別れさせ屋として(前)(脚本)
〇豪華な部屋
♪~
♪~
♪~
田代キリア「はぁ~・・・」
田代アオト「すごい・・・」
真成見イズミ「お粗末様でした」
田代キリア「おねえちゃんすごーい!」
田代アオト「不思議ね・・・見えないはずなのに凄く正確に弾いてる・・・」
田代キリア「おねえちゃん、どうして見えないのにがっきがひけるの?」
真成見イズミ「難しいことはありませんよ」
真成見イズミ「キリト君はテレビゲームが好きですか?」
田代キリア「うん、大好き!」
真成見イズミ「ゲームをする時、わざわざ手元のコントローラーを見ないでしょう?」
田代キリア「うん、見てないよ」
真成見イズミ「理屈は同じですよ、頑張って練習すれば楽器も見ずに弾けるようになります」
真成見イズミ「楽器は勝手に動いたりしませんから」
田代キリア「そっか~じゃあぼくもがんばってれんしゅうしよ~」
田代アオト「頑張って練習って・・・並の練習じゃ無理そうだけど」
真成見イズミ「上手くなるのも挫折するのも、打ち込んだ時間は無駄にはなりませんよ」
田代アオト「それはそうとイズミさん、お兄さんの様子なんだけど・・・」
真成見イズミ「兄ですか・・・」
伊集院セイア「・・・」
田代アオト「何だか思い悩んでいるようだけど・・・」
真成見イズミ「・・・」
真成見イズミ「・・・家族の恥を晒すようですが」
真成見イズミ「実は・・・」
田代アオト「実は?」
真成見イズミ「兄は、痔を患っていまして・・・」
田代アオト「まぁ・・・」
真成見イズミ「座っているだけで激痛が走り、痛みで顔が引きつってしまうのです」
田代アオト「そうだったの・・・」
伊集院セイア「おい、適当ことを言うな」
真成見イズミ「あ、お兄さん・・・じゃなかった、お痔いさん」
伊集院セイア「誰がお痔いさんだ!」
田代アオト「ごめんなさい、気が付かずに・・・よかったらコッチのクッションを・・・」
伊集院セイア「い、いえ!大丈夫です!もう完治してますから!」
田代アオト「そうですか・・・」
伊集院セイア「おい、もう少しうまくごまかせないのか!」
真成見イズミ「ごまかしてあげただけ、ありがたいと思って下さい」
真成見イズミ「ターゲットの前で仕事を忘れるなんてプロ失格ですよ」
伊集院セイア「う・・・」
真成見イズミ「それで、結論は出ましたか?」
伊集院セイア「ああ、おかげさまでな」
真成見イズミ「何よりです・・・」
田代アオト「どうかされました?」
伊集院セイア「いえいえ、アオトさんの作るケーキは絶品だなぁと妹と話してまして♪」
田代アオト「そんな、レシピ通りに作っているだけですわ」
伊集院セイア「でしたら、アオトさんのようなキレイな方と一緒に食べているから美味しいのかもしれませんね♪」
田代アオト「まぁ・・・お上手ですね」
伊集院セイア「ふふふ♪」
真成見イズミ「・・・やれやれ」
〇大企業のオフィスビル
伊集院セイア「待たせたな」
真成見イズミ「準備はできましたか?」
伊集院セイア「あぁ問題ない」
真成見イズミ「・・・」
真成見イズミ「本当に良いんですか?」
伊集院セイア「仕方ないさ、知っちゃったらほっとけないだろう」
真成見イズミ「自分から突っ込んでいった気もしますが・・・」
伊集院セイア「ならイズミは残るか?」
真成見イズミ「まさか、ご一緒しますよ」
真成見イズミ「私はセイアさんの相棒ですから」
伊集院セイア「よし、それじゃ行こうか」
真成見イズミ「はい」
〇豪華な社長室
田代ヤクマ「どうぞ」
伊集院セイア「失礼します」
田代ヤクマ「おや、もうアレを口説き落としたのかな?」
田代ヤクマ「まだ一週間しか経っていないのに、さすがプロだ」
伊集院セイア「いえ、今日はお話を伺いたくて」
田代ヤクマ「話?アレの趣味趣向は良く知らんぞ」
伊集院セイア「いえ、これについて確認させて頂きたいんです」
田代ヤクマ「・・・コレは?」
伊集院セイア「コチラに映っているのは田代様とアオト様以外の女性」
伊集院セイア「そして、出てこられた建物はビジネス街のホテルですね」
田代ヤクマ「・・・」
伊集院セイア「最初に申し上げましたよね」
伊集院セイア「依頼契約後に田代様側に不利となる案件が発生すれば成果はお約束できないと」
田代ヤクマ「・・・それがどうした」
伊集院セイア「は?」
田代ヤクマ「俺が不倫したとして、それがバレたとして、それでも俺の望み通りするのがプロだろう!」
伊集院セイア「無理ですね」
田代ヤクマ「・・・何だと?」
伊集院セイア「残念ですが、契約違反が判明した以上は依頼を継続するわけには参りません」
田代ヤクマ「下りると言うのか?」
伊集院セイア「残念ですが・・・」
真成見イズミ「・・・」
田代ヤクマ「そうか・・・」
伊集院セイア「それでは失礼しま・・・」
・・・「・・・」
田代ヤクマ「下りるのは勝手だが、無事に帰れるとは思わないことだ」
伊集院セイア「どういう意味ですか?」
田代ヤクマ「家はコンプライアンスに厳しくてね、不倫したなんてバレたら跡継ぎの立場すら危ういんだ」
田代ヤクマ「だから消えて欲しい」
田代ヤクマ「ああ、その写真の出所を吐いてからな」
田代ヤクマ「コイツラに尋問されて耐えられる者は居ない、抗わずに話すことだ」
田代ヤクマ「そうすれば楽に死ねる」
田代ヤクマ「そっちのお嬢さんもな」
真成見イズミ「・・・」
田代ヤクマ「これでアレを消すのも先送りになってしまったな・・・」
伊集院セイア「やっぱり、アンタは別れてからアオトさんを始末するつもりだったのか」
伊集院セイア「自分が横領した罪をアオトさんに着せた上で・・・」
田代ヤクマ「ほう、気付いていたか」
田代ヤクマ「婚姻中に死なれると面倒なんでな、アレが会社の金を横領、離婚して高飛び、その後は息子ともども音信不通・・・」
田代ヤクマ「そんなシナリオだったんだがな」
伊集院セイア「息子さんも、ですか?」
田代ヤクマ「母親にしか懐かない子どもなど、居ても意味なかろう」
伊集院セイア「・・・アンタって人は」
田代ヤクマ「お喋りはここまでだ」
田代ヤクマ「ではサヨウナラ、探偵君」
・・・「さて、大人しくしてもらおうか」
・・・「話しは事務所でたっぷりと・・・」
伊集院セイア「ふっ!」
・・・「ぐふぁっ!」
田代ヤクマ「・・・」
伊集院セイア「すいませんね、職業柄こういったトラブルには慣れてるんですよ」
田代ヤクマ「・・・おい」
・・・「はっ!」
〇豪華な社長室
田代ヤクマ「暗闇なら慣れようもあるまい」
田代ヤクマ「コイツラは暗所の戦闘訓練もしているがな」
真成見イズミ「セイアさん・・・」
伊集院セイア「あぁ・・・」
「ぐぁあああ!」
〇豪華な社長室
田代ヤクマ「さて、後片付けは任せたぞ」
真成見イズミ「何の後片付けでしょう?」
田代ヤクマ「ナニッ!?」
真成見イズミ「スイマセン、私は慣れてるんですよ暗闇に」
真成見イズミ「慣れ過ぎて相手の正確な位置や動きも、手に取るようにわかるんですよ」
伊集院セイア「イズミはコウモリ並みの聴力を持ってましてね」
伊集院セイア「暗闇の中なら、俺達よりもよっぽど自由に動けるんですよ」
伊集院セイア「どうです?優秀でしょ」
伊集院セイア「因みに、ぶっ飛ばしたのは俺ですけどね」
田代ヤクマ「ぬ・・・うぅ・・・」
伊集院セイア「しかし黒服にサングラスとは、今時珍しいくらいの「悪者スタイル」ですね」
伊集院セイア「ヤクマ様のご趣味ですか?」
真成見イズミ「センスを疑います」
伊集院セイア「まったくだ」
田代ヤクマ「お・・・おのれぇ・・・」
伊集院セイア「さて、さすがにコレは黙って帰る訳には行かなくなりましたね」
伊集院セイア「我々も職業柄、舐められる訳にはいかないんですよ」
伊集院セイア「落とし前、しっかりとつけて頂きましょうか」
田代ヤクマ「ふざけるなよ・・・ゴミが・・・」
真成見イズミ「ゴミ?床に転がっている悪者さん達ですか?それとも・・・」
真成見イズミ「アナタ自身のことですか?」
田代ヤクマ「こ、このガキがぁ!!」
???「そこまでだ!」
田代ヤクマ「!?」
田代ヤクマ「お、親父・・・」
伊集院セイア「トラブルになりそうだったので、予めお父上様にお話を通しておきました」
田代社長「・・・どうやら教育を間違えた様だな」
田代社長「会社は次男に継がせる、お前に渡す物は何もない!」
田代ヤクマ「お、親父!待ってくれ!」
田代社長「それと、神宮寺さんから会社の会計に不明瞭な点があると報告を受けている」
田代社長「使途不明金だな、後で俺の部屋に説明に来い」
田代社長「好きな海外支店を選ばせてやる」
田代社長「警察に突き出さん代わりに、一生解放されるとは思わんことだ!」
田代ヤクマ「そ、そんな・・・」
伊集院セイア「・・・」
田代社長「連絡ありがとう、外に漏れる前に事実が知れて良かったよ」
伊集院セイア「いえ、わざわざご足労頂きありがとうございます」
田代社長「して、此度の件だが・・・」
伊集院セイア「関係書類等は全て破棄いたします」
田代社長「うむ、感謝する」
伊集院セイア「いえいえ」
伊集院セイア「その代わりと言ってはなんですが・・・」
田代社長「ん?」
伊集院セイア「今後調査などがご入用の場合は、ぜひ我が桜花弁護士事務所へご一報を♪」
田代社長「ふ、商魂たくましいな」
田代社長「桜花探偵事務所だったな、覚えておこう」
伊集院セイア「ありがとうございます」
セイアさん、苦悩の末に倫理観が勝りましたね。ステキです。そしてお見事な大立ち回りで!
そんなセイアさんに痔の濡衣が!お痔いさん……w