異世界母さん

つっちぃ2号

わが家のある平凡な日常(脚本)

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〇一戸建て
  その日、朝から穏やかな天気が続き
  のんびりと過ごせる・・・
  ハズだった

〇明るいリビング
母さん「おはよう、さとし」
俺「おはよう母さん 今日も良い天気だね!」
母さん「そうねぇ、このまま穏やかな一日に なるといいのだけどね」
デブクロ「にゃああ〜」
俺「おはよう、デブクロ 今日もゴキゲンだね!」
デブクロ「にゃにゃにゃああ! にゃおっ、にゃおっ、にゃおっ・・・」
  それまで毛づくろいをしていたデブクロは、突如として誰かに話しかけるかのように
  泣き始めた・・・
俺「あれ⁇ どうしたデブクロ?」
母さん「もしかすると、アレ・・・かしらね?」
俺(ああ、アレが始まる合図か・・・)

〇一戸建て
  ・・・そう、アレはいつも唐突に始まる
  いつからだろうか・・・
  恐らくはデブクロが我が家に来てからだ

〇魔法陣
  上空の青空はいつのまにか暗闇に変わり、魔法陣のような模様が浮かび上がる・・・
母さん「これって私たちしか見えないのよね?」
俺「不思議だけど、 いつも俺と母さんにしか見えないんだよね」
母さん「良かったわ・・・」
俺「なんで?」
母さん「ご近所さんから何か言われると、 いろいろと面倒じゃない?」
俺(さすがは母さん、こんな超常現象よりも 世間体を気にするところは、昭和な感覚だ)
  そんなやりとりをしているうちに、
  アレは次の段階に入っていた。

〇武骨な扉
  リビングの壁に、怪しい扉が浮かび上がる。
母さん「今日は青い扉ね・・・」
俺「青い扉ということは・・・」
デブクロ「にゃお〜ん」

〇洋館の玄関ホール
  扉が開くと中世ヨーロッパ風の建築物の広間と階段が現れた・・・
異世界ネコのミー「みゃー!」
  このネコが現れたということは、
  あの家に繋がったということか・・・
異世界領主「ご無沙汰しております」
  壁に現れた扉は異世界に繋がっている。
  彼はピース王国の地方領主だ。
  この家に繋がるのは3度目くらいかな。
デブクロ「にゃー!」
異世界ネコのミー「みゃー」
  どうやら彼らネコたちが呼び合う事で異世界への扉が開く仕組みらしい。
  詳しくは良くわからないのだが・・・
母さん「お久しぶり! 元気そうで何よりよ」
異世界領主「お聞きした肥料や農薬を領民たちに作らせたところ、今年はかなりの豊作になりそうです」
母さん「それは良かったわ!」
  以前に扉が繋がった時、凶作に困った領主様を助けようと、母さんが知り合いの農家を聞いて回って対策を考え出したのだ。
異世界領主「せっかくですから、今宵は豊作のお礼も兼ねて、ささやかな宴でも・・・」
母さん「いいわね!」
  母と領主様はそのまま宴会に突入・・・
  俺は、というと、
異世界少年ルー「おじさん、今日も遊んでくれるんだよね!」
異世界女子スー「おじさん、この前もらったぬり絵ね、 全部塗ったから新しいのちょうだい!」
俺「君たち、俺は ”おじさん”じゃなくて”お兄さん”ね」
母さん「お兄さん? さとし、それはかなりムリがあるわ! キャハハハハ・・・」
  母さんは、すっかり出来上がっていた・・・
  俺は止むなく領主様の孫たちの遊び相手をすることに、

〇立派な洋館
  家が繋がっているせいで、異世界側の庭園がまるでわが家の庭のような錯覚に陥いる。
俺(こんな広い家に住めたらいいなぁ・・・ 景色もいいし)
異世界少年ルー「・・・」
俺「どうした? 元気ないみたいだけど、」
異世界女子スー「ルー君の仲良しの子が王都に引っ越して、 寂しくなったみたい・・・」
異世界少年ルー「そんなことない! けど遊び相手がいないと調子狂って、」
俺(そうか、言われてみれば前より人が少なくなっているみたいだ、)

〇洋館の玄関ホール
母さん「あら、 街から人の流出が止まらないんですか?」
異世界領主「作物が豊作になれば、少しは出て行く人が減ると思ったのですが・・・ 昔、栄えていた頃に比べたらまだまだ」
母さん「この街は、元々どんなことで栄えていたの?」

〇西洋の街並み
異世界領主「この街は、王都と工房都市の中間部にある宿場町としてかつては多くの旅人や行商人が訪れて栄えていたのです」
異世界領主「しかしながら南側の海沿いに大型馬車が通る広い街道が整備され、人々はこちらの街道を通らず街がさびれてしまったのです」
母さん「新幹線が通ると在来線が廃止されるみたいな話ね、」
異世界領主「シンカンセン?とは⁇」
母さん「それは別の機会にゆっくり話すとして、 今は街に人を呼び込めることを考えましょう」
異世界領主「おお・・・ またしても街を救う叡智を我に授けてくださるのか?」
母さん「ええ、 私の思い付きがうまくいけばですけど・・・」
異世界領主「だがこの件に関しては、今までいろいろ試したのですが、」

〇立派な洋館
俺「そういえば、いつも領主のお爺さんしかいないみたいだけど、君たちのご両親は? ・・・あ、聞いても良い話⁇」
異世界女子スー「大丈夫だよ、 父さんも母さんも今は王都にいるんだ」
異世界少年ルー「この街は大した産業が無いから、父さんと母さんで街の人たちを連れて王都に働きに出かけているんだ・・・」
俺(出稼ぎか・・・)
異世界女子スー「お父さんもお母さんも仕事で忙しくしているから、街にはほとんど帰って来れないの・・・」
異世界少年ルー「街のためなのはわかっているんだけど・・・」
俺(日本の過疎地域そのものだな・・・ なんとかならないものかなぁ)

〇ヨーロッパの街並み
異世界領主「”このままでは街が滅ぶ”と息子夫婦は領民たちを王都のホテルや旅館に連れて行き、一緒に働いています」
異世界領主「その仕送りでこの街はなんとか食い繋いでいるのです・・・しかしながら働き手が皆、王都に行ってしまうと街はさらに寂れて、」
母さん「なるほど・・・ 人を呼び戻せたらいいのよね?」
異世界領主「そんな都合のいい話、ありますかね⁇」
母さん「前から気になっていたのだけど、この街の宿屋には温泉はないのかしら?」
異世界領主「温泉・・・ですか?」

〇露天風呂
母さん「例えば、こんな感じの施設なんだけど」
異世界領主「おお! これは王都にある大浴場みたいなものですね 確かに人気の施設です」
異世界領主「ですが、この街ではムリです・・・」
母さん「どうして?」
異世界領主「大浴場はお湯を作るために膨大な量の水と燃料が必要なのです。このため利用者も貴族階級限定でして・・・」
母さん「あら、温泉ならわざわざお湯を沸かす必要なんてないわ・・・」
異世界領主「どういうことですか?」

〇立派な洋館
母さん「領主さんは元々は魔術師だったのよね? 井戸掘りの魔法とかって使えるの?」
異世界領主「もちろん・・・ ですがこのあたりは火山活動が活発で、 熱泉しか出ず飲み水には適していないのです」
母さん「つまりは浴場のお湯には適しているということよね⁇」
異世界領主「言われてみれば・・・そうか!」
俺「どういうこと⁇」
母さん「じゃあ領主さん、早速井戸掘りの魔法を」

〇魔法陣
異世界領主「泉を出でよ・・・ εΔ☆⊆◎・・・」
  領主様が呪文を唱え出すと、地面が割れ、
  泉が吹き出した・・・

〇源泉
異世界少年ルー「凄い! お湯の泉が次々と湧き出しているよ!」
異世界女子スー「温かくて気持ち良さそう!」
俺「温泉だぁ〜!」
母さん「あとはこのお湯を街の宿屋に給湯すればいいわ!」
異世界領主「はい早速、腕の立つ大工を集めます! 本当にありがとうございます!!」
母さん「今、お礼を言われてもね、 本当に人が集まって来るか、わからないわよ」
異世界領主「いえ大丈夫、すぐに息子夫婦にも知らせて、王都で大々的にこの街が平民でも自由に浴場に入れることを宣伝します!」
俺「それでたくさんの人が集まって来れば、街の人たちも戻って来られるかも、」

〇洋館の玄関ホール
デブクロ「にゃー」
異世界ネコのミー「みゃー」
母さん「あら、そろそろお暇の時間かしら⁇」
  ネコたちがまもなく扉が閉じることを知らせてくれた・・・
異世界少年ルー「もう帰っちゃうの?」
異世界女子スー「さみしいよ〜!」
俺「大丈夫、これで街に活気が戻ってくれば、ご両親や友だちも王都から戻れるさ」
異世界少年ルー「本当に?」
異世界女子スー「もしそうなら嬉しいよ!」
異世界領主「次回はぜひ、この街に出来る温泉を楽しんでください!」
  扉が徐々に閉じられていく・・・
母さん「ええ、楽しみにしているわ、 それではまた次に繋がった時にね!」
  こうして異世界王国との扉は閉じられた。

〇武骨な扉
俺「あれ?」
母さん「なにこれ?」
  目の前には新たに赤い扉が現れた
デブクロ「にゃにゃにゃにゃにゃ?」
  どうやらデブクロも想定外の出来事らしい。

〇要塞の回廊
魔王の使い魔「みゃお〜」
  ネコ・・・なのか?
  なんか魔物にしか見えないのだが、
異世界魔王「おおお!よくぞおいでくだされた!!」
異世界魔王妃「我らが魔王国の危機をお救いください!!」
  どうやら別の異世界に繋がったようだ・・・
俺「・・・どうする、母さん⁇」
母さん「まあこうして繋がったのも何かの縁・・・ これも人助けよ!」
俺(魔王様ご夫妻は人ではない気もするのだが、)
デブクロ(呼んだ覚えもないのにどうしよう、 困ったにゃ)
  このように・・・今日も我が家の日常が続いている・・・

〇魔法陣
  つづく?

コメント

  • 異世界に完全に移動するんじゃなくて家屋がつながっているという発想がとてもユニーク。互いの世界のものを見たり交換したりできますね。作者さんの夢が発端なんですね。異世界に導く役は「不思議な国のアリス」では白ウサギだけれど、この物語では黒猫というのがまたちょっとミステリアスで可愛いなあ。

  • お母さん、コミュ力おばけww 確かに、昭和の頃は、すぐ他所の話に首を突っ込んで世話を焼くタイプの人が多かったですね(おっと年齢が…)
    異世界モノと思いきや焦点がお母さんに合っていて、愉快なお母さんモノとして楽しませてもらいました!

  • 異世界への導入の仕方がとても興味深かったです。こうして彼等と繋がりながら行き来ができること、どちらの家族にとってもなんだか夢があるように感じました。

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