第四糸「ワケあり男の娘と包帯誘拐犯」(脚本)
〇シンプルな玄関
大神魎兵「・・・」
〇線路沿いの道
大神魎兵「・・・!」
俺の公園に行くために動いていた脚は止まった。
〇空き地
???「・・・」
目線の先にはなんだか珍しい髪の女の子がぬいぐるみを抱えて右往左往している姿。
???「・・・!!」
???「・・・うぅ」
〇線路沿いの道
大神魎兵「・・・」
もう・・・あの子で良いんじゃね?
〇空き地
???「うぅ・・・痛いよぉ」
大神魎兵「そこの嬢ちゃん」
???「・・・」
大神魎兵「怪我してないか?大丈夫か?」
???「・・・」
大神魎兵「・・・ほら、飴とお菓子。あげるからお兄さんの家においで」
大神魎兵「手当てをしてあげる」
俺はそう言って手を差し伸べた。
???「・・・私のパパけいさつかんだよ?」
これは・・・拐われる事を察知したのか・・・?
・・・・・・面倒くさいな
大神魎兵「なに。お兄さんはただ手当てしてあげるだけだ」
ゼロ「・・・ふふっ」
大神魎兵「!?」
大神魎兵「ぅわっ!?」
〇空き地
ゼロ「最近、退役軍人による人拐いが多発してるらしいけど、」
ゼロ「──お前も"そう"だったりするの?」
ガキは俺を押し倒したのか、
俺の背中をぴったりブロック塀に押し付けて、
上に乗っている。
大神魎兵「んなっ・・・!?」
ゼロ「あー・・・顔見るからにそうだよなー」
俺はフードを捲られ、顔を見られた。
大神魎兵「っ・・・どけ!!」
ガキの見下すような目付きに背筋が凍り、
起き上がろうと必死に抵抗する。
ゼロ「ちょっとは落ち着けよ、包帯男」
大神魎兵「ぐぇ・・・っ」
抵抗していると首元、鎖骨辺りを
凄まじい力で押さえ付けられ、捻じ伏せられた。
ゼロ「もしかして、か弱い女の子だ〜!って思って声掛けた?」
ゼロ「ざぁ〜んねぇ〜ん」
大神魎兵「・・・」
ゼロ「僕、男の娘で〜す♡」
大神魎兵「・・・・・・は?」
〇空き地
???「ちゃぁ〜んと、"付いて"ま〜す!!」
大神魎兵「っ・・・!」
ごり・・・っ
腰にそれらしきモノが当てられる。
大神魎兵「分かった!悪かった、だから離せ!」
俺そんな趣味ねぇってば!!!
???「ん〜嫌!」
大神魎兵「なんでだよ!!」
ほんとに何でだよ!!
???「は・・・?」
???「じゃあお前は街中で自分から声掛けた女」
???「満足させずに放っておくんですかあー?」
大神魎兵「お前女じゃねぇーだろ!!」
何を被害者ぶってんだよ!
このガキは──!!
???「てか・・・お前」
大神魎兵「んだよ・・・」
???「金、欲しくないか」
大神魎兵「・・・」
???「欲しいって顔だな!」
???「条件は簡単」
???「1、俺を匿うこと」
???「2、俺の『管理者』になること」
ゼロ「そして最後、俺の詳細は口外禁止にすること」
大神魎兵「・・・」
待て、急な説明で訳が分からない。
大体、なんだよ匿う、とか『管理者』、とか
大神魎兵「いやいや・・・急に・・・・・・」
???「でも金だけは約束する」
ゼロ「俺にも俺の事情がある 金が必要なら金をやるよ」
大神魎兵「・・・」
ゼロ「だから──頼む」
子供が駄々を捏ねる目ではなく、コイツは
崖っぷちにでも立っているような目で俺を見た。
大神魎兵「・・・チッ・・ぁあ!分かったよ!」
大神魎兵「その代わり金だけは絶対だからな!!」
???「よっしゃあ!」
大神魎兵「はぁ・・・」
ゼロ「僕はゼロ!」
ゼロ「宜しくな!"大神"!」
大神魎兵「お前・・・何で俺の」
「包帯のにーちゃん!?」