽になったよ。なんだか身体も軽くなったような・・・」
美樹「よっと・・・!」
「えっ!?」
美樹は軽く試してみただけなのに、〝紅いつむじ風〟は九分通りうまくいってしまった。
美樹「なんで? これまで何度全力でやっても出来なかったのに・・・」
佳奈「そうか、今まで美樹は気負いすぎで心も体も固くなってたから。それが失敗の原因だったんだよ」
美樹「なるほど! じゃあ、力まずにもっとリラックスしたほうがいいんだ。あたし自身も楽しんで演じるべきなんだ!」
佳奈「うん。いつもの伸び伸びとした笑顔の美樹のほうが素敵だよ!」
佳奈(実際、美樹のファンは校内(女子高)に数多く存在する)
佳奈(特に熱烈なのは下級生たちだ。もちろんそんな有象無象の輩を、美樹に近づけさせたりはしないが・・・)
美樹「よしっ!」
〇キラキラ
美樹はパーカーのフードをかぶって視界を狭くし、本番に近い感じにする。
爽やかで楽し気な彼女は、右足ケンケンでリズミカルに跳ねて前進する。
美樹「ヒュロロロロー!」
そしてジャンプした美樹は笑顔で奇声を発しながら二回転し、〝紅いつむじ風〟を見事に決めた・・・!
佳奈(なんて、華麗な舞なのかしら・・・!)
〇文化祭をしている学校
そして涼風女子高等学校文化祭当日──
私たち2年5組のお化け屋敷は人気を呼び、長蛇の列ができるほどだった。
そして、見事に学年最高売り上げを記録した。
その勝利にもっとも貢献したのは、まちがいなく美樹の名演技だろう。
〇黒背景
(お客の女生徒たち)キャー! キャー!
(お客の女生徒A)カラ傘のお化けだーっ!
(お客の女生徒B)ピョンピョン飛び跳ねてる! クルクル回ってる~!
(美樹)ヒュロロロロー!
練習していたものが、いったい何のためなのかが謎だったんですが、お化け屋敷のお化けだったんですね。
たしかに回転してるお化けってめちゃ怖い気がします!
みんなの思いが成功させたんですよね。
美樹ちゃんの練習していたものが一体何なのか、描写に忠実に想像していたんですが、どうも当てがはずれたようです!(笑)とにかく美樹ちゃんがとても魅力的な女の子だということが、物語に何倍も活気を与えているみたいでした。
めちゃくちゃ楽しく読ませて頂きました!最後のオチがよかったです。短いストーリーの中で上手にお話しが展開されていると思いました。