枯れ木に花を咲かせましょう

落花亭

7本目:天草アヤメについて(脚本)

枯れ木に花を咲かせましょう

落花亭

今すぐ読む

枯れ木に花を咲かせましょう
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇渋谷の雑踏
  人は、大なり小なり悩みを抱えている

〇大衆食堂
  ──10月14日
「ありがとうございました!!」
天草 アヤメ「お兄ちゃん おいしかったねぇ」
天草 アヤメ「次は お母さんと一緒に食べようね!」
天草 アイ「そうだな。仕事が休みの日にな──」
天草 アイ「あれ?」
天草 アヤメ「お兄ちゃん どしたの? 早く帰ろうよ」
天草 アイ「アヤメ!兄ちゃんに着いてきて!」
天草 アヤメ「お兄ちゃん!引っ張らないでよぉ!」

〇高級一戸建て
天草 アイ「金持ちそうな家・・・」
天草 アヤメ「アヤメ 疲れた。お家に帰りたい」
天草 アイ「あれって花屋の店長だよな? 家なんか見て 何してんだろ?」
店長・花咲「・・・お前が店に来ないから 私から出向いてしまったよ」
店長・花咲「だが 呼び鈴の一つも鳴らせやしない」
店長・花咲「・・・お前はずっと 私を恨んでいるのだろうな」
店長・花咲「”レン”」
店長・花咲「お前は今 ”幸せ” か?」
天草 アイ「なんか言ってるけど聞こえねぇ・・・」
天草 アヤメ「お兄ちゃん。おトイレ行きたい」
天草 アイ「ウソだろ!?」
天草 アイ「あー もう!我慢出来るか!?」
店長・花咲「・・・お前が店に来ると信じているよ」

〇玄関内
天草 アヤメ「ただいまぁ!」
天草 アヤメ「お家 安心する!」
天草 アイ(結局 店長が何してたのか 分からなかったな)

〇アパートのダイニング
天草 アヤメ「わぁぁ!」

〇コンサート会場

〇アパートのダイニング
「一条アキの貴重なアイドル映像!」
「アキちゃんのおかげで アイドルに憧れる子が増えたとか!」
「ちょっと 恥ずかしいです・・・!」
天草 アヤメ「皆 かわいい キラキラしてる・・・」
天草 アヤメ「アヤメもアイドルになりたい」

〇学校沿いの道
  ──12月2日

〇教室
女性「それでは 授業を始めます」
女性「この時間は”将来の夢”について 考えてもらおうと思います」
女性「静かに!」
男子生徒「はいはいはーい!」
男子生徒「先生!俺の夢は ”ヨウチューバー”!」
男子生徒「今は動画見てもらうだけで お金が手に入るんだし」
男子生徒「会社で働くなんてムリムリ!」
男子生徒「偉そうなこと言ってるけどさ。 広告収入が減ってるって知らない?」
男子生徒「有名なヨウチューバー どんどん引退してるけど?」
男子生徒「今の時代 自分で開発出来なきゃ。 プログラミングを使ってね──」
男子生徒「お前 いつもムズカシー話で ウザイんだよ!!」
「暴力はいけません!!」
女子生徒「ねーねー。アヤメちゃんは? 将来の夢って決まってる?」
天草 アヤメ「う うん。 アイドルになりたいなって・・・」
女子生徒「今から?アヤメちゃんにはムリだよ」
女子生徒「お母さんが言ってたよ。 『芸能界はお金がかかる』って」
女子生徒「レッスン代とか交通費?とか」
女子生徒「アヤメちゃんの家 貧乏じゃん」
女子生徒「お金がないのに アイドルになれるわけないよ」
天草 アヤメ(お金がないと アイドルになれないの・・・?)

〇団地

〇アパートのダイニング
天草 アイ「アヤメ ただいま!」
天草 アヤメ「おかえりなさい」
天草 アイ「どうした?なんかあったか?」
天草 アヤメ「何もない」
天草 アイ「いや 何もないはずないだろ そんな隅っこに座って──」
天草 アヤメ「・・・お兄ちゃん。 どうしてお父さん 帰ってこないの?」
天草 アヤメ「どうして お家にはお金がないの?」
天草 アイ「それは・・・」
天草 アヤメ「どうして 夢を叶えるために お金がいっぱい必要なの?」
天草 アヤメ「アヤメ お金無いよ。お年玉しかないよ」
天草 アヤメ「アヤメ アイドルになれない・・・!」
「うあぁぁぁぁん・・・」
天草 アイ「・・・いつかこうなると思ってたけど」
天草 アイ「つらいな」

〇団地
  ──翌日

〇アパートのダイニング
天草 アイ「──じゃあ 母さん。 アヤメのこと 頼んだから」
「アヤメ おはよう。今日も寒いね」
天草 アヤメ「うん」
「・・・お母さんね。 アヤメに謝らないといけない」
「でも 謝るにはちゃんと お話ししないといけないの」
「それにはまだ時間がかかって」
「あなたがもう少し大きくなったら 絶対にお話しするから」
天草 アヤメ「・・・うん」

〇街中の道路
  ──フローリスト・ハナサカ前
「──おや お久しぶりですね」
「いきなりすみません!あの──」

〇アパートのダイニング
天草 アイ「ア アヤメ・・・」
天草 アイ「今年のクリスマス 体調崩すなよ!」
天草 アイ「母さんも!クリスマスは休みにして!」
「急にそんなこと言われても──」
天草 アイ「いいから休めって!!」
天草 アヤメ「なに・・・なんなの・・・?」

〇団地
  ──12月25日

〇アパートのダイニング
天草 アイ「二人とも準備はできた?」
「うん・・・」
天草 アイ「じゃあ着いてきて!」

〇街中の道路
  ──フローリスト・ハナサカ前
天草 アイ「フローリスト・ハナサカ。 いつもここで花を買ってるんだ」
天草 アイ「入って」

〇お花屋さん
店長・花咲「──ようこそお越しくださいました」
天草の母「息子がお世話になっております。 ところで これはいったい・・・」
店長・花咲「アイくんに頼まれましてね 今日一日 貸切です」
店長・花咲「──アヤメさんのコンサートのために」
天草 アヤメ「アヤメのため・・・?」
店長・花咲「アヤメさん。 アイドルになりたいとお聞きしました」
店長・花咲「素晴らしい夢をお持ちですね。 諦めるにはもったいない」
店長・花咲「本当の会場とは比べ物になりませんが」
店長・花咲「ここで 夢の一歩を踏み出してください」
村田 カスミ「こんにちは 店長さん。 誘ってくださりありがとうございます」
村田 カスミ「あなたが今回の主役かな? こんにちは!」
新井 ショウゴ「カスミさん。 俺もサイリウム振らないと駄目っスか?」
新井 ショウゴ「・・・ん。 歌 期待してるぜ」
水野 ユカ「おじいさん!シノブも連れてきた!」
「えっ!この子が歌うの?」
「小学生じゃん!かわいい〜!」
天草 アヤメ「あっ!!」
一条 アキ「こんにちは〜。社長に頼んで お休みにしてもらいました」
ユキ「初めまして。アキより伸び代がありそう」
天草 アヤメ「あの・・・ お姉ちゃん テレビで観ました!」
天草 アヤメ「かわいくて キラキラしてて」
天草 アヤメ「お姉さんみたいな アイドルになりたいって思いました」
一条 アキ「・・・叶うよ。諦めない限りね!」
天草 アイ「アヤメ。衣装に着替えて」
天草 アヤメ「衣装?」
天草 アイ「このカバンの中に・・・」
「わぁ すごい!」
「着替えたらあそこに立ってな!」
「母さん!コレ持って!」
「はいはい・・・」
  初めてのステージ
  ドキドキしたけど
  最高の思い出になったよ
  ありがとう
謎の男「『会場を作ってくれ』なんて 突然 何を言い出すかと思えば」
店長・花咲「彼から『働かせてほしい』と懇願され」
店長・花咲「理由を尋ねれば 母子家庭でお金がないとのこと」
店長・花咲「アヤメさんを養成所に通わせる 費用を稼ぎたいとのことでした」
店長・花咲「お父様とお母様はアヤメさんが 赤ん坊の頃に離婚したそうです」
店長・花咲「お父様はお酒に依存し 度々 暴力を振るっていた。と」
謎の男「・・・なんと憐れな」
店長・花咲「現在 お母様が働く代わりに 彼が面倒を見ていると聞きました」
店長・花咲「『彼女に泣かれてつらかった』と 訴える彼を無下に扱えないでしょう」
店長・花咲「ですが 働かせるにしても 数ヶ月しか雇ってあげられません」
店長・花咲「私に出来ることはこのくらいです」
謎の男「なるほど。それで」
謎の男「・・・彼らの目に映るあなたは きっとサンタクロースでしょうね」
店長・花咲「でしたら あなたはトナカイですね」
謎の男「この私をトナカイですか! 言うようになりましたね」

〇街中の道路
店長・花咲「皆さん。気を付けてお帰りください」
天草 アイ「店長さん。俺 無理言ったのに・・・ 本当にありがとうございました」
天草 アヤメ「ありがとうございました!」
天草 アイ「・・・母さんと話したんですけど。 今は 勉強に集中して」
天草 アイ「大学生になったらバイトを始めて 費用を貯めたいと思います」
天草 アイ「その頃にはアヤメも中学生で 家のこと 任せられるので」
店長・花咲「そうですか・・・ 陰ながら応援しています」
天草 アヤメ「ひっ!!」
天草 アイ「お兄さん。いたんですね!」
謎の男「ええ。影から覗いていました」
謎の男「素晴らしい歌声でしたよ」
天草 アイ「アヤメ 良かったな! ・・・ってどうした?」
天草 アヤメ「お兄ちゃん。 お母さん 待ってる。帰ろう」
天草 アイ「お おう・・・? じゃあ 失礼します!」

〇アパートのダイニング
天草 アイ「ただいま!」
天草 アイ「・・・アヤメ?暗いな どうしたんだよ?」
天草 アヤメ「お兄ちゃん・・・」
天草 アヤメ「あのね さっきの人ね・・・」

〇黒背景
  バケモノだった

次のエピソード:6本目:一条アキについて

コメント

  • 店長さんや謎の男さんにも焦点が合いはじめた第7話、主人公のアヤメちゃん、可愛すぎます!! 子供たちって、無意識に無邪気に互いの夢を潰し合う残酷なイキモノですよね。アヤメちゃんには、前を向き続けてほしいと応援したくなります。
    フローリスト・ハナサカでの催し、彼女にとっては一生モノの思い出になるでしょうね。見ている側としても、過去作のメインキャラが顔を出して胸アツでした。

ページTOPへ