RiversideBaron~最終章~

山本律磨

フィクサーなる男(2)(脚本)

RiversideBaron~最終章~

山本律磨

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〇祭祀場
最上「鮫皮の反乱鎮圧と演説、ラジオで聞いたよ」
天粕「ピエロの真似、も板についてきただろう」
最上「・・・いや、身に沁みた」
最上「お前なら来栖川閣下を越えられる」
天粕「どうした風の吹き回しだ?」
最上「率直に報告する。来栖川閣下は生きている」
最上「名を騙る道化ではない。本人だ」
天粕「やはり・・・」
最上「芝居はよせ。把握してたんだろう」
最上「森田を身代わりにして、閣下の暗殺を目論んだ張本人だからな」
天粕「意味が分からん。何故私が暗殺を企てねばならんのだ」
最上「言ったろう。来栖川閣下を越えるため」
最上「あの人がいる限り、お前はいつ軍事参議になれることやら」
最上「而して、陸軍の新時代など先の先だ」
最上「だから力ずくで時代を動かした」
最上「口と尻は軽いが行動力だけは有り余る若き運動家を利用して」
最上「根室とは今も繋がっているのか?」
最上「新生美しきけものもまた、お前の手駒か?」
天粕「戒厳司令は激務でな。世迷言、に付き合っている暇などないのだ」
最上「安心しろ。俺がどう騒ぎ立てたって天下の天粕少将を告発なんて出来ないさ」
最上「手回しはずっと前に済んでるだろ」
天粕「成程そこまで理解しているのであればこちらも単刀直入に恫喝しよう」
天粕「いい気になるなよ三下の雑魚め」
天粕「とっとと下町へ戻り大人しくしていたほうが身のためと心得よ!」
最上「・・・そうか」
最上「つまりは新時代に俺の居場所はないと?」
天粕「居場所」
天粕「とはどういう意味か?」
最上「これでも軍人のはしくれだ」
最上「俺を引き上げてくれるんじゃなかったのか?」
天粕「・・・」
天粕「ククク・・・」
天粕「ようやく古きサムライに見切りをつけたか」
最上「雑魚は雑魚なりに、な」
最上「閣下はもう終わりだ。軍を追われ娘に見限られ乱心した。哀れだが再起不能と言っていい」
最上「だが俺は違う!軍人としての役目を終えるわけにはいかん!国家の為臣民の為、まだ働きたいんだ!」
最上「ましてやあの大泉の下で立ち腐れなど御免被る!」
天粕「最上・・・」
最上「俺はもう・・・誰にも馬鹿にされたくない」
天粕「哀れなのは貴様も同じだな」
最上「分かってるさ。遅すぎることくらいは」
最上「だから手土産を持ってきた」
天粕「手土産?」
最上「いいぞ。入れ」
猪苗代「・・・」
天粕「ほう。随分と手荒な真似をしたものだな」
最上「閣下の下ではこれくらいはしてたさ」
最上「それでも未だ五体満足でいさせているのはかつての好だ」
最上「もう誰にも侮られはしない」
猪苗代「・・・」
天粕「で。その女の罪状は?」
最上「ユートピア―ド計画の調査。そして、悪意ある吹聴の画策」
最上「答えろ。お前が調べ上げたという、計画の実態を」

〇東京全景
  『日本帝国都市再開発事業。通称、ユートピア―ド計画』
  『その根幹たるは、国営アパートメントの創設』
  『狙いは全国民の生活状況の把握と管理』
  『電信電話を張り巡らせるは、情報の傍受と密告の推奨』
  『ラジオの普及は速やかな情報操作と強力な思想統制。つまりは・・・洗脳』

〇祭祀場
猪苗代「これらの事業を向こう百年に渡って完遂し日本帝国を完全なる管理社会とする。それこそがユートピア―ド計画の正体」
最上「その告発のために、この女は動いていた」
最上「来栖川事件や俺やお前に突き当たったのもただの偶然」
最上「この者が狙っていた本丸は、計画の出資者にして発案者」
最上「来栖川分家筆頭にして我が国有数の実業家来栖川実朝だったんだ」
猪苗代「天粕少将、あなたと実朝卿との癒着も把握しています」
猪苗代「この国をディストピア化し経済的には実朝氏が、精神的には天粕氏が支配する!」
猪苗代「後々、経済的精神的邪魔者となるであろう義孝男爵の排除は必然だったのです!貴方達はそこで繋がっている!違いますか!」
天粕「調査という名の噂話を盾に、憶測をあげつらい世論をかき乱すのがお前の仕事なら、確かに拘束もやむなしか」
最上「天粕。戒厳軍の留置所に不穏分子の更生と再教育のプログラムを取り入れているそうだな」
最上「この女を放り込めるか?」
猪苗代「少尉・・・」
最上「猿芝居はやめろ。男まさりの女記者など、何ひとつ信用できん。人倫を踏みにじり、自己顕示欲を満たす人非人」
最上「汚らわしい」
猪苗代「・・・」
天粕「さりとて女記者とは厄介だ」
天粕「更生に失敗した状態、で世に放てばことが大きくなる」
天粕「プログラムは実験段階だ。女ごときに使用するわけにはいかん」
最上「ではそのあたりの交番に突き出しておこう」
最上「罪状は戒厳司令部への不法侵入だ。連れていけ」
猪苗代「・・・」
最上「これが俺の選択した新時代だ」
最上「元司令にも近づける。口封じの手伝いなら接近しよう」
天粕「いや、そっちの方は『別口』に任せている」
最上「ならば憲兵隊の情報を逐一流そうか?」
天粕「結構」
天粕「私とともに新たなる時代を歩みたいならば」
天粕「そうだな。暫時我がもとに侍っていろ」
天粕「小間使いだ。いいな」
最上「ああ。もとよりはなから信用してもらおうなどと思ってないさ」
最上「丁稚奉公から始めよう」

〇古民家の居間
最上「と、いうわけです」
最上「最早、貴方には誰の心も動かせはしない」
最上「部下の心も・・・娘の心も・・・」
最上「それでは」
義孝「最上。どうやら俺の怖さを忘れてしまったようだな」
最上「だとしたら、そうさせたのは貴方自身だ」
義孝「それは済まなかった」
義孝「俺の敵に回ったことを、泣くほど後悔するだろうからな」
最上「・・・」
最上「『別口』にお気をつけを」
義孝「・・・ふん」
義孝「やはり実朝叔父も噛んでいたか。最早別段驚く仕儀でもないが・・・」
義孝「全くもって、どいつもこいつも」
義孝「どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつも・・・」

〇東京全景
義孝「新時代など俺が叩き壊してくれるわ!」
  つづく

次のエピソード:フィクサーなる男(3)

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