清白、すずしろ(脚本)
〇学校の部室
──文芸部・部室──
るる「ふへぇ~、やる気出ない~」
ぶちょー「どうしたの? まだ正月ボケを引きずっているの?」
るる「それもあるけど、お正月に食べすぎて お腹を壊したままで・・・」
ぶちょー「あー、私も食べすぎて太ったから、 ちょっと理解できるかも・・・」
ぶちょー「「七草粥」みたいな、 胃腸に優しいものは食べなかったの?」
るる「お粥は食べたんですけど、 七草ってよく知らないので、 ネギと天カスを鬼盛りにして食べました!」
ぶちょー「それ、どこのセルフうどん屋さん・・・」
ぶちょー「まぁ、確かに、 七草ってよくわからないものだしね」
ぶちょー「ええと・・・ せり、なずな、ごぎょう、はこべら・・・」
るる「すずな、すずらん、とりかぶと!」
ぶちょー「最後、絶対にダメなヤツ!」
ぶちょー「それと、「すずらん」じゃなくて 「すずしろ」だから!」
るる「えー、同じようなものですよね?」
ぶちょー「「すずらん」は毒性があるって言うから たぶん「すずしろ」とは別物のはず!」
るる「じゃあ、「すずしろ」って何ですか?」
ぶちょー「え、ええと・・・」
???「「すずしろ」は大根のことよ」
せんせー「あと、「すずな」はカブのことで、 七草粥ではどちらも葉のほうを食べるのよ」
るる「あっ、せんせー!!」
ぶちょー「部屋の外で聞いていたのですか?」
せんせー「まあ、それは置いておいて・・・ 七草粥は、江戸時代では公式行事にされた 風習だから、ちゃんと覚えとこうね」
るる「七草って、大根やカブも含まれるんですね」
ぶちょー「大根って刺激があって、 逆に胃腸に悪いかと思ってました」
せんせー「いやいや、大根は健康野菜で名高く、 江戸の将軍様の命を救ったこともあるのよ」
ぶちょー「えっ、気になります!」
せんせー「その将軍様というのは、 五代将軍・綱吉公のことなのよ。 将軍位に就く前の話ではあるのだけど」
るる「つなよしこーって、 暴れまわってサンバ踊った将軍のこと?」
ぶちょー「それは、八代将軍・吉宗のことだから! ・・・いや、吉宗もサンバ踊ってないけど」
せんせー「綱吉公は、「生類憐みの令」で知られる 「犬公方」と言われた将軍様よ」
ぶちょー「あっ、有名な将軍ですねっ!」
せんせー「話を戻すけど、 綱吉公が将軍になる数年前に、 脚気にかかっちゃって重症化したのよ」
せんせー「日本中の名医を集めても、 一向に良くならないもんだから、 陰陽師に占わせてみたのよね」
せんせー「そうしたら「馬」という字のつく土地で 養生したらいいと言われたので、 練馬村で静養することにしたの」
せんせー「で、練馬村で採れる大根を食べていたら みるみる回復していって、 遂には将軍になることができたって話よ」
るる「ふぇー、すごいー!」
せんせー「それからはというと、 練馬村では大根の栽培が盛んになり、 「練馬大根」ってブランド化したのよ」
ぶちょー「知らなかった、初耳です!」
せんせー「という、大根が健康にいいという 有名なエピソードね」
ぶちょー「あのー、先生、 このお話を他の人にしてもいいですか?」
ぶちょー「つい先日まで、アメリカ人の女の子が 我が家にホームステイしていたんです!」
ぶちょー「その子、日本文化にすごく興味があって、 このお話も喜んでくれると思うんですよ!」
せんせー「もちろんいいわよ。 でも「将軍」とか「脚気」といった言葉の 説明が大変そうね・・・」
ぶちょー「確かに・・・」
るる「いぬくぼーって、英語でどう言うんだろ?」
るる「ワンワンキング? ワンワンスタイル?」
ぶちょー「ワンワンはないでしょ・・・ せめて "dog" や "doggy" って言って!」
るる「じゃあ、 ドッグキング? ドッギースタイル?」
せんせー「ええと、「犬公方」の英訳だけど、」
せんせー「英語ではそのまま "Dog Shogun" と訳されることが多いわ」
ぶちょー「まんまなんですね・・・」
せんせー「それと、さっき言っていた ”doggy style” って言葉だけど、」
せんせー「性行為のとある体位の意味になるからね」
〇学校の部室
るる「江戸の頃から大根ってすごいんだー!」
ぶちょー「そんな体にいい野菜とは 今まで意識してませんでした」
せんせー「大根には多くの消化酵素が含まれていて 胸焼けや胃もたれの予防改善に最適なのよ」
せんせー「デンプンを分解する「ジアスターゼ」 タンパク質を分解する「プロテアーゼ」 脂肪を分解する「リパーゼ」」
せんせー「他にも「オキシダーゼ」という 発がん物質を抑制する酵素もあるわね」
るる「ふぇー、何だかすごそう・・・」
せんせー「でも、これらの酵素は熱に弱いので、 摂取するなら生食がオススメね」
ぶちょー「じゃあ、大根おろしやサラダで食べるのが ベストってことですか?」
るる「大根おろし、辛くて苦手かも・・・」
せんせー「そうね、生のほうが栄養的にいいのだけど 量を食べられないのが難点ね」
せんせー「加熱すると消化酵素の効果が無くなるけど 甘くなって食べやすくなるわね。 食物繊維も摂れるから沢山食べてほしいわ」
ぶちょー「食物繊維は加熱しても減らないんですね」
せんせー「しかも、大根って低カロリーなのよ。 大根1本(葉なし)のカロリーが 食パンスライス1枚と同じくらいだから」
せんせー「食事のメインを大根にすれば、 低カロリーで満腹になれるわよ」
ぶちょー「えっ、ウソ!?」
ぶちょー「そんなカロリーが低いのなら、 大根ばっかり、いっぱい食べちゃいます!」
るる「ぶちょー、太ったの気にしすぎー!」
ぶちょー「うるさいっ!」
せんせー「あと、大根の葉っぱの部分には、 β-カロテンやカルシウム、ビタミンCなど ビタミンやミネラルが含まれているわよ」
せんせー「根の部分とは栄養価が異なるから、 併せて食べてもいいかもね」
るる「でも、大根の葉っぱって見たことない・・」
ぶちょー「確かに・・・」
ぶちょー「大根って、どうして葉の部分を 切り落として売られているのですか?」
せんせー「あー、それはね、 切り落とさないと、葉っぱが水分や栄養を 白い根からどんどん吸い上げるからよ」
せんせー「スーパーに並んでいる大根が、 シワシワに萎びていたらイヤでしょ?」
ぶちょー「あー、買う気が無くなっちゃいますね」
せんせー「萎びて使い物にならないと悲しくなるわね ダイコンもそうだし、ダンコ・・・」
ぶちょー「せんせー、ダメー!!」
〇学校の部室
るる「この前「大根役者」って言葉を聞いたけど これもお野菜の大根のことですか?」
ぶちょー「それって、舞台の上で大根みたいに ぬぽーっと立っている役者のことを 言うんですよね?」
せんせー「残念ながら違うわよ。 「大根役者」も江戸時代から使われている ちゃんと意味のある言葉なのよ」
ぶちょー「えっ、そうなんですか!?」
せんせー「そう、江戸時代って冷蔵庫が無かったから 食あたりなんて日常茶飯事だったのよ。 食中毒で亡くなることも珍しくなくてね」
せんせー「そんな中、大根はというと、 全然食あたりを起こさない野菜として 各家庭に普及していくのよ」
せんせー「生食でも加熱しても、 どう食べても大丈夫な食材としてね」
せんせー「そんな「あたらない」大根と、 当たらない役者を掛けたのが 「大根役者」って言葉なのよ」
せんせー「ちなみに役者の「当たらない」は、 「人気ない、つまらない、ヒットしない」 って意味ね」
ぶちょー「ちゃんとした由来のある言葉なんですね」
せんせー「そういう意味で、この話を作っている人は 「大根タップライター」と言えるわね!」
るる「ほんとだー! 「人気ない、つまらない、ヒットしない」」
ぶちょー「確かに・・・」
ぶちょー「・・・って、メタ発言やめましょう!」
るる「せんせー、「マグロ女」「マグロ男」の 「マグロ」も立派な由来があるのですか?」
ぶちょー「ちょっと、何てことを聞いているの!?」
せんせー「あー、それは見たまんま。 市場の冷凍マグロが カチカチで寝転んでいる姿に由来するわよ」
ぶちょー「ちゃんと答えなくてもいいですから!!」
るる「なんだ、つまらない・・・」
せんせー「まぁ、寝転んでいる「マグロ男」でも 股間の大根はぬぽーっと立っているからね」
ぶちょー「せんせー!!」
るる「ぶちょーは、そんな立ってる大根も いっぱい食べちゃうのですよね?」
せんせー「あらあら、マグロ男の股間の大根を 食い散らかしちゃうのね」
るる「ぶちょーって食いしん坊だから、 何本でも食べちゃいそう!」
せんせー「ぜひ、ナマで美味しく食べちゃってね。 アタらないし、栄養たっぷりだから」
ぶちょー「もー、いい加減にしなさい!!」
ぶちょー「次に変なことを言ったら、 本気で怒りますからね!」
(もう怒っているでしょ・・・)
解説、ボケ、ツッコミのテンポが良くてスイスイ読めました。
練馬大根にそんな意味が隠されているとは、う~む。
そうそう、大根一本=食パン一枚のカロリーとはトリビア(死語)ですね。
楽しませていただきました❕
なるほど、と思いました
大根食べたくなってきました
大根いいですね〜。万能ですね。大根のイメージがアップしました。
え?大根タップライターですか?こんなに似合わない人います?
ましまるさんは更新頻度が高く博識で下ネタも使いこなせる、大根どころか凄腕タップライターです。
最初の方の体位の話がイメージできなかったので解説して下さい🙇