白雪夫妻と七人のこびとくん

西東友一

読切(脚本)

白雪夫妻と七人のこびとくん

西東友一

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  ──ボクらは罪を犯した。
  傲慢
  強欲
  嫉妬
  憤怒
  色欲
  暴食
  怠惰
「だから、ボクたち」
「私たちは」
「捨てられたんだ──」
  けど、ボクらにだって・・・

  あの日、私の人生は変わった
  私は家族を一人失ったのだ
  そして
  家族が一気に七人も増えた
  ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ──
  ああ、今日も白鳥家の1日が始まる・・・
  頑張るぞ!!

〇散らかった部屋
白雪コージ「じゃ、仕事行くね」
白雪サキ「うん、行ってらっしゃい」
白雪サキ「もう、こんな時間──」
白雪サキ「ゴウ、ジン、フウマ、セイナ、 マルオ、タイラ!!」
白雪サキ「学校に行く時間よ!! 早く行きなさい!! 間に合わなくなるわよ!?」
白雪ゴウ「いやいや、俺なら間に合うし」
白雪ジン「間に合うように行ったら、いくらくれる?」
白雪サキ「バカ言ってないで準備できてるなら、 早く行きなさい!!」
白雪アイ「私だけ・・・呼ばれなかった」
白雪サキ「アイもいたの!?」
白雪サキ「ごめんねー、いなかったからもう登校したんだと・・・」
白雪アイ「おトイレ行ってたの」
白雪サキ「ほら、アイも準備が済んだら学校に行って」
白雪フウマ「さて、行くか」
白雪サキ「さて、行くか・・・じゃないわよ。フウマ、学級委員長がそれでいいの?」
白雪フウマ「ボクに命令するな。 時間にクラスに着いて、座っていればいいんだよ。そういうルールだ」
白雪サキ「何があるか分からないでしょ。 だから、余裕を持って行きなさい」
白雪サキ「ほら、セイナも、マルオも」
白雪セイナ「まだ、ダメ・・・」
白雪サキ「まだって・・・?」
白雪セイナ「パンを咥えて走る私と、 ぶつかりたい男の子が きっと・・・待っているんだから!」
白雪サキ「はいはい、そんなことしなくても、 セイナはモテるでしょ? 早く行きなさい」
白雪セイナ「分かってないなー、それじゃあドラマチックじゃないじゃない。 ヒロイン適正0ね、サキは」
白雪サキ「呼び捨て禁止! というか、ママでしょ、ママ」
白雪セイナ「はいはい、ママ、ママっ」
白雪サキ「ほら、マルオも」
白雪マルオ「おかわりっ」
白雪サキ「おかわりじゃなくて時間が・・・」
白雪マルオ「飢えちゃう」
白雪マルオ「飢えて授業に集中できないんだな」
白雪サキ「はいはい、もう一杯だけよ」
白雪マルオ「うん!!」
白雪サキ「あとは、タイラ!」
白雪タイラ「・・・眠い」
白雪サキ「昨日だって、 兄弟姉妹で一番早く寝たでしょ!!」
白雪タイラ「・・・それって、関係ないよね。 人は人、自分は自分なのだ」
白雪サキ「そんな悟ったおじいちゃんみたいなこと 言わないの!! はよ、行け!!」
白雪タイラ「はーい。 はぁ・・・だるぅ〜」
白雪サキ「もう。 マルオ、もう食べ終わった?」
白雪マルオ「うん」
白雪サキ「よし、ならば行くのだ」
白雪マルオ「わかったんだな」
白雪サキ「・・・はぁ、やっと終わった」
  忙しい波の第一波が。
  これから、九人分の洗濯や、食事の買い物や、料理を作らなきゃいけない。
  そうしたら、七人のこびとが帰って来て、お世話が必要だ。
白雪サキ「はぁ・・・」
  みんなといるのは楽しいし、
  みんなのことを想えば家事だってやりがいがある。
  ──問題は
  まだ『ママ』と思われていないことだ。
白雪サキ「・・・まだ名前を間違えちゃう私にはそんな『資格』ないか」
  3ヶ月。
  七人へ愛情を注ぐ時間がもっと欲しいのに全然時間が足りない。
  私はママをやれているのだろうか?
白雪マルオ「サキさん」
白雪サキ「もうっ。 どーしたの?」
白雪マルオ「今週末の約束覚えている?」
白雪サキ「・・・当たり前でしょ? マルオの大事なことは、ママの大事なことよ」
白雪マルオ「うんっ。 じゃあ、行ってくる!!」
白雪サキ「はい、行ってらっしゃい」

  平日は家事と育児で手一杯。
  だから、マルオとの約束の日曜日はあっという間に来た。

〇アーケード商店街
商店街の人「さぁ、ついにこの日がやってきたぞ!!」
商店街の人「商店街プレゼンツ・・・」
商店街の人「大食い大会!!」
「ワーーー!!!!」
商店街の人「今回の挑戦者を紹介しよう!!」
商店街の人「この街で最重量・・・」
商店街の人「太田ツヨシ!!」
太田ツヨシ「どもっ」
「ワーーー!!」
商店街の人「続きまして・・・」
商店街の人「なんと、あの国民的スターがこの街にやって来てくれました!!」
商店街の人「紹介しましょう!! プロレスラーで、大食いチャンプ タイガー松木!!」
「ワーーー!!!! ワーーー!!!!」
商店街の人「そして、期待の新星。 その小さな体のどこに消えるんだ!?」
商店街の人「小学5年生の白雪マルオくん!!」
「ワーーー・・・?」
「ザワザワザワザワ・・・・・・」
商店街の人「この3人にだべて頂く、料理はこちら!!」
商店街の人「カツ亭の勝さんが作ったカツ丼を1時間で何杯食べられるかだ!!」
白雪マルオ「カツ丼!!」
勝さん「おう、 おめぇら、 頑張れ」
商店街の人「じゃあ、行くぞ!! レディ・・・」
「・・・」
  ゴー!!
「カツカツカツカツ・・・」
「マルオーっ!! 頑張れ!!」
白雪ゴウ「はっはっはっ、みんな必死だなぁ」
白雪セイナ「ねぇ、サキ・・・ママ」
白雪サキ「ん、なに・・・セイナ」
白雪セイナ「私の前髪大丈夫?」
白雪サキ「大丈夫よ?」
白雪フウマ「ふん、バカバカしい。 生産性が無く身体に悪いことなど・・・」
白雪ジン「賞金っていくらだっけ? 応援したら、マルオのやつ、賞金分けてくれるかな」
白雪タイラ「うわぁーー。 よくあんな頑張れるなぁー」
白雪アイ「あんなに食べれていいなぁ・・・ 目立てて良いなぁ・・・」
白雪サキ「ちょっと、みんな。 家族が頑張っているんだからちゃんと──」
「ねぇ、あの人たちみたいよ、あの子の親──」
  観客の中から、
  嫌な視線が向けられ、
  声が聞こえた。
観客A「大食い大会に子どもを出すなんて、 どうかしているわ」
観客B「あそこの家族って『本当の家族』じゃないのよ。だからよ!!」
白雪サキ(『本当の家族』・・・)
観客B「だから、どーなっても良いって思っているのよ」
観客A「まぁ。 そうよね、お腹を痛めた『自分の子』ならあんな風に育てないわ」
「いやねぇーーー」
白雪マルオ「うっ・・・」
「痛っ!!」
「!!」
「誰よ!!」
白雪セイナ「なんでそんな酷いこと言うの・・・」
白雪ゴウ「アンタたち、偉そうだな。 何様だ?」
「蹴ったはアンタたち!?」
白雪フウマ「ボクだよ」
白雪フウマ「クソがっ」
白雪フウマ「てめーらごときが、うちの家族を語ってんじゃねえよ!!」
「まぁっ」
白雪ジン「おばさんたちの発言って、誰かが幸せにならないよね。発言も存在も社会にとってマイナスだから消えて欲しいなぁ」
観客B「まぁ・・・大人に対してなんて口の利き方!そっ、そんなだから親に捨てられるのよ!!」
「・・・」
観客A「よく言ったわ!! ふんっ、しょせんは落ちこぼれの子ども。 大人に歯向かうじゃないわよ」
白雪アイ「羨ましい」
観客B「あら、お嬢さん。 あなたは──」
白雪アイ「悪役をそこまで演じられるの羨ましいなぁ。 私なら嫌われたくないから無理だなぁ」
「なっ」
白雪アイ「私・・・よく嫉妬しちゃうんだけど、おばさんたちの子どもには嫉妬できないかも・・・」
観客A「このっ──」
白雪アイ「・・・っ」
白雪コージ「止めてください」
観客A「はいっ!? もともとはお宅の子が──」
白雪コージ「はい」
白雪コージ「『うちの子』がすいませんでした」
白雪サキ「『私たちの自慢の子』がすいませんでした」
「はい?」
白雪コージ「ゴウはね、人の話をあんまり聞かないですよ」
白雪コージ「でも、ちゃんと自分の考えを持っていて、頼ったら受け止める頼りがいがある奴なんです」
白雪コージ「ジンはね、すぐに金々言うんですよ」
白雪コージ「でも、ボクや妻が抜けているところをフォローしてくれる」
白雪コージ「アイは人と比べたがりだけど、人の良いところを見つけられる」
白雪コージ「セイナは自分のことばかりだけれど、人の喜ばせ方もよく知っている」
白雪コージ「タイラ・・・あぁ、あそこにいるのは面倒くさがり屋ですけど、仲間を信頼できる子。 ボクらを信頼してあそこで待っています」
白雪コージ「そして、フウマ。 ルールにうるさい屁理屈な子ですが、」
白雪コージ「義理人情を何より大事にして、家族想いのいい子なんです」
白雪コージ「・・・マルオの体が心配だから、 最初は大食い大会に出るのは反対でした」
白雪コージ「でも、マルオの大食いへの熱意を聞いて、 妻とも何度も話し合って」
白雪コージ「息子の夢を応援するって決めたんです」
白雪コージ「だから──」
白雪マルオ「うっぷ・・・」
「頑張れ!!」
「頑張れ!!」
「頑張れ!!」
「頑張れ!! マルオー!!」
白雪マルオ「モグ・・・モグモグ・・・」
白雪マルオ「カツカツカツカツ・・・!!」
  ピピピッ
商店街の人「ターイムアップ!!」
商店街の人「優勝は──」
商店街の人「タイガー松木!!」
タイガー松木「ガァ!!」
白雪マルオ「・・・」

〇土手
白雪サキ「残念だったね・・・」
白雪マルオ「うん・・・ 美味しいカツ丼なのに、 お腹空いてたはずなのに」
白雪マルオ「なんだか胃が重くて・・・」
白雪サキ(・・・やっぱり、聞こえていたのね)
白雪マルオ「でも、楽しかった」
白雪マルオ「みんなの応援が聞こえたから」
白雪マルオ「ありがとうね、みんな」
白雪マルオ「ありがとう、パパ、ママ」
「ああ          うん」
  私たちは完璧な家族じゃない。
  だって、私たちは
  絶賛家族成長期なんだから。
  私たちは1人の人として、
  家族として、
  まだまだ未熟だ。
  でも、今日も含めた毎日が、
  白雪家らしい素敵な1日1日なんだよね。
  ──fin

コメント

  • キリスト教の「七つの大罪」と白雪姫の「七人の小人」を組み合わせた設定がどんなストーリー展開していくのか興味津々でした。白雪パパがそれぞれの子供たちの短所を長所に言い換えていく場面が圧巻でしたね。時には子供の欠点を個性として理解してあげる視点が大人には必要なんだと実感しました。

  • 噂話するおばさんたち本当に嫌な感じだなあと思いました😕
    でも家族みんながお互いのことを思い合っているから
    あんなおばさんの噂話なんて痛くも痒くも無くてスカッとしました☺️
    白雪家に血のつながりなんて関係ないなあと思いました!

  • 7人+親、9人もキャラがいて破綻しないかなと思いましたが、それぞれ個性を持っていて楽しいです♪
    コージさんが大食い大会の時にいきなり出てきて誰?と思ったので、朝出る時のコージさんも見たいなと思いました😊

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