不思議な店(脚本)
〇マンション群
駅前から商店街が並び、その商店街の横道になっている路地に一軒の隠れ家的な喫茶店があった。
この店は表向きにはごく普通の店だが、予約した者は「マウンテンコーヒー」と、メニューにないコーヒーを注文するのだ。
すると奥の個室に案内される。
「ここで、話をすればお金がもらえるって聞いたんだけど、本当?」
制服姿の少女は少し不安げになりながら、問いかけた。
奥の個室にコーヒーを運んできた店員は、メニュー表のようなものを開いて見せる。
そこには『悪意・10円』『悪質・100円』『軽犯罪・1000円』『懲役犯罪(三年以下)・10000円』
『犯罪(重罪)・時価』と書かれていた。
「ただの話では値段が付きません。お客様には「秘密」を打ち明けてもらいます」
「秘密?」
「はい。秘密の内容によって値段が変わります。秘密が人生を崩壊させかねないほどならば高くなりますまた――」
さらに店員はメニュー表の次のページをめくった。
「こちらに年代、日付に値段が付けてあります。お売りになる「秘密」の日時によって値段が変わりますがよろしいでしょうか?」
「どうして?」
「長い時間、ずっと秘密を抱えているものの方が、ワインの熟成と同じように価値が上がったり、
記念日など印象に残るものを聞きたいという顧客の要望です」
金額は内容に秘密の日時をかけた金額になる。
例えば20××年の1月1日ならば「500円」とあった。この時にあった悪質な「秘密」ならば500×100で5万円になる。
少女はスマホを取り出し、自分の持つ「秘密」の中で良い値段で買い取ってもらえそうなものを探した。
注意書きでその秘密が「ウソ」だと発覚した場合には、支払われた金額を倍の値段を支払わなくてはいけないと書かれていたから、
デッチ上げで話を作ることはできない、と。
「その秘密がウソかどうかって、調べられるの?」
「はい、内容によっては簡単な調査ですが。ウソだと判明、あるいは誰かにそう証言されたらアウトです。
そして違約金の一部を証言してくれた人に支払います。ですから秘密はあなたひとりだけが知るものが良いでしょう。
そしてここであったことを誰にも言わない方が良いですね」
そして少女はとある「秘密」を話す。
一年ほど前に親友とある店で万引きをし、その店を閉店へ追い込んだことを。
元々、お金に困っていてこの店の噂を聞いた少女は胡散臭いと思いながらも訪れ、自らの秘密を明かすことで大金を手にした。
その金額は50万円にもなった。
大金を手に入れた少女はこのことを誰にも言わないつもりでいた。
しかしただひとり、この秘密を打ち明けてしまう。それは少女と共に万引きをした親友であった。
親友も彼女と同じぐらい貧しく荒れた家庭環境にあり、彼女を救うために少女はその店の話をした。
その数日後、少女はその店から呼び出しをされ、以前打ち明けた「秘密」が「ウソ」だと証言されたと言われた。
裏切られたのだ、親友に。
自分の秘密を明かすことなく、証言で親友は大金を手に入れたのだろう。
どんなにそのことを訴えても、忠告を聞かなかったのはコチラなのだから、少女の訴えは無効になってしまう。
課せられた金額は100万円――少女に返せるあてなどない。
秘密を売る時に、あれ以上の値段になる日付や悪事はなかった。
(・・・・・・秘密を売らなきゃ、誰にも知られない秘密を――)
ふと、少女はひとつの「案」思い付き、店員に問いかけた。
「未来の『秘密』は買ってもらえるの?」
「内容によります。確実に行われ、今まで以上に価値があるものなら。
ちなみに未来の日付なので日時の価値はなく、秘密内容の『価格』でしか計算されません」
「確実に実行するわ。内容は――」
少女の提案に、店員は同意した。
そう、とてつもない『秘密』を作ればいい。
それだけで100万円以上になり、他の誰も知らない秘密を。
少女はかつての親友を数日の内に捜し出し、それを実行した。
誰も知らない、知っているのは元・親友だった、もう何も話すことのできない「何か」であった。
秘密を売る人がいれば、それを買う人がいるということですよね。私はその買い手がどういう人物なのか興味を引きました。ただ、少女達が取引するには障害が多そうですね。
なるほど、確かにこれから確実に行う内容も秘密として扱われそう!
特に殺し…とか…かなりの値段がつきそう!
それにしてもとても面白い発想で楽しませて頂きました!
「秘密の予定を実行します」何!なに?ととても気になりました(笑)内容も「クスッ」と笑ってしまうところがあり、最後まで楽しく拝見させて頂きました。