ヲタをひた隠しにした男が彼女のご親に挨拶に行った結果

津堂燕飛

ヲタをひた隠しにした男が彼女のご親に挨拶に行った結果(脚本)

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〇広い畳部屋
お義母さん「貴方、隠していることがあるでしょう?」
大田角次「!?」
  俺は大田角次。
  絶賛、彼女を女で一つで育て上げたお義母さんに『娘さんを僕にください』と頭を下げたばかりの隠れ美少女ゲームヲタクだ。
  美少女ゲームに嵌ったのは中学生の頃。
  兄貴のベッドの下で発見してしまったのが始まりだった。
  それ以来、非モテだった俺は二次元の理想の美少女達にのめり込んだ。
  しかし、そんな日々は唐突に終わる。
  その日、俺はオフ会の帰りの終電でチンピラに絡まれていた彼女に出会った。
  美玲は、押しキャラが画面から飛び出してきたような美女でオフ会で酒を飲み出来上がっていた俺は
  気がついたら押しの名前を叫びながらチンピラを殴り倒しソレがきっかけで俺達は付き合う事になった。
  俺は、美玲に嫌われない為にヲタクである事はひた隠し今日この日を迎えたはずだった。
お義母さん「貴方のことは人をやって調べました・・・あんな秘密を隠しているなんて!」
大田角次「(あ゛ーー!なんか素行調査されてるーー!)」
大田角次「(お義母さんが美玲に無理やり醤油を買いに行かせて二人っきりにされた時点でなんかあると思ったけどーー!)」
お義母さん「申し訳ないけれど、娘が買い物から戻る前にお帰りになってくださるかしら?」
  圧倒的な拒絶。
  女手一つで娘を育て上げたお義母さんの眼光は俺のお袋とは段違いで、まるで任侠映画の姐さんのようだ。
  コワイ、帰りたい。
  けれど、諦めない。
大田角次「お義母さん」
大田角次「娘が連れてきた相手がこんな秘密を抱えていた危険人物(※美少女ゲームでブヒっていた変態)じゃ反対されるお気持ちもわかります」
大田角次「ですが、俺は娘さんを愛しています」
大田角次「必要なら大切なもの全てを捨て去っても(※ヲタグッズ)構いません!」
お義母さん「たかが女のために捨てるなんて大したこと無い物何じゃないの?」
大田角次「大した事がないだと・・・・・・?」
  これまで築き上げてきた押し達との思い出が全て否定され、
  その全てを捨ててでも愛している美玲への思いすらも鼻で笑われ爆発した。
大田角次「お義母さん 今の言葉、取り下げてください」
お義母さん「何故?」
大田角次「俺にとってあの子らは大切な家族です お義母さんにとって娘さんと同じくらい」
お義母さん「でも、捨てるのでしょう?」
大田角次「はい・・・・・・俺はもう娘さんのいない人生は考えられません」
大田角次「だから、後のことは兄貴に頼みました(※グッズの管理) 俺はあの子らにはもう会いに行きません 娘さんだけを愛します」
お義母さん「・・・」
お義母さん「・・・・・・お覚悟受け取りました」
  眼光鋭く俺を睨んでいたお義母さんが、突然俺に土下座する。
大田角次「ちょ、お義母さん??」
お義母さん「試すような真似をして申し訳ありませんでした!」
お義母さん「家を捨ててこちらに来るという覚悟を受け取りました!」
大田角次「(ん?家を捨てる?)」
大田角次「(婿養子的な事かな?)」
大田角次「(まぁ、美玲は一人娘だし家には兄貴がいるから俺が婿養子になっても大丈夫だとは思うけど・・・・・・)」
大田角次「お義母さん、顔を上げて下さい これからは、俺が美玲とお義母さんを守ります」
お義母さん「あぁ、なんて義理堅い人・・・電車で娘に絡んだのが出会いだと調査によこした者から聞いたときには不安になったけれど」
お義母さん「これなら安心して娘を託せます」
お義母さん「けれど、最後に貴方に言っておかねばならないことがあるのです」
大田角次「えっ?」
お義母さん「同じ世界に生きているのですからこの家の家業についてご存知だと思います」
大田角次「(家業?そういえば『大工組』っていう建設業をしているって聞いたような・・・?)」
お義母さん「娘には、本業の事は申しておりませんの」
お義母さん「ですから、結婚してからも我が家の本業については娘には隠しておいてほしいのです」
お義母さん「お願いできますか?」
大田角次「はぁ・・・・・・?」
大田角次「確かに肉体労働ではありますし服とか汚れますものね」
お義母さん「肉体労働・・・ふふ、面白い方ですね」
お義母さん「──でも、『組』も安泰です」
  お義母さんは立ち上がると、閉じていた隣の襖をパーンと開け放った。
大田角次「ひっ!」
  そこに広がっていたのは、十畳以上の大広間にガラの悪いいかにもな怖い人達が任侠映画のワンシーンのようにひしめき合っている。
お義母さん「この男は、アタシの娘・美玲と結婚する! 折を見て盃を交わす!いいね!」
  「「へい!」」
  流石の俺もようやく察した。
  美玲の家はヤクザだ。
  そしてお義母さんは娘にその事を隠していたのだ。
  そのとき、パーンと襖の開く音がして醤油の大瓶を抱えた美玲が息を切らせながら飛び込んできた。
美玲「ママ!何やってるの?!それにおじさん達も!」
お義母さん「み、美玲、これは貴女のためにっ」
  美玲に睨まれ、怖い皆さんとお義母さんが萎縮する。
美玲「ママ」
美玲「私、ママの事が大好きよ」
美玲「女で一つで私を育ててくれてありがとう」
美玲「けど、私、この人を愛してる たとえこの人が美少女ゲームヲタクだとしてもこの人の全てを受け入れて一緒に生きていく」
大田角次「み、美玲っ!?」
美玲「ごめんね 貴方の押し入れを見ちゃった・・・確かに引いたけど私の為にあの子達を捨てなくてもいいよ」
  美玲は俺を抱きしめる。
  嬉しい。
  何の隠し事もなしに愛する人と生きていけるなんて俺はなんて幸せものだろう。
  俺は美玲の腕の隙間からお義母さんを見る。
  お義母さんは「しー」っと口に人差し指を立てる。
  あぁ、俺は幸せと同時に墓まで持っていく秘密が出来たのだ。

コメント

  • 人それぞれ秘密を抱えていて、大事な人には決心して吐露しなければならないことも。そんな秘密の大小差が生み出すこの空気感、楽しいですね

  • お義母さんの秘密がすごいですね!
    でも、女手ひとつで組をきりもりするのは大変ですよ。お義母さん、本当にすごいです。
    オタバレしてたんですね。笑
    理解のある彼女でよかったですね!

  • タイトルからしてとても興味を惹くもので読んでみたいと飛びつきました。まさか秘密がおかあさんにも彼女にもバレていたなんて。おかあさんの秘密も既にバレてるかも。

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