異世界家族

こへへい

エピソード1(脚本)

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〇美しい草原
瑞穂瑞徳「・・・な!何だ!?」
瑞穂瑞徳「さっきまで家だったのに!?」
瑞穂水連「あらまぁ、皆で夢でも見ているのかしら」
瑞穂瑞樹「何処ここ!?」
瑞穂瑞樹「でもすっごい気持ちいね!暖かいし!」
瑞穂瑞智「な、何で皆がここに!?」
瑞穂瑞徳「良かった、瑞智も無事だったか」
瑞穂瑞智「無事も何も・・・」
瑞穂瑞智(あの本通りに儀式をしたら本当に異世界に行けるなんて・・・)
瑞穂瑞智(でも皆一緒じゃ意味ないよぉ)
瑞穂瑞智(せっかく異世界では、家族から離れて、胸張って生きていこうって思ったのに)
瑞穂瑞樹「これってアレじゃない?お兄ちゃんが好きな異世界転生ってやつ!」
瑞穂瑞智「瑞樹、それは赤ちゃんからやり直すやつで、こうして俺たちの体がそのままなのは異世界転移って言うんだよ」
瑞穂瑞樹「そうなの?まぁどっちでもいいよね!異世界ってことには変わりなさそうだし!」
瑞穂瑞智(全然違う・・・)
瑞穂瑞智「っていうか、もう少し慌ててもいいでしょ?」
瑞穂瑞智「皆仕事あるんだし、戻らなかったら迷惑かけない?」
瑞穂瑞徳「ああそのことなら心配いらんよ。私がいなくても業務が進行できるように、マニュアルを作成してあるから」
瑞穂瑞徳「ぶっちゃけアレがあれば、お父さんいらないかもな!ははは!」
  そう、これが父さんだ
  あらゆる仕事をこなし、様々な事業を成功へと導いたスーパーサラリーマン。
  今では大手通信会社の重役に落ち着いているのも、俺や瑞樹が生まれたことで安定した生活基盤を作るためと聞いたことがある
瑞穂水連「私も大丈夫よ、10年くらい予約溜まっているけれど、レンジでチンすればできるところまで調理済みだから」
瑞穂水連「それがあればぶっちゃけ私要らないかも♡ウフフ」
  そしてこれが母さん。世界に名を馳せる一流レストランの店長で、卓越すべきはその料理への探求心と可能性の追求
  若い頃は世界中を飛び回って、料理に使える食材を探し回っていたとか。そのため生物や植物に関する知識が豊富なのだ
瑞穂瑞樹「プロデューサーからは「いつでも辞めていいから来てくれ!」って言われてるから、私は大丈夫!」
瑞穂瑞樹「これを機にアイドル辞めるのもアリかな~!」
  そしてこれが俺の妹。中学時代にアイドルにスカウトされてから、瞬く間にその名を日本中に轟かせた
  しかも本人曰く、台本をすべて無視して今までやってきたという
  だがその方が人気が出るからと、最近は台本を渡されなくなったらしい
  俺はそんな家族の元にいる、何の偉業もなしえていない落ちこぼれ。アニメやゲームが大好きなだけのオタク
瑞穂瑞智(だから異世界に行って第二の人生を送ろうとしていたのに)
瑞穂瑞樹「この前だって水着着ろって言われたんだよ?」
瑞穂瑞樹「誰が見ず知らずの人に水着なんて見せるもんですか!お兄ちゃんじゃあるまいし」
瑞穂瑞智「いや俺も見ず知らずの人に水着を見せる趣味はねぇよ」
瑞穂瑞樹「え、そういうことじゃ──」
瑞穂水連「あら見てこれ!」
瑞穂瑞徳「何だ?」
瑞穂水連「こんな草見たことないわ!」
瑞穂瑞徳「また始まった、母さんの好奇心」
瑞穂水連「これも!これも!私も結構な国を回ったけれど、こんな変な草見たことない!食べられるかしら?知らない動物とかいたりして!」
瑞穂瑞智(・・・どんな草なんだろう?そこまで反応されると気になる)
瑞穂瑞智「見せてみて」
瑞穂水連「見てみてよ!」
  水連が瑞智の手に謎の草を渡す。すると
瑞穂瑞智「え、」
瑞穂瑞智「草が消えた?」
瑞穂瑞智(まさか、あの本に書かれていた、異世界特典の能力?それが触れたモノを消すってこと?)
瑞穂瑞智(それはダメだろ、皆に触っても消しちゃうかもしれないだろ!)
瑞穂水連「不思議なこともあるものねぇ」
瑞穂水連「・・・この草も触ってみて」
瑞穂瑞智「う、うん」
瑞穂水連「次はこれ!」
瑞穂水連「そしてこれ」
  草を渡してきたかと思いきや、母さんが俺の手を直接触ってきた!
瑞穂瑞智「ちょ!そんなことしたら母さんも消えちゃう!」
瑞穂水連「いいえ、大丈夫そうね」
瑞穂水連「それに息子の手を握るくらい、母さんにとっては朝飯前さ!」
瑞穂瑞智(そういう問題じゃない!)
瑞穂瑞樹「これってアレじゃん!異世界特典!お兄ちゃん植物に触ったら植物を消しちゃう特殊能力持っちゃったんだよ!」
瑞穂瑞智「うっそ、マジで?」
瑞穂瑞智(いっらねぇ!独裁スイッチ並みにいらねぇ!)
瑞穂水連「あら、これも美味しそう!」
  水連がキノコを幹から一つもぎ取った。キノコのカサのにおいを嗅ごうとした、その時
毒モンスター「んぬー!」
瑞穂水連「きゃあ!」
瑞穂瑞徳「よくわからん生き物め、母さんから離れろ!」
  瑞徳が毒モンスターを払いのける
毒モンスター「ん~!!」
瑞穂瑞徳「大丈夫か母さん!」
瑞穂水連「うう、どうやら毒があったらしいねぇ」
瑞穂瑞徳「もう静かにしていろ、今すぐ医者に診てもらう!」
瑞穂瑞樹「町みたいなのがあったよ!行こう!」

〇城門沿い
瑞穂瑞樹「すみませぇ~ん!」
門番「なんだお嬢ちゃん、ここを通るならまずは許可書を貰わなくっちゃなぁ」
瑞穂瑞智「許可書だって!?」
瑞穂瑞智(RPGとかならどこかで功績を積んでから来る場所だ、でも俺たちは来たばっかりだし)
瑞穂瑞智(このままじゃ母さんを医者に診てもらえない!)
瑞穂瑞樹「そこをどうかお願いしますって、たくましいお兄さん♡」
門番「お、お兄さんって、そんな年じゃ」
瑞穂瑞樹「いえいえ、お若く見えるのはそれだけ鍛錬を積まれた賜物ですもん」
瑞穂瑞樹「私、そういう努力する人好きだなぁ」
門番「そ、そう、かな?」
瑞穂瑞樹「でも今母が体調不良で、ご覧と通りなんです。このままだと、母さん死んじゃう・・・」
門番「何だって!?わ、わかった!話は通しておくからさっさと入りな!医者は門を抜けて直ぐ左の突き当りだ!」
瑞穂瑞樹「ありがとう!お兄さん♡」
瑞穂瑞智(これが芸能界で培った演技力、いや社交力と言うべきか)

〇田舎の病院の病室
医者「うーん、これは難しい」
瑞穂瑞智「何が難しいんですか?」
医者「ポイゾームの毒の症状だ。これを治すには特殊な薬草が必要なのだが・・・」
医者「あなた達旅の者とお見受けしますが、お金はお持ちかな?」
瑞穂瑞智「そ、それは・・・」
医者「残念ながらそれでは治療をすることはできないね。症状を診てやったところまではサービスしてあげるから」
瑞穂瑞徳「なぁ」
医者「はい、何でしょう?」
瑞穂瑞徳「この院内を見る限り、病院以外にも事業をしているようですな」
瑞穂瑞徳「エントランスに寝具のパンフレットがあったところを見るに、寝具系統の販売開発も兼ねていると見える」
医者「そうですね、ここの人なら当然知っているでしょうが」
瑞穂瑞徳「とても素晴らしい。私は寝具メーカーの企業の立て直しをしたことがあるのですが、私が見たベッドの中で、これほどの品はない」
医者「ほほほ、そうかね、見る目があるお客さんだ」
瑞穂瑞徳「特にこのクッションがいい。人が寝る時の背中への負担をより軽減するようにできている。入院なさっている人が羨ましいです」
医者「ここに来るお客さんの中で、それに気づくのはあなたが初めてだ」
医者「よろしい、ポイポイズンという薬草を探しなさい。それを食べれば治るはずだ」
瑞穂瑞徳「え、ありがとうございます。この御恩は必ずお返しいたします」
医者「しかし今ポイポイズンは薬局で品切れと聞いている。どうしたものか」
瑞穂瑞智「そ、そのポイポイズンは、どんな薬草なんですか?」
  医者が分厚い本を開いて見せてくれた
医者「これだよ、でも最近不作なようでね」
瑞穂瑞智「僕が消した、草・・・」
瑞穂瑞智(何が第二の人生だ、親孝行もできないで)
瑞穂瑞智「俺はどこまでも無力なんだ・・・」
  うなだれた瑞智は、視界の右下にある謎の三角形を見つけた
瑞穂瑞智(なんだ、これ)
  恐る恐る触れると、
  視界には、瑞智がよくやるゲームの画面が表示されていた
瑞穂瑞智「まさか!」
  瑞智は「インベントリ」の三角形を触る
瑞穂瑞智「見つけた!ポイポイズン!」
  急いでその名前に触れる
医者「こ、これはポイポイズン!奥さんを治せますよ!」
瑞穂瑞徳「ハッハー!流石はわが息子だ!」

〇可愛らしいホテルの一室
  治療ついでに、あの医者が快く家族分の部屋を貸してくれた。父さんの商談力の賜物だろう
瑞穂瑞智「母さんが無事でよかったよ」
瑞穂水連「何のなんの、薬草持っててくれた瑞智のお陰じゃないか」
瑞穂瑞徳「そうだな!瑞智の将来がとても楽しみになったぞ!」
瑞穂瑞智「いや、この能力と俺は関係ないし」
瑞穂瑞智「それに、」
瑞穂瑞智「それに、どうせ異世界に行かなくても、このまま無力な奴として成人式とか迎えるのかな」
瑞穂瑞徳「瑞智の成人式!」
瑞穂水連「瑞智の成人式!」
瑞穂瑞樹「お兄ちゃんの袴姿!」
瑞穂瑞徳「こうしちゃおれん、一刻も早く元の世界に帰るぞ!」
瑞穂水連「そうね、成人式用の料理も準備したいし!」
瑞穂瑞樹「お兄ちゃんの袴、絶対かっこいいじゃん!」
瑞穂瑞智「はは、マジすか」
  どうやら、俺はこんな超人家族にとても愛されていたらしい

コメント

  • 家族から離れて暮らそうと思って転移したのに、結果的に家族から愛されていることを確認できたなんて、なんて幸せな誤算なんでしょうね。そもそも家族を異世界に連れてきている時点で、瑞智のスキルも他の家族に負けてないと思いますよ。

  • 異世界転移を家族ごとしてしまう設定が面白かったです。色々な局面で家族の持っているスキルが役に立って物語が進んでいくところがよかったです!

  • 年々家族の繋がりが薄くなっているように感じる今日このごろですが、家族だから無条件に世話をしてあげたりするのって、本来あるべき姿のような気がしてよかったです。

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