読切(脚本)
〇学校の校舎
学校初日、入学式の日の事、校舎の前に人が集まっていた、自分達と同じ、今日からこの学校の生徒になる人達だ。
クラス分け表が玄関口に張り出してあり、彼らはそれを見て自分の教室へと向かう。
楓と智恵理もクラス分け表から自分達の名前を探す、そして2人とも同じクラスである事が分かり智恵理は喜んだ。
花守 智恵理「一緒のクラスで良かったー、同じ中学からこの高校受けたの私達だけだし、」
花守 智恵理「それにあまり親しくなかったから、せっかくだしこの高校でもっと仲良くなれたらいいなーって」
〇黒背景
智恵理とは中学は一緒だったがあまり親しくはなかった、
〇学校の廊下
三年間同じクラスになる事も無く、お互い学校内で見かけたことがある、程度の関係だった。
〇電車の中
だが高校受験、試験当日に2人は出会う、
智恵理から話しかけられ、そこでこの高校に受験するのは楓と智恵理の2人だけだと知る。
〇学校の廊下
それから卒業するまでの間、数回程会話をするようになり
仲良し・・・とは言えないまでも、お互い下の名前で呼び合うくらいの関係にはなっていた。
〇学校の校舎
朝桐 楓「・・・」
花守 智恵理「楓ちゃん?」
朝桐 楓「・・・」
・・・
・・・
朝桐 楓「・・・」
朝桐 楓(いやー、良い男がいっぱいいますなー!良き哉!!)
楓は智恵理の言葉を聞いておらず周りにいる生徒達、特に男子生徒達だけに熱烈な視線を向け、
口に出さずに心の中でそう呟いた、満面の笑みで。
朝桐 楓(右にも左にも、そこらかしこに良い男!!)
朝桐 楓(今日からこんな素敵な男(ひと)達と学校生活を送れるのか!楽園(パラダイス)かよ!!)
朝桐 楓(心(なかみ)は男でも体は女だから世間的にノンケ扱いだし、合法的にキャッキャウフフできる!)
朝桐 楓(真良き哉!!)
朝桐楓は体は女で中身は男、同時に同姓愛者(男好き)、
「トランスジェンダー」の一部で「FtMゲイ」と呼ばれるものであった。楓は自分がFtMゲイである事を隠していた。
花守 智恵理「・・・」
智恵理は楓を無理やり引っ張り教室へと向かった。ちなみに2人のクラスは1組だったが楓は
朝桐 楓(2組か3組の方が良かったな、この高校は1学年4組しかない。1組と4組は端、2組と3組はその間、)
朝桐 楓(男と男の間に挟まれる・・・最高かよ、ムヘヘヘヘ♪)
と自分が数人の男子生徒達にギュウギュウに挟まれている妄想をしていた。
〇教室
それから入学式を終え、教室へ戻りHR、自己紹介の時が来た。
楓はチラリと教室にいる生徒達を見渡す。
朝桐 楓(中学の時は男子達と仲良くなりすぎて一部の女子達から嫌がらせを受けた、だからこの学校へ来た、)
朝桐 楓(・・・けど、)
一人一人顔を見る、
無表情だが優しそうな人、
何か考え事をしている人、
自己紹介の時間なのに寝ている人、
全員危なそうな人には見えない。
朝桐 楓(見えない・・・、けど・・・何だろう、男子も女子も全員、何かがある様な・・・)
教師「では次」
先生の声でハッとする、いつの間にか順番が来ていた、慌てて立ち上がり自己紹介をする。
朝桐 楓「S県のE中学から来た朝桐楓ですよろしくお願いします」
楓は彼らに〝何か〟を感じていたがすぐに忘れ、
朝桐 楓(でもこの人達と一緒なら、何だか素敵な学校生活になりそうな気がする)
と楓はもう一度彼らの顔を見ながらそう思った。
〇教室
花守 智恵理(何だか色々とヤバそうな学校生活になりそうな気がする)
智恵理は彼らを見ながらそう思った。
花守 智恵理(楓ちゃんがFtMゲイなのもこの学校を受けた理由も知ってる、)
花守 智恵理(でもこの人達は、あの女子達とは違う・・・違うけど!)
〇黒背景
智恵理には不思議な力があった、他人の隠し事や秘密を知れる能力だ。
智恵理は能力で知っていた、
楓が一部の女子達から嫌がらせを受けていた事、
その子達から離れるため、近辺の高校ではなく他県の、少し遠く離れた高校に受験する事、
その高校には楓以外に受験する者はいない事・・・、
智恵理もその子達の事はあまり好きではなかったし、
楓に対しても元々興味もあった、仲良くなりたいと思っていた、
だから智恵理も楓と同じ高校を受ける事にした。
〇教室
花守 智恵理(違うけど・・・この人達は、あの女子達以上にヤバイ!)
『昼飯何食べようかなムカデの佃煮にしようかな』
『俺があのはわわっ娘系VTuber、波環野円だなんて誰も思わないだろうな・・・はわわ~、何て自己紹介しようかしら!』
『觀自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五薀皆空度一切苦厄』
『朝桐楓・・・いいですね、私の娘にして一緒に24時間個人授業したい』
智恵理の能力は正確に言えば相手自身が隠し事、あるいは秘密だと認識している思考、想像、記憶を読んでいく能力だ、
彼らの秘密を智恵理は全て読んでいた。
花守 智恵理(隠し事の内容が・・・、中学の時の子達ですら誰が好きか嫌いだとか、)
花守 智恵理(それで隠れて嫌がらせとか、他にはポエムとかブログとかその程度だったのに、)
花守 智恵理(彼らの秘密はそれ以上!楓ちゃんよりもヤバイ!しかもこの教室だけじゃない、学校全体に!)
〇学校の校舎
智恵理は登校した時から能力を使っていた、
偶然か必然か、この学校にはとんでもない秘密を抱えた者が多く集まっていた、
生徒達だけではなく教師達も。
〇黒背景
後に彼らの秘密と秘密が交差し、物語が生まれ、2人はその物語に幾度も関わり翻弄されていくのだが
それはまた別の話。
秘密を読めてしまうのも良し悪しですが、先に危険がわかるのはいいなぁと思います。
でも、妄想まで読まれると恥ずかしいですね。笑
学校って教師も生徒も居るけれど,接点が無いと全く交流しないこともありますよね…不思議。この作品を読んで,学校って不思議なところだなあと思っていた頃の記憶が蘇りました!
ストーリーが予想できない感じで楽しかったです。まさかの!な感じで、一気に集中して読ませて頂きました。登場人物の会話のテンポもよく楽しかったです。