3話(脚本)
〇けもの道
あれから犬と歩いて1時間程、まだ一向に出口が見えてこない。
自分が思っていた以上に広い森のようだ。
架間光輝「はぁ・・・」
ため息をつきながら歩いていると後ろにいた犬が前に出てきた。
犬?「ウォン!」
架間光輝「ん?どうした?」
すると選択肢が現れる。
『犬に付いていく』○
『そのまま進む』❌
架間光輝「(・・・付いていくか)」
特にあてもない為ついて行ってみることにする。
しばらく歩くと遠くに木や岩ではない何かが見えた。近づいてみるとレンガ造りの建物が見える。
架間光輝「(ようやく何か見えた!)」
やっと森を抜けることが出来たらしい。
光輝は建物に向かって走る。
〇綺麗な教会
近づくとその建物は教会のようだ、所々ボロくなってはいるが十分人が住めるように見える。
架間光輝「(誰かいるかな?)」
ボロくはなっているが随分と広い、
その教会を囲うように鉄柵があり中には入れない。
正門のような建物もあるが閉じている。
架間光輝「(どうする?声をかけてみるか?)」
悩んでいると犬が付いてこいと言ってるかのようにこちらを見ながら歩き出す。
架間光輝「(・・・付いて行ってみるか)」
そのまま犬は教会の裏手へ回っていく。
そこには正門と似たような門がある。
架間光輝「(こっちから入るのか?)」
そう思っていたが犬は光輝の予想と反してそのまま教会ではなく
また森に入って行く。
架間光輝「(えっ!?)」
慌てて後を追う。
架間光輝「(声をかけて見ても良かったかもな・・・)」
〇山中の川
しばらく追いかけていくと徐々に水が流れる音が聞こえる。
架間光輝「川でもあるのか・・・?」
数時間前にいた森よりも普段誰かが使っているのか地面が踏み固められている。
しばらく歩くと遠くに人影のような物が見えた。
架間光輝「(ようやく人と出会える・・・)」
森から出られた事、人に出会える事に安堵しながら光輝は歩みを進める。
次第にその姿がはっきりしてくる。
そこに居たのはよくゲームで見かける西洋風の服を着た人、
神は長く金髪で女性だと後ろ姿だけで分かる。
その女性は背中まで伸びた髪を揺らして何かを洗っているのか川に手を
入れて水を掬ってはそれをバシャバシャとしている。
架間光輝「(あ〜何か洗濯してるのか?)」
いきなりこんな身形をした人がどうやって話し掛ければいいか分からない。
とりあえず声を掛けて見ようとした時
いきなり犬が女性の元に向かって走り出した。
架間光輝「(もしかしてあの犬の飼い主か?)」
こちらに向かってくる足音に気づいたのか女性は振り向く。
女性の顔が見えるかと思えば突然犬が飛びついた。
女性「きゃ!」
女性が驚いて悲鳴を上げる。
犬?「ワン!」
女性「あっ!ちょっと待って!」
女性が止めるのも聞かず犬は女性に飛び付いたまま離れようとしない。
女性「もう、ダメでしょ!」
そう言いながら犬の首を掴み引っ張るが犬は離そうとせず抵抗している。
架間光輝「(何か凄い光景だな・・・)」
しばらく見ているとようやく犬が離れた。
女性は慣れているのか犬を叱り始める。
女性「全く・・・・・・いつも言ってるでしょう!いきなり飛びつかないの!」
犬?「クゥーン」
女性「ごめんなさいは?」
犬?「ワウ・・・」
女性「うん、いい子ね」
女性が犬の頭を撫でる。
すると犬が急に大人しくなり目を細めて気持ちよさそうにしている。
女性「反省したなら良いわよ、ところで・・・」
そこで言葉を止めてこちらを見る。
女性「貴方誰?何のようでここに居るの?」
こちらを警戒しているのか女性は身構える。
架間光輝「えっと・・・」
女性「それにその格好・・・」
架間光輝「これは・・・」
架間光輝「(なんて言えば良いんだろうか・・・)」
架間光輝「・・・怪しい者じゃないです、森で迷ってしまいその犬を助けたらここに・・・」
とりあえず嘘は付かず無難な答えをする。
女性「本当に?」
架間光輝「はい」
光輝は真っ直ぐ目を見て答える。
すると女性は光輝の目を見つめ返す。しばらくすると・・・・・・
女性「ならその服装は何?私は見た事ないわ」
光輝の服は森の中を彷徨ったせいで汚れていたが、予想していた通りこちらの世界ではこの服装は異端らしい。
架間光輝「これですか?これは・・・」
架間光輝「(どうする?正直に話すか?でも信じて貰えないかもしれない。)」
架間光輝「・・・実は俺、記憶が無いんです。だからこの服も・・・」
女性「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
女性は黙っている。
いきなり違う世界から来たと言うよりは記憶が無いと言った方が疑われないと思ったが
間違えたかもしれない
架間光輝「(能力を使った方が良かったかも知れないな・・・)」
架間光輝「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
女性「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
沈黙が続く。
女性「・・・分かった、信じます」
架間光輝「・・・えっ、あの、ありがとうございます」
架間光輝「(・・・ふぅ・・・良かった・・・)」
女性「それで、あなたの名前は?」
架間光輝「俺は光輝と言います」
女性「コウキ・・・変わった名前ね。歳は?」
架間光輝「19歳です」
マキナ「私と同い年ね、私はマキナよろしくね」
架間光輝「はい、よろしくお願いします。あの・・・」
マキナ「どうしたの?」
架間光輝「ここって何処なんでしょうか?」
マキナ「ここはアンドレー王国にある街の一つ、 ルーベルの街よ」
聞いたことのない国名と地名に戸惑う。
架間光輝「(分かってはいたが異世界なんだな・・・)」
先程のゴブリンとの戦闘は夢ではないんだと改めて思う。
マキナ「さっきポトスを助けたって言ってたけど何があったの?」
架間光輝「ポトス?」
聞いたことのない名前に首を傾げる。
マキナ「この子、この犬の名前よ」
そう言い犬の頭を撫でる。
架間光輝「ポトスって名前なんですね、森を歩いていたら怪我をして倒れているのを見つけたので助けました」
マキナ「怪我をしてたの?見る限り怪我は無さそうだけど・・・」
マキナさんはポトスの体を確認する。
魔法を使って直したからか傷跡は無い。
架間光輝「(・・・魔法を使ったことは言っても良いよな?)」
俺は能力を使い選択肢を出す。
『本当のことを言う』○
『嘘をつく』×
出てきた選択肢を確認したところで俺はミスをしたかも知れないと内心焦る。
架間光輝「(ヤバい・・・この選択肢の画面を見られたら怪しまれる可能性が・・・)」
光輝は体から汗が出てくるのを実感する。
マキナ「・・・?どうしたの?」
しかしマキナさんは自分の目の前にある半透明の画面が見えていないのか
真っ直ぐこちらを見つめている。
架間光輝「(見えていないのか?)」
光輝はこの能力は自分にしか見えないのだと気付く。
架間光輝「えっと、自分が魔法で治しました」
マキナ「魔法を使えるの!?」
マキナさんは驚きの声を上げる。
架間光輝「はい。といってもヒールだけですが・・・」
マキナ「そうなの・・・でも本当に助けてくれてありがとうね」
架間光輝「いえ、当然のことをしたまでですよ」
マキナ「それでもお礼ぐらい言わせてちょうだい」
マキナ「けれど良かったわ、毒で倒れてたんじゃなかったのね」
架間光輝「(・・・毒?)」
異世界なのだから危険な食べ物とかがあるのかと思う。
マキナ「コウキさんはこれからどうするの?」
架間光輝「そうですね、特に決めていませんが・・・記憶が無いのでどこか人がいる所に行こうかと」
マキナ「もし行く当てがないならそこの教会に泊まる?部屋も余ってるわ」
願ってもいない提案だ。
架間光輝「(ありがたい話だが・・・)」
ここで見ず知らずの男を家に泊めると言ってくれる人は優しい人だ。
でもそんな人に甘えていいのだろうか・・・・・・
架間光輝「良いんですか?」
マキナ「もちろん、ポトスを助けてくれたお礼よ。 後この周辺の事とかも聞きたいでしょ?」
架間光輝「ありがとうございます!では、ご厄介になります」
ポトス「ワン!」
ポトスは嬉しそうに吠えた。
マキナ「じゃあ行きましょう。教会に案内するわ」
そう言うとマキナさんは歩き出した。
架間光輝「(とりあえず森は抜けて、今日泊まれる場所は確保出来たか・・・)」
この後どうするかを考えながら俺はマキナさんの後ろ姿について行った。
架間光輝「(なるべく色々な情報を手に入れないとな・・・)」
この先生きて行くには情報が必要だと思う。
俺は自分の置かれた状況を理解しながら今後のことを考えていた・・・