口臭勇者

マツモトスギ

第一話「平和の終焉」(脚本)

口臭勇者

マツモトスギ

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口臭勇者
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〇モヤモヤ
  ──100年前、この世界は滅びた・・・。
  悪の科学者、サイが産み出した
  「災厄の生物兵器」。
  その力は草木を枯らし、水を腐らせ、大地を黒く染めていった・・・。
  そこから始まったのは、サイが産み出した生物兵器が人々を支配する、まさに絶望の時代。
  この世界の誰もが、生きる事を諦めた。
  そんな時だった・・・。
  "俺たちは・・・!作り物の悪魔になんか・・・!負けたりしないッ!!!"
  そう声を上げたのは、3人の勇敢なる者たちだった。
  彼らは、果たして科学者サイを討ち倒し、世界に平和を取り戻すことは出来るのか・・・?
  人々の希望を背負った戦いが今!幕を開ける!

  ・・・と、思ったら大間違いだッ!!!!

〇寂れた村
臭造「あー!ちくしょうッ!!!俺には何も出来ねぇ!!!!」
臭造「はぁ・・・。なんて情けないんだ・・・俺・・・」
臭造「こうやって、勇者様に想いを馳せるだけで、何も出来やしない・・・」
臭造「俺にも・・・。何か力があれば・・・」
???「バカを言うで無い!臭造!」
村長「ワシら一般市民が、あんな化け物共に勝てると思うかッ!?」
臭造「っそれはわかってるよ!!!だけどな・・・!!!」
村長「・・・何か特別な力でもあるのなら話は別だが、ワシらにそんなものは無かろう?」
臭造「・・・特別な力、か」
  俺には、何の才能も取り柄も無い。
  他の人に、自慢出来るようなものも無い。
  ただ・・・。
村長「・・・それにしても臭造! お前、また口が臭くなったな!?」
臭造「・・・あ?」
村長「勘弁してくれい・・・。朝からそんなくっさい息を嗅がされたら、気が滅入るわい・・・」
臭造「・・・ったく!何なんだよいっつも!!!」
  俺が持っている、唯一の特徴。
  それは、とてつもなく口が臭いこと。
  自分では全くわからないのだが、どうやらその臭さは殺人級らしい。
  なにせ、死んだおばあちゃんからは
  「人に息を吹きかけちゃいけないよ!」
  と教え込まれて来たほどだ。
臭造(はぁ・・・。しかし、口が臭いからって、何か出来るわけでも無いしなぁ・・・)
臭造(いっそのこと、相手を気絶させるほどに臭かったら、役に立てるのかな・・・)
臭造「・・・って何だよそれ。そんなわけあるかよ」
臭造(あー、結局今日も何も出来ずに終わっちまう・・・)
臭造(というか、勇者様が頑張って戦ってる中、俺たちはこんなくだらない事考えて過ごしてるんだぜ?)
  ──この村、ウテンの村には、刺激が無さすぎた。
  それもそのはず、ここは生物兵器から身を隠すため、山奥に作られた村なのだ。
  この世界で戦いが起きているとは思えないほど、平和。
  だがそれが、この俺を葛藤させる原因でもあった。
臭造(何だか申し訳ないよなぁ・・・。本当にこれで良いのだろうか・・・)
臭造(・・・)
臭造(・・・いや、良いわけないだろ! 大体、この村の人たちは勇者様に任せっきりじゃないか!)
臭造(「勇者様が何とかしてくれるよ。」 なーんて言って、誰も自分から動こうとしない!)
臭造「あーあー!全く!これが平和ボケってやつだよな!?!?」
臭造「平和すぎて、みんな本当の現実から目を背けているんだろ!!??」
臭造「自分達は何も出来ないから仕方ないって、諦めてるんだろッ!!?? それで良いのかよッ!?!?」
村人「・・・はぁ。またあいつ騒いでんのかよ」
村人「ほんと。もう勘弁して欲しいわ」
村人「私たちが戦いに出たって、足手纏いになるだけでしょうに・・・」
臭造「おい!?何ぐちぐち言ってやがる!?」
村人(うおッ!?くっ、クセェ・・・!?)
村人(いっ・・・!?ううッ!?)
臭造「・・・」
臭造「ああああっ!!!!クソッ!!!!」
臭造「何だよみんなして俺のこと避けやがって!? 臭いからか!?そうだよな!?口が臭いからだろどうせッ!?!?」
臭造「あーあーあーあー!!!! いっそのこと、生物兵器の1体や2体、攻めてくれば、みんな目が覚めるんじゃねぇのかな!?!?」
臭造「平和なんて・・・!!!!無くなっちまえば──」
臭造「んあ・・・?」
臭造「ぬわっ!?何だあれはッ!?!?」

〇モヤモヤ
???「・・・」
???「・・・遂に見つけたぞ。愚かなる虫ケラ共よ」
???「こんな山奥に隠れていたとは・・・。 クックック・・・。面白い」

〇寂れた村
???「ふん・・・」
臭造「あいつはッ・・・!まさか・・・!」
魔王ゴレアス「我が名は魔王ゴレアス・・・。 サイ様が生み出せし五天魔王の1角なり!」
村長「ばっ、バカな・・・!?な、なぜ生物兵器がこの村に!?」
魔王ゴレアス「ふん・・・。甘いな。 本当に我らから逃れられると思っていたのか?」
魔王ゴレアス「サイ様の目的は、"全て"の存在を支配すること・・・」
魔王ゴレアス「・・・故に誰一人として、逃しはせぬ!」
村長「は、はわわわ・・・!」
「ちょっ、ま、まずい!みんな逃げるぞ!」
魔王ゴレアス「・・・こざかしい虫ケラ共が。 大人しくしていれば良いものを・・・!」
魔王ゴレアス「・・・ゆけっ!一匹も逃すなッ!!!」
「シギャアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!」
臭造(やっ!ヤベェッ!!!!こ、殺されるッ!!!!)
  ──魔王の号令と共に、生物兵器たちは村人に襲いかかる。
  俺たちは、ずっと平和の中で暮らして来た。
  ・・・勝てるわけが無い。
  いやあああっ!!!!!!
生物兵器「オマエ・・・ウマソ・・・」
生物兵器「オデ・・・オマエ・・・クウ・・・!!!!」
村人「いっ・・・いや・・・い・・・っ・・・」
臭造「まっ、まずいっ!!! 助けなきゃ・・・!!!」
臭造「やっ、やめろッ!!!!」
生物兵器「ナンダ・・・オマエ・・・マズソウ・・・」
臭造「へ、へへっ!こ、こいつを食うなら、俺を食ってからにしろよ・・・!ばっ、化け物ッ!!!」
村人「ち!ちょっと!あ、あんた何やってるのよ・・・!?」
臭造「・・・あ!?」
村人「はっ、早く・・・!逃げなさいよ・・・!」
臭造「バカ言うんじゃねぇ・・・!」
臭造「村の女一人守れねぇやつがよ・・・!」
臭造「逃げたところで、この先生きていけるかよッ!!!!!」
村人「いっ、いやっ、そ、そう言う問題じゃ・・・!!」
生物兵器「オマエラ・・・ウルサイ・・・ハヤク・・・クウ・・・オマエラ・・・フタリトモ・・・!」
臭造「・・・ああ!やれるもんなら・・・! やってみろよ!!!!」
  ──無理な話だ。
  俺には、何の才能も取り柄も無い。
  今ここで、俺が戦ったところで・・・。
  こいつの餌になるだけだ。
臭造「うおおおおおおッ!!!!!!!」
  もし、勇者様が同じ状況になったら、どうするのだろう。
  相手が、絶対に勝てない存在だったとしても・・・。
生物兵器「シギギギ・・・!オマエ・・・コロス・・・! クイコロスッ・・・!!!!」
  勇者様なら、きっと・・・。
臭造「うおおおおおおおおおおッ!!!!!!!!!!」
  ・・・立ち向かっていくはずだ!
臭造「・・・」
臭造「ぐぉおおッ・・・!」
  ──脇腹に感じる、今までに感じたことのない強烈な痛み。
  視線の先には、赤い飛沫があがっている。
臭造「っ・・・」
  俺には、足りない。
  勇者様と違って・・・
生物兵器「シギギギギギッ!!!ムシケラ・・・!モウオワリカ・・・!!!」
村人「あっ・・・そ、そんな・・・」
  俺には、何も守れない。
  勇者様と違って・・・
臭造(ああ・・・。もうダメだ・・・)
臭造(結局、俺は何者にもなれなかったな・・・)
  ──足音が近づいてくる。
  もう間も無く、俺はあいつに貪り殺されるのだろう。
生物兵器「シギギギ・・・!モウマチキレン・・・!」
生物兵器「グオオオオオオッ!!!!!」
臭造(さよなら、俺の人生・・・)
臭造「はぁぁぁ・・・」
  ──俺は自身の人生を嘆き、深くため息を吐いた。
生物兵器「・・・」
生物兵器「・・・」
臭造(・・・さっさと食えよ・・・ほら・・・)
生物兵器「・・・」
生物兵器「・・・」
臭造(・・・あれ?)
  ──ヤツは俺の目の前に来ているにも関わらず、食いつこうともしない。
  それに、何だか様子がおかしいような・・・?
生物兵器「・・・」
生物兵器「・・・クッ・・・!」
生物兵器「クッセェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「・・・え?」
生物兵器「グッ・・・!グオオオオオオッ・・・!!!! カッ・・・!カラダ・・・ガッ・・・!」
  ──突如、錯乱したかのように暴れ回る兵器。
  そして・・・。
生物兵器「シギギ・・・ッ・・・」
臭造「おっ!おわッ!!??」
臭造「ばっ、爆発したぞ!? 何がどうなってやがる!?」
  ──俺は、確かに食われかけていたはずだ。一体、何が起きたと言うのだろう・・・?
村人(まっ、まさか・・・)
村人「ね、ねぇあんた!?」
臭造「・・・あ?」
村人「あんたさ・・・ちょっと他のヤツらに 「はーっ・・・」 て、息吹きかけてみてよ・・・?」
  ──こいつは、一体何を言っているんだ?
  戦場で、気が狂ってしまったのだろうか。
  それに・・・。
臭造「・・・何がしたいんだか知らねぇけどよ」
臭造「俺は人に息を吹きかけちゃいけねぇって、おばあちゃんに教えられて来てんだよ!」
村人「ま、待って!あいつら人じゃ無い!兵器だから・・・!」
臭造「あっ・・・そっか・・・」
村人「そ、そうでしょ?だ、だからほら、やってみなさいよ・・・」
生物兵器「シギャアアッ!!!!!!!」
村人「ほっ!ほらっ!早くっ!!!」
臭造「ああっ、意味わかんねぇ・・・! けど、あかったよ!やれば良いんだろ!?」
  俺は、肺の奥まで空気を吸い込む。
  そして、勢いよく放出する!!
臭造「はぁーっ・・・」
生物兵器「・・・」
生物兵器「・・・」
生物兵器「シギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
臭造「・・・へ?」
村人「や、やっぱり・・・!」
村人「あんたの・・・口臭・・・ッw」
臭造「口臭・・・?」
村人「あんたの・・・っw口臭がっ・・・wすっ、凄すぎて・・・w」
村人「てっ、敵が・・・ッw」
  そんなバカな。
  さっきのやつも、こいつも、俺の息が臭すぎてやられたと言うのか?
  そんな話、あるわけないだろう。
村人「ね、ねぇ!あれ見て・・・!」
「・・・!!!」
村人「あいつら、あんたに怯えてるっぽいわよ・・・?」
魔王ゴレアス「お前たちッ!!!何を突っ立っているッ!!!」
魔王ゴレアス「さっさと村人全員!皆殺しにするのだッ!!!!」
「・・・!!!!」
村人「ね、ねぇ・・・。あいつらにも・・・やってみたら・・・?」
臭造「あ、ああ・・・」
  俺は再び、息を吸い込む。
  そして、向こうに固まっている集団目掛けて、勢いよく吐き出す。
臭造「ぷはぁーっ!」
「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」
魔王ゴレアス「なっ・・・?何事だッ!?」
村人「すっ!すごいわ! あんたなら、あいつらと戦えるかも・・・!」
臭造(どんな戦い方だよ・・・)
  ──だとしても、確かにすごい。
  俺の口臭に、まさかこんな威力があるのか・・・?
  おばあちゃんに長年封印されて来た、破壊の息吹。
  俺にも・・・あった・・・!
  あいつらと・・・!戦う力が・・・!
魔王ゴレアス「・・・役立たず共が」
魔王ゴレアス「こんな虫ケラ共すら片付けられないゴミ共が・・・!」
魔王ゴレアス「いいだろう、こうなったら・・・」
魔王ゴレアス「我自ら、貴様らを葬り去ってくれるッ!!!!!」
村人「いっ!いやっ・・・!やばい! あのデカいやつ・・・!動き出したよ・・・!?」
村人「さすがにあいつには・・・効かないんじゃ・・・!?」
臭造「・・・」
臭造「やってみなきゃよ・・・」
村人「・・・え?」
臭造「やってみなきゃ・・・わかんねぇだろ!?」
魔王ゴレアス「何をごちゃごちゃと騒いでやがる・・・!」
魔王ゴレアス「まずは貴様からだッ!!!!!」
臭造(やるしかねぇ・・・)
臭造(やらなければ死・・・。 やっても、死ぬかもしれない・・・。 だが・・・!)
臭造「すうぅーっ・・・!」
魔王ゴレアス「全員まとめて、消し去ってくれる・・・!!!!」
魔王ゴレアス「ブラックホールッ!!!!!!」
臭造(今だ・・・)
  ──果たして、臭造は魔王ゴレアスから、村を守ることが出来るのか!?
  ──つづく

コメント

  • 本当に臭い時って人も怪物も無言になるんですね。生物兵器がダメージを受けてから騒ぎ出すまでの絶妙な間が素晴らしい。生まれて最初の「オギャー」に医師や看護師が「うぷっ」ってなったから親は息子に臭造と名付けたんだろうか。

  • 画面から口臭が伝わって来そうなくらい強烈なお話でした🤣笑
    口臭で立て続けに敵を倒せるなんて、相当臭いんですね!笑
    何食べたらそんなに臭くなるんだろうと真剣に考えてしまいました😂
    でもこの主人公は前半、勇者様たちだけに戦わせている事をすごく悔いていたあたりが、責任感があって尊敬出来るなあと思いました😉

  • めちゃくちゃ良いところで話が終わってしまったー!
    続きが気になります!
    それにしても少し変わった能力…能力?体質?がとても良い味を出してますね!笑

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