怪物の館

キコウ ショウ

怪物の館(脚本)

怪物の館

キコウ ショウ

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〇黒
  一発。
???「人の命も儚いからこそ、 美しいし、愛おしいのよ。 だから‥‥」
???「いつ、どんな形で死が訪れても、 悪くない人生だったって思えるよう、 今を目一杯、自分らしく楽しみたいの」
  何気なくこぼしたその一言を、
  
  ふと思い出した。

〇黒背景
  二発。
  僕は、そんな理想や希望を、
  
  自然と言えてしまう彼女にも、
  
  無意識のうちに、
  
  憧れ、また癒されていたのだろう。
  彼女のそばにいるだけで、
  
  それまで溜め込んでいた
  
  自分の中の淀みや──
  時には
  
  『いかに自分が曇った色眼鏡で
  
   世界を見てたか』
  
  という気づきを、まるで
  
  呪いから解き放つかのように‥‥
  心や、気持ちの闇を、
  
  いつも、とても、心地よく、
  
  浄化してくれた。
  いつの間にか、彼女‥‥
  
  蒼井 天(アオイ ソラ)は、
  
  僕にとって、
  
  かけがえのない人となっていた。

〇赤(ダーク)
  三発。
  ソラは、一言でいえば天真爛漫。
  
  一見にはスレンダーで、
  
  大人っぽく見えるが──
  いざ喋ってみると、とても明るく、
  
  きっと誰とも仲良くなってしまうくらい、
  
  本当に人当たりや、気立てのいい女性だ。
  最近は、
  
  専攻でもある“超心理学”の事となると、
  
  気になってたり、分からなかった事を、
  
  無我夢中で僕に尋ねてきた。
  その、子供のような好奇心で、
  
  どんな疑問や、
  
  不可解な話にも興味を抱く姿は──
  どの角度から見てても、
  
  あまりに尊く、美しく、愛おしかった。

〇図書館
  四発。
  対照的に僕は、
  
  実際はただの見掛け倒しなのだが、
  
  昔から平均以上の身長があり──
  加えて暗く、気味の悪い顔つきに、
  
  近寄りがたい雰囲気を出してるようで、
  
  大学ではいつも独りだった。
  僕は幼少期から
  
  この不気味な見た目により
  
  まず同級生たちは
  
  見かけた途端離れていくし──
  一度だけ‥‥
  
  勇気を出して、
  
  自分から話しかけに行ってもみたが──
  「見かけの割にウジウジしてて、
  
   やっぱり気持ち悪い奴だ」と、
  
  逆に目をつけられ、
  
  イジメにあうこともあった。
  だから大学では下手な交流は控え、
  
  念願だった“超心理学”の勉強に、
  
  独り勤しんだ。

〇ファンタジーの教室
  五発。
  “超心理学”は、
  
  学べば学ぶほど謎が増えていき、
  
  その果てしなく途方もない世界に、
  
  僕はどんどん引き込まれてった。
  “超心理学”の事を考えてる時は、
  
  文字通り、現実のことを忘れられる。
  頭の中で“超心理学”が繰り広げる、
  
  不可思議な謎と、奇跡や絵空事のようで、
  
  だが確かに現実に起こった事象という──
  奇妙で興味深すぎる刺激たちと
  
  格闘してる時間が、これまでの苦々しく‥
  
  陰鬱な人生を、
  
  実に爽快に吹き飛ばすほど──
  僕にはこれ以上なく楽しく、
  
  もはや生きる喜びになっていた。
  できるなら、ずーっと
  
  “超心理学”の研究だけをしてたい。
  
  そんな気持ちが押さえられず‥‥
  
  僕はつい他の授業中に──
  こっそり“超心理学”の、
  
  “内職”をしてしまっていた。
  
  
  
  
  
  そんな時‥‥
  授業に遅れ
  
  空いていた僕の隣席に座ってきたソラが
  
  僕のノートを覗いて
  
  「それ、超心理学?」と話しかけてきた。

〇黒背景
  六発。
  タスケテ‥‥
  ワタシヲ、タスケテ‥‥

〇木造校舎の廊下
  “超心理学”は、現在では不可解で、
  
  オカルトなんて呼ばれるような
  
  領域の学問とされがちだが──
  僕はその
  
  『得体が知れない・まだ見ぬ新しい世界』
  
  という部分に、
  
  三度の食事も忘れるほど、夢中になれる。
  ‥まもなく21世紀に入るという現代では、
  
  様々な文化や技術が、驚異的な速度で、
  
  科学的に開拓や発展され──
  今じゃ当たり前のように、
  
  空を飛ぶ事を可能にし、
  
  何時、どんな遠く離れた相手とも、
  
  自由に電話できるようになった。
  しかし‥‥この現実を、
  
  ほんの1・2世紀前の、
  
  同じ人類に伝えたところで──
  一体誰が心から信用し、
  
  あるいは本気で、
  
  その光景を想像できるだろうか。

〇華やかな裏庭
  七発。
  もしかすると、ごくわずかな人たちは、
  
  その未来に、興味や、
  
  好意的な態度を示すかもしれない。
  
  が──
  当たり前ながら、
  
  理解をすることはできないだろう。
  
  なぜなら、それらはまだ解明‥
  
  或いは開発されてない──
  『得体が知れない・まだ見ぬ新しい世界』
  
  であり、最先端の研究陣など以外となる、
  
  一般層には、理解できるだけの器や──
  親しみやすくなった結果として、
  
  普及や浸透が、まだしていない
  
  “だけ”
  
  なのだから。
  ‥‥そう考えれば、
  
  今は不可思議な部分が多い
  
  “超心理学”だって、オカルトだの──
  非科学的だのと一蹴するのは、むしろ
  
  ナンセンスの極みでしかないのに‥‥

〇中庭
  八発。
  ‥‥かつては何かと、
  
  神や悪魔の仕業にばかりしてた人類も──
  この数十年で一気に、
  
  実感が持てない現象を、
  
  信用しないどころか、
  
  馬鹿にする始末になった。
  ‥僕には、オカルトや怪奇現象より
  
  ほんの少し前に抱いてた理想と
  
  正反対の愚行をしてる事にさえ
  
  自覚がなかったり──
  常に今の自分のミカタが正義であり、
  
  絶対だと信じて疑わない、
  
  “人間”という生物のが、よっぽど怖いよ。
  気がつけば、僕はずっと一人で、
  
  “超心理学”が、いかに未来ある学問かを、
  
  ソラに語り明かしていた。
  たまたま授業で隣になり、
  
  ほんの偶然“超心理学”に興味を示した、
  
  さっき知り合ったばかりの彼女‥‥
  
  にも関わらず。

〇名門校の校門(看板の文字無し)
  九発。
  僕があんなに長く誰かと話すこと自体、
  
  実に何年ぶりのことだっただろう。
  
  まして、今や僕の一番好き‥‥
  
  どころか──
  生き甲斐とも言える
  
  “超心理学”について、興味を示し、
  
  授業後まで話しかけて来てくれたのは、
  
  彼女が初めてだった。
  僕自身、
  
  最初は最低限の返答だけして、
  
  そそくさと距離をとるつもりだったが──
  先のような、一方的な喋り倒しにも、
  
  彼女は楽しんで、
  
  時には感動したように驚いて、
  
  僕の言葉に耳を傾けてくれた。
  そして、“超心理学”だけでなく、
  
  僕という“人間”自体にも、
  
  興味や、好意まで抱いてくれた彼女に──
  僕はまた、
  
  あっという間に惹かれていった。

〇古書店
  十発。
  僕にとって“超心理学”は、
  
  誇張ではなく事実として、
  
  僕の人生を大きく変えてくれた存在
  
  と言っても、過言じゃない。
  “超心理学”自体の面白さや、
  
  生涯かけれる意義深い
  
  学問性も勿論だが、何より‥‥
  
  
  
  僕は“超心理学”を通して──
  ソラという、
  
  最高のパートナーと出会えたからだ。
  僕が言うのもなんだが、
  
  ソラは変わっていると思う。
  
  それは僕や“超心理学”と出会う以前から、
  
  他の多くの女子や──
  学生たちが嗜む趣味や遊びより、
  
  地球上のあらゆる生物の解剖、
  
  死後や精神的世界など‥‥
  言わば“ホラー映画”に出てくるような、
  
  事象や学問を好んでいたから。
  
  そして、
  
  それらを「ワクワクするわ!」と──
  怖いもの見たさというより、
  
  神秘的なものという感覚で、
  
  友達の前でも、
  
  イキイキと話したりするようだからだ。

〇おしゃれな食堂
  十一発。
  愛嬌に溢れ、出会う人みんなに
  
  『一緒にいたい』と思わせる彼女だが──
  少し話せば多くの人たちは、
  
  彼女の希望と違う話を始めたり、
  
  用事を思い出して離れていくのは、
  
  想像するに難くない。
  しかし。
  それでも彼女は‥‥
  
  常に自分に正直に、
  
  少しでも、一人にでも──
  自分の好きなものの魅力が
  
  伝わることがあればと、
  
  自分を殺さず‥‥と同時に──
  他人にも寛大な心で‥‥
  
  もはやこの世の全てに、
  
  できる限り肯定的なミカタをしていた。
  僕は‥‥
  
  僕が今まで見てきた中で、
  
  誰よりも変わっている、
  
  そんな彼女の“生き様”に──
  この世で何よりも代えがたい‥‥
  
  もはや、“超心理学”に勝るとも劣らない、
  
  尊さを感じた。
  そしていつからか‥‥
  
  僕は、彼女が少しでも健やかに、
  
  安心して長生きできるよう、
  
  心身ともに強くなり──
  どんな奴からも、
  
  彼女を守れる“力”を身に着けなければと、
  
  真面目に考えるようになった。

〇黒背景
  十二発。
  コロシテ‥‥
  ワタシヲ、コロシテ‥‥

〇池のほとり
  恋人としての個人的な思いもあるが、
  
  もし、そうじゃなくなったとしても‥
  
  今後も彼女が出会う
  
  彼女の生き方を見て──
  救われるであろう人たちの為にも
  
  『何があっても彼女を守り抜く』
  
  のに必要な“力”が、
  
  今の僕は全く無いと気付いた。
  ‥‥本気でそう考えた僕は、
  
  ずっと苦手意識があったが、
  
  彼女のため‥と、意を決して──
  肉体を鍛える筋トレや、
  
  対実戦的な格闘術を、
  
  一通り学び、訓練するようになった。
  ‥‥だが鍛えに鍛え、
  
  彼女を守る術を考えれば考えるほど──
  今の自分が、
  
  如何に不甲斐ないかも痛感した。
  
  
  
  
  
  そもそも──
  危険人物が現れた時に
  
  "戦って生き抜く・守り抜く"のに有効な
  
  『武器』となるものが、
  
  僕には1つもなかったからだ。

〇小さい倉庫
  十三発。
  たとえどんな怪物が現れても、
  
  最悪僕一人しかいなくても、
  
  絶対に彼女を守れるよう‥‥
  
  格闘技や肉体術だけでなく──
  ついには刃物や銃‥‥
  
  またいざという時は武器にもなる、
  
  工具や金具等を使った戦術まで──
  ありとあらゆる
  
  『武器になりえるもの』も、
  
  扱えるよう訓練した。
  さすがにちょっと大袈裟か‥‥
  
  ともよぎったが、本格的に
  
  “超心理学”を学んでからというもの──
  『ありえないほど万が一』とされる事も、
  
  思いついてしまった以上は──
  できる限りの対処は
  
  しておくに越したことはないと、
  
  心がけるようになっていた。
  
  
  
  その甲斐あってか──
  彼女を狙っては後を絶たぬ輩たちに対し、
  
  それまでは彼女と逃げたり、殴られて
  
  やり過ごすことしかできなかった僕が──
  今なら腕を一ひねりしてやるだけで、
  
  相手は逃げ出すようになり、以前のように
  
  絡んでくることも無くなった。

〇レンガ造りの家
  十四発。
  元々見掛け倒しの体格を
  
  しているのもあり、僕が密かに
  
  “力”を身に着けていたことを、
  
  件の男たちを追い払うまで──
  ソラは気づいてなかった。
  本当なら、あの時‥‥
  男たちを死ぬ直前まで
  
  痛めつけてやることもできた。
  
  正直言えば、それぐらいのことまで
  
  やっても自業自得なくらい──
  奴らはソラ以外の多くの人も
  
  ひどく、たくさん傷つけてた連中だった。
  
  
  しかし──
  どんな相手や事情であろうとも、
  
  暴力でやり返すのは、
  
  何も解決しないどころか、
  
  もっと悲惨な円環を生み出すだけ‥。
  ソラの“生き様”を
  
  最も近くで見て学んでいた僕は、
  
  彼女ならどう対処するかを察知し
  
  結局、奴らを見逃す方を選んだ。

〇可愛らしい部屋
  十五発。
  僕が“力”を得ていたことを
  
  目の当たりにしたソラは、
  
  一瞬戸惑いつつも、
  
  すぐにいつもの大らかな表情と──
  気さくな喋りで、僕がいつ、
  
  どうして“力”を得たのかを聞いてきた。
  僕は、少し口ごもりながらも‥‥
  
  二言目には、もう全て正直に
  
  打ち明けようと腹を決め、
  
  彼女を守るために──
  筋トレから始め、
  
  あらゆる武器も扱えるにまで
  
  訓練した事を、正直に全て話した。
  すると、
  
  彼女はとても楽しそうに笑いだした。
ソラ「さすがはダーリン。 のめり込んだら 何でも超速で極めちゃうわね~!」
  ‥‥‥今の僕は、見た目だけでなく
  
  より怪物に近い“力”まで持ってしまった。
  
  こんな僕を見たら、きっと殆どの人は──
  怖くなって、さすがに危ない奴だと
  
  距離をとってしまうはずだ。
  
  
  ‥‥それでもソラは、
  
  何一つ変わらないどころか──
  どこまでも面白く、でも本当に真面目で
  
  責任感のある、素敵な人ねと
  
  今まで以上に幸せそうに笑ってくれた。

〇可愛らしい部屋
  十六発。
  ソラは、僕が扱えるようになった
  
  武器の名を上げる度に、
  
  楽しそうに笑ってくれた。
ソラ「護身用ならともかく ショットガンにまで手を出すなんて 一体どれだけ危険なものから 私を守ろうとしてるの?」
  彼女の幸せそうな笑い声を
  
  いつまでも聞き続けたかった僕は、
  
  もっと笑かそうと、実しやかな
  
  ある噂話を例に出した。
  万が一、あの"怪物の館"に
  
  行ってしまった時の為さ。
  
  最近じゃ、両腕がチェーン・ソーの
  
  怪物も現れるらしいからね。
  すると彼女は、笑うのをやめるのと同時に
  
  僕の口から聞く初めての言葉に、
  
  釘付けになって聞き返した。
ソラ「"怪物の館"って、なぁに‥‥?」

〇古い洋館
  怪物の館‥‥
  
  それは“超心理学”の権威である
  
  西博士の研究所にして、
  
  彼が『死者蘇生』をテーマに掲げ──
  奇怪な研究に没頭した末
  
  恐ろしい怪物たちが生み出され
  
  餌を求め徘徊してるため
  
  決して近づくなと噂される館のことだ。

〇可愛らしい部屋
  僕は、彼女との幸せな時間を
  
  求めようとするあまり
  
  ありえないような噂とはいえ
  
  万が一の危険がある"怪物の館"を──
  つい口走ってしまい
  
  そこからは只々後悔‥‥
  
  
  "怪物の館"が気になり始めたソラは
ソラ「じゃあせめて、その館が見える 近くの丘ぐらいまで 行くのだったら、いいでしょ?」
  と、言い出して
  
  止まらなくなってしまったからだ。

〇林道
  十七発。
  僕は、少しでも危険の
  
  可能性がある場所に
  
  彼女を連れてくのに気乗りしなかったが、
  
  そんな気持ちの反面で──
  僕もソラ同様、
  
  “超心理学”を学ぶ者として、
  
  今一番訪れてみたい所でもあった。
  
  
  ソラも
ソラ「分かってる! 館が見える所まで着いたら、 それ以上は行かない。すぐに帰るわよ」
  と、約束してくれたので
  
  僕たちは、元々あった予定の
  
  ついで程度‥‥ということで、
  
  話を収めることにした。
  だが‥‥‥‥

〇山道
  丘の上で、本当に館がある事を
  
  遠目で確認できた僕たちは、
  
  今日はさすがに帰ろうとした‥その矢先。
  折悪しく、豪雨が降り注ぎ始めた‥‥
  そして、ちょっと走ってやり過ごすには
  
  遠すぎる帰路だった。
  
  だから僕たちはやむを得ず
  
  豪雨に追われるようにして‥‥

〇古い洋館
  僕たちは
  
  
  “館の中”に
  
  
  入ってしまった。
  そして‥‥‥
  
  
  
  
  気がつけば‥‥‥‥

〇血しぶき
  十八発。
ソラ「アリガトウ‥‥」
ソラ「サヨウナラ‥‥‥‥」
  僕は‥‥
  彼女を‥‥‥‥‥

〇黒

コメント

  • 二つの物語が並行して進行し、片方が「一発、二発・・・」とほぼカウントだけで進行していくことにより、読者が抱く緊張感=不穏な予兆が高まる手法が秀逸でした。語り手の献身的な思いがピュアなだけに悲劇的なラストが際立ちました。

  • とても繊細でスピード感のある記述で最後まで引き込まれながら読みました。彼等の結末を思うと悲しいですが、彼等がどれだけ惹かれ合っていたのかが感じ取れある意味ラブストーリー性もありますね。

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