Cross the line(一線を越える)

鷹志

第10話 沙羅双樹は闇の色【第2部最終話】(脚本)

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鷹志

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〇ホストクラブ
店長「申し訳ございません。沙羅は今日も休みでして・・・」
部長「また? 先週もいなかったじゃないか」
店長「ちょっと体調を崩してしまいまして・・・申し訳ございません」
俊介(体調を崩してしばらく休んでる?)

〇おしゃれなリビング
美由紀「直樹さん、明日はよろしくね」
直樹「美由紀の両親にあいさつかあ。緊張するなあ」
美由紀「大丈夫よ。うちの両親、別に普通の人だから」
美由紀「直樹さんに会えるのを楽しみにしてるわ」
直樹「今日は早めに休むか」
美由紀「そうね」
直樹(沙羅!?)
直樹(明日は大事な日だ)
直樹(美由紀とも約束したし、出るのはやめておこう)
美由紀「どうしたの? 電話が来てたみたいだけど」
直樹「いや、何でもないよ」
美由紀(まさか妹から・・・)
直樹(今度は沙羅からメールが来てる)
沙羅「お兄ちゃん、どうして出てくれないの?」
沙羅「私のこと嫌いになったの?」
沙羅「お兄ちゃん、会いたい」
沙羅「お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・」
直樹(沙羅、どうしたんだ?)
直樹(沙羅!)
直樹「美由紀、ごめん」
直樹「沙羅から何度も連絡があって」
直樹「出るだけだから」
直樹「沙羅、言っただろ。用事もないのに連絡してくるなって・・・」
沙羅「お兄ちゃん、会いたい」
沙羅「お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・」
直樹「沙羅、落ち着け」
直樹「少しおかしいぞ。どうしたんだ?」
沙羅「お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・」
直樹「おい、沙羅!」
直樹「・・・切れた」
直樹(沙羅、どうした? 何があった?)
直樹「美由紀、沙羅の様子がおかしい」
美由紀「・・・」
直樹「様子を見に行ってきても・・・」
美由紀「約束したわよね」
美由紀「もう行かないって」
直樹「それは・・・」
美由紀「妹は何て言ってるの?」
直樹「それが何も・・・」
美由紀「ほらね。前のときと一緒よ。ただあなたに構ってほしいだけ」
美由紀「明日は私の両親に会いに行くのよ」
美由紀「それより大事だって言うの?」
直樹「そんなことはない! そんなことはわかってる。ただ・・・」
直樹「・・・」
直樹「美由紀、じゃあ君も一緒に来てくれないか?」
美由紀「えっ!?」
直樹「それならいいだろ。本当に沙羅の様子を見に行くだけだ」
直樹「もし、沙羅の仮病だったら、その場で怒鳴りつけて本気で叱りつける!」
直樹「頼む」
直樹「さっきの様子はこの前までの沙羅とは何かが違う」
直樹「これが最後だ」
直樹「行かせてくれ。いや、一緒に行ってくれ」
美由紀「・・・」
美由紀「わかったわ。そこまで言うなら行ってくればいいわ」
美由紀「私は行かない。そんなのに付き合ってられない」
美由紀「様子だけを確認したら、本当にすぐに帰ってきてね」
直樹「もちろんだ。すぐに帰ってくる」
直樹「ありがとう。行ってくる」
美由紀「本当に人騒がせな小娘ね」

〇豪華なリビングダイニング
直樹「沙羅!」
直樹「・・・いない?」

〇綺麗な部屋
直樹「沙羅?」
直樹「ここにもいない」

〇本棚のある部屋
直樹「沙羅!」
直樹「ここにも・・・いない」
直樹「さっきから電話にもでない」
直樹「沙羅、お前はどこにいるんだ?」

〇川沿いの公園
沙羅「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・」

〇おしゃれなリビング
美由紀「沙羅ちゃんが家にいない?」
直樹「ああ」
直樹「少し近くを探してみる。何かあったら連絡するよ」
美由紀「わかったわ。気をつけてね」
美由紀「全く何考えてるの、あの小娘」
美由紀「この大事なときに」
  ピーンポーン
美由紀「誰? こんな遅くに」

〇おしゃれなリビング
美由紀「はーい」
沙羅「お兄ちゃん!」
美由紀「沙羅ちゃん!?」
沙羅「お兄ちゃんは? お兄ちゃんは?」
美由紀「あなた、いい加減に・・・」
美由紀「ちょっと、ずぶ濡れじゃないの! あなた、何やってんの!」
沙羅「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・」
美由紀「とにかく、少し落ち着きなさい」
  お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・
美由紀「・・・!?」
  お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・
沙羅「お兄ちゃん!」
美由紀「ちょっと、あなた!」
美由紀「すごい熱!」
美由紀「大変だわ。すぐに病院に・・・」

〇病室
沙羅「お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・zzz」
美由紀(何なの、この子は・・・)
直樹「美由紀!」
美由紀「直樹さん」
直樹「沙羅・・・」
美由紀「先生の話では命に別状はないそうよ」
直樹「そうか、よかった・・・」
美由紀「ただ、心身ともにかなり弱っているから、しばらくは入院が必要とのことよ」
美由紀「あと、精神科の先生にも一度きちんと診てもらったほうがいいって」
直樹「沙羅、何でこんなことに・・・」

〇ホテルの部屋
  お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・
美由紀「やめて! いい加減にして!」
直樹「美由紀! どうした!」
美由紀「はっ!」
美由紀「・・・ごめんなさい。ちょっとうなされていたみたい」
美由紀(あの小娘の声が頭から離れない)
直樹「ごめん、俺のせいだ」
美由紀「えっ・・・」
直樹「沙羅がああなったのも、美由紀にいろいろ心配かけたのも、全部俺のせいだ」
直樹「本当にすまない」
直樹「その責任はきちんと果たす」
直樹「愛する君のことは、俺がずっと守り続ける」
美由紀「直樹さん・・・」
直樹「沙羅のことも兄としてきちんと見守っていく」

〇病室
沙羅「お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・」
俊介「沙羅ちゃん」
俊介「入院したって聞いたけど・・・」
沙羅「お兄ちゃん、ライオンさん恐いよう・・・」
沙羅「お兄ちゃん、うさぎさんかわいいね」
俊介「沙羅ちゃん?」
沙羅「お兄ちゃん、誕生日おめでとう!」
沙羅「2人でお祝いしよう」
俊介「・・・」
医師「入院してから、ずっとこんな感じですよ」
俊介「えっ・・・」

〇病院の診察室
医師「一日中、さっきのようにつぶやいているか、ふさぎ込んでいるかのどちらかです」
医師「お兄さんがお見舞いに来たときは、少し元気になりますが・・・」
医師「逆にその次の日には、さらにふさぎ込んでしまいます」
医師「体力的には回復していますが、精神的には・・・」
俊介「治るにはどうすれば・・・」
医師「何とも言えませんが・・・」
医師「生きがいというか目標があれば、違ってくると思います」
俊介「生きがいや目標・・・」
医師「何でもいいんです」
医師「できれば「愛」が一番なんですが・・・」
俊介「愛?」
医師「ええ」
医師「自分が「誰かを愛している」「誰かに愛されている」と感じられれば、人は元気になれるものなのです」
俊介「それなら彼女にはお兄さんが・・・」
医師「そうなんですが・・・」
医師「何があったのか知りませんが、彼女の場合はそんな単純な話ではないようです」
医師「彼女がお兄さん以外の別の誰かを愛するようになってくれれば・・・」
俊介「お兄さん以外の人を愛する・・・」
医師「もうひとつ方法があります」
俊介「もうひとつ?」
医師「これはあまり大声では言えないんですが・・・」
俊介「?」
医師「「愛」ではなくて、愛とは正反対の「憎しみ」でもいいんです」
俊介「憎しみ?」
医師「「絶対に許さない」「復讐してやる」・・・」
医師「こういった感情も、愛と同様に、いや愛以上に、生きたいという強大な力を生み出します」
医師「もちろん、こんな方法は患者さんには教えられませんが・・・」
俊介「・・・」

〇総合病院
俊介(沙羅ちゃんには元気になってほしい)
俊介(でも、どうすれば・・・)
俊介(お兄さん以外の誰かを愛する・・・か)
俊介(俺があの子に愛されるようになれれば・・・)
俊介(いや、お兄さんしか見えないあの子には無理だろうな)
俊介(もうひとつの方法は・・・「憎しみ」)

〇病室
沙羅「お兄ちゃん、晩ご飯何食べたい?」
沙羅「お兄ちゃんのために一生懸命作るね」
俊介「沙羅ちゃん・・・」
俊介「寝ちゃったか」
  医師「「憎しみ」でもいいんです」
俊介「沙羅ちゃん」
沙羅「・・・zzz」
俊介「君がこんな風になってしまったのは・・・」
俊介「君より美由紀姉さんを選んだお兄さんと、お兄さんを奪った美由紀姉さんのせいだ」
俊介「だから、2人に復讐するんだ」
俊介「そして、美由紀姉さんを排除し、お兄さんを永遠に君のものにするんだ」
俊介「君がお兄さんを取り戻すにはそれしかない」
俊介「はっ!?」
俊介「寝てる。よかった・・・」
俊介(俺は何て馬鹿なことを考えているんだ)
俊介(そんなことをして沙羅ちゃんが生きる力を取り戻しても、誰も幸せにはなれない)
俊介(もっと別のいい方法を考えよう)
沙羅「・・・」
沙羅「お兄ちゃんとあの女に復讐する・・・」
沙羅「お兄ちゃんを永遠に私のものにする・・・」

〇モヤモヤ
  映画「Cross the line」
アリス「私よりカレンを選んだお兄様も、カレンも、絶対に許さない」
アリス「復讐してやる」
アリス「お兄様は誰にも渡さない」
アリス「カレンにも他の女にも渡さない」
アリス「そして、お兄様自身にも好き勝手なことはさせない」
アリス「永遠に私のものにするんだ」

コメント

  • 沙羅の狂気が境地へ…😱
    最終章は恐ろしいことになりそう😨
    楽しみです!

  • おのれ俊介〜!
    憎しみがマシマシになっちゃった…!
    壊れた沙羅に美由紀がイジワルしちゃうかと思ったら、逆に悩まされる結果に。
    ハッピーエンドでは終わらない…かも?

  • 沙羅ちゃん、心が壊れてしまったんですね。そして愛ゆえに、俊介の思考も一瞬ヤバい方向へ向かってしまいましたね😱映画のアリスと沙羅ちゃんが重なり、最終章ではさらなる沙羅ちゃんの復讐劇に俊介まで寡勢しそう。地獄の四角関係になる……?🤔続きも楽しみにしてます!

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