愚者の栄光

尺一 (サカクニ)

2話(脚本)

愚者の栄光

尺一 (サカクニ)

今すぐ読む

愚者の栄光
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇黒
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・微かな土の匂い、葉が擦れ合う音。
  !?
  ──唐突に意識が覚醒する。
  慌てて身体を起こすと・・・・・・

〇森の中
  そこは森の中、心地のいい風が吹き日光が木々の間から漏れている。
  そんな場所に俺は寝転んでいたようだ
架間光輝「(何だ?ここはどこなんだ?)」
  周囲を見渡すが見覚えのない場所だった。
架間光輝「(そうだ・・・確か神様に・・・)」
  体を見渡してみるが特に痛みや異常は見受けられない。
架間光輝「(無事転生したってことなのか?)」
  自分の体を確かめながらゆっくりと立ち上がる。
  そして、周囲をもう一度見渡してみるがやはり見覚えはない。
架間光輝「(特に危険はなさそうな場所だけど・・・)」
  ここが何処なのか分からないため迂闊な行動は出来ない。まずは状況の確認をしようと思ったところでふと思い出す。
架間光輝「(そういえば特典を貰ったんだよな、でもどうやって使うんだ?)」
  使い方を聞いておけば良かったと後悔する。しかし今更どうすることも出来ない。とりあえず頭の中で念じてみる。
架間光輝「(なんて言っていた?確か『選択する時に正解か間違いが分かるように・・・』なんて言っていたよな)」
架間光輝「(自分で選択肢を作ればいいのか?試しに・・・)」
  真っ直ぐ、後ろ、右、左どちらに進めばいいかを頭の中で念じてみる。そうすると・・・
  目の前に半透明の画面が現れた。
  そこには こう書かれていた。
  『真っ直ぐ進む』❌
  『後ろに進む』❌
  『右に進む』○
  『左に進む』❌
架間光輝「なるほど、こう言うことか」
  書いてあること通りなら右に進めば良いって事だよな・・・
  光輝は体を右に向け見慣れない森を歩く。

〇けもの道
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  歩きながら今後のことを考える。
  まずはこの世界について知らなければいけないだろう。
  この世界の常識も必要だし、お金とか生活に必要な物もあるはずだ。
  その為にもまず人がいる所に出なければ行けない。
架間光輝「・・・そういえばこの服装で怪しまれたりしないかな?」
  今の 俺の格好は前いた世界では特に不思議でもない服装だが、こっちでは目立ってしまうかもしれない。
架間光輝「(まあ仕方ないか、他に服があるわけでもないしそういう事は人と出会ってから考えよう。)」
架間光輝「(後は残り2つの特典だが、魔力が減らない事とあまり困らない体って言っていたよな?)」
架間光輝「(魔力はよく分かっていなし、困らない体っていうのは身体能力が上がっているって事なのか?)」
  歩きながら現状出来ることを考える。
架間光輝「・・・ジャンプしてみるか?」
  身体能力が上がっているのなら普段より高く飛ぶはずだと考え、助走をつけ軽く飛んでみる。
  すると・・・凄い勢いで飛び上がり木の上まで来てしまった。
  そのまま落下するが着地しても足に痛みは無かった。
架間光輝「(これは予想以上に身体能力が上がっているな、でも痛くないだけで衝撃はあるみたいだな。)」
  軽くジャンプしたつもりだが思ったよりも飛んでしまった。
  身体能力が上がっていてもまだコントロールできていないようだ。
  その後、何度かジャンプしたり走ったりした。
  その度に木の上に登ったりしてしまったが・・・・・・
架間光輝「(これで少しはマシになったと思うけど、あまり目立つことはしないようにしないとな・・・)」
  ある程度この体に馴染んできたところで改めて考える。
架間光輝「(このまま歩いていればいつかこの森からは出られると思うけど・・・)」
  食糧も水もないこの状況に若干焦りを感じ始める。
架間光輝「(暗くなる前にこの森を抜けたいな・・・)」
  しばらく歩いていると・・・
  ・・・・・・ォォ────ン・・・
  遠くの方から何か鳴き声のようなものが聞こえた。
架間光輝「(なんの声だろう?動物っぽい感じだったけど?)」
  もし危険な動物だったりしたら離れた方が身のためだが・・・
架間光輝「(・・・そうだ、離れるか向かうかも能力を使ってみるか?)」
  そう考え頭の中で選択肢を思い浮かべる。
  『声が聞こえた方に向かう』○
  『無視してこのまま進む』○
  目の前に現れた選択肢に悩む光輝
  どうやら必ず❌の選択肢が出る訳では無いようだ。
架間光輝「(どっちを選んでも正解か、という事は声が聞こえた方は特に危険は無いってことだろうか?)」
  どちらを選ぶべきか迷ったが結局声がした方に向かう事にした。
架間光輝「(もしかしたら人と出会えるかもしれないしな・・・)」
  そう考えながら光輝は木々の間を抜けていく・・・

〇けもの道
  ──ォォォォン──
  徐々に鳴き声が鮮明に聞こえてくる。
架間光輝「(犬の鳴き声か?)」
  段々と近くなってきたようで、もうすぐ鳴き声の主が見えるところまで来たのだが・・・
架間光輝「うわ!?」
  思わず驚きの声をあげてしまう、
  それも当然のこと目の前には傷ついた犬がいた。
犬?「グルルルル・・・」
  こちらに気付いたのか鋭い眼光が向けられる。
  しかし傷ついているせいか弱々しい印象を受ける。
架間光輝「(これは助けてあげないとな・・・)」
  警戒させないようにゆっくり近づく。
架間光輝「大丈夫だから安心してくれ・・・よし、いい子だ・・・」
犬?「ガゥゥ・・・・・」
  足を怪我しているのか立てないようだ。
架間光輝「(血が出ているな・・・)」
  とりあえず手当をしようと上着やズボンを漁るが包帯などは無かった。
架間光輝「(止血だけでもしないと・・・)」
  服を破り包帯代わりにする。
架間光輝「(どうすればいい・・・回復魔法とかあるんだろうけど使えないしこのままじゃ・・・)」
  悩んでいると犬はある方向を見つめながら吠え始めた。
架間光輝「(なんだ、何かあるのか?)」
  気になりそちらを見ると、そこには周りの草と少し色が違う草が数本生えている。
架間光輝「あの草か?」
犬?「ガウ!」
  言葉を理解しているのか、返事をするかのように吠えてきた。
架間光輝「分かった取ってくるよ」
  俺はその草に近づく。
  すると突如、選択画面に似た画面が目の前に現れた。
架間光輝「うお!?」
  突然現れた画面に驚く、そこにはこう書かれていた。
  薬草(毒)を純正な薬草にしよう!
  クリアで回復魔法取得!!
  
  ※君が選んだ選択肢により発生
架間光輝「(何だよこれ?)」
  意味がわからず困惑してしまう。
架間光輝「(選択肢により発生?この草に近づいた事か?それともこの犬の所に来た事が正解ってことか?)」
  考えても答えは出ない。しかしこの機会を逃す訳には行かない。
架間光輝「(てかこの草は薬草なのか、でも毒?)」
  とりあえず抜いてみようと触ろうとしたところでふと考える。
架間光輝「(いや、これ触って大丈夫なのか?毒って書いてあったしな・・・)」
  頭の中で念じていないが突如選択画面が現れる。
  『抜く』○
  『抜かない』○
架間光輝「(・・・つくづく便利な能力だな。)」
  そんな事を考えながら光輝は薬草(毒)を抜きとる。
架間光輝「(これ毒になってるしどうすればいいんだ?)」
  悩んでいると再び画面が現れる。
  『薬草(解毒)にする』○
  『捨てる』❌
架間光輝「(・・・なるほど、悩んだり迷ったりしていると出てくるのか。)」
架間光輝「(なら選択肢通りやってみるか、どうやって解毒するんだ?)」
  するとまたもや選択肢が現れる。
  『アマの実を探す』○
  『アマの実を砕く』○
  『アマの実を混ぜる』○
架間光輝「(全部正解ってことはとりあえずアマの実を探さなきゃいけないのか・・・)」
  光輝は周囲を見渡すがそれらしいものは見つからない。
架間光輝「(近くには無いのか?そもそもどこに生えて・・・)」
  また選択肢が現れる。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
架間光輝「(なるほどこっちを真っ直ぐね。)」
  能力に頼りすぎている気がするが何も分からない世界だからしょうがないと自分を納得させる。
架間光輝「もう少し待ってろよ」
  犬に声をかけると走り出した。

〇けもの道
  しばらく走っていると奥の方から何か声が聞こえた。
架間光輝「(誰かいるのか?)」
  声がした方に近づいて行くと、そこには見たこともない全身緑色の化物がいた。
架間光輝「ひっ!?な、なんだよあいつ・・・」
  慌てて近くの木の後ろに隠れる。
  その化け物は木の周りをウロチョロしていた。
架間光輝「(なんなんだよあの化物・・・)」
  よく見るとその化物の頭上に名前のような表示がある。
架間光輝「(ゴブリン・・・か?)」
  その瞬間、目の前に選択肢が出てきた。
  『戦う』○
  『逃げる』○
  『様子を伺う』○
架間光輝「(いきなり戦うとか無理だろ!・・・ん?)」
  そのゴブリンの後ろには木があり何か実のような物がついている。
架間光輝「(あれがアマの実か?)」
  目を凝らすと・・・
  『アマの実(猛毒)』○
架間光輝「(あれがアマの実なのか、てか猛毒なんだが・・・)」
  アマの実を取るにはあのゴブリンとやらを何とかしないといけない。
架間光輝「(何とか出来ないか・・・)」
  先ほどの選択肢をもう一度思い出す。
架間光輝「『戦う』に○がついていたって事は勝てるってことだよな?」
  『勝てる』○
  現れた目の前の選択肢には勝てると書いてある。
架間光輝「(やるしかないのか、だとしても素手で戦うか?)」
  武器になりそうなものを探したが見当たらない。
  そこで選択肢が出た。
  『石を投げる』○
  『棒を使う』○
架間光輝「(石を思いっきり投げてみるか?)」
  身体能力が上がっているのはジャンプで確信がついている。
  光輝は近くの手のひらサイズの石を拾う。
架間光輝「(もった感じ凄い軽いな・・・)」
  野球なんて体育の授業でしかやったことはないが構え方を思い出しながら投げる。
  風を切る音と共に投げた石は一直線に飛んでいき、見事頭に命中する。
ゴブリン「グギャアァ!!」
  ゴブリンは悲鳴を上げ、しばらくすると倒れ込んだ
架間光輝「(1発で倒れたか、良かった・・・)」
  呆気に取られていたがすぐに気を取り直し、倒れたゴブリンに近づく。
架間光輝「ごめんな」
  そう言いアマの実が生えている木に近づく。
架間光輝「(さて、あの実は触って大丈夫なのかな?)」
  画面が現れ
  『アマの実(猛毒)を手に入れる』○
架間光輝「(触って大丈夫そうだな。)」
  光輝はジャンプをし木の枝に飛び乗る。そしてそのまま実をもぎ取った。
架間光輝「よし!!」
  まず第一目標はクリアだな、あとは確か砕いて混ぜろって書いてあったな。
  光輝は近くにあった小石を手に取り握りしめ思い切り振りかぶって・・・・・・
  アマの実を砕いた。中には小さい紫色をした種が何個もある。
架間光輝「(これを使うのかな?)」
  近くにちょど大きい岩がありそこの窪みに薬草と紫色をした種を入れる。
架間光輝「(見た目は汚いがこれを混ぜるんだよな?)」
  とりあえず適当に落ちていた木の棒で混ぜ合わせる。
  しばらく待っているとアマの実に混ざり綺麗な水のように透き通った液体が出来上がった。
架間光輝「(これでいいのか?)」
  すると突如目の前に画面が現れた。
  おめでとうございます!
  条件をクリアしたので回復魔法【ヒール】を取得しました。
架間光輝「おお!!」
  思わず感嘆の声が出る。
  薬草は純正の物になったし追加で魔法を覚えられたのはいい結果だ。
架間光輝「(この薬草液状だし持っていこうと思うが瓶なんか持ってないしな・・・)」
架間光輝「(でも回復魔法を覚えられたならあの犬を助けられるよな?)」
  光輝は犬の元に向かう。

〇けもの道
  もう犬は叫ぶ気力が無いのか目を伏せて倒れていた。
架間光輝「(早く治さなきゃ!)」
  光輝は犬に駆け寄る。
架間光輝「(覚えたはいいが回復魔法ってどうやって使うんだ?)」
  そう思った瞬間画面が現れる。
  『使用方法』
  1患部に手をかざし ○
  2傷を治したい相手の事を思う ○
  3心の中で唱える ○
架間光輝「(良かった簡単だな。)」
  光輝は犬の怪我をしている部分に手をかざし念じる。
架間光輝「(頼む、効いてくれ・・・ヒール!)」
  すると淡い光が犬を包み込む。
  しばらくすると光が消え、犬の足に怪我はなく呼吸も安定していた。
架間光輝「良かった・・・」
  ホッとしたせいか身体から力が抜けその場に座り込んでしまう。
  すると犬が起き上がり俺の顔を舐めてきた。
架間光輝「(とりあえず治って良かった・・・)」
  頭を撫でると犬は気持ち良さそうに甘えてくる。
架間光輝「じゃぁそろそろ行くよ」
  光輝は立ち上がり歩き出す。
  すると犬も一緒に付いてくる
架間光輝「(まぁ、いっか・・・)」
  知らない所で1人ぼっちは寂しかったので犬がいるだけでも少し安心できた。
架間光輝「(日が暮れる前には森を出たいな・・・)」
  光輝と犬は共に歩き出す、正解の道へと・・・

次のエピソード:3話

成分キーワード

ページTOPへ