オフ会マニア(脚本)
〇沖合(穴あり)
ファイアショット「今日もお疲れ様でした!」
ドラゴンゴールド「オツあり!」
ブラッドデイジー「おつかれさまぁー♪」
デスさん「オツカレデス!! 今日も1位はファイアショットさんでしたね!」
ファイアショット「そんな、たまたまです」
ドラゴンゴールド「ほんま、アンちゃん強いな」
ドラゴンゴールド「まあ、アイテム数はワシが、サーバーいちで、ダントツやがな!」
ファイアショット「それより、いよいよ明日ですね!オフ会!」
ブラッドデイジー「うん!そうだね!」
ドラゴンゴールド「おお、そやった!」
ドラゴンゴールド「ええとこのスイートルーム、予約しといたからな! 楽しみにしててや!」
デスさん「オオ!」
ファイアショット「流石は、ドラゴンさんですね!」
ブラッドデイジー「ほんと、頼りになる!」
ドラゴンゴールド「ま、まあ、大人の力使っただけやねん」
ドラゴンゴールド「せっかくやし、このメンバーでのオフ会は初めてやしな」
ブラッドデイジー「確か、ファイアさんは、初オフ会なんだよね?」
ファイアショット「あ、うん。 不束者ですがよろしくお願いします!」
ドラゴンゴールド「硬ったぁ! 突然、ガチガチやな!」
ブラッドデイジー「ふふっ」
デスさん「ソンナ、カシコマラナクテモ。 ミンナ、ナカマ、デス」
ドラゴンゴールド「せやせや。わしら命預け合う仲やしな」
デスさん「デスデス」
〇ラブホテル
ファイアショット「えーっとここで合ってるよね?」
LIMEのグループチャットに来た地図はこのラブホを指していた。
ファイアショット「良いところのスイートルームじゃないのかよ・・・」
僕は、部屋のチャイムを恐る恐る押した──
パン!!パパパパン!!!
ファイアショット「うわあっ!」
〇ラブホテルの部屋
ブラッドデイジー「きゃははっ!マジでビビってるー! ウケるー!」
ファイアショット「えっ!?」
ファイアショット「まさか、ブラッドデイジーさん?」
ブラッドデイジー「うん! 君はファイアショットさんだよね!」
ブラッドデイジー「初めましてーになるのかな? 毎日ゲームで会ってるから初めてって気がしないけど!」
ファイアショット「う、うん。そうだね」
ブラッドデイジー「あはは! 緊張してる?」
ファイアショット「え、、あ、こういうとこ、初めてで・・・」
ブラッドデイジー「なにそれ! かわいすぎー!」
ファイアショット「か、か、かわいいって・・・」
ブラッドデイジー「てかさ、ほんと酷いよねー。 ドラゴンさん」
ファイアショット「え?」
ブラッドデイジー「スイートルーム予約したー。とか言っておいて、ラブホだからさっ!」
ブラッドデイジー「重課金者のくせに、リアルはケチくさいとか、有り得ないよね!」
ファイアショット「まあ、ボクは、引きこもりニートだから課金したくても出来ないけど・・・」
ファイアショット「というか、ブラッドデイジーさん、めちゃくちゃ可愛いなぁ」
ファイアショット「こんな子と知り合いになれるとか、まじゲームオフ会すげえ」
ブラッドデイジー「乾杯しよ! ビールでいい?」
──と、僕の隣に彼女が座った
ファイアショット「え、あ。あの」
ブラッドデイジー「え? 二人で乾杯とかいや?」
ファイアショット「いえ。全然、平気です」
ブラッドデイジー「そっか! じゃあ乾杯しよ!」
ファイアショット「で、でも、ドラゴンさんもデスさんも来てないし・・・」
ブラッドデイジー「えーーー。もっかいすればいいよー。 はいっ、かんぱーい!!」
言われた通りにビールを傾ける。
隣に座る彼女に視線を向けると、軽く微笑みが返ってきた。
ブラッドデイジー「そういえばさ、ずっと知りたかったことがあって・・・」
ファイアショット「な、なんですか?」
ブラッドデイジー「ファイアさんって、ゲームでのエイムめっちゃ凄いでしょ」
ブラッドデイジー「どうやっても、追い越せない・・・」
ブラッドデイジー「でね。なにか秘訣があるのかなーって!!」
ファイアショット「それは、他の人に秘密にしておいてほしいんですけど・・・」
ブラッドデイジー「秘密? するする!」
リュックからゲーム用のジョイントスティックを取り出した──
ファイアショット「自作のゲーム用スティックです」
ブラッドデイジー「わあ! これが、秘密兵器!」
ファイアショット「そうですね。使ってみます?」
ブラッドデイジー「うんうん! めっちゃ使いたい!」
彼女のゲーム用のタブレットにジョイントスティックを取り付ける──
ブラッドデイジー「わあ! 安定感すごっ!」
ファイアショット「ですよね。 これはなかなか市販では出ないんです」
ゲームを始めた彼女を横目に、僕も愛用のゲームタブレットを取り出してログインをした。
ファイアショット「──あれ?」
〇沖合(穴あり)
ドラゴンゴールド「──やばい」
ドラゴンゴールド「狂ってる・・・」
ドラゴンゴールド「今すぐ逃げろ・・・」
ファイアショット「え?」
ファイアショット「どういうことですか!?」
ファイアショット「なにかあったんですか?」
〇ラブホテルの部屋
ファイアショット「──だめだ。 全然気づいてくれない」
ブラッドデイジー「ねえ、ファイアさん。 これ、私、欲しいな」
ファイアショット「え、でもこれ一個しかなくて・・・」
ブラッドデイジー「・・・だめ?」
ファイアショット「・・・」
ファイアショット「ごめん! それだけは、僕のゲームの命だから!」
ブラッドデイジー「・・・そっか、残念だなあ」
──突然、部屋の中に着信音が響いた。
ファイアショット「あれ? 電話?」
──だが鳴っているのは、バスルームからだ。
ブラッドデイジー「ああ、多分ドラゴンさんのかな?」
ファイアショット「──え?」
ファイアショット「あ、サプライズ的なやつ? デスさんを驚かせるつもりとか」
ブラッドデイジー「それはないよ」
ブラッドデイジー「だって、デスは私のサブ垢だから」
ファイアショット「──は?」
ファイアショット「──うっ! キモチワルっ!」
急な吐き気に襲われバスルームへと駆け込んだ──
ファイアショット「うわああ!」
バスルームに、
血まみれの男が倒れていた──
ファイアショット「だ、だ、だ、だれ・・・」
ブラッドデイジー「あーあ」
ブラッドデイジー「後で片付けようと思ったんだけど、 バレちゃった」
ファイアショット「じゃあ、この人は・・・」
ブラッドデイジー「ドラゴンさんだよ」
ファイアショット「っひ!」
ブラッドデイジー「なんで殺したって顔してるね」
ブラッドデイジー「でもね、悪いのは彼のほうだよ」
ブラッドデイジー「だって、アカウント渡してくれなかったんだもん」
ファイアショット「そ、そんな理由で? ひ、人を殺したのか!?」
ブラッドデイジー「──そんな理由?」
ブラッドデイジー「私にとっては、ゲームの世界がリアルなの」
ファイアショット「だ、だからって殺すことないだろ!!」
ブラッドデイジー「そうかな? ゲームの世界では毎日殺してるでしょ?」
ブラッドデイジー「何百人とキルして、住処も壊して、アイテムを略奪して・・・」
ブラッドデイジー「やってることは一緒だから」
ファイアショット「──ち、ちがう」
ブラッドデイジー「あとは、ファイアさんのエイム力があればゲームのトップランカーになれるんだけど・・・」
ファイアショット「あ、あげるよ! スティック持っていっていい!」
ブラッドデイジー「──もっと良いこと思いついたの」
ブラッドデイジー「さっきゲームしたら、ファイアさんみたいに、上手に出来なかったの」
ブラッドデイジー「だから、欲しいな」
ブラッドデイジー「──君の腕」
〇ゴシック
──END
最初は普通にオフ会だったのに、だんだん怖くなってきて、話の流れがすごく巧みだなぁと思いました。
ゲームの世界と現実が混同してる彼女は本当に怖いです!
リアルの現実世界とゲームの世界の区別が付かなくなるほど熱中しちゃう人だったんですね、、、実際にはそんな人がいない事を祈ります笑
こんなに可愛い女の子をこんなにクレイジーにさせてしまうほど、現実世界との区別がつかなくなってしまうほど、夢中にさせてしまうなんてゲームの中毒性はすごいな。いや、実際ゲームが原因で殺人とか世界のどっかで過去に起こってそう。オチがわかってしまうと、ありがちなストーリーではあるのだけど、シンプルでサクサク読めて、おもしろい作品でした。