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きせき

エピソード38-朝色の刻-(脚本)

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〇墓石
  俺は来見家の墓までやってくると、
  彼女の墓の前で立ち止まる。
  来見二夕菜之墓
明石朝刻「・・・・・・生きている時には花なんて渡したことなんてなかったのに、な」
  俺は持っていた花束を置いた。
  すると、わざわざ誰かに話しかけられないようにあえて
  この時間を選んだのに声をかけられた気がした。
「そこで何をしているの?」
  この世の者が持っているとは思えない羽を持ち、
  目をしている。
明石朝刻「何って墓参りになるのかな? 君は違うの?」
???「そうだね。お墓に来ているんだもの。お墓参りだよね」
  俺は無視して、その場を去ろうとする。
  だが・・・・・・できなかった。
???「ねぇ、貴方は彼女を取り戻したいとは思わない?」
???「彼女と・・・・・・貴方の力で・・・・・・」
  それは後にして思えば、
  悪魔のような提案だったのかも知れない。
  ただ、彼女が今でも生きていたら・・・・・・

〇黒

〇墓石
明石朝刻「俺はどうしたら良い?」
???「ふふふ、可哀想な人。でも、人間らしい・・・・・・凄く」
  それから、俺は一時的に来見家の力を手に入れた。

〇黒
  確実に見た未来を確定することができる来見家の力。
明石朝刻「(彼女の命を奪った力と)」
明石朝刻「(自身が遠巻きにしていた一族の力で、というのはかなりの皮肉だったが)」
???「人生なんて皮肉なもの・・・・・・気にすることないよ」
???「大切なのは特別な力で何を成すか、だけに過ぎない」
明石朝刻「・・・・・・」
明石朝刻「そうだな・・・・・・」
???「ええ・・・・・・」

〇墓石

〇ダクト内
明石朝刻「(確か、この辺りだったな)」
  カランカラン

〇地下室
  カランカラン!
「随分と久し振りだな」
明石朝刻「上の階ではちょっとした客人やら事件やら騒がしかったのだけど、」
明石朝刻「こんなところで静観しているなんて、な?」
明石春刻「朝刻・・・・・・さん・・・・・・」
明石朝刻「へー、やっぱり驚かないんだ」
明石朝刻「流石、明石家の当主。堂々とした風格だ。いや、失礼。風格でございますね」
明石春刻「・・・・・・そんなことを言いにこんなところへわざわざ?」
明石朝刻「いや? そうだな、まどろっこしいのはやめにさせていただくよ」
明石朝刻「当主様に過去を変えていただきたくてね」
明石春刻「・・・・・・」
明石春刻「朝刻さんもご存知かと思うのですが、傍系2親等の方の依頼は・・・・・・」
明石朝刻「へぇ、父親が違うのにまだ俺を兄だと言ってくれるんだ」
明石春刻「・・・・・・」
明石春刻「えぇ、僕は明石家の三男です。当主である前に」
明石朝刻「当主である前に、か・・・・・・」
明石朝刻「まぁ、良いか。もう一度だけ言う」
明石朝刻「過去を変えて欲しい」
明石春刻「断れば、どうなりますか?」
明石朝刻「ハハハ。当主もそんな冗談を言うんだな・・・・・・」
明石朝刻「方法はいくらでもあるさ。例えば、ここで俺が君を撃っても良いし、君に撃たせても良い」
明石朝刻「君さえこの世から消せば、俺が明石家の当主になる」
明石朝刻「どの道、俺が描いた筋書きになる」
明石春刻「・・・・・・それは見たから?」
明石朝刻「ん?」
明石春刻「来見さんの力で見たから?」
明石朝刻「・・・・・・そうだな。ただ、肝心な部分はまた見ていないよ」
明石朝刻「映画だってドラマだって先を知りすぎるのはつまらないだろ?」
明石春刻「・・・・・・分かりました。言う通りにします」

〇魔法陣2
明石春刻「・・・・・・媒体はどうするんですか?」
明石朝刻「媒体・・・・・・」
明石朝刻「じゃあ、これで」
明石春刻「・・・・・・」

〇魔法陣2
明石朝刻「ふぅ・・・・・・さて、と・・・・・・」
明石朝刻「君には過去へ行ってもらおうか」
明石春刻「過去へ? 僕が?」
明石朝刻「ああ」
明石朝刻「何も知らない、呑気な長男。俺の印象はそんなところだろう」
明石朝刻「でも、な。そんなのは全て、演技に過ぎなかったんだよ」
明石朝刻「当主の座・・・・・・そんなものの為に殺されるのは御免だし、」
明石朝刻「犯罪者にさせられるのも真っ平だった」
明石春刻「やっぱり、貴方が秋川さんを?」
明石朝刻「・・・・・・残念ながら俺は人を殺したりしていない」
明石朝刻「ただ、ある意味では・・・・・・そう、ある意味では殺したのかも知れない」

〇森の中

〇風流な庭園

〇風流な庭園

〇魔法陣2
明石朝刻「そして、また1人・・・・・・殺すのかも知れない」
明石春刻「ぐっ!!」
明石朝刻「過去に君を送ったら、蝋燭は粉々にしてやるよ」
  2人の人間が揉み合う。
  すると、突如、彼らとは違う3人目の人間が現れる。
明石朝刻「えっ!!」
  次の瞬間、空間には1人の人間を残して、
  2人の人間が忽然と消えた。

〇歴史
「飼い犬に手を噛まれる・・・・・・ってことかな?」
夕梨花「・・・・・・飼い犬なんですか? 私」
明石朝刻「いや、ものの例えだよ」
明石朝刻「でも、こんな結末なんて・・・・・・最後までしまらないと思ってね」
夕梨花「・・・・・・」
明石朝刻「敗因は何だったんだろう」
明石朝刻「君が秋川さん・・・・・・いや、夏坂さんを始末して、春刻を当主の座から下ろす」
明石朝刻「大まかに立てた計画は少し形は違ったが、それなりに進んでいた」
明石朝刻「やっぱり、不利な未来を確定してでも未来を見続けて、対策を練るべきだったのか」
夕梨花「そう、ですね・・・・・・貴方には犯罪が似合っていないと思います」
夕梨花「演技はなかなかお上手ですが、少し大雑把ですし・・・・・・」
夕梨花「人の心の機微というんでしょうか。それも考慮すべきでした」
明石朝刻「人の心の機微?」
明石朝刻「例えば、君の・・・・・・とか?」
夕梨花「そうですね・・・・・・私も自分の心はよく分かりません」
夕梨花「でも、あの時、私は見てしまったかも知れません」
夕梨花「貴方が春刻様を秘術を利用し、存在を消した時の後のこと」
明石朝刻「・・・・・・後悔する、とでも?」
明石朝刻「俺が当主になって、過去を変えてしまえば、そんな事実はなくなってしまうのに?」
夕梨花「そうかも知れません・・・・・・ただ、貴方はそれを死ぬまで覚えている」
夕梨花「殺した事実をなかったことにしたからと言って、その殺した事実は消せないんですよ」
明石朝刻「それは自分も夏坂さんを殺そうとしたから?」
明石朝刻「君はもっと実をとる人だと思ってたけど?」
夕梨花「だから、私も今になって戸惑っているんです」
夕梨花「貴方がいる毎日はのらりくらりしていたけど、悪くなかった」
夕梨花「だから、貴方の望みが叶うなら・・・・・・と思った」
夕梨花「まぁ、夏坂さんを恨んでいたのも多少なりともありますけどね」
明石朝刻「それなのに何故?」
夕梨花「さっきも申しましたが、貴方には犯罪は似合わないと思ったのです」
夕梨花「それが今の段階で私が考えられる理由です」
明石朝刻「・・・・・・」
明石朝刻「君も俺も存在を消されるかも知れないのに?」
明石朝刻「いや、むしろ、俺が春刻なら自らの命が尽きても、蝋燭を折って粉々にするけど」
明石朝刻「そして、それは「死」と同意義だ」
夕梨花「えぇ、不思議なことですが、貴方となら生きるのも死ぬのも悪くないですね」
夕梨花「本当に不思議なことですけど」
明石朝刻「そうだな、本当にそれは不思議なことだな・・・・・・」

〇地下室
明石春刻「はぁ、はぁ・・・・・・」
  た、助かった・・・・・・と思った。
明石春刻「でも、どうして、彼女が・・・・・・」
  一瞬だけ見えた人の影。
明石春刻「あれは朝刻さんの・・・・・・?」
  いつも見かけている訳ではないが、あの人は
  朝刻さんの専属の使用人だった。

〇黒

〇地下室
明石春刻「(まぁ、あの人は彼女を利用してたみたいだから彼女も許せなかったのかもな)」

〇可愛らしいホテルの一室
夕梨花「・・・・・・」

〇宮殿の門

〇貴族の応接間

〇ダクト内

〇地下室

〇地下室
明石春刻「(でも、許せないのはこちらも同じだ・・・・・・)」

〇宇宙空間
明石春刻「彼が死んだのはある意味、あの人達のせいでもあるのだから」

〇地下室
明石春刻「(そろそろ・・・・・・か)」
明石春刻「(間に合うかは正直、賭けだった・・・・・・)」
明石春刻「(一応、間に合わなかった場合に備えて手紙も残してたけど)」
明石春刻「(お礼くらいは直接、言いたいよね・・・・・・)」
明石春刻「(でも、これで良かったのかな・・・・・・)」
明石春刻「ねぇ、秋川さん・・・・・・教えてよ」

〇黒
明石春刻「教えてよ。秋川さん・・・・・・」

〇地下室
「春刻! 春刻!!」

〇地下室
「春刻様、春刻様!!」
「春刻、春刻!!」

〇地下室
明石春刻「ん・・・・・・」
黒野すみれ「春刻!!」
リエ「春刻様!!」
明石春刻「すみれちゃん、来てくれたんだね・・・・・・」
黒野すみれ「は、春刻?」
黒野すみれ「(目を開けた筈なのに焦点が合っていない?)」
  春刻の視線はどちらかと言えば、
  リエさんの方を向いていて彷徨っているようだった。
リエ「私、お医者様を呼んできます!」
  リエさんも春刻の異常な感じに気づいたのだろう。
  私と春刻だけを隠し部屋に残していく。
明石春刻「色々、危ない目に遭わせたけど、ありがとう。君のお陰で僕は犯人が分かった」
明石春刻「秋川さんを殺した犯人が・・・・・・」
黒野すみれ「(犯人・・・・・・と言って良いのかは分からないが、朝刻さん達のことだ)」
明石春刻「あの人達を過去に送ったんだ。あとはこの蝋燭を壊すだけ」
黒野すみれ「本当にそれで良いの?」
明石春刻「うん、終わりにしたい。全てを」

〇血しぶき
  カランカランカラン!!

次のエピソード:エピソード39-春色の刻-

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