新名さん家の異世界事情

星月 光

第1話 新名さん家の親子ゲンカ(脚本)

新名さん家の異世界事情

星月 光

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〇洞窟の深部
キラーシャーク「な・・・ なぜ人間がここに!?」
新名 翼「・・・・・・」
キラーシャーク「・・・まあ 理由はどうでもいい」
キラーシャーク「海底洞窟は 我ら水棲族の聖地」
キラーシャーク「人間ごときが・・・」
新名 翼「話が長い」
新名 翼「・・・早く出ないと」

〇水中

〇海岸の岩場

〇山中のレストラン
  食事処『千羽鶴』

〇怪しげな酒場
「大将、おかわりくれ!」
新名 龍之介「お待ちを!」
「大将、こっちはビール!」
新名 龍之介「あいよ!」
新名 雅「はーい お待たせしました」
客「ミヤビちゃん 今日もべっぴんだねえ」
新名 雅「そう? うふふ」
客「6人目の妻にならない?」
新名 雅「ごめんなさぁい あたし、一途な人じゃないと嫌なの」
客「そう言わずに・・・」
客「ひえー!?」
新名 翼「・・・・・・」
新名 龍之介「おう翼 早かったじゃねえか」
新名 翼「ああ」
新名 雅「怪我はない?」
新名 翼「うん」
ウンディーネ「わたしの加護は役に立った?」
新名 翼「・・・はい」
新名 龍之介「調理するから持ってこい」
新名 翼「わかった」
新名 雅「ごめんなさい あの子ったら」
ウンディーネ「いいのよ」
ウンディーネ「水中で呼吸できないなんて不便ね」
新名 翔「いやはやおっしゃるとおり!」
新名 翔「ウンディーネというのは 美しいうえに聡明なんですね!」
新名 龍之介「翔! フラフラしてねえでこっち手伝え」
新名 翔「へーい」
新名 翼「・・・・・・」
新名 翼「・・・外の掃除してきます」

〇山中のレストラン
新名 翼(・・・またうまくしゃべれなかった)
新名 翼(なんでわたし、こうなんだろ)
新名 翼(あのとき・・・)
「翼! ちょっと来い」
新名 翼「・・・・・・」

〇怪しげな酒場
ウンディーネ「あ! ツバサちゃん」
ウンディーネ「これ、とってもおいしいわ」
ウンディーネ「前に大将から聞いて 食べてみたかったのよね」
新名 翼「・・・はい」
ウンディーネ「狩りなんて大変だったでしょ? 無理させてごめんなさいね」
新名 翼「いえ・・・」
客「生魚なんてよく食えるな」
新名 龍之介「そりゃ残念だ」
新名 龍之介「酒によく合うんだけどな」
客「じゃ、試しに一口」
客「悪くねーな」
新名 龍之介「そりゃなにより」
客「お嬢ちゃんも、ありがとな」
新名 翼「どうも・・・」
「・・・・・・」

〇山中のレストラン

〇怪しげな酒場
新名 翔「今日も翼の接客はひどかったな」
新名 翼「うるせえな」
新名 翼「兄貴だって お客さんをナンパしてただろ」
新名 雅「人見知りなのはしょうがないけど」
新名 雅「この世界に来てもう3ヶ月 そろそろ慣れてもいいんじゃない?」
新名 雅「あたしたちとは普通に話せるんだから」
新名 翔「違うよ姉ちゃん」
新名 翔「翼がしゃべれないのは 人見知りのせいじゃない」

〇教室
新名 翼「それで親父がさあ」
新名 翔「翼! 体操着忘れてるぞ」
新名 翼「ありがとな、兄貴!」
「前から思ってたけど」
「翼ちゃんのしゃべり方、変だよね」
新名 翼「えっ?」
「男の子みたいだよね」
「ていうか おじさんみたい」

〇怪しげな酒場
新名 翼「聞いてたのかよ! 趣味わりいな」
新名 翔「出た! おじさんのしゃべり方だ」
新名 翼「しょうがねえだろ 親父が・・・」
新名 雅「翼はほとんどお父さんに育てられたもんね」
新名 翔「・・・母ちゃん ほんとに帰ってくるのかな」
新名 雅「無理だと思う」
新名 雅「女は一度心が離れたら戻らないよ」
新名 翔「父ちゃんは未練たらたらだけどな」
新名 雅「けどお父さんが ここでお母さんを待ちたいなら」
新名 雅「あたしはそれに付き合うよ」
新名 雅「イケメン王子様と結婚できるかもだし!」
新名 翔「就活も失敗したしな」
新名 雅「うるさい」
新名 翔「僕も日本よりこっちのが合ってるな」
新名 翔「美少女ハーレム作れるかもしれないし」
新名 雅「アニメの見過ぎ」
新名 翼「わたしは ・・・日本に帰りたい」
新名 雅「けど翼・・・ 高校受験落ちたじゃない」
新名 翔「もし来年受かっても 1つ下の奴らと同じ学年になるぞ?」
新名 翼「でも・・・」
新名 龍之介「おめえら まだ起きてたのか」
新名 龍之介「明日も早えんだ 早く寝ろ」
新名 翼「・・・・・・」

〇山中のレストラン

〇怪しげな酒場
新名 翼「・・・おはよう」
新名 龍之介「おう翼 いいところに来たな」
新名 龍之介「またお客さんから要望があってな」
新名 龍之介「今度はスライムでゼリーを・・・」
新名 翼「いつまで・・・」
新名 翼「いつまでこんなことすりゃいいんだよ!」
新名 翼「親父の気が済むまで? 母さんが戻ってくるまで?」
新名 翔「おい翼・・・」
新名 翼「もう嫌なんだよ!」
新名 翼「夢見るのは勝手だけど こっちまで付き合わせるな!」
新名 雅「翼・・・!」
新名 龍之介「・・・言いてえことはそれだけか?」
新名 龍之介「無愛想で接客もろくにできねえ 不器用で調理もろくにできねえ」
新名 龍之介「そんなおめえに狩りの役目を 与えてやったってのに」
新名 翼「帰りたいんだよ!」
新名 翼「高校に行って、友だちと遊んで そういう生活がしたかった」
新名 翼「こんな知らない世界で 魔物狩りなんかさせられたくない!」
新名 龍之介「・・・働かざる者食うべからず」
新名 龍之介「そんなに帰りてえんなら おめえ1人でどうにかしろ!」
新名 翼「・・・っ!」
「翼!」
新名 龍之介「ほっとけ!」
新名 龍之介「それより仕込みだ 手伝え」
「・・・・・・」

〇山中の川
新名 翼「はあ・・・」
新名 翼「1人でどうにかしろ、か」
新名 翼「それができればとっくにやってるっての」
新名 翼「・・・・・・」

〇明るいリビング
新名 龍之介「雅、翔、翼 話がある」
新名 翔「なんだよ、改まって」
新名 龍之介「雅 就職先は決まったのか?」
新名 雅「まだだけど」
新名 雅「お金持ちが養ってくれないかな~」
新名 龍之介「翔 外へ出る気はねえのか」
新名 翔「ない」
新名 龍之介「・・・翼」
新名 翼「・・・・・・」
新名 龍之介「わかった」
新名 龍之介「みんなで母さんに会いに行こう」
「えっ!?」

〇山中の川
新名 翼「母さんを待ちたいなら 親父だけここに来ればよかったのに」
新名 翼「・・・いや」
新名 翼「姉貴も兄貴もけっこう乗り気だったっけ」
新名 翼「わたしだけ・・・」
新名 翼「なんだ!?」

〇怪しげな酒場
「大将! クラーケンのフライ1つ!」
新名 龍之介「すまねえ! 品切れなんだ」
「大将ー! グリフォンステーキ!」
新名 龍之介「すまねえ それも品切れだ」
ウンディーネ「どうしたのよ大将」
ウンディーネ「今日の品揃え、ひどいわよ」
新名 龍之介「面目ねえ」
ウンディーネ「ツバサちゃんになにかあったの?」
新名 翔「いやあそれがですねー」
新名 龍之介「身内の恥を晒すんじゃねえ」
新名 翔「父ちゃんのこと?」
新名 龍之介「なんだと!?」
新名 翔「皿洗いしてきま~す」
新名 龍之介「仕方ねえ 翔を狩りにやるとするか」
新名 雅「翔にできると思う?」
新名 雅「やっぱり翼にやってもらおうよ」
新名 龍之介「んな情けねえことできるか」
新名 雅「ちょっとは翼の気持ちも考えてあげてよ」
新名 龍之介「・・・・・・」
新名 雅「・・・頑固じじい だからお母さんにも逃げられるのよ」
新名 龍之介「あ!?」
新名 雅「お客様~ ただいまお伺いしま~す」
新名 龍之介「・・・・・・」

〇森の中
女の子「こわかったよぉ」
新名 翼「なんで1人でいるんだよ」
新名 翼「死ぬとこだったんだぞ」
女の子「だって・・・」
新名 翼(言い方キツかったかな)
新名 翼(姉貴なら優しく言い聞かせるだろうし)
新名 翼(兄貴なら笑わせようとするはず)
新名 翼(どうすれば・・・)
女の子「おかあさん・・・」
新名 翼「え?」
女の子「おかあさん、病気で ご飯食べられないから」
女の子「ゼリーなら食べられるかもって 千羽鶴の大将さんにお願いしたの」
女の子「でも、ダメって言われちゃったから・・・」
新名 翼(親父なら・・・)
新名 翼「・・・そうか よく頑張ったな」
新名 翼「けど、1人で危ないことしちゃダメだ わかったな?」
女の子「うん!」
新名 翼「さ、千羽鶴に行こう」
女の子「でも・・・」
新名 翼「心配すんな」
新名 翼「大将がきっと 作ってくれるさ」

〇怪しげな酒場
新名 雅「いらっしゃ・・・」
新名 雅「翼!」
新名 翼「お、親父 あのさ・・・」
新名 龍之介「翔、手伝え」
新名 翔「お、おう」
新名 翼「・・・・・・」

〇山中のレストラン

〇怪しげな酒場
新名 翔「これがスライムゼリー?」
新名 雅「おいしそうね」
新名 龍之介「もちろん皆さんの分もあるぜ」
新名 龍之介「ご迷惑をおかけしたお詫びだ」
女の子「ありがとう大将さん」
女の子「マントのお姉ちゃんも、ありがとう!」
新名 翼「いや・・・わたしは別に・・・」
新名 龍之介「早く母ちゃんに食わせてやんな」
新名 龍之介「翼 送ってってやれ」
新名 翼「お、おう・・・」

〇空

〇怪しげな酒場
新名 翼「・・・ただいま」
新名 龍之介「おう」
新名 翼「あ、あのさ」
新名 龍之介「腹減ったろ」
新名 龍之介「食え」
新名 翼「・・・・・・」
新名 翼「・・・うまい」
新名 翼「やっぱ親父の料理は美味いよ」
新名 龍之介「作ったのはオレだけじゃねえ」
新名 龍之介「おめえが材料を調達して」
新名 龍之介「オレと翔が作って」
新名 龍之介「雅がお客さんに運ぶ」
新名 龍之介「誰が欠けても作れねえ」
新名 翼「・・・親父」
新名 龍之介「ここに母さんが加われば もっといいもんが作れるはずだ」
新名 翼「親父はさ・・・」
新名 翼「母さんが戻ってくるって 信じてるんだな・・・」
新名 龍之介「・・・ああ」
新名 龍之介「オレはまた家族5人でやっていきてえ」
新名 龍之介「母さんが戻ってきたとき おめえがいねえと寂しいだろうし」
新名 龍之介「だからだな・・・」
新名 龍之介「・・・・・・」
新名 翔「おーっと 黙ってしまいました」
新名 雅「明日も早いんだし 早く済ませてよね」
新名 龍之介「うるせえぞ!」
新名 龍之介「あー、その、なんだ」
新名 龍之介「・・・悪かったな、翼」
新名 翼「い・・・いや わたしも・・・ごめん」
新名 翼「高校生になりたい気持ちは 変わってないけど」
新名 翼「もう少しだけなら この世界で頑張ってもいいかな」
新名 翼「しゃべれる練習にもなるし・・・」
新名 翼「・・・じゃ! もう寝るから!」
新名 雅「素直じゃないとこ、そっくりね」
新名 翔「だな」

〇山中のレストラン

〇怪しげな酒場
新名 翼「おはよう」
新名 龍之介「翼! いいところに来たな」
新名 龍之介「またお客さんから要望があってな」
新名 龍之介「今度はドラゴンステーキ丼だ!」
新名 翼「ドラゴン・・・?」
新名 龍之介「ってわけで ちょっくら行ってきてくれ」
新名 翼「・・・は?」

〇岩山
新名 翼「うおおおお!」
新名 翼「はあ・・・はあ・・・ なんとか倒した・・・」
新名 翼「竜殺しの剣がなかったら 絶対死んでただろ・・・」
新名 翼「・・・早く持って帰らないと」
新名 翼「・・・うわっ!?」
新名 翼「いてて・・・」
新名 翼「・・・いつか・・・」
新名 翼「いつか日本に帰ってやる」
新名 翼「絶対に!」

コメント

  • 居酒屋の名前が「千羽鶴」なのがいいですね。妻や母親の帰りを待つ家族の願いが込められているのかな。どういう経緯で姿を消してしまったのか、事情が気になります。

  • 父親と娘の、わだかまりが徐々にとけていく変化がとても良いなと感じました。4人とも目的があって母が戻るまで、時には喧嘩、仲直りを繰り返して家族の絆が深まっていくのでしょうね。
    楽しかったです😊

  • 最初のサメを刺し身にしてて笑っちゃいましたが、読み進めるうちに家族愛を感じる温かいお話にほっこりでした😊
    親子喧嘩しながらも、「誰一人欠けてもこのお店はやっていけない」そんなお父さんの気持ち。口数が少ないからうまく伝わらない、けれどお互いを思う気持ち。お父さんの適材適所な人材選びも愛を感じました!
    異世界での家族愛のお話の中と共に、異世界生物メニューのバリエもたくさん広がりそうですね👍

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