陰キャの僕が、不良と仲良くなるなんて。(脚本)
〇教室
陰山 敦「ああ、早く帰りたい・・・」
授業後のホームルーム。
学級委員長を中心とした陽キャたちが
文化祭の話で盛り上がっている。
陰山 敦「ボッチの僕には関係ないもん・・・」
〇施設のトイレ
結局、下校時刻は17時半過ぎ。
陰山 敦「疲れた・・・ やりたい人だけで話せばいいのに」
マスクのせいで、一層息が詰まった。
トイレの鏡の前でマスクを下ろす。
陰山 敦「『ああ、やっぱり綺麗。 僕の肌、そして唇―』」
見とれながらも、
ポケットからリップバウムを取り出す。
上下の唇に塗る。まんべんなく。
陰山 敦「んー・・・ぱっ」
大丈夫。ささくれも噛み跡もない。
唇は僕の元気のバロメーターだ。
トイレで鏡に向かい、
密かにリップを塗ること―
それが、息苦しい学校での
ささやかな楽しみだ。
お気に入りは、
ピンクに色づく滑らかなリップ。
薔薇の香りがする。
勿論、塗るのは一人の時。
だって、男子でこんな趣味してたら
「キモい」って言われるのがオチ。
僕みたいな陰キャならなおさらだ。
まあ、今まで何度となく言われて
耐性はついたけど、
過去にいじめられた傷がうずくから。
そんなことしてるってバレないように、
リップがついても色が透けない
黒いマスクをしている。
僕の雰囲気にも合うし。
笑顔になれた、その時。
〇施設のトイレ
不破 良哉「ん?はっ?」
陰山 敦「はひっ!!ふ、不破くん!!」
ぼーっとしてた!
クラスの一匹狼、不破良哉に見られてしまったのだ。
ガタイが良く、アクセをつけて制服を着崩す、不良ルックスの彼。
オーラが怖くて、
到底僕が話せる相手ではなかった。
そんな相手に秘密がバレるとは・・・
不破 良哉「お、おまっ・・・」
陰山 敦「ごっ、ごめん!気持ち悪いよね! 見なかった事にして、どうか!」
事態収拾の先手を打つ。
不破 良哉「ち、ちげーよ!! お前・・・綺麗な顔してんな!?」
陰山 敦「へ?」
不破 良哉「お前、いつも黒マスクしてボッチだから 厄病神とか言われてるけど・・・ 何だよその肌! ニキビ一つねえ!」
陰山 敦「え?それが?」
不破 良哉「俺、こんなんだからさ!」
マスクを下ろし、ニッと笑った不破くん。
頬には、高校生男子らしいニキビが点々とあった。
不破 良哉「なあ、陰山・・・ 初めてしゃべんのにいきなりだけど・・・」
不破 良哉「俺ニキビで悩んでて。 どうしたらキレイになれんのか、 教えてくんね? あ、ジュースとかおごる!」
陰山 敦「え?えーと、うん・・・」
〇ファミリーレストランの店内
こうして僕はファミレスに連行され、
ドリンクバーの飲み物片手に、
2時間質問攻めに遭った。
不破 良哉「なあ、洗顔とかどうやってんだ? 化粧品とか使ってんのか?」
僕の目を覗き、熱心に聞いてくる彼。
今までこれほど僕に興味を持つ人はいなかった。
秘密がバレたピンチが招いた、
不思議な縁。
自分に似合わないことを思った時、
思いがけない言葉が出た。
陰山 敦「不破くん、よかったら明日の放課後、 ドラッグストア行かない? 洗顔料とか探してみようよ。 僕でよければ、だけど」
不破 良哉「陰山、いいのか? やった、よろしくな!」
〇電器街
翌日。
不破 良哉「何これ、ドラッグストアデートか?」
陰山 敦「ぶふっ!何言ってんの! ・・・っていうか不破くん、 どうしてそんなに肌のこと 気にするの?」
不破 良哉「俺、実は、モデルになりたいんだ。 つーか、カッコよくなりたい。 見た目も、中身も」
不破 良哉「だから、ダチとつるむのもやめた。 あいつら、存在意義を証明したくて 反抗してるだけ。 ダサくね?そういうの」
不破 良哉「俺は、今は頭も悪いし見た目もそこそこ だけど、 今できることをして夢を叶えたい。 そう思うんだ」
そう言えば不破くんは、
授業をバッくれたり、むやみに人を攻撃したりしない。
陰山 敦「不破くんすごい。夢か・・・」
不破 良哉「陰山は夢、ないの?」
陰山 敦「今はね。 僕、昔から人とうまくなじめなくて、 気持ち悪いとか言われてた」
陰山 敦「自己満足することはあっても自信はない。 誰かと何かすることも難しいって思って 生きてきたんだ」
陰山 敦「だから、こんな風に誰かと過ごしたの、 小学校以来で。 ありがとう」
不破 良哉「プッ!お前が誘ったんだろ! ほら、着いたぜ。 俺に合いそうな洗顔料と薬、 教えてくれよな!」
ドラッグストアでの1時間半は、
あっという間だった。
〇ファミリーレストランの店内
その後不破くんは、お礼にと、
ファミレスでパフェをおごってくれた。
僕の前には、チョコソースたっぷりのチョコブラウニーパフェ。
不破くんは色とりどりのフルーツパフェ。
不破 良哉「なあ、俺の味見してみねえ?」
陰山 敦「いいの?」
差し出されたスプーンが僕の口に入る瞬間。
不破くんの手が滑ったのか、
スプーンは音を立てて机に落ち、
僕の唇には生クリームが。
不破 良哉「ごめん、陰山!」
陰山 敦「だ、大丈―」
その時だった。
彼の指が伸びてきて、
僕の下唇をなぞった。
陰山 敦「──!?」
不破 良哉「お前、肌もすべすべだけど── 昨日見た時、反射的に思ったんだ」
不破 良哉「あー触りてえ、この綺麗な唇― ってさ」
陰山 敦「──!!」
不破 良哉「俺もそんな唇になりたい。 今度は俺ん家で教えてくれよ。 ──!?」
不破 良哉「んふっ! おい陰山、耳赤くなってんぞ!」
陰山 敦「だだだ、だって・・・!!」
不破くん。
笑うなよ。
陰キャの僕は、こんな展開ついていけない。
震える拳を握り、小声で訴えるのが精一杯だ。
陰山 敦「不破くんっ! こういうことは学校では絶対ダメだから! ここだけの秘密ね!」
ふとしたきっかけから仲良くなる二人がかわいいです!
男の人もスキンケアは気になりますよね。
距離が縮まる二人にドキドキキュンキュンしました!
共通の関心があるといいですよね。
真面目君と不良少年という組み合わせ、、、青春だなーと感じて読んでいて一緒にキュンキュンさせて貰いました!!テンポ感も良くて楽しかったです!
きゅんきゅんしました。陰キャの彼が不良少年にドキドキしてしまう場面一緒にドキドキしてしまいました。夢を持つことでただの不良少年ではなく人から学びたいという気持ちを持つ青年に成長していく過程が素敵です!