『俺』の幸せ家族計画

秋月菊花

エピソード:ゼロ(脚本)

『俺』の幸せ家族計画

秋月菊花

今すぐ読む

『俺』の幸せ家族計画
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇おしゃれなリビングダイニング
俺「ふぁ、あ・・・・・・いやー、今年も桜がきれいだ」
俺「たっだいまー! 父さん、母さん! 今度の日曜、みんなで花見行かね!?」
俺(母)「お、いいじゃん! ね、行こうかお父さん!」
俺(父)「お、そうだな! お前も来い、学校休みだろ?」
俺(弟)「別にいいけどー。宿題終わんなかったらセキニンとってよ?」
俺(祖父)「はっはっは! いやいや、意見の合いっぷりは我ら家族、世界一だな!」
俺((まぁ、同一人物だしな・・・))

〇おしゃれなリビングダイニング
  俺は、どこにでもいる一般的なごくごく普通の平凡な男子高校生! 唯一みんなと違うところがあるとすれば・・・
  『どうも、異世界転生する度に分裂して増えるらしい』って、ところかな。
  転生先は毎回ここの世界。俺だけが存在しなかったはずの、パラレルワールド。
  元の世界でオリジナルの俺、今頃どうしてるかなぁ・・・

〇桜並木
俺(母)「この桜、20年後と同じだね。本当にきれいに咲いてる」
俺(父)「30年後には半分切り倒されちまってるからなぁ。この景色も、あと25回で見納めだ」
俺「そうやって毎年カウントダウンするのやめない? 情緒行方不明なんだよ」
俺(祖父)「何を言う、俺の時代は・・・ダムn」
俺(母)「ちょっと! その話は小学生の俺には重すぎるって言ったよねおじいちゃん!」
俺(弟)「ダム? それなら俺、この間習ったぜ! 見くびるなよな!」
俺(父)「おーそうかそうか! いやぁ賢いなさすが俺!! 誰に似たのかな俺かな!」
俺「俺は俺だよ。いやほんと・・・母さん、どうしてるかなあ・・・」
俺(母)「ん? 俺ならここにいるよ?」
俺「いや、俺じゃなくて俺を産んだ母さんの方で」
俺(祖父)「母さんか。亡くなったのは・・・俺が54のときだったかなあ」
俺(父)「ヘルニア発病したのは3・・・あー、だから27年後か。ってぇと」
俺(母)「うん、俺の時はまだ健康体だったね。だから心配しなくても大丈夫」
俺「それはそれで心配だけどな!」
俺(弟)「次は、どんな俺が来るかな?」
俺(祖父)「時期的にはそろそろか。20代ぐらいだと見分けがついてありがたいな」
俺(父)「うえー、爺さんやめてくんない? せっかく就職して軌道に乗ってた時じゃん」
俺(父)「未来が一番明るかった時だぜ? 俺がかわいそうじゃん・・・」
俺(母)「え、じゃあ良かった俺このタイミングで。この先10年衰退しっぱなしとかないわ」
俺(父)「よく言うわお前の努力不足だろうが! 早々に管理職諦めて平穏生活に入り浸りやがって」
俺(祖父)「こらっ、俺に言えたことじゃないわい!」
俺(祖父)「お前たちが楽な方楽な方へと進みさえしなければ俺も今頃山積みの退職金と年金で悠々自適隠遁生活を」
俺(弟)「・・・みにくい」
俺「醜いねぇ」

〇桜並木
通行人「おーい! 大変だ! 人が、人が倒れてるぞー!」
俺(父)「なんだと!? 噂をすればか!」
俺「保護しよう! 爺ちゃんは俺を頼む!」
俺「俺、そうその俺、ああもうややこしい!」
俺(母)「急ごう、年齢差が少ないと面倒くさいことになるよ!」
「ああ!」

〇桜の見える丘
俺(???)「うーん・・・」
俺「俺だ・・・」
俺(父)「これは俺だな・・・」
俺(母)「歳は・・・80ってところかねぇ・・・」
俺「てことは、役職」
俺(父)「ああ、まあとりあえず連れて帰ろう」
俺(母)「お爺ちゃん嫌がるだろうね」
俺(父)「仕方ないだろう、こればかりは」

〇桜並木
俺「ただいまー」
俺(弟)「おかえり! どうだった?」
俺(母)「しっかり俺だったよ。ほら」
俺(祖父)「おお・・・長生きだな、俺も」
俺(父)「てなわけで、我が家に新しく婆ちゃんが加わりました。拍手!」
俺(弟)「わーい、拍手っ!!」
俺(祖父)「いや・・・俺、年上はちょっと」
俺(父)「拍!!手!!!」
俺(祖父)「・・・・・・はぁ(パチパチパチ)」
俺「ははは・・・」

〇桜並木
  こうして、我が家は6人家族になった。
  俺がタイムスリップしてくるのは大体2年周期なんだが、そろそろストックが尽きてほしい。
  98人の大家族とかになったら、煩わしくて大変だからな・・・
  ・・・それと。もし俺(犬)なんてのが現れた日には、もう絶対に身投げしてやるからな!! 次の人生に期待だ!
  ~fin~

コメント

  • 今は年齢層がばらけているからなんとかなっているけど、数ヶ月刻み、数日刻み、分刻みの自分がこの世界に転生してきたら完全にアイデンティティも秩序も崩壊しますね。でも、そんな世界もちょっと見てみたいかも。

  • 全員自分! なんと、俺君はそれでいいのか悪いのかわかりませんが、クスリとしながら読ませていただきました。
    最後に出てきたお婆ちゃん(役)、よくひと目で自分ってわかったなぁと感心しました。

  • 過去や未来の自分と対話ができるということが有利なのか不利なのか、考えながら読ませてもらいました。未来の自分がせめて今の自分より幸せだったらいいなあ。

成分キーワード

ページTOPへ