ゴブリンのくせに、俺がイケメン過ぎる

jloo(ジロー)

ゴブリンのくせに、俺がイケメン過ぎる(脚本)

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〇謁見の間
王ジーク「待っていたぞ、勇者よ」
  王の前に、跪く。
  私は、勇者の血筋を引いている。父は、かの偉大なアルフゴーン。
  千の魔人を狩ったとも言われる、剛腕の主だ。
  そんな父の血を受け継いでいればこそ、私もまた強大な力を持つ。誰もが、そう信じて疑わなかった。
  分かっていない。私は、無力だ。
  誰よりも強くあろうとした。魔王を倒し、世界を平和に導くんだと。
  だが私には、才能が無かった。剣も魔法も、父には届かない。
王ジーク「それでは、転送陣を開く。まずは、始まりの草原辺りが良いだろう」
  始まりの草原と言えば、低級モンスターしか生息していない地域だ。
  王も、私の実力をよく分かっている。
  私は立ち上がり、転送陣に向かって歩き出した。

〇草原
  見渡すばかりの、草原。湿った空気が、鼻を刺す。
  実を言うと、私は実戦の経験を殆ど積んでいない。
  勇者だからこそ、幼い頃から過保護に育てられてきた。
アリシア「まさに、井の中の蛙という訳だ」
  腕の震えが収まるのを待ち、剣を握りしめる。
  とにかく、何かと戦いたかった。それが、どんな相手であっても構わない。
  そうすれば、自然と自信を取り戻せる。そんな気がした。
アリシア「ゴブリンか・・・・・・初めての相手には、丁度良い」
  目の前には、ゴブリンの群れがいる。
  数は、三体ほどだろうか? いや、もっと多いかもしれないな。
  ゴブリンというのは、基本的に卑怯な戦法を好む。
  これは、私を誘い込む罠かもしれない。
  それでも、進む。ゴブリンが卑怯な戦法を好むのは、実力を持たないという裏付けでもある。
  これくらいのリスクを冒す覚悟が無くては、これから先の旅路は困難を極めるだろう。
アリシア「ゴブリン、覚悟!!」
  不意打ちの一撃は、確かにゴブリンの身体を捉えていた。
  だが、手応えが無い。まるで水の中に剣を突き入れたような感触だった。
リキ「・・・・・・ひぇええええ!? 親分、助けて!!」
  剣から垂れ落ちるのは、スライムの体液であった。
  ゴブリンたちは、近くにいたスライムを身代わりにしたらしい。
  以前、書物で似たような技を見たことがある。
  これは、高等魔術【スケープゴート】。
アリシア「まさか、ゴブリンごときに魔術が扱えると言うのか・・・・・・!!」
グリオ「おいおい、不意打ちは卑怯だって。正々堂々、かかって来いよ」
アリシア「お前は・・・・・・人間、なのか?」
  目の前に現れた緑髪の男は、ふわぁっとあくびをしながらゴブリンたちを背中に隠す。
グリオ「外れ。俺はゴブリンで、名前はグリオだ。こいつらは、俺の弟たち」
アリシア「馬鹿を言え・・・・・・! こんなイケメ・・・・・・人間の様な見た目をしているやつが、ゴブリンな訳無いだろう!」
グリオ「本当のことなんだけど。それにしても・・・・・・」
アリシア「何だ?」
グリオ「低級種族の人間が、こんなところに何の用?」
アリシア「わ、私が・・・・・・低級種族だと!?」
グリオ「そう。迷い込んだんだったら、途中まで送ってあげるけど」
アリシア「いらん、馬鹿にしているのか!!」
グリオ「あんまり、騒ぐなよ。そんなに大声出したら・・・・・・」
  「ギャァアアアアアアアッス!!」
グリオ「ほら、言わんこっちゃ無い」
アリシア「こいつは・・・・・・」
グリオ「ガルーダ、この草原の現支配者だね」
  翼を広げた姿は、まさに支配者と呼ぶに相応しい威厳を放っていた。
  グリオの後ろに隠れた弟たちが、小刻みに震えだす。
  あれだけの魔術を行使する実力の持ち主でも、怯える相手ということか。
  冷汗が、頬を伝っていくのが分かる。
グリオ「こいつらが震えている理由は、それだけじゃ無いよ」
アリシア「え?」
グリオ「俺たちは、あいつに両親を殺されたんだ。その復讐の為に、俺たちは鍛錬を重ねてきた」
アリシア「貴方たちが強いのは、それが理由?」
グリオ「まあ、そういうことかな」
グリオ「さて、そろそろ力を試してみたかったところだ」
グリオ「ゴン、リキ、バキ。準備は、出来ているか?」
  弟たちは覚悟を決めたようで、真剣な表情を浮かべながら力強くうなずいている。
  グリオが合図を送ると、三人は一斉に呪文を唱え始めた。
ゴン「全てを焼き尽くせ【エクスプロージョン・ファイアー】」
  三つの火球が一点で衝突し、大爆発を引き起こす。
  私には、その光景が信じられなかった。
  低級モンスターであるはずのゴブリンが、高等魔術を扱うことが出来るなど聞いたこともない。
  そして、爆発の煙の中へグリオが突っ込んでいく。
  結末は、一瞬だった。
  煙が晴れた時、グリオの拳はガルーダの腹を貫いていたのだ。
アリシア「ゴブリンって・・・・・・高級種族だったんだ・・・・・・」
  ぽかんとして、呟く。
  私は一歩も動けず、見ていることだけしか出来なかった。
グリオ「ゴブリンは、低級種族だぞ。さっきのは、はったりだ」
アリシア「へ?」
グリオ「俺たちが、特別なだけだ。勇者様のポテンシャルには、敵わないよ」
アリシア「え、何で私が勇者だってことを知っているの?」
グリオ「お前の父、アルフゴーンと知り合いでな。よく、似ているよ」
アリシア「父と知り合いって・・・・・・一体、何者なの? 貴方は・・・・・・」
グリオ「さぁな。でも、へっぴり腰のお前を見ていたら、昔のアルフゴーンを思い出してね」
アリシア「父が、へっぴり腰? 何を言っているのよ、冗談はやめて」
グリオ「いや、マジで。あの人、最初はめっちゃ弱かったから」
  目を見るが、ふざけている様子は無い。
  本当に、父は弱くて情けない存在だったのだろうか。
グリオ「よく、似ているよ。本当に、うん・・・・・・」
アリシア「あ、待ちなさいよ!!」
  グリオは、その場を立ち去ろうとする。
  私はそんな彼の背中を、無意識の内に追いかけていた。

コメント

  • 一見、不愉快に思えるゴブリンたちも、両親を殺されたあと頑張ったんだと思うと、ゴン、リキ、バキでさえも可愛く見えてくるから不思議です。グリオだけ異母とか異父とかじゃないのかな?勇者としての能力にコンプレックスを抱くアリシアが、意外性に満ちた高スペックのイケメンに惹かれる流れも自然でよかったです。

  • ゴブリン=弱い、群れる、卑怯、という固定観念を上手に逆手にとっていますね。とっても面白いです。グリオさんの能力や過去など気になることだらけですね!

  • the冒険モノ!という感じでワクワクしました!
    主人公に才能がないと思いきや、勇者の父親も努力の人だったかも?という展開がとてもいいと思いました!
    そして、一度の戦闘で漂うグリオの知性の高さが垣間見えてかっこよかったです!
    これからも頑張って下さい!

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