Couple buster 〜別れさせ屋〜

セーイチ

別れさせ屋とは(前)(脚本)

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セーイチ

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〇渋谷のスクランブル交差点
真成見イズミ「皆さんは別れさせ屋という職業をご存じでしょうか?」
真成見イズミ「普通に生活していれば、あまり接する機会は無いでしょう」
真成見イズミ「しかし別れさせ屋は実際に存在し、業種としては探偵業に属されます」
真成見イズミ「他人同士の関係を終わらせ、人と人の繋がりを絶つ」
真成見イズミ「決して良いイメージはないかも知れません、倫理観的な問題も根づよく残っています」
真成見イズミ「しかし世の中には繋がっていることで傷付く人も居るのです」
真成見イズミ「例えばDV、例えばハラスメント・・・」
真成見イズミ「そうした危機に抗うことのできない人を助ける別れ・・・それも確かに存在します」
真成見イズミ「一方で、己の私利私欲のために別れさせようとする者もいます」
真成見イズミ「クライアントにより、別れさせ屋は弱者を守る救世主にも、罪なきヒトを陥れる悪の手先にもなりうるのです」
真成見イズミ「だからこそ、別れさせ屋は己の倫理観と矜持を強く持たねばなりません」
真成見イズミ「これは、そんな別れさせ屋で働く者達の物語」
真成見イズミ「どうぞ、ごゆっくりご観覧ください」

〇豪華な社長室
伊集院セイア「それでは「配偶者側の意思による離婚」をご希望・・・ということでお間違いないですか?」
田代ヤクマ「ああ、それで良い」
伊集院セイア「今のところ相手方に有責となる事案は無し、と」
田代ヤクマ「でなければ、他人にこんなことは頼まんよ」
田代ヤクマ「手段は任せる」
伊集院セイア「かしこまりました」
田代ヤクマ「しかし、本当に別れさせ屋なんて職業が有るとはな」
田代ヤクマ「てっきりフィクションだけの話かと思ったよ」
伊集院セイア「今時はネットにHPを乗せている会社もありますし」
伊集院セイア「それなりに一般的にはなっていると思いますよ」
田代ヤクマ「世も末だな、君らのような公序良俗に反する仕事が表立っているとは」
伊集院セイア「・・・基本は人間関係に苦しんでいる方の手助けをするためのモノですから」
伊集院セイア「ウチも母体は探偵事務所ですし、法に触れることはしておりません」
田代ヤクマ「探偵業ね・・・そちらのお嬢さんも探偵さんなのかな?」
真成見イズミ「・・・」
田代ヤクマ「盲目の探偵とは、それこそ小説のようだ」
伊集院セイア「ああ、彼女はアルバイトですよ」
伊集院セイア「目は見えませんが、それなりに優秀でしてね」
田代ヤクマ「優秀ね・・・」
田代ヤクマ「目が見えずとも優れた仕事が出来る職場とは、何とも羨ましい話だ」
伊集院セイア「ははは・・・」
真成見イズミ「どんな職場でもオジサンよりは優秀だと思いますよ」
田代ヤクマ「・・・何ぃ?」
伊集院セイア「コ、コラ!イズミ!」
真成見イズミ「・・・」
伊集院セイア「申し訳ございません!まだまだ子どもでして、決して悪気は・・・」
田代ヤクマ「そもそもなぜ子どもがいるんだ?」
真成見イズミ「子どもじゃありません」
伊集院セイア「えっと、女性がターゲットの場合、幼い同性がいたほうが接触しやすいので・・・」
真成見イズミ「だから子どもじゃ・・・」
伊集院セイア「しっ!」
田代ヤクマ「・・・まぁ良い、仕事さえ完璧にこなして貰えれば多少のことは不問にしよう」
伊集院セイア「あ、ありがとうございます!」
田代ヤクマ「アレは今でこそ良妻賢母を繕っているが、元はアイドルの追っかけなど低俗なことをやっておってな」
田代ヤクマ「君のように軽薄そうな男が口説けば、すぐにシッポを振って食いついてくるだろう」
真成見イズミ「・・・」
伊集院セイア「必ずご希望通りの結果をお届けしますよ」
田代ヤクマ「ああ、君の事務所は会社の顧問弁護士からのお勧めだからな」
田代ヤクマ「期待している」
伊集院セイア「はい、お任せ下さい」

〇大企業のオフィスビル
伊集院セイア「ふぅ・・・」
伊集院セイア「おい、イズミ」
伊集院セイア「何時まで仏頂面してんだよ」
真成見イズミ「別に、私の顔は元々仏頂面なんです」
伊集院セイア「相手は大手企業の専務、大口のクライアントなんだ、あまり印象を悪くするなよ」
真成見イズミ「・・・私、あのオジサン嫌いです」
伊集院セイア「バカにされてイラつくのはわかるが、お前が優秀なのは俺と所長が知ってるんだ」
伊集院セイア「それで良いだろう」
真成見イズミ「そこじゃありません・・・」
伊集院セイア「じゃあ何なんだよ?」
真成見イズミ「・・・もう良いです」
伊集院セイア「何だよ、ったく・・・」
真成見イズミ「それに、イラついているのはセイアさんと所長さんにもです」
真成見イズミ「私は人助けのための別れさせ屋以外、お手伝いはしないと言ったはずですよね?」
伊集院セイア「しょうがないだろ、俺達だって普段なら断ってるさ」
伊集院セイア「こんな、強者が弱者を切り捨てるような別れなんて・・・」
真成見イズミ「なら受けなければ良いのでは?」
伊集院セイア「今月の事務所の家賃、どうすんだよ」
真成見イズミ「・・・はぁ」
伊集院セイア「上司の前で溜息をつくなよ」
真成見イズミ「アルバイトと正社員に直接的な上下関係はありませんよ」
真成見イズミ「私の雇い主は所長さんです、副所長でもセイアさんは私の上司にはあたりません」
伊集院セイア「あーいえばこーいうな、お前は・・・」
真成見イズミ「「お前」も侮蔑的な発言になりますが?」
伊集院セイア「はいはい、わかったよアルバイトのイズミさん」
真成見イズミ「はい、探偵スキルが微妙な副所長のセイアさん」
伊集院セイア「・・・」
真成見イズミ「ではさっさとターゲットの下へ向かいましょう」
真成見イズミ「運転お願いします」
伊集院セイア「おま・・・イズミが命令するなっての!」
伊集院セイア「って、先に行くな!たく、何で杖一本でそんなにスイスイ歩けるんだよ・・・」
伊集院セイア「ん?」
・・・「・・・」
伊集院セイア「・・・?」
真成見イズミ「どうしました?」
伊集院セイア「あ、いや・・・何でもない」
伊集院セイア「行こうか・・・」

〇車内
伊集院セイア「え~ターゲットは田代アオト、35歳の主婦」
伊集院セイア「クライアントのヤクマ氏とは7年前に会社関係のパーティーで出会い、ヤクマ氏から接触」
伊集院セイア「半年後に結婚、今は5歳になる息子キリアが居る」
伊集院セイア「生前から企業の跡取りが決まっていたヤクマ氏とは違い、ターゲットの両親は一般企業のサラリーマン」
伊集院セイア「ターゲットは人当たりが良く、家事や育児も完璧で関係者からの印象も上々」
伊集院セイア「料理ブログのアフィリエイトで収入もあり、自身の趣味や交遊費などは自腹」
伊集院セイア「正しく良妻賢母を地でいってるな」
伊集院セイア「アイドルの追っかけは事実だが必要以上に散財はしてないし、何かを犠牲にもしていない」
伊集院セイア「ただしい趣味の範囲と言えるだろう」
真成見イズミ「ますますターゲットと別れようとする理由が見いだせませんね」
伊集院セイア「男女の関係なんて、外からじゃわからないさ」
真成見イズミ「わかりますよ、あのオジサンの我が侭です」
伊集院セイア「まぁ、イズミが言うならそうかも知れないけど・・・」
真成見イズミ「あのオジサンは他人をモノとしか見ていません」
真成見イズミ「私のこともセイアさんのことも、そしておそらくご家族のことも・・・」
真成見イズミ「だから配偶者を切り捨てるのに理由なんていらないんです」
伊集院セイア「・・・」
伊集院セイア「え~と・・・依頼理由は「アオトは田代家に相応しくない」「欠陥のある子どもしか産めない女に用はない」等々か・・・」
真成見イズミ「欠陥?」
伊集院セイア「息子は生れながらに弱視だったらしい、治療の甲斐もあって今は問題ないがな」
真成見イズミ「・・・反吐が出ます」
伊集院セイア「子どもがそんな言葉を使っちゃいけません」
真成見イズミ「子どもじゃありません」
伊集院セイア「はいはい」
真成見イズミ「それで、今回はどんな手を?」
伊集院セイア「とりあえず接触してみてからだな、資料だけじゃわからないこと多いし」
真成見イズミ「慎重なナンパ師というのも滑稽ですね」
伊集院セイア「仕事だっつーの!」
真成見イズミ「そうですね、お金のために人をだまして貶める分、ナンパよりたちが悪い」
伊集院セイア「人の仕事を全否定するなよ・・・」
伊集院セイア「だからせめてターゲット側に慰謝料が発生しないようにって、依頼内容を修正させただろ」
真成見イズミ「別れたいなら逆にクライアントが払うべきかと思います」
伊集院セイア「ああいう立場の人間は、世間に対して自分を悪く見せたくないんだ」
伊集院セイア「慰謝料を渡して離婚したって、経歴に載せたくないんだよ」
真成見イズミ「そのために高額なギャラを払って相手から別れを切り出させる・・・」
真成見イズミ「下らないプライドです」
伊集院セイア「ホント容赦ないな・・・」
真成見イズミ「あ、そろそろ到着しそうですよ」
伊集院セイア「何で見えてないのにわかるんだよ・・・」
真成見イズミ「エンジン音から速度を推察し、目的地への距離感と照らし合わせただけです」
伊集院セイア「ホントに優秀だな、ウチのアルバイトは・・・」

次のエピソード:別れさせ屋とは(後)

コメント

  • 「別れさせ屋」という設定から、何か仄暗いワクワク感を抱いてしまいましたww
    イズミさんの会話内容、立ち居振る舞いなどに強キャラ感を感じますね。彼女の活躍に期待してしまいます!

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