護衛騎士の秘密(脚本)
〇貴族の応接間
エイヴェリー「はあ・・・」
エイヴェリーはため息をついた。
目の前のテーブルにはケーキと紅茶が並べられている。
エイヴェリー(おいしいケーキも喉を通らない・・・)
エイヴェリー(こんなに高級なケーキ実家では食べられないのに・・・!)
オーガスト「どうしたエイヴェリー」
オーガスト「ケーキが口に合わなかったか?」
エイヴェリーがフォークを握りしめて嘆いていると、目の前に座る人物は心配そうにエイヴェリーを見つめた。
顔を近付けられ、慌てて離れる。
エイヴェリー(ひい!近い!)
エイヴェリー(第一王子殿下ともあろう人間が、気安く人に顔を寄せないでくださいよ!)
エイヴェリーは内心で悪態を吐いた。
そう、エイヴェリーの目の前にいる人物は、第一王子であるオーガストだ。
護衛騎士であるエイヴェリーの護衛対象である。
本来はこうして一緒にお茶を共にするなどありえない関係だ。
なのにこうして一緒にケーキを突いているのは、エイヴェリーがオーガストのお気に入りだからに他ならない。
エイヴェリー「い、いえ!」
エイヴェリー「ケーキはとてもおいしいです!」
オーガスト「じゃあなんだ」
オーガスト「もしかして、勉強がうまくいかないのか?」
エイヴェリー「いえ、それも悩みではありますけど・・・」
エイヴェリー「というか前から聞きたかったんですけど」
エイヴェリー「どうして護衛騎士の私がわざわざ教師を雇っていただいて勉強するんですか?」
オーガスト「俺の護衛騎士なのに教養がないと、俺の面目丸つぶれだろう」
エイヴェリー「はあ・・・」
エイヴェリー(そんなものだろうか・・・)
きっと自分にはわからないあれやこれやがあるのだと思い
エイヴェリーはそれ以上聞くのをやめた。
オーガスト「それで、勉強でないなら何が原因なんだ?」
エイヴェリー「い、いえ・・・ちょっと胸やけしただけです・・・」
本当のことを言えずエイヴェリーは嘘を吐いた。
オーガスト「そうか?じゃあ話の続きだが」
オーガスト「昨日会った女神だが・・・」
エイヴェリー「ブフゥ!!」
真剣な顔で女神と言われたエイヴェリーは紅茶を吐き出した。
オーガスト「どうした?」
エイヴェリー「いえ!ちょっと器官に入っただけです!」
オーガスト「そうか?では話を続けるが」
オーガスト「その女神は、昨日体調が悪くなった俺を優しく介抱してくれたんだ」
エイヴェリー「へ、へえ・・・?」
オーガスト「持っていたハンカチで額の汗を拭ってくれて」
エイヴェリー「ふうん・・・?」
オーガスト「なんと膝枕までしてくれたんだ」
エイヴェリー「そ、そうですか・・・」
オーガスト「だというのに、名前も名乗らず去って行ってしまったんだ」
オーガスト「どう思う?」
エイヴェリー「ど、どうって・・・」
エイヴェリー「な、名乗るほどじゃないと、思ったんじゃないですかね・・・」
オーガスト「王族を助けたというのに、名乗るほどじゃないわけないだろう!」
エイヴェリー「し、知りませんよ!私に言われても!」
エイヴェリーは冷や汗をかく。
エイヴェリー(言えるわけない・・・)
エイヴェリー(それは私ですだなんて・・・!)
〇寂れた村
エイヴェリーの実家は一応貴族であったがとんでもなく貧乏であった。
エイヴェリーもついに働くしかなくなったが、女性の給金は少なく
そのまま働いても、どうにもならなかった。
エイヴェリー「没落する・・・何とかしないと!」
そこで目を付けたのが、護衛騎士だった。
命を懸けるだけあって、破格の給金だった。
エイヴェリー「幼い頃から剣術を習っていてよかった・・・!」
採用に申し込んだエイヴェリーは重要な問題に気付かなかった。
そう・・・護衛騎士は男性しかなれなかったのだ。
〇貴族の応接間
エイヴェリー(まさか誰も女だと気付かず受かってしまうなんて・・・!)
エイヴェリー(確かに髪も動きやすいように短くしてるし、実技があったからズボン履いてたし、胸もないけど!)
エイヴェリー(・・・自分で言ってて悲しくなってきた・・・)
そんなエイヴェリーも年頃である。
両親に結婚はまだかと言われ、仕方なくパーティーに参加したのだ。
ドレスにウィッグを付けて。
エイヴェリー(まさかそこにオーガスト殿下がいらっしゃるとは・・・)
エイヴェリー(体調が悪そうだったから、バレないかハラハラしながら介抱したけど)
エイヴェリー(どうして女神とか言い出しているの!?)
エイヴェリーは激しく動揺しているが必死に顔に出さないようにする。
エイヴェリー(今更男装して護衛騎士になったのがバレたらどうなるか・・・)
エイヴェリー(王族を騙していることになるから・・・重罪かも・・・)
エイヴェリー(絶対にバレるわけにはいかない・・・!)
オーガスト「彼女は君のような髪色に」
エイヴェリー「う・・・!」
オーガスト「瞳の色をしていたんだ」
エイヴェリー「うぅ・・・!」
じっとオーガストが見つめてくる。
エイヴェリー「ひい!その無言はなに!?」
エイヴェリー「ちょ、ちょっと用事があるので失礼しますー!」
エイヴェリー「休憩が終わる頃には戻りますので!」
エイヴェリーは逃げることに決めた。
去って行くエイヴェリーを見ながら、オーガストはほくそ笑む。
オーガスト「少し意地悪が過ぎたか」
オーガスト「それにしても、秘密を隠せないやつだな」
オーガスト「もし俺が初めから女だと気付いていたと言ったらどうなるのか」
オーガスト「さて・・・どうやって捕まえようか」
その後、紆余曲折を経てオーガスト結婚することになるとは、今のエイヴェリーは予想もしていなかった。
男装女子いいですよね!
本当は全部知ってる殿下がいじわるで、そこもツボを突かれました。
知らずに悩んでる彼女に、教えてあげるのはいつになるのか…楽しみですね!
楽しいストーリーで最後まで一気に読ませて頂きました。ストーリーもよくできていて、会話のリズムもよくクスッと笑いながら最後を迎えました。
男装では王道パターンのラブコメですが、やっぱりこの展開は大好きです。ラストはずっとニヤニヤしっ放しでした。楽しく読ませてもらいました。